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平成26年度若手医師ステップアップ研修会 
2014.10.24 島根大学 
主治医になるための10の掟 
天理よろづ相談所病院 
東光久 
tazuma1251@gmail.com
みなさんはどう思いますか? 
「豊富な症例数」は研修する上で大切 
医師は患者・家族に客観的で中立的な立場 
で接するべきである 
EBMはNBM(Narrative-based Medicine)とは異 
なる 
患者と向き合う事が大切だ 
患者を理解する事は基本的に可能 
患者に何が出来るかが大切だ
主治医とは 
• 病気とではなく、患者と向き合い、そして寄り添 
おうとする、 
• 患者の人生に思いを馳せようとする、 
• 患者の人生のナビゲーターであろうとする、 
• 家族とも向き合い、寄り添おうとする、 
• ひたむきで誠実な態度を持つ、医師 
3
診断力vs. 主治医力 
診断力 
• ドクターG 
• 華やか 
• 学生・研修医にも分か 
りやすい 
主治医力 
• ナビゲーター 
• サポーター 
• メンター 
• 看取り・死に水をとる 
• 答えはいくつもある、○×では答えられない 
• 地道な営み 
4 
診断フォロー開始死亡
主治医になるための10の掟 
1. 言葉を大切にする 
2. 2.5人称の立場を理解し実践する 
3. 真のEBMを実践する 
4. Face to FaceよりSide by Side 
5. 患者のすべてを知る努力をする、そして常に患者の味方になる 
6. DoingよりBeing 
7. 高齢患者に感謝を、若年患者に慈愛を、同年代の患者にエールを! 
8. 最後は自分の良心に従う 
9. Be Assertive! 
10. 一生感動、一生感謝、一生勉強
1.言葉を大切にする 
• 想いは言動に現れる 
• 分かりやすい言葉遣い 
• 悪い知らせの伝え方 
• 不適切な言葉遣い 
• 間違った言葉遣い
1.言葉を大切にする 
• 想いは言動に現れる 
• 分かりやすい言葉遣い 
• 悪い知らせの伝え方
How to Deliver the bad news 悪い知らせの伝え方(1/2) 
8 
望む望まない 
% % 
あなたの質問にも答える99.2 0.0 
わかりやすく伝える98.0 0.0 
正直に話す96.6 0.8 
要点を明らかに伝える95.7 1.9 
納得できるまで説明する93.6 1.1 
実際の写真やデータを用いて伝える92.0 2.8 
理解度を確認しながら伝える91.9 3.2 
具体的に話す91.1 4.2 
詳しく伝える88.1 4.9 
説明に用いた紙を渡す84.7 4.8 
丁寧に伝える83.0 3.4 
用紙に書きながら説明する79.4 7.2 
Fujimori et al. (2007) Psychooncology 16: 573-581.
How to Deliver the bad news 悪い知らせの伝え方(1/2) 
9 
望む望まない 
% % 
あなたの質問にも答える99.2 0.0 
わかりやすく伝える98.0 0.0 
正直に話す96.6 0.8 
要点を明らかに伝える95.7 1.9 
納得できるまで説明する93.6 1.1 
実際の写真やデータを用いて伝える92.0 2.8 
理解度を確認しながら伝える91.9 3.2 
具体的に話す91.1 4.2 
詳しく伝える88.1 4.9 
説明に用いた紙を渡す84.7 4.8 
丁寧に伝える83.0 3.4 
用紙に書きながら説明する79.4 7.2 
Fujimori et al. (2007) Psychooncology 16: 573-581.
