媒介分析
清水裕士
関西学院大学
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 1
自己紹介
• 清水裕士
– 関西学院大学社会学部 准教授
– 関西学院大学社会心理学研究センター
• Web
– Webサイト:http://norimune.net
– Twitter: @simizu706
– 統計ソフトHAD: norimune.net/had
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今日のお話
• 媒介分析について
– 媒介効果とは
– 媒介効果の解釈について
• 媒介分析のやり方について
– 間接効果の検定方法
– いくつかのソフトウェアの紹介
• 応用的な話
– 媒介変数が複数ある場合
– 調整媒介分析
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媒介分析について
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これを見とけば問題ない
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http://koumurayama.com/koujapanese/mediation.pdf
媒介効果の分析
• 近年の社会心理系論文で頻出している方法
– 特にAPA関連の雑誌
– なんかいろいろ方法があるっぽい・・
• いや,別に使う予定ないんですけど?
– 査読プロセスで求められることも・・・
– 論文を読むときに正しい理解をするために
• 結構間違えてる論文も多いため
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媒介効果の分析
• 媒介分析(Mediation analysis)とは
– 二つの変数の因果関係を、特定の変数が媒介す
るかをテストする方法
– Baron & Kenny (1986)
説明変数
X
目的変数
Y
媒介変数
M
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媒介効果を見る目的
• 因果関係の精緻な説明
– ある要因で従属変数に差があった
– なぜか?
– 実験の操作である心理変数に変化が起きて、そ
れによって従属変数にも変化が見られたから
• 疑似相関を除外する
– XとYの相関は直接の因果関係ではない
– X→M→Yではじめて成立する
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間接効果が媒介分析の肝
• 媒介分析の心臓部分
– XがMに影響して、MがYに影響するプロセス
– 二つのパスの積
• テストが少し面倒
• 間接効果=直接効果の減少分
– 媒介変数を入れる前のX→Yのパスと,媒介変数
を入れたあとのX→Yのパスの差が,間接効果
– 間接効果が有意であることが媒介の本質
X Y
M
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間接効果の解釈
• 解釈の例
– コーヒー摂取(X)が肥満(Y)と関連がある
– 砂糖摂取(M)はコーヒー摂取と関連がある
– コーヒー摂取から肥満は,砂糖摂取を経て関連
するが,砂糖を含まないコーヒーは肥満と無関係
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コーヒー 肥満
砂糖
完全媒介と部分媒介
• 完全媒介
– 間接効果が有意で,直接効果が非有意
• 部分媒介
– 間接効果が有意で,直接効果も(依然)有意
X Y
M
X Y
M
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変な媒介効果が出た場合
• 非有意な直接効果が,媒介後に有意になる
– 媒介ルートと直接ルートで反対の効果があった
のが,相殺されて非有意になっていた場合
• 正の直接効果が,媒介後に負で有意になる
– 上のパターンと同様の解釈が可能
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X Y
M
X Y
マイナス
プラス
媒介分析のやりかた
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媒介分析のステップ(BK法)
• 1.説明変数Xから目的変数Yに回帰
– パスが有意であることを確認
• 2.Xから媒介変数Mに回帰
– X→Mが有意であることを確認
• 3.Xと媒介変数Mを両方入れてYを回帰
– M→Yが有意であることを確かめる
– X→Yが非有意になることを確かめる
• ただし、X→Yが有意のままでも問題はない
• 4.間接効果の有意性検定
– X→M→Yの間接効果が有意であることを確かめる
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媒介分析のモデル
• 3つの回帰分析を行う
– X → Y
• Y = int + c’ X
– X → M
• M = int + a X
– X M → Y
• Y = int + b M + c X
• 間接効果の計算
– indirect effect = a × b
– c’ – c = a × b という関係が成り立つ
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X Y
Ma b
c’ → c
間接効果の検定方法
• 正規近似による検定方法 (Sobel, 1982)
– 通称,ソベル検定,Sobel test
• 間接効果の標本分布を直接計算する
– 正確だが,これをサポートしているソフトはない
• ブートストラップ法による検定
– 今のところ最もポピュラーな方法
• MCMCによるベイズ推定の信用区間を用いる方法
– 最も自然な方法で推定することができる
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ソベル検定
• 標準誤差を近似計算
– パスの積の標準誤差(SE)をデルタ法で推定
– 間接効果のSE = XM2 ∗ SMY2 + MY2 ∗ SXM2
• ただし,SMYはパスMYのSE,SXMはパスXMのSE
– Arorian test というのもある
• こっちのほうが2次の近似のため,より正確
• しかし問題もある
– パスの積は一般に正規分布しない
• 正規分布するには大標本(400以上?)が必要
• よって推定値/標準誤差による検定量は信頼できない
– 検出力が低い
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間接効果の分布
• 間接効果の分布は歪む
– 0から遠いほど裾が長くなる
0
50
100
150
200
250
300
0.07
0.09
0.11
0.12
0.14
0.16
0.18
0.19
0.21
0.23
0.25
0.26
0.28
0.30
0.32
0.34
0.35
0.37
0.39
0.41
度
数
間接効果
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ブートストラップ法による検定
• ブートストラップ(Bootstrap)
– ブーツのストラップを持ち上げて沼から脱出する!
