https://www.watney.co.jp/course?wix-vod-video-id=25754fcef02041dc86db3a09cc32431d&wix-vod-comp-id=comp-jfnqv23o# イノベーションマネジメント/基礎科目 大阪大学 経済学研究科・経済学部　中川 功一准教授

1. イノベーション マネジメント
第3回
デザイン思考に基づく新製品・サービス開発
「かたち」への実装
中川功一
大阪大学大学院経済学研究科
Koichi NAKAGAWA
Graduate School of Economics, Osaka University

3. 製品・サービスデザインの基本フロー：
3つのステップ（再掲）
社会ニーズ
（社会的課題）
の理解
解決案の探索 「かたち」への実装
※課題理解、解の探索、かたちへの実装というフローは常に意識する
前回 今回

4. 製品・サービス案が最終的に
備えていなければいけないもの
①コアバリュー
②設計要件
③詳細図面
コアバリュー 設計要件 詳細図面
3つは「同一のもの」を別の表現で書いたものに過ぎない
エンジニア・製造部門が
理解できる言語
2者のあいだをつなぐ言語消費者・マーケターが
理解できる言語

5. 例 マツダ・ユーノスロードスター
“世界で最も売れたスポーツカー”
人馬一体感
Fun to drive
コアバリュー
2ドア・2シーター
オープンカー
マニュアルミッション
軽い車体
能面のようなニュートラルフェイス
巨大パワーは不要
路面の感触を伝える足回り
…
設計要件 詳細図面

6. 「かたち」への実装
コアバリューと設計要件に
落とし込む
※詳細図面作成はその領域のプロの仕事。

7. 全体概念図
社会ニーズ「解決する課題」
あるいは「実現する未来」
ニーズ１
ニーズ2
ニーズ3
ニーズ4
設計１
設計2
設計3
新製品・新事業・新サービスが
実装しているべき「設計」
１．集めてきた社会ニーズの束を整理する
２．そのニーズを、製品・サービス・事業が果たすべき「機能」に翻訳する
３．それらの機能要件を備えた製品・サービスの端的なコンセプト「コアバリュー」を決定する
コ
ア
バ
リ
ュ
ー
「
端
的
な
製
品
コ
ン
セ
プ
ト
」
※ただし、この3つは調査分析の中で行ったり来たり、同時並行で進められる

8. 設計要件の整理（QFD：Quaity Function Deployment）
ニーズから機能への翻訳作業
社会ニーズ「解決する課題」
あるいは「実現する未来」
ニーズ１
ニーズ2
ニーズ3
ニーズ4
機能１
機能2
機能3
新製品・新事業・新サービスが実
装しているべき「機能」
１．まず社会ニーズの束を整理する
２．そのニーズを、製品・サービス・事業が果たすべき「機能」に翻訳する

9. 「かたち」の翻訳案候補は、いくつかあったほうがよい
機能 候補
重い物を
もちやすくする
中身を
整理する
見た目を
かっこよくする
・・・・・
中身を濡れ・汚れ
から守る
・・・・・
中身を衝撃から
守る
・・・・・
• たくさんの「かたち」の候補案を自由に組み合わせることで幅のある設計案が準備できる
• ここでは、一見「奇想天外」に見える案をここでは意識的に混ぜておく
• これらの案からベターを選ぶ＆いいとこ取りをしていくことで、案を「鍛えていく」
かばんの例

10. もっと精緻に
行うQFDの例
importance

11. 精緻なQFD 実行方法
Whats
（
ニ
ー
ズ
の
束
）
電子機器が持ち運べる
1週間分の食料が入る
必要物がすぐ取り出せる
背負い歩いて疲れない
破けない
①まずニーズの束を整理する
重要度のスコア付けをする
Hows （設計要件の束）
耐
荷
重
●
kg
防
水
性
内
容
量
●
ℓ
ポ
ケ
ッ
ト
数
サ
イ
ド
ポ
ケ
ッ
ト
持
ち
手
の
デ
ザ
イ
ン
コアバリュー
アウトドア最強の
タフ・リュック
○ ○ ○ ○
○ △ ○
○ ○ △
○ ○
○ △
②製品について操作可能な機能群を整理し、
どの機能でどのニーズが満たせるかをまとめる
→作るべき製品は、容量・耐荷重に優れ、ポケット数の多いリュックだ！

12. コアバリュー表現 “エレベーターピッチ”
シニア最良のパートナー
スマートシルバーカー
+ +
文字表現
機能表現 ビジュアル表現
様々な表現形式を通じて、製品の果たすべき機能・魅力を端的に伝える

13. • 30秒で魅力をわかりやすく伝える。
• もし皆さんが説明に悪戦苦闘するようであれば、皆さんはまだその製品・
サービスが提供するコアバリューを自分たち自身がつかめていない
そのような製品・サービス案では社内外の協力は得られない
• ビジュアルに訴える。
• 手書きの絵でも十分。必ず、視覚的に伝わる資料にする
• 人間の視覚的情報処理能力は圧倒的である。自分が絵にできない製品は
絶対に実現できない。逆に、自分が絵で描けたものは必ず実現できる絵
に描ける＝大部から細部まできちんとイメージできている
コアバリュー表現の鉄則
トライ・アンド・エラーを繰り返し、適切な表現が得られるまで粘る

14. 演習 エレベーターピッチ
この商品の魅力を、
30秒でプレゼンしてください。
「何でもできるIoTメガネ」
と考えてください。
（実際のグーグルグラスの機能
とかけ離れていてもよい）
「メガネ型のIoT」だとして、
どういう点に魅力を見いだせば
よいのだろうか！

15. プロトタイピング
精神と方法

16. 新製品も、仮説も、なぜ失敗するのか
それは、
「あらかじめ失敗しておかなかったから」
というのがプロトタイピングの精神。

17. アイデアを育てるには「仮説検証」
新製品・サービス
案の創出
プロトタイピング
＆テスト
アンケートによる
市場調査
案の修正
ある程度、筋のよさそうな案が作れてきたら、
時間とコストをかけずにその案の骨子部分を
検証する。検証には、ミニマムなものを作り
機能するかを確認するプロトタイピングと、
アンケートによる市場調査とを使い分ける。
その結果を反映させ、案を“育てていく”。

18. 事前に失敗しておけば…
• 少なくともその失敗については、「本番」には犯さない。
• そのアイデアが機能しないことを証明できる。
• しかも、その失敗は金銭的にもキャリア的にもローリスク・
ローコストだ。
これに加えて、
・自分自身の考えを一度まとめることができる。
・それを、仲間や関係者と共有することができる。
さっさと失敗（プロトタイピング＝仮説検証）しようぜ！

19. アイディア・コンセプトの「鍵となる」部分を抜き出して試す
それさえできれば、あとは簡略なものを用意すればよい。
具体的には・・・・
・「簡単な」試作品 ：身近にあるもので「さっと」つくる。
ソフトウェアの場合は基本要件だけ満たしたプログラムを用意する。
・寸劇（ロールプレイ） ：手順や段取り、行為者の感情などを確認する。
・紙芝居／絵 ：ヴィジュアルなイメージを共有する場合
その他 「短時間」でつくれるものであれば何でもよい。
絶対に金と手間をここにかけない。
方法

20. 社会システムのプロトタイプ

21. プロトタイプの例

22. まとめに代えて
何を恐れている？
さっさと、形にしてみようぜ。