板書スライドの問題を

解決する授業設計とは
2015 PC CONFERENCE(2015.08.21)
hello@shokuto.com
角南 北斗(武庫川女子大学)
角南 北斗
Sunami Hokuto
Web 学習
Webサイトや教材の制作:
日本語教育業界を中心に
講師&授業設計:
Web・情報教育・プレゼン
執筆:
プレゼン・IT活用
2005: 目的と実践の符号を ∼ホームページ作成を例に
2006: 検索力ってどうよ
2007: ひとつ下のプレゼン。
2008: お料理のコツと情報教育
2009: 日記じゃないのよブログは ∼じぶんチャンネルのススメ
2010: 勝たないプレゼンテーションの学びかた
2011: 名刺デザインで学ぶプレゼンテーション
2012: スマホ時代のWeb教材制作アプローチ
2013 : 3分ではじめるお仕着せのe-Learningからの卒業
2014 : 授業外・教室外の学習を見据えた教材設計
2015 : 板書スライドの問題を解決する授業設計とは
PCCでの発表も11回目。
Blog: withcomputer.jp
Site: sunamihokuto.com
Twitter: @shokuto
Sunami Hokuto
板書スライドの問題を

解決する授業設計とは
板書スライド?
板書スライドとは
プレゼン用アプリで板書データを作成
✴ PowerPointやKeynoteで作る
スクリーンに常時投影&板書代わり
✴ ちょうどこの発表みたいな形式です
✴ 設備のある教室(PC部屋)を講義でも利用
板書スライドの利点
板書する時間や手間がなくなる
✴ 授業をテンポよく進められる
スライドを使い回せる
✴ 他クラスや次回授業の復習、来年度にも
板書を資料として残せる
✴ 後で検証しやすく、授業の精緻化に役立つ
板書スライドで陥りがちなこと
スライドを早く切り替えがちになる。

授業展開が早くなりすぎる。
✴ 板書の手書きによって生まれていた間が

なくなってしまう。
✴ 学生も対応策を持っている
それが、黒板写メ。
黒板写メの利点
板書を漏れなく正確かつ迅速に記録
特別な道具は不要
✴ スマホだから常に持っている
写真データだから管理や運用も容易
✴ 一箇所にまとまってるから、なくさない
✴ LINEですぐ送れるし、プリントもできる
合理的で いいね!
合理的で いいね!
...とは考えない教師も
実際は多いみたいで
教師の言い分と、それへの返答
シャッター音が邪魔
✴ → 無音にするアプリを使えばいい
撮られるのに慣れない
✴ → よくわかるけど... 所 は慣れでは
それでは勉強にならない!!
✴ → 正論っぽいけど、本当にそうなの?
黒板写メは
学びにならないのか?
自身の授業で実践しつつ考えてみた
対象とした授業
情報サービスに関する講義
✴ 図書館司書の資格取得を目指す大学生向け
一斉講義形式がメイン
資料はスライド投影+教科書
✴ 口頭説明だけでは学生には負荷が高い
PC教室で実施
先生、ノートが
間に合いません...
ス
ラ
イ
ド

全
部
丸
写
し
学生がしていたこと
スライドすべてを丸写しにする学生に

「時間がない」と言われた。
✴ そりゃ時間がなくて当然である
✴ 黒板写メをする学生が目立たなかったのは

教師に配慮する意識があったのかも。
じゃあ、資料を全部
あげちゃおう!
資料は事後に配布することに
板書スライドはPDFにして

授業後にダウンロード形式で配布。
✴ 授業用のサイトをJimdoで作成して、

ファイル置き場やリンク集として活用。
あとでもらえるし
ノートはいいや...
スライドを配布した結果
メモを全然取らない人が大多数に
✴ 寝てる人はともかく、聴いている人もそう
スライドが唯一の授業記録となり

学生の間では重宝される。
✴ 授業を休んだ学生には喜ばれる
✴ 授業中に過去のスライドを見返す人が増える
スライドの作り込みが加速
もしスライドがキーワードだけだと、

メモがなければ資料として機能しない。
読むだけでもある程度わかるよう

スライドに説明文も盛り込むように。
✴ スライドの分量が増えることになり、

その作成に必要な時間が急激に増加。
作り込んだスライドの欠点
スライドの資料完成度が上がるほど、

わざわざメモする必要がなくなる。
ツッコミの余地・余白のない資料は、

学生の思考の機会を奪いがち。
✴ スライドツールは説得には向くが、

聴き手が途中で立ち止まって疑問を持ったり、

横道に逸れたりしにくくなる。
板書スライドはやめて
手書きにする?
手書き板書で予想されること
一定量以下の板書であれば、

学生は必死になってノートに写す。
それが無理そうなら黒板写メをする
✴ いまの時代、もはや手書きノートは

最初から候補には考えないかもしれない。
そもそもですね...
情報を取捨選択し加工することが

ノート取りによる学びだとするなら...
手書きも黒板写メも、

ただの丸写しなら学びにならない。
✴ 記録のためだけなら写メすら不要な作業
見るだけ、聴くだけで
学びとしては十分か?
ノートは取らなくてOK?
学生の理解度を確認するため、