• 自分で自分を持ち上げちゃう方法
• モンテカルロシミュレーション法の一つ
• 手元のデータから「復元抽出」でリサンプリング
– サンプルサイズは元のデータと同じに設定
– サンプリングを繰り返す(2000回以上推奨)
– それによって得られた推定値の標本の95%信頼区間
を用いてテストする
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ブートストラップ法
• 信頼区間に0が含まれていないかを確認
0
50
100
150
200
250
300
0.07 0.09 0.11 0.12 0.14 0.16 0.18 0.19 0.21 0.23 0.25 0.26 0.28 0.30 0.32 0.34 0.35 0.37 0.39 0.41
度
数
間接効果
99%下限 95%下限 90%下限 推定値 90%上限 95%上限 99%上限
0.092 0.116 0.128 0.209 0.307 0.328 0.369
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バイアス修正のいろいろ
• パーセンタイル法
– ブートストラップ標本の2.5%と97.5%を使う方法
– 誰でも思いつく方法
• バイアス修正法 BC法
– ブートストラップ標本の平均を,間接効果の推定値に補正
する
– 1次の正確度を持つ
• バイアス修正+歪度の修正 BCa法
– 歪度修正も行う
– 2次の正確度を持つ
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ノンパラとパラメトリック
• ノンパラメトリック法
– 手元のデータからリサンプリングを行う
• データの正規性を仮定しなくていい
• パラメトリック法(2つの意味がある)
– データの正規性を仮定して正規乱数を使う
• データの正規性は仮定できないのでオススメしない
– パラメータの正規性を仮定して正規乱数を使う
• 間接効果=パスXMとパスMYの積
• XMとMYは漸近的に正規分布に従うので,平均を係数,SD
を標準誤差とした正規乱数を発生させ,その積を間接効果
のブートストラップ標本として用いる
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MCMCによるベイズ推定
• 最尤法の限界
– パラメータの分布を正規分布であるとみなす
– ベイズ推定にはそのような制限はない
• MCMCを使って信用区間を求める
– バイアス修正などはいらない
– パーセンタイル点を求めるだけなので,Rなどで
簡単に任意の信用区間を知ることができる
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媒介分析とソフトウェア
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回帰分析ができればOK
• 基本は回帰分析
– 3回,回帰分析をすればいい
– 問題は間接効果の検定
• ソベル検定は手計算で可能
– SPSSの結果をExcelにでも入れて計算すればOK
– Webページで計算もできる
• http://people.ku.edu/~preacher/sobel/sobel.htm
• Bootstrap法をどうしよう
– 2000回,SPSSでボタンをクリックすればいい(冗談)
– いくつか便利なソフトウェアがあるので紹介
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とりま,SPSSかな
• Preacher&Hayesのマクロ
– http://www.processmacro.org/index.html
– このページのprocess213.zipをダウンロード
• SPSSを開いて,process.spdをインストール
– ユーティリティ→カスタムダイアログ→カスタムダイア
ログをインストール
– indirect.spdを選択
– すると,「分析」→「回帰」のところにPROCESSという項
が追加される
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PROCESSのページ
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ダウンロード
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インストール
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マクロを起動する
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分析する
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2000ぐらい
が無難
媒介変数は複数
指定可能
ソベル検定出力
結果
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ソベル検定結果
間接効果結果
(赤部分が95%信頼区間)
標準化間接効果
総合効果に対する
間接効果の割合
PRCESSはいろんな分析が可能
• 69パターンの媒介モデルを検討可能
– zipファイルにあるtemplates.pdfに全パターンの説
明がある。
– 普通の媒介分析はモデル4
– 調整媒介分析はモデル15
– 媒介調整分析はモデル8
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でもやっぱ,Rっしょ!
• Rでできないことなどない
– 繰り返し計算が可能なので,パーセンタイル法な
らfor文を書けば簡単にできる
– バイアス修正法もそれほど難しくないので自分で
書けば・・・(以下略
• パッケージが知りたい,そんなあなたに
– MBESSパッケージが便利
– 具体的なやり方は・・・
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 34
MplusとRによる構造方程式モデリング入門
11章を参照!
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 35
構造方程式モデルを使う方法
• パス図を書いて,ブートストラップ法を使う
– AmosやMplusといったSEM用のソフトウェアなら,簡単に
実行できる
– Mplusならソベルテストも簡単にやってくれる
– やり方がどうしてもわからない場合は・・・
説明変数
X
目的変数
Y
媒介変数
M
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 36
MplusとRによる構造方程式モデリング入門
11章を参照!
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 37
え?もっと簡単なのがいい?