How to Deliver the bad news 悪い知らせの伝え方(2/2) 
10 
望む望まない 
% % 
質問や相談があるかどうか確認しながら説明する76.4 6.2 
心の準備ができる言葉をかける69.0 5.5 
医師が治療法を決める69.2 17.2 
病状の認識を確認する50.9 12.8 
淡々と伝える35.0 41.8 
段階的に伝える31.8 21.9 
不確実な段階でも伝える26.8 58.4 
断定的な口調で伝える20.6 50.5 
医師のペースで話す14.3 68.4 
専門用語を用いて話す11.5 72.9 
事務的に話す5.5 80.1 
曖昧に伝える1.2 98.0
How to Deliver the bad news 悪い知らせの伝え方(2/2) 
11 
望む望まない 
% % 
質問や相談があるかどうか確認しながら説明する76.4 6.2 
心の準備ができる言葉をかける69.0 5.5 
医師が治療法を決める69.2 17.2 
病状の認識を確認する50.9 12.8 
淡々と伝える35.0 41.8 
段階的に伝える31.8 21.9 
不確実な段階でも伝える26.8 58.4 
断定的な口調で伝える20.6 50.5 
医師のペースで話す14.3 68.4 
専門用語を用いて話す11.5 72.9 
事務的に話す5.5 80.1 
曖昧に伝える1.2 98.0
16 
Reassurance and Emotional support 安心感と情緒的サポートの提供 
望む望まない 
% % 
最後まで責任を持って診療に当たることを伝える96.6 0.8 
あなたが希望を持てるように伝える87.5 2.2 
優しさをもって伝える85.8 2.9 
思いやりをもって伝える83.9 3.4 
あなたと同じように家族にも配慮する94.1 2.7 
気持ちに配慮しながら伝える81.9 7.0 
励ます言葉をかける76.0 4.5 
「一緒にがんばりましょうね」と言葉をかける75.4 3.1 
感情を表に出しても受け止める73.3 4.7 
「大丈夫ですよ」と言葉をかける70.0 6.3 
気持ちを和らげる言葉をかける69.4 5.1 
やんわりとした言葉を用いて伝える50.8 16.8 
「がん」という言葉を繰り返し使わない33.5 14.9 
Fujimori et al. (2007) Psychooncology 16: 573-581.
17 
Reassurance and Emotional support 安心感と情緒的サポートの提供 
望む望まない 
% % 
最後まで責任を持って診療に当たることを伝える96.6 0.8 
あなたが希望を持てるように伝える87.5 2.2 
優しさをもって伝える85.8 2.9 
思いやりをもって伝える83.9 3.4 
あなたと同じように家族にも配慮する94.1 2.7 
気持ちに配慮しながら伝える81.9 7.0 
励ます言葉をかける76.0 4.5 
「一緒にがんばりましょうね」と言葉をかける75.4 3.1 
感情を表に出しても受け止める73.3 4.7 
「大丈夫ですよ」と言葉をかける70.0 6.3 
気持ちを和らげる言葉をかける69.4 5.1 
やんわりとした言葉を用いて伝える50.8 16.8 
「がん」という言葉を繰り返し使わない33.5 14.9 
Fujimori et al. (2007) Psychooncology 16: 573-581.
1.言葉を大切にする 
• 想いは言動に現れる 
• 分かりやすい言葉遣い 
• 悪い知らせの伝え方 
• 不適切な言葉遣い 
• 間違った言葉遣い
1.言葉を大切にする 
• 不適切な言葉遣い 
• 間違った言葉遣い
この言葉、どう思いますか? 
• 「さっさと患者をさばいて!」 
• 「この症例は・・・」 
• 「DNAR(Do Not Attempt to Resuscitate)を取得す 
る」 
• 「◯◯さんのIC(informed consent)しよう!」 
• 「EBMに基づいた医療」 
• そこにはいつも「医師が上位で患者さんが下位」 
という前提が暗黙の内に存在する、と思う
2.2.5人称の立場を理解し 
実践する 
“2.5人称”とは?
潤いのある2.5人称 
• 作家柳田邦男氏が提唱 
死意味医療者の態度 
1人称の“死” 自らの死 
2人称の“死” 親しい人の死 
3人称の“死” (専門家として関わ 
る)他人の死 
Face to Face 
2.5人称の“死” 主治医にとっての患 
者の死 
Side by Side 
客観性を保ちながら 
主観的に 
• 専門家(3人称)として、専門性、冷静さ、豊かな経験に裏打ちさ 
れた視点に、患者(1人称)、家族(2人称)の心情への配慮が加わ 
れば、乾いた関係ではなく潤いのある人間関係を構築できる
3.真のEBMを実践する
3.真のEBMを実践する 
• Evidence-only based medicineになっていませ 
んか? 
