What may economists be concerned about in terms of information health?Toshiya Jitsuzumi
Presentation at the side event of GPAI summit 2022
Informational health is an experimental concept proposed by Prof. Toriumi of the University of Tokyo and Prof. Yamamoto of Keio University. Although a detailed definition has not yet been reached, it implies a state of being free from the negative effects of echo chambers and filter bubbles and have access to diverse and "neutral" information.
12. Fair contributionに関する議論
公平な負担の議論は2000年代後期に遡る。欧州の通信事業者団体(ETNO)は、OTT事業者に対して、eyeball ISPへの料金支払
いを追加的に要求することを目指し、「発側ネットワーク支払い(Sending Party Network Pays[SPNP])」という相互接続清
算方式を提案。
◦ 本提案は、2012年12月にドバイで開催されるITU世界国際電気通信会議(WCIT-12)に提出する国際電気通信規則(ITR)改
正案としてとりまとめられたが(ETNO, 2012)。しかし、反対が相次ぎ、ITR改正案としては不採用。
◦ SPNPは、電話サービスにおいて永く採用されていた発信者課金(Calling Party Pays[CPP])の応用形で、ネットワーク利
用対価と引き換えに、ベストエフォート品質を上回るQoSの提供を受ける(Kruse, 2008)。
◦ SPNPの採用は事業者間の自発的交渉によるものであるべきとされ、法や規則による義務付けは回避。
2022年12月14日、欧州委員会はDigital Decade Policy Programme 2030(EC, 2022)を発出
◦ 2030年までにすべてのエンドユーザーを固定ギガビットネットワークで、さらに、すべての人口密集地を5Gと同等以上の性
能を有する次世代無線高速ネットワークでカバーすることを政策目標に掲げた。
◦ 目標達成にはネットワークの大幅増強が不可欠であるため、翌年に公表されたEuropean Declaration on Digital Rights and
Principles for the Digital Decade(EC, 2023)の第二条では、デジタル変革の恩恵を受けるすべての市場関係者が社会的責任
を果たし、EUに住むすべての人々の利益のために、公共財、サービス、インフラの費用に公平かつ比例した貢献(fair and
proportionate contribution)をするよう、適切な枠組みを開発することを宣言
◦ 2023年、欧州委員会はネットワーク費用の公平な負担等についてパブコメ手続きを実施(2/23~5/19)
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13. SK Broadband vs. Netflixに始まる韓国での議論
2018年:SK社がトラヒック激増に伴うコスト分担をNetflix社と交渉
2020年4月:Netflix側は交渉義務・対価支払義務の不存在確認を求め提訴
2021年6月判決
◦ ネット中立性はトラヒック公平取扱い原則で本件には無関係
◦ Netflix社には費用負担義務あり
◦ 具体的な負担額の水準については当事者交渉で決定すべき
その後、Netflixは控訴し、現在、上級審で審理継続中
本件は韓国国会でもその解決が目指されており、 ISPとOTT事業者間の契約締結や対価支払い等を義務付けることを目指し、
2020年6月には通称Netflix法と呼ばれる電気通信事業法改正が行われた(2023年1月に再改正)。
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14. EU・英国・インド・米国での議論
EU
◦ 欧州の電気通信事業者13社のCEOは、2021年11月29日に共同声明(Arnolder, et al., 2021)を公開し、巨大OTT事業者が
ネットワーク投資に対して応分の負担を負うべきことを主張
◦ 欧州の規制庁団体BERECは、OTT事業者がもたらすトラヒック増によるコスト負担増は些少であること、ネットワーク事業者
とOTT事業者の外部性は双方向である点を指摘したうえで、相互接続市場は充分に競争的であるため 、OTT事業者によるフ
リーライドが発生する余地はないと主張し、本提案に反対
英国
◦ ネット中立性規則の緩和を念頭に検討プロセスを2022年10月に開始した英国Ofcomは、OTT事業者への課金の意義は認めつ
つも、それを制度化するには根拠が不十分であると表明(Ofcom 2022)
インド
◦ Cellular Operators Association of IndiaがOTT事業者への課金に積極的
◦ Internet and Mobile Association of Indiaは課金な国内OTTスタートアップを害するとして反対
米国
◦ FCCは2022年8月に議会に提出したレポート(FCC 2022)の中で、コンテンツ事業者等への課金に肯定的な意向を示し、議
会に対し必要な立法手続きをとることを要望
◦ NTIAは、2023年5月25日の報道発表資料 のなかで、課金を通じてネットワーク事業者の独占力がさらに強まり競争に悪影響
が及ぶこと、一部の巨大OTT事業者に課金することはネット中立性を損なうこと、同様の課金行為が他国でも採用されること
でエコシステム全体に悪影響が及ぶとして、課金の議論には反対。
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17. 逆方向の外部性
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出典:Axon Partners Group (2022)
Viard and Economides(2014)は、利用可能コンテンツの増加
がブロードバンド需要に与えるプラスの影響、すなわちOTT事業者
がネットワーク事業者に対して外部経済を及ぼすことを実証
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19. ゼロ・プライス・ルール(ZPR)に関連する主な先行研究
ISP行動へのZPRによる規律付けに関する議論
◦ Nuechterlein(2008)等:ZPRを重視する理由は,支配的ISPによる交渉力濫用を防ぐためであり、着信を無料にし、ISPによ
るCAP差別を不可能にすることで、ネットワークのオープン性・中立性を維持可能
◦ Lee and Wu(2009)やD‘Annunzio and Russo(2015):ZPRがない場合、コンテンツ差別を通じて、ネット空間の分断が
発生
ZPRによる資金移転効果に関する議論
◦ Lee and Wu(2009)、Chettiar et al.(2010)やChettiar and Holladay(2010):ネット事業者の負担によってネット
ワーク無償利用を許容することでOTT事業者を補助する仕組みとしてZPRを評価
資源配分や総余剰にもたらす効果をめぐる議論
◦ Hemphill(2008)、Musacchio et al.(2009)、Schuett(2010)、Cheng et al.(2011)、Borreau and Lestage
(2019)などは、モデル分析によりZPRが経済厚生に及ぼす影響を評価。結果は前提条件に依存
◦ ネット投資がコンテンツ事業者に、コンテンツ投資がISP事業者に及ぼす外部効果を明示的に取り込んでいないモデルでは、
モデル構造によってさまざまな結果が得られている
◦ ただし、これまで考慮されてきたのは多くの場合、ネット投資によるネット混雑解消が消費者効用に及ぼすプラス効果のみで
あり、ネット品質の改善が新たなリッチコンテンツや新アプリの導入を可能にする効果や、コンテンツ品質の改善がISPの市
場受容性を高める効果は明示的には考慮されていない
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