簡単な確認タスクを定期的に実施。
✴ 専門用語を平易な言葉で説明させる(記述)
✴ 過去のスライドやネットを活用してOK
一般に「図書館における間接サービスと
直接サービスは相互関係にある」と言わ
れます。その理由を具体例を挙げつつ説
明してください。
Q
確認テストの結果
多くの学生は説明文が満足に書けない
✴ ツギハギのコピペで意味が通らない文も多数
✴ 書いた文にツッコミを入れられると返せない
✴ 1∼2行でも、ものすごく時間がかかる
理解の曖昧さに学生が自分で気づく
✴ 分かったつもりだった、という声が聞かれる
教師は結果をどう捉えるか
ただ聴くだけでは理解不十分のよう
✴ 平易な説明ができない背景には、

学生の文章説明スキルの不足もあるけど...
学生が自身の理解を深めるためには、

主体的に情報を扱うプロセスが必要。
✴ その1つが「ノート取り」ではあるが、

やり方が分からないという学生は少なくない。
ノート取りの実践への高い壁
そもそも「ノート取り」は高度な技術
✴ ビジネスセミナーでも実践できる人は少数
高校までで身につくものなの?
✴ 「ノートにそのまま写せる板書は教師の義務」
✴ 「最近の学生はノートも満足に取れない...」
授業内でスキルを育成するのは難しい

暫定的な結論:
ノート取りは教えない
まずは自覚してもらうことから
ノートの取り方は無理に教えない
聴くだけではダメかも?と思わせ、

次の工夫は個々の学生に任せる。
✴ 記録という結果だけに価値があるのではなく、

そのプロセスに学びがあると思えないと、

丸写しのノート作業はなくならない。
教師がしたこと(1)
自分の理解度を確認できるような

タスクを授業に盛り込む。
✴ 専門用語を平易な言葉で説明してもらう
✴ 授業とは違う切り口で複数の概念を比較させる
いったん立ち止まって考えてもらう
✴ 教師の話の中に問いかけを用意する
教師がしたこと(2)
教科書もWebも参照資料として扱う
✴ 教科書を端から「読んであげる」スタイルは

聴くだけの受け身の姿勢にさせやすい。
✴ 何を学ぶために読むのか毎度意識してもらう
教科書にない話、正解のない話も

授業で積極的に扱っていく。
✴ メモ取りに意識が向きそうなポイントを作る
教師がしたこと(3)
レポート課題は理解重視を明確に
✴ 記述量を求めても力がないと書けないから、

学生を何かのコピペに走らせてしまう。
✴ コピペで体裁や分量を整えても評価されないと

学生が感じるような条件にする。
✴ 難しい言い回しを多用しないよう条件を付け、

本人にも意味不明な文章になるのを防ぐ。
教師がしたこと(4)
教師への質問の機会を増やす
✴ タスクに取り組む時間を授業時間に用意し、

学生と話をする機会を増やした
授業時間外でも質問できる環境を
✴ Googleフォームを利用した質問ページで

いつでも質問や要望が伝えられるように。
✴ 質問には翌週の授業でフォローする。
学生の反応
学生がノートを取るようになった...

というわけではない(さすがに)
質問をする学生は増えた
✴ 教師は学生とのやり取りが増えたことで、

どこが難しいのかを知る手がかりも増えた。
✴ 少なくとも「理解の確認」の機会は増加
黒板写メは
学びにならないのか?
を 改めて考えると...
写メは記録でしかない
記録としてなら写メは効率的な手段
手書きか写メかの違いよりも、

それが学びにつなげる行為なのか、

単なる記録行為なのかの違いが重要。
写メ禁止!の前に
学生が写メをしたくなるような状況を

教師が作り出していないだろうか。
✴ 記録が困難な情報提示になっていないか?
✴ 学生が「記録=学び」だと勘違いするような

授業内容になっていないか?
記録と学びの関係が変わった
記録が自然に学びになる時代は、

記録方法の機械化で終わった。
✴ 手書きしか選択の余地がなかった時代は、

その過程で情報の整理法が身につくことも

少しは期待できたのかもしれない...。
これからの記録と学び
写メに限らず記録が容易な現代は、

記録行為と学びを分けて捉え、

学びを実現する方法を再考することが、

いっそう重要なのではないか?
✴ デジタルな記録に一手間加える学びかたや、

学びを優先するための効率的な記録方法も、

これからの授業設計には必要。
写メも いいね!
という考えから出発して
授業をデザインしよう。

板書スライドの問題を解決する授業設計とは(2015PCカンファレンス)