• 安易に「エビデンスはない」と言っていません 
か?
臨床判断の3要素 
26 
患者 
価値観 
根拠、情報経験 
※「医療資源」を含んで4要素とする場合もある 
EBMはこれらを統合して行う医療行為 
医師
臨床判断の3要素 
27 
Narrative 
価値観 
根拠、情報経験 
EBMはこれらを統合して行う医療行為 
EBMとNBMはこれらを統合して行う医療行為 
Evidence 
患者 
医師
Evidence-based Narrative, EBN 
• 医学的根拠であるEvidenceに基づいた医療,つまり 
Evidence-based Medicine(EBM)を実践することはもちろ 
ん大切です。しかしさらにもう一歩,何のためにEBMを実 
践するのかを考えてみると,その目的は一人ひとりの人 
生観,死生観,価値判断に基づく物語り=narrativeを充 
実させるためととらえられるのではないでしょうか。 
28 
会田薫子.週間医学界新聞2013.2.4
4.Face to FaceよりSide by Side
Face to FaceよりSide by Side 
• 恋愛は’Face to Face’で、結婚は’Side by Side’ 
• よく、医療者は患者ともっと向き合うべき、とい 
われる 
• しかし、本当に大切なのは、向き合うことから 
一歩進んで、そばで寄り添うこと
「臨床」とはまさに“Side by Side”である 
• 床(ベッド)に横たわる死に逝く患者さんのそばにそっと立って 
(臨んで)、患者さんの苦痛に癒しがもたらされることを、じっと 
待ち望む姿勢 
• その時、患者さんの語りに真剣に耳を傾ける姿勢、医療従事 
者と患者の間に交わされる親密な対話こそが、医療の根本で 
ある。 
– 斉藤清二ら,ナラティブ・ベイスト・メディスンの実践,金剛出版 
31
5.患者のすべてを知る努力をする、 
そして常に患者の味方になる
患者≠症例 
• 同じ人間 
• 歩んできた人生はさまざま 
• 病はその一部 
• その人の人生の中で病を位置づける 
• だから、患者さんのすべてを知る努力が必要 
• そうすれば、患者さんが好きになり、味方にな 
れる
主語は常に“患者さん” 
• サポーター 
– 患者さんの人生をその人にとって意味あるものにするた 
めのお手伝いをする存在です。 
• ナビゲーター 
– そのために時には患者さんに寄り添い、時には患者さん 
を導くナビゲーター的存在でありたいと願っています。 
• メンター 
– 患者さんの「自立」と「自律」を支えたいと思っています。 
Kansai for LIVESTRONG DAY
6.DoingよりBeing
今中孝信先生の教え 
• DoingよりもBeing 
– 「ベッドサイドの椅子は、君達が座って 
患者さんの話をじっくり聴くためにあ 
る。」 
– 「君達のなすべきことは、常に患者さん 
の傍にいて、患者さんがどんなことをさ 
れたのか、その眼に焼き付けておくこ 
とである。」 
36
7.高齢患者に感謝を、若年患者に 
慈愛を、同年代の患者にエールを!
7.高齢患者に感謝を、若年患者に 
慈愛を、同年代の患者にエールを! 
• 高齢者 
– 人生の先輩 
– 自分たちがあるのは先達の努力のおかげ 
• 若年者 
– 未来にバトンをつなぐ後輩 
– 与え続ける 
• 同年代 
– 一緒に未来を切り開く仲間 
– 与え与えられる関係
8.最後は自分の良心に従う
8.最後は自分の良心に従う 
• 良心(りょうしん)とは、自身に内在する社会一 
般的な価値観(規範意識)に照らして、ことの 
可否ないし善悪を測る心の働きのことである。 
» Wikipediaより
9.Be Assertive!
Non-assertive and Aggressive
9.Be Assertive! 
