診療ガイドライン
誤解しやすい点の確認スライド
不明な方は、当日に質問して下さい!
診療ガイドラインで訴えられる?
診療ガイドラインで訴えられる?
診療ガイドラインは、必ず守るべき法律では
ありません。
しかし…、
診療ガイドラインは、きっと裁判でも使われ
るでしょう。そのため、診療ガイドラインと
違う治療を行う場合には、患者への説明と同
意を文書で残す必要があります。
診療ガイドラインでは、医療者の経
験を否定する?
診療ガイドラインでは、医療者の経
験を否定する?
診療ガイドラインは、医療者の経験を否定す
るものではありません。
経験は、2つの場面があります。まず、一般
的な本邦の医療者の経験をエビデンス(でき
れば調査研究)として推奨文に反映させる。
その診療ガイドラインなどのエビデンスを実
際の自分の目の前の患者に適応する時に、自
分の経験を考慮すると言うことです。
診療ガイドラインでは、標準治療?
診療ガイドラインでは、標準治療?
診療ガイドラインは、標準治療ではありませ
ん。
しかし、 診療ガイドラインの治療は、場合
によって標準治療ととらえられることは多い
です。
患者ケアを最適化するための推奨を含む文書
であり、場合によっては、標準治療として普
及していない治療法が提示されることもあり
ます。
「エビデンスの確実性(certainty of the
evidence)」の用語を初めて聞いたけど?
「エビデンスの確実性(certainty of the
evidence)」の用語を初めて聞いたけど?
1)「Minds2007」で使用されていた 「エビデンスレベル」
・本来、オックスフォードCenter for EBMの概念では、個々の
研究デザインのみで決定するものでなかったが、世界の多くの
診療ガイドラインで、間違って個々の論文ごとに研究デザイン
のみでエビデンスレベルを決定することが普及した。そのため、
誤解が多くなるので、GRADEアプローチでは、使用しない。
2)「Minds2014」で使用されていた「エビデンスの強さ」・
従来のGRADEアプローチで使用されていた「エビデンスの質」
・「推奨の強さ」・「研究の質」と混同しやすいので、GRADE
アプローチでは、使用しない。
ただし、概念は同じなので間違いでは、ありません。
GRADEアプローチでは、エビデンスの確
実性が低くても、強い推奨がある?
GRADEアプローチでは、エビデンスの確
実性が低くても、強い推奨がある?
GRADEアプローチでは、エビデンスの確実
性が低くても、強い推奨があります。
しかし、これは、限定的な場合であり、おお
よそのパターンが決まっています。
そのため、「患者の好みや価値観から強い推
奨」・「臨床経験から強い推奨」という解説
は、ほとんどないため注意しましょう。
GRADEアプローチでは、「エビデンスの
確実性」と「推奨」が独立している?
GRADEアプローチでは、「エビデンスの
確実性」と「推奨」が独立している?
GRADEアプローチでは、「エビデンスの確
実性」と「推奨」が独立しています。
すなわち、研究デザインでシステマティック
レビュー・RCTだから、エビデンスレベルが
高い。エビデンスレベルが高いから、推奨グ
レードも強くなるということはありません。
しかし、「エビデンスの確実性」が高いエビ
デンスは、もちろん、「推奨度」も強くなる
可能性は大きいです。
システマテックレビューの質とは?
システマテックレビューの質とは?
システマテックレビューが、丁寧に作られてい
るかどうかという、SRそのものの「質」があり
ます。そして、「質の低いSR」にあるエビデン
スは、使うことはできません。
さて、「質の高いSR」にあるエビデンスに、そ
の確実性が高いエビデンス(以前はエビデンス
の質が高いと表現)と、確実性が低いエビデン
スがあることを忘れてはなりません。
よって、SRがエビデンスレベルが高いという文
章を見ると誤りと考えて良いでしょう。
「推奨する治療」は、行うべき?
「推奨する治療」は、行うべき?
強い推奨の場合は、ほぼ全員が推奨される介入
を受けるべきである。
弱い推奨の場合は、その状況下にある人の多く
が提案される行動を希望するが、希望しない人
も多いだろう。
すなわち、「行うべき」かどうかを定義してい
るのではなく、「介入の望ましい効果が、その
望ましくない効果を上回ることに対する確信性
の程度」を示している。
GRADEアプローチなら、観察研究でも使
える?
GRADEアプローチなら、観察研究でも使
える?
GRADEアプローチでは、観察研究(できる限
り、比較対照を持った前向き研究が望ましく、
症例報告などでは困難)のエビデンスも採用し
ます。
しかし、それらの観察研究もメタアナリシスを
行って、定量的統合を行うべきでしょう。極め
て困難だが、質的研究のメタアナリシスもあり
ます。ただ、研究が1つならば、その研究のみ
がエビデンスとなります。
GRADEアプローチは、アウトカムベース
なの?
GRADEアプローチは、アウトカムベース
なの?
GRADEアプローチでは、アウトカムを重要視
しております。
そのポイントは、患者にとって重大なアウトカ
ムすべてを考慮したという証拠を残すことです。
都合の良いアウトカムのみを選んで解説しては
いけません。同じ疾患なのに、CQごとに使用
するアウトカムが異なることはほとんどありま
せん。また、探した研究では、評価されてなく
ても、重大なアウトカムなら記載します。
メタアナリシスの結果は大切?
メタアナリシスの結果は大切?
都合の良い研究を選ばないと言うことよりも、
メタアナリシスの結果は極めて重要であります。
しかし、メタアナリシスの結果の数字だけが一
人歩きしないように、確実性の程度を評価する
必要があります。
さらに、その結果も、都合の良いアウトカムの
結果のみを選ぶことがないようにすることも大
切です。
EBMの3原則
:第3版:Users‘’ Guides to the Medical Literature: A Manual for
Evidence-Based Clinical Practice, 3rd Edition (2015)
1. 最適な臨床決断には入手可能な最適なエビデンス、理想
的にはシステマティック・レビューのエビデンスを必要
する。
2. EBMは、エビデンスが信頼できるものかどうか、すな
わち、診断検査、患者の予後、治療選択肢についてどれ
ほど確信をおけるものかを提供する。
3. エビデンスだけでは臨床決断をするのに決して十分では
ない。
EBMの3原則を簡単に表現すると
:第3版:Users‘’ Guides to the Medical Literature: A Manual for
Evidence-Based Clinical Practice, 3rd Edition (2015)
EBMの3原則を簡単に表現すると
:第3版:Users‘’ Guides to the Medical Literature: A Manual for
Evidence-Based Clinical Practice, 3rd Edition (2015)
1. 都合のよい論文と都合のよいアウトカムを使わないこと。
2. エビデンスの質を研究デザインのみで決定せずに、その
研究が適切に行われたか、研究間に違いがなかったかな
どを考慮すること。
3. 利益のエビデンスのみで推奨を決めずに、利益と害のバ
ランス、患者の負担についても考慮すること。

診療ガイドラインで間違いやすい点