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 38
HADというソフトでの実行方法などが出てきます
HAD
• 清水が作った統計ソフト
– いろんなことができます
– 興味がある人は「清水 HAD」でググってください
• 媒介分析もそれなりに対応
– ソベルテスト,ブートストラップ法に対応
– 一般化線形モデル,HLMにも対応
– 調整媒介分析も対応 ← New!
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 39
HADで媒介分析
• 詳細はnorimune.net/667を参照のこと
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 40
媒介変数
独立変数
従属変数
こんな出力が出る
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 41
MCMCによるベイズ推定
• MplusやAmosが対応
– SEMをベイズ推定できるので,簡単
– 推定法を変えるだけ
• rstanを使うという手もある
– 時間があれば,rstanで媒介分析ができるパッ
ケージでも作ってみます
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 42
応用的な話
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 43
媒介変数が複数のモデル
• 間接効果が2つ
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 44
X Y
M1
M2
媒介変数が複数のモデル
• SEMを使えば良い
– MplusやAmos,lavaanを使えば簡単
– 独立変数からすべての媒介変数にパスを引き,媒介
変数から従属変数にパスを引く
– 間接効果は,すべての媒介変数の間接効果の総合
効果を推定する
• これはAmosでは計算してくれない
• 上述のSPSSマクロでも良い
– さぁみんな,Preacherに感謝しよう!
– PROCESSのモデル4に該当する
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 45
調整媒介分析
• 媒介分析が,他の変数に調整されるモデル
– 基本的には間接効果が調整されるモデルを指す
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 46
X Y
M
Z
Preacher et al. (2007) Addressing Moderated Mediation Hypotheses: Theory,
Methods, and Prescriptions. Multivariable behavioral research, 42, 185-227.
に詳しい
調整変数
3つの回帰モデルに調整効果が入る
• 媒介なしモデル
– 独立と調整,その交互作用が従属変数を予測
– Y = int + c’1 X + c’2 Z + c’3 XZ
• 媒介変数に対するモデル
– 独立と調整,その交互作用が媒介変数を予測
– M = int + a1 X + a2 Z + a3 XZ
• 従属変数に対するモデル
– 独立と調整,媒介とその交互作用が従属変数を予測
– Y = int + c1 X + c2 Z + c3 XZ + b1 M + b2 MZ
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パス図で書くと・・・
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Z
X Z
X Y
M
M Z
調整変数の主効果も必ず入れる
対応ソフトウェア
• PROCESS
– SPSSのマクロ
– PROCESSのモデル15に該当する
• HAD
– スライス変数に調整変数を指定する
• もちろん,SEMソフトウェアでも可能
– ただ,単純間接効果の計算がやや面倒
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 49
PROCESSで分析
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 50
モデル15を
選択
調整変数を
指定
変数を中心
化する場合
はここから
出力
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 51
HADでも
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 52
交互作用項が自動的に作成される。その際の中心化もデフォルトで
自動的に実行される
出力はこんな感じ
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 53
調整変数+1SD
調整変数-1SD
条件
発話量
満足度
.83** .43**
.63** → .33*
条件
発話量
満足度
.73** .02
.34* → .25
出力はこんな感じ
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 54
間接効果の交互作用効果
99%下限 95%下限 90%下限 推定値 90%上限 95%上限 99%上限
0.017 0.040 0.048 0.107 0.170 0.187 0.225
ブートストラップ信頼区間
99%下限 95%下限 90%下限 推定値 90%上限 95%上限 99%上限
0.165 0.199 0.226 0.360 0.535 0.571 0.632
ブートストラップ信頼区間
99%下限 95%下限 90%下限 推定値 90%上限 95%上限 99%上限
-0.162 -0.114 -0.092 0.011 0.111 0.137 0.181
調整変数 +1SD
調整変数 -1SD
媒介調整分析
• 調整効果が,別の変数で媒介される
– 交互作用項が媒介されるかどうか
– PROCESSではモデル8にあたる
• 実は調整媒介分析の下位モデル
– 調整変数と媒介変数の交互作用項を入れないと,
媒介調整分析になる
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 55
パスモデル
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 56
Z
X Z
X Y
M
マルチレベル分析の媒介分析
• 階層線形モデルを用いた媒介分析
– しかし,概念的にいくつか難しいところがある
– レベル1とレベル2の変数には相関が生じないので,
レベルをまたがった誤った解釈をしてしまう可能性
• マルチレベルSEMを使うと楽
– Sパス図を描きつつ,マルチレベル分析を適用する
– Mplusなどは,間接効果を簡単に検討できる
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 57
これを見とけば問題ない
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 58
http://koumurayama.com/koujapanese/mediation.pdf
ありがとうございました
• 清水裕士
– 関西学院大学社会学部
– 関西学院大学社会心理学研究センター
• Web
– Webサイト:http://norimune.net
– Twitter: @simizu706
2015/10/31 第56回社会心理学会イブニングセッション 59

媒介分析について