• 自分の要求や意見を、相手の権利を侵害す 
ることなく、誠実に、率直に、対等に表現する 
こと 
• 4つの柱 
– 誠実、率直、対等、自己責任
10.一生感動、一生感謝、 
一生勉強
10.一生感動、一生感謝、一生勉強 
• ありふれた日常にこそ感動 
を見いだす 
• すべての事象に感謝 
• 常に学び続ける姿勢
想い出深い患者さん 
• 「症例」=「疾患」が想い出深いのではない 
• 患者の人生やその語り(Narrative)に想い出 
が宿る 
• ときにはそれが人生を変える事もある
患者さんとの関わりの中で 
• 主治医だったから・・・ 
– 喜びや後悔もたくさん経験できた 
– 患者さんや家族とつながることができた 
– ずっと覚えていられる 
– 医師人生を変えることになる出会いが経験で 
きた
みなさんはどう思いますか? 
「豊富な症例数」は研修する上で大切 
医師は患者・家族に客観的で中立的な立場 
で接するべきである 
EBMはNBM(Narrative-based Medicine)とは異 
なる 
患者と向き合う事が大切だ 
患者を理解する事は基本的に可能 
患者に何が出来るかが大切だ
主治医になるための10の掟 
1. 言葉を大切にする 
2. 2.5人称の立場を理解し実践する 
3. 真のEBMを実践する 
4. Face to FaceよりSide by Side 
5. 患者のすべてを知る努力をする、そして常に患者の味方になる 
6. DoingよりBeing 
7. 高齢患者に感謝を、若年患者に慈愛を、同年代の患者にエールを! 
8. 最後は自分の良心に従う 
9. Be Assertive! 
10. 一生感動、一生感謝、一生勉強
Never settle for than your best! 
E-mail: tazuma1251@gmail.com

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主治医10の掟 島根大ws

  • 1. 平成26年度若手医師ステップアップ研修会 2014.10.24 島根大学 主治医になるための10の掟 天理よろづ相談所病院 東光久 tazuma1251@gmail.com
  • 2. みなさんはどう思いますか? 「豊富な症例数」は研修する上で大切 医師は患者・家族に客観的で中立的な立場 で接するべきである EBMはNBM(Narrative-based Medicine)とは異 なる 患者と向き合う事が大切だ 患者を理解する事は基本的に可能 患者に何が出来るかが大切だ
  • 3. 主治医とは • 病気とではなく、患者と向き合い、そして寄り添 おうとする、 • 患者の人生に思いを馳せようとする、 • 患者の人生のナビゲーターであろうとする、 • 家族とも向き合い、寄り添おうとする、 • ひたむきで誠実な態度を持つ、医師 3
  • 4. 診断力vs. 主治医力 診断力 • ドクターG • 華やか • 学生・研修医にも分か りやすい 主治医力 • ナビゲーター • サポーター • メンター • 看取り・死に水をとる • 答えはいくつもある、○×では答えられない • 地道な営み 4 診断フォロー開始死亡
  • 5. 主治医になるための10の掟 1. 言葉を大切にする 2. 2.5人称の立場を理解し実践する 3. 真のEBMを実践する 4. Face to FaceよりSide by Side 5. 患者のすべてを知る努力をする、そして常に患者の味方になる 6. DoingよりBeing 7. 高齢患者に感謝を、若年患者に慈愛を、同年代の患者にエールを! 8. 最後は自分の良心に従う 9. Be Assertive! 10. 一生感動、一生感謝、一生勉強
  • 6. 1.言葉を大切にする • 想いは言動に現れる • 分かりやすい言葉遣い • 悪い知らせの伝え方 • 不適切な言葉遣い • 間違った言葉遣い
  • 7. 1.言葉を大切にする • 想いは言動に現れる • 分かりやすい言葉遣い • 悪い知らせの伝え方
  • 8. How to Deliver the bad news 悪い知らせの伝え方(1/2) 8 望む望まない % % あなたの質問にも答える99.2 0.0 わかりやすく伝える98.0 0.0 正直に話す96.6 0.8 要点を明らかに伝える95.7 1.9 納得できるまで説明する93.6 1.1 実際の写真やデータを用いて伝える92.0 2.8 理解度を確認しながら伝える91.9 3.2 具体的に話す91.1 4.2 詳しく伝える88.1 4.9 説明に用いた紙を渡す84.7 4.8 丁寧に伝える83.0 3.4 用紙に書きながら説明する79.4 7.2 Fujimori et al. (2007) Psychooncology 16: 573-581.
