NEJMのclinical problem solvingを用いた院内抄読会資料です。問題ありましたらご連絡いただけると幸いです。

1. Variations on a Theme
第7回

2. これまで
• 慢性下痢、腹痛:ガストリノーマ
• 難治性気管支喘息:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
• 高Ca血症、貧血、腎障害、骨病変:サルコイドーシス
• 疲労感、遂行障害：PRES
• 不明熱：血管内リンパ腫
• 頭痛、発熱後の発疹：発疹チフス

3. 57歳男性
2週間前からの進行性の呼吸困難、両下腿浮腫、乾性咳嗽、たま
に血痰を主訴に来院
4日前からの鮮血便と間欠的な悪心嘔吐もあり
上気道感染なし、発熱なし、体重減少なし、腹痛なし、血尿なし、
胸痛なし、吐血なし

4. 57歳男性
既往歴：高血圧、2型糖尿病（20年前に診断）、脂質異常症、
GERD、バレット食道（2年前のEGDで癌なし）
内服など：メトプロロール、ロサルタン、アスピリン、オメプラ
ゾール、シンバスタチン、インスリン（2年前から。それまでSU
薬）
生活歴：ヘビースモーカー、マリファナ、過剰飲酒歴あるが、最
近の飲酒、違法薬物静注歴なし
来院2週間前まで染料溶媒の仕事をしていたが、炭化水素の曝露
はない

5. 57歳男性
BT37.9, PR84, BP158/84, RR24, SpO2 91%(RA)
眼球結膜蒼白、中咽頭に血液付着あり
両肺底部にcrackles
2LSBにLevine1/6の早期収縮期雑音聴取
頸静脈圧は正常 腹部圧痛なく、臓器の腫大や腹水なし
直腸診で外部の出血あり、グアヤック法の便潜血陰性
仙骨部に3＋の圧痕性浮腫
四肢は温かく乾燥しており、結節なし、発赤なし、点状出血なし
関節腫脹や疼痛なし、リンパ節腫脹なし
神経学的異常なし

6. 57歳男性
WBC15000
(84% neutro, 8% lympho)
Ht17%, MCV79.4, plt515000, Na139, K4.2, Cl108, HCO3 23,
BUN73, Cr 4.9(6ヶ月前は0.8), Alb 2.2, PT-INR 1.2,
尿定性 蛋白3＋,潜血3+,尿沈渣 赤血球多数,変形赤血球あり,
顆粒円柱11−20,卵円形脂肪体+
6か月前の尿検査では微量アルブミン尿、尿蛋白1+だった

7. 57歳男性
胸部Xpで両側の陰影を認めた
診断は？

8. 57歳男性
市中肺炎としてセフトリアアキソン、アジスロマイシン開始
RBC輸血によりHt 17→28％に増量
BUN94、Cre5.7に上昇
腹部超音波では両腎臓は軽度拡大、エコー輝度は正常、水腎なし、
結石なし
心臓超音波では軽度の大動脈硬化とMRを認めた

9. 57歳男性
CTはびまん性のすりガラス陰影、
縦隔リンパ節腫脹、
末梢と下葉・上葉はスペアされた
不規則な結節影を全葉に認めた
血培、尿培は陰性
尿蛋白クレアチニン比は9.1だった
追加検査は？

10. 57歳男性
SpO2 93%(NC4L) 血痰と悪心嘔吐が持続していた
C3、C4は正常
p-ANCA, c-ANCA陰性
クリオグロブリン陰性、肝炎スクリーニング陰性、抗核抗体陰性、
ds-DNA抗体陰性
追加検査は？

11. 57歳男性
抗糸球体基底膜抗体（抗GBM抗体）陽性→Goodpasture’s症候群
気管支肺胞洗浄では持続的に血液が引けて、びまん性肺胞出血に
合致
生検→ヘモジデリン沈着組織球
血漿交換と高容量ステロイド静注が行われた

12. 57歳男性
腎生検では約90％の糸球体に半月体形成を認め、急性進行性糸
球体腎炎に一致した
糖尿病性腎炎に特徴的なKimmelstiel-Wilson病変も認めた
免疫蛍光染色で糸球体血管壁にIgGの沈着があり、抗糸球体基底
膜抗体病変に合致
繰り返し測定された抗GBM抗体は陽性

13. 57歳男性
シクロホスファミド内服、ステロイド静注、血漿交換が継続され
た
しかし悪心嘔吐は持続
血液透析が開始され、乏尿も見られた
10日間の血漿交換を経て、抗GBM抗体は7まで低下したが血痰も
持続した
血漿交換は週4回継続された

14. 57歳男性
４週間後血痰は改善し、血漿交換は中止された
SpO2 95%(RA)に改善（治療前SpO2 93%(NC4L) ）
他の貧血原因精査としてCS→内痔核、過形成ポリープ、EGD→
バレット食道を認めた
療養型病棟へ転院
退院７か月後、週3回血液透析、シクロホスファミド・ステロイ
ド内服を継続している

15. 肺胞出血＋糸球体腎炎＝肺腎症候群
→Goodpasture’s症候群、SLE、Wegener肉芽種、顕微鏡的多発
血管炎

16. Goodpasture’s症候群
抗糸球体基底膜抗体（抗GBM抗体）が産生される自己免疫疾患。
Ⅱ型アレルギー。
肺出血、糸球体腎炎を主徴とする
0.5万人/100万人でまれ
予後不良な疾患だが、早期診断、治療で予後が良い