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17.晋霊公、殺される
- 1. 春秋篇 第 17 集
趙盾弑君(晋霊公、殺される)
不徳の晋・霊公(文公の孫)、趙盾の甥・趙穿に殺される
- 2. 第 17 集 趙盾弑君(晋霊公、殺される) -春秋篇-
―はじめにー
本第 17 集と次の第 18 集は、晋国で起きた趙氏興亡の物語である。ここで言う晋の趙氏とは、
晋文公(重耳)に付き従って来た趙衰の子・趙盾とその子や孫のことである。
後に(BC403 年)、晋は韓・魏・趙の三国に分割され、時代は春秋から戦国に突入するが、その
三国の一つである趙国の君主が、他ならぬこの趙衰、趙盾の子孫なのだ。
だから、これら 17 集と 18 集の物語は、晋国の話であると同時に、まだ建国されていない趙国
の始祖たちの話でもある。
―あらすじ―
晋の文公が亡くなると、子の襄公が後を継ぐが、襄公は在位七年で亡くなる。そして襄公が亡
くなった時、その太子である夷皋(いこう/後の霊公)は僅か七歳であった。このため晋の政治は
完全に趙衰の子・趙盾(ちょうとん)が掌握することになる。
やがて霊公は成長する。が、相変わらず国政は趙盾に任せ、自分は酒色に溺れていた。その上、
乱暴なことも好きで、力士を戦わせたり、パチンコで鳥を打つ遊びに興じた。
と がん か
ところで、この霊公にはお気に入りの家臣・屠岸賈がいた。彼は乱暴で残虐な霊公の意にそう
よう、更に悪い遊び(パチンコ玉で人間を打つ)を思いつき、霊公を大いに喜ばせる。
城下を通る
通行人に向
けてパチン
コ玉を弾き、
大喜びする
霊公(右)
左の屠岸賈
は、霊公に渡
すパチンコ
玉をまさぐ
っている
- 4. そこを屠岸賈が割って入り、
「明日からちゃんと朝廷を開きますので、今日のところはご容赦を…」
と言って、上手くごまかす。
その翌朝、さすがに朝廷を開かざるを得ない霊公。前日までの楽しい日々を思い出し、思わず
ため息を漏らす。そして「昔から君主が家臣を抑圧することはあっても、家臣が君主を抑圧する
ことはなかった。ああ、趙盾がいるかぎり、もう楽しい日々は戻ってこない…」と言うや、頭が
クラクラしてきたのか、そのまま地面に倒れ込んでしまう。
すると屠岸賈、霊公に「趙盾を亡き者にしましょう。難しいことではありません」と言って何
やら耳元でヒソヒソと囁く。
翌朝、屠岸賈に派遣された刺客が趙盾の屋敷に忍び込む。すると早朝にも拘わらず趙盾は既に
朝服に着替えおり、その着替えを手伝う息子・趙朔(ちょうさく)と共に「いかに霊公を矯正し、
晋国の繁栄を維持させるか」という話がなされていた。
それを見聞きした刺客は、趙盾の忠誠心に感動。
「とても殺すことができない」と感じて趙盾の
前に姿を現し、
忍者のような
刺客(左)の出
現に驚く趙盾
(右)
「今後、身辺に気をつけて下さい」と言い残して去る。
刺客で趙盾を殺すことに失敗した霊公、慌てふためくが、屠岸賈はちゃんと次の手を考えてい
た。それは、趙盾一人を宮中に招いて酒宴を開き、酔っ払ったところを殺してしまうというもの。
- 7. それを知った趙盾、驚いてその間違いを訂正するように言うが、董狐は頑として譲らない。
董狐曰く:
「確かに事件当時、趙盾殿は別に場所におられた。だが、国外に亡命した訳ではない。
だから、霊公様との君臣関係は消えてはおらず、晋の宰相であることに変りはない。しかも犯人
の趙穿とは甥・叔父の関係。だから主君を殺した責任はやはり貴方にある」
こうして主君殺害の汚名は、趙盾に負わされることになる。趙盾はこの事を気に病み、それが
もとで亡くなる。
やがて晋の成公も亡くなり、子の景公が立った。すると屠岸賈は、喪服を着て景公の前に出た。
景公は「縁起でもない!なぜ喪服など着るのだ?!」と怒ると、屠岸賈は「亡き霊公様の恩義を
思って喪服を着ているのです」と答える。そして「近頃、梁山が崩れ、その土砂が川をせき止め
る出来事がありましたが、景公様はそのことの吉凶を占われましたか?」と尋ねる。
そして占い師が「梁山が崩れた理由は、君主の刑罰が明白でないため」と言ったことを聞いた
屠岸賈、(実は、その前に占い師を買収してそう言わせていた)、景公に向って次の様に言う:
「先君・霊公様は地面に投げつけられて殺されました。これは趙盾の責任で、史書にもそう記さ
れております。趙盾のこの大罪に対し、景公様は何か処罰をなされましたか?」
「う~ん。しかし、
趙家は代々の功臣だから…」と言葉を濁す景公。
その景公に対し屠岸賈は「功臣が謀反を起こした場合、その罪はもっと重くなります!」と言
ってのける。そして「確かに趙盾も趙穿も死にました。しかし趙朔が残っております。今や逆臣
の子孫が朝廷で幅をきかせ、皆はその勢力を恐れて何も言えない有様。景公様も君主の身であり
ながら、趙家を憚って物が言えないのではありますまいか? 梁山が崩れたのも、天が霊公様の無
念を晴らし、趙氏の罪を裁くようあなた様にお示しになったに違いありません!」
その言葉に納得した景公、ついに屠岸賈を司寇(警視庁長官)に命じ、趙朔らを処罰する権限
を与える。そこで屠岸賈、早速兵を率いて趙朔の屋敷に向う。
かんけつ
この噂を聞きつけた韓厥(趙朔と同様、晋の大夫。以前、趙盾の世話になる)は、ひと足先に
趙朔の屋敷に駆けつけ、彼に逃げるよう勧める。が、趙朔は、
「屠岸賈が景公様の命を受けて来る
のなら逃げようがない」と観念する。実はこの趙朔、景公の父・成公の姉を妻に迎えており、当
時その妻は既に妊娠していた。そこで趙朔はその胎児に命運をかけ「もし、生まれてくる子が女
なら、趙家の血筋は絶えてしまいますが、男ならどうかその子を守り立て、趙家を継承するのを
助けてください」と韓厥に頼む。
- 8. 韓厥がそれを承諾すると趙朔は妻を実家である宮廷に逃がし、
妻(荘姫)を宮廷
に逃がすため、馬
車に乗せる趙朔
(右)
それを助ける韓厥
(右から二人目)
荘姫の左・程嬰は、
趙朔の友人
自分は屠岸賈に迫られ自害する。こうして屠岸賈は趙朔をはじめその伯父である趙同、趙括らと
その家族、召使ら総勢 318 人を殺すが、その中には趙朔の妻・荘姫が見当たらない。
屠岸賈は「もし荘姫の子が男なら、生かしてはおけない。禍根を断たねばワシの身に禍が降りか
かってくるからな」と呟く。
司寇(警視庁長官)になり、権
力を掌握した屠岸賈 →
(→「第 18 集 趙氏孤児」につづく)