  • 9. How to Deliver the bad news 悪い知らせの伝え方(1/2) 9 望む望まない % % あなたの質問にも答える99.2 0.0 わかりやすく伝える98.0 0.0 正直に話す96.6 0.8 要点を明らかに伝える95.7 1.9 納得できるまで説明する93.6 1.1 実際の写真やデータを用いて伝える92.0 2.8 理解度を確認しながら伝える91.9 3.2 具体的に話す91.1 4.2 詳しく伝える88.1 4.9 説明に用いた紙を渡す84.7 4.8 丁寧に伝える83.0 3.4 用紙に書きながら説明する79.4 7.2 Fujimori et al. (2007) Psychooncology 16: 573-581.
  • 10. How to Deliver the bad news 悪い知らせの伝え方(2/2) 10 望む望まない % % 質問や相談があるかどうか確認しながら説明する76.4 6.2 心の準備ができる言葉をかける69.0 5.5 医師が治療法を決める69.2 17.2 病状の認識を確認する50.9 12.8 淡々と伝える35.0 41.8 段階的に伝える31.8 21.9 不確実な段階でも伝える26.8 58.4 断定的な口調で伝える20.6 50.5 医師のペースで話す14.3 68.4 専門用語を用いて話す11.5 72.9 事務的に話す5.5 80.1 曖昧に伝える1.2 98.0
  • 11. How to Deliver the bad news 悪い知らせの伝え方(2/2) 11 望む望まない % % 質問や相談があるかどうか確認しながら説明する76.4 6.2 心の準備ができる言葉をかける69.0 5.5 医師が治療法を決める69.2 17.2 病状の認識を確認する50.9 12.8 淡々と伝える35.0 41.8 段階的に伝える31.8 21.9 不確実な段階でも伝える26.8 58.4 断定的な口調で伝える20.6 50.5 医師のペースで話す14.3 68.4 専門用語を用いて話す11.5 72.9 事務的に話す5.5 80.1 曖昧に伝える1.2 98.0
  • 12. 16 Reassurance and Emotional support 安心感と情緒的サポートの提供 望む望まない % % 最後まで責任を持って診療に当たることを伝える96.6 0.8 あなたが希望を持てるように伝える87.5 2.2 優しさをもって伝える85.8 2.9 思いやりをもって伝える83.9 3.4 あなたと同じように家族にも配慮する94.1 2.7 気持ちに配慮しながら伝える81.9 7.0 励ます言葉をかける76.0 4.5 「一緒にがんばりましょうね」と言葉をかける75.4 3.1 感情を表に出しても受け止める73.3 4.7 「大丈夫ですよ」と言葉をかける70.0 6.3 気持ちを和らげる言葉をかける69.4 5.1 やんわりとした言葉を用いて伝える50.8 16.8 「がん」という言葉を繰り返し使わない33.5 14.9 Fujimori et al. (2007) Psychooncology 16: 573-581.
  • 13. 17 Reassurance and Emotional support 安心感と情緒的サポートの提供 望む望まない % % 最後まで責任を持って診療に当たることを伝える96.6 0.8 あなたが希望を持てるように伝える87.5 2.2 優しさをもって伝える85.8 2.9 思いやりをもって伝える83.9 3.4 あなたと同じように家族にも配慮する94.1 2.7 気持ちに配慮しながら伝える81.9 7.0 励ます言葉をかける76.0 4.5 「一緒にがんばりましょうね」と言葉をかける75.4 3.1 感情を表に出しても受け止める73.3 4.7 「大丈夫ですよ」と言葉をかける70.0 6.3 気持ちを和らげる言葉をかける69.4 5.1 やんわりとした言葉を用いて伝える50.8 16.8 「がん」という言葉を繰り返し使わない33.5 14.9 Fujimori et al. (2007) Psychooncology 16: 573-581.
  • 14. 1.言葉を大切にする • 想いは言動に現れる • 分かりやすい言葉遣い • 悪い知らせの伝え方 • 不適切な言葉遣い • 間違った言葉遣い
  • 16. この言葉、どう思いますか? • 「さっさと患者をさばいて!」 • 「この症例は・・・」 • 「DNAR(Do Not Attempt to Resuscitate)を取得す る」 • 「◯◯さんのIC(informed consent)しよう!」 • 「EBMに基づいた医療」 • そこにはいつも「医師が上位で患者さんが下位」 という前提が暗黙の内に存在する、と思う
  • 18. 潤いのある2.5人称 • 作家柳田邦男氏が提唱 死意味医療者の態度 1人称の“死” 自らの死 2人称の“死” 親しい人の死 3人称の“死” (専門家として関わ る)他人の死 Face to Face 2.5人称の“死” 主治医にとっての患 者の死 Side by Side 客観性を保ちながら 主観的に • 専門家(3人称)として、専門性、冷静さ、豊かな経験に裏打ちさ れた視点に、患者(1人称)、家族(2人称)の心情への配慮が加わ れば、乾いた関係ではなく潤いのある人間関係を構築できる
  • 20. 3.真のEBMを実践する • Evidence-only based medicineになっていませ んか? • 安易に「エビデンスはない」と言っていません か?
  • 21. 臨床判断の3要素 26 患者 価値観 根拠、情報経験 ※「医療資源」を含んで4要素とする場合もある EBMはこれらを統合して行う医療行為 医師
  • 22. 臨床判断の3要素 27 Narrative 価値観 根拠、情報経験 EBMはこれらを統合して行う医療行為 EBMとNBMはこれらを統合して行う医療行為 Evidence 患者 医師
  • 23. Evidence-based Narrative, EBN • 医学的根拠であるEvidenceに基づいた医療,つまり Evidence-based Medicine(EBM)を実践することはもちろ ん大切です。しかしさらにもう一歩,何のためにEBMを実 践するのかを考えてみると,その目的は一人ひとりの人 生観,死生観,価値判断に基づく物語り=narrativeを充 実させるためととらえられるのではないでしょうか。 28 会田薫子.週間医学界新聞2013.2.4
  • 25. Face to FaceよりSide by Side • 恋愛は’Face to Face’で、結婚は’Side by Side’ • よく、医療者は患者ともっと向き合うべき、とい われる • しかし、本当に大切なのは、向き合うことから 一歩進んで、そばで寄り添うこと
  • 26. 「臨床」とはまさに“Side by Side”である • 床(ベッド)に横たわる死に逝く患者さんのそばにそっと立って (臨んで)、患者さんの苦痛に癒しがもたらされることを、じっと 待ち望む姿勢 • その時、患者さんの語りに真剣に耳を傾ける姿勢、医療従事 者と患者の間に交わされる親密な対話こそが、医療の根本で ある。 – 斉藤清二ら,ナラティブ・ベイスト・メディスンの実践,金剛出版 31
  • 28. 患者≠症例 • 同じ人間 • 歩んできた人生はさまざま • 病はその一部 • その人の人生の中で病を位置づける • だから、患者さんのすべてを知る努力が必要 • そうすれば、患者さんが好きになり、味方にな れる
  • 29. 主語は常に“患者さん” • サポーター – 患者さんの人生をその人にとって意味あるものにするた めのお手伝いをする存在です。 • ナビゲーター – そのために時には患者さんに寄り添い、時には患者さん を導くナビゲーター的存在でありたいと願っています。 • メンター – 患者さんの「自立」と「自律」を支えたいと思っています。 Kansai for LIVESTRONG DAY
  • 31. 今中孝信先生の教え • DoingよりもBeing – 「ベッドサイドの椅子は、君達が座って 患者さんの話をじっくり聴くためにあ る。」 – 「君達のなすべきことは、常に患者さん の傍にいて、患者さんがどんなことをさ れたのか、その眼に焼き付けておくこ とである。」 36
  • 33. 7.高齢患者に感謝を、若年患者に 慈愛を、同年代の患者にエールを! • 高齢者 – 人生の先輩 – 自分たちがあるのは先達の努力のおかげ • 若年者 – 未来にバトンをつなぐ後輩 – 与え続ける • 同年代 – 一緒に未来を切り開く仲間 – 与え与えられる関係
  • 35. 8.最後は自分の良心に従う • 良心(りょうしん)とは、自身に内在する社会一 般的な価値観(規範意識)に照らして、ことの 可否ないし善悪を測る心の働きのことである。 » Wikipediaより
  • 38. 9.Be Assertive! • 自分の要求や意見を、相手の権利を侵害す ることなく、誠実に、率直に、対等に表現する こと • 4つの柱 – 誠実、率直、対等、自己責任
  • 40. 10.一生感動、一生感謝、一生勉強 • ありふれた日常にこそ感動 を見いだす • すべての事象に感謝 • 常に学び続ける姿勢
  • 41. 想い出深い患者さん • 「症例」=「疾患」が想い出深いのではない • 患者の人生やその語り(Narrative)に想い出 が宿る • ときにはそれが人生を変える事もある
  • 42. 患者さんとの関わりの中で • 主治医だったから・・・ – 喜びや後悔もたくさん経験できた – 患者さんや家族とつながることができた – ずっと覚えていられる – 医師人生を変えることになる出会いが経験で きた
  • 43. みなさんはどう思いますか? 「豊富な症例数」は研修する上で大切 医師は患者・家族に客観的で中立的な立場 で接するべきである EBMはNBM(Narrative-based Medicine)とは異 なる 患者と向き合う事が大切だ 患者を理解する事は基本的に可能 患者に何が出来るかが大切だ
  • 44. 主治医になるための10の掟 1. 言葉を大切にする 2. 2.5人称の立場を理解し実践する 3. 真のEBMを実践する 4. Face to FaceよりSide by Side 5. 患者のすべてを知る努力をする、そして常に患者の味方になる 6. DoingよりBeing 7. 高齢患者に感謝を、若年患者に慈愛を、同年代の患者にエールを! 8. 最後は自分の良心に従う 9. Be Assertive! 10. 一生感動、一生感謝、一生勉強
  • 45. Never settle for than your best! E-mail: tazuma1251@gmail.com

Editor's Notes

  1. 言葉を大切にする 2.5人称の立場を理解し実践する 真のEBMを実践する Face to FaceよりSide by Side 患者のすべてを知る努力をする、そして常に患者の味方になる DoingよりBeing 高齢患者に感謝を、若年患者に慈愛を、同年代の患者にエールを! 最後は自分の良心に従う Assertive & Thoughtful 志は自分のために、行いは他者のために(利他の精神) 一生感動、一生感謝、一生勉強
  2. 志は自分のために、行いは他者のために(利他の精神) 主語は常に「患者」であるべき
  3. 患者さんの前で不適切な言葉を使っていないだろうか?  「この症例は・・・」 「患者たまっているから、さっさとさばこうぜ!」 間違った言葉遣い 「ICする」
  4. 患者さんの前で不適切な言葉を使っていないだろうか?  「この症例は・・・」 「患者たまっているから、さっさとさばこうぜ!」 間違った言葉遣い 「ICする」
  5. 患者さんの前で不適切な言葉を使っていないだろうか?  「この症例は・・・」 「患者たまっているから、さっさとさばこうぜ!」 間違った言葉遣い 「ICする」
  6. 患者さんの前で不適切な言葉を使っていないだろうか?  「この症例は・・・」 「患者たまっているから、さっさとさばこうぜ!」 間違った言葉遣い 「ICする」
  7. 言葉を大切にする 2.5人称の立場を理解し実践する 真のEBMを実践する Face to FaceよりSide by Side 患者のすべてを知る努力をする、そして常に患者の味方になる DoingよりBeing 高齢患者に感謝を、若年患者に慈愛を、同年代の患者にエールを! 最後は自分の良心に従う Assertive & Thoughtful 志は自分のために、行いは他者のために(利他の精神) 一生感動、一生感謝、一生勉強
  8. 志は自分のために、行いは他者のために(利他の精神) 主語は常に「患者」であるべき