株式会社クオーターバックの新人研修で使っていた非コピーライター向けの研修資料を公開します。

1. 近未来
コピーライティング
基礎講座
デキる人の
日用品になっていく
コピーライティング

2. この講座の目的

3. 近未来コピーライティング基礎講座とは？
いわゆるコピーライター養成研修とは違い、
ふだん使いのコピーライティングの基礎を身につけるための講座です。
ですから、コピーライター以外の方々も受講の対象となっています。
身につけていただいた後は、
応用して、仕事に使っても恋愛に使ってもそれ以外に使ってもかまいません。
ですが、人を不幸せにするためには使わないでください。
これは講師からのお願いです。

4. コピーの正体を知る

5. コピーとは？
単に広告文案と呼ばれたり、
ちょっとかっこいい表現だと惹句（ジャック）と呼ばれたりするものです。
かつては、ひと言で人々の価値観を変えてしまうほど大きな力を
持っていた時代もあるようですが、今はそれほどでもないようです。
ただ、影響力は変わったものの、その役割は変わっていません。１ミリも。
僕は、「コピーライティングスキル」をこのように定義しています。
相手に抱いてほしい感情を、言葉によって相手の心の中につくりだす技術。
そして、この講義では、
相手に抱いてほしい感情を、言葉によって相手の心の中につくりだすちからを、
「コピー力」と名づけることにします。

6. バーカ

7. きっとみなさんの頭の中には「？」が生まれたと思います。
では、
「自分が恥ずかしいミスを犯してしまったとき」、
「その場面を見ていた“むかつく後輩”が今にも口を開きそうな瞬間」を
強くイメージしてください。

8. バーカ

9. そのまま言葉をぶつけてもダメなのは？
きっと「さっきとは違う印象」を覚えたのではないでしょうか。
それもそのはず。
コピーを相手に炸裂させるためには、
「言葉の能力」だけでなく、「メッセージを受けとる側の気分」や
「発信する側と受信する側の関係」が重要になってくるからです。
さきほどの例では、
「ミスをして恥ずかしい気分」×「目下の人間から」×「バーカ」の
三連コンボが、けっこう強い「コピー力」を生み出しました。
つまり「コピー力のレシピ」とは…

10. 「メッセージを受けとる側の気分」
×
「発信する側と受信する側の関係」
×
「言葉の能力」
↓
「コピー力」

11. コピー力の文脈で、
有名コピーを振り返る

12. 1982年／眞木準／サントリー／サントリーホワイト
飲む時は、ただの人。
社会人になりたてのころ、名作コピーをまとめた本を読み漁っていました。
すると、必ずと言っていいほどこのコピーが登場します。
が、当時の僕には、このコピーの良さがまったくわかりませんでした。
このコピーがつくられてから30年がたった今、
やっと実感をもってこのコピーの良さがわかるようになったんです。
なぜでしょうか。

13. それは当時の僕に対しての「コピー力」が
このコピーにはなかったからです。
当時、広告で起用していたタレントが
もうすぐ50歳になる「菅原文太」でしたから、
おそらくこの広告がターゲットとしていたのは「管理職」。
20代の僕とは、「気分」も「関係」も違いすぎたんですね。

14. この広告を因数分解して、このコピーの狙いを探ってみることとします。
ターゲット
・管理職
管理職の気分
・会社では重い責任をもって仕事をしている
・会社では肩書き相応の発言や態度を求められる
・正直、この「苦痛」から逃れたい
菅原文太との関係
・自分とは、かけ離れた誰もが憧れる大スター
※インターネットもない頃なので、今よりずっと俳優の「スター力」が強い
コピー
・飲む時は、ただの人。
抱かせたかった感情
・安らぎ

15. 憧れの大スター・菅原文太から、
「飲むときくらい、ふつうの人でいいんだぞ」って言われるわけですから
きっと、当時の人から見たら、
「サントリーホワイト」が「苦痛」から逃れるための
「スペシャルアイテム」に見えたのではないでしょうか。
僕が実感をもってこのコピーの良さがわかったのは、
同じように「責任」や「肩書き」を背負うようになったからだと思います。
逆に言うと「コピー」というのは、
相手の気分や関係性がしっかりはまっていないと
「力」を存分に発揮できません。
「メール」の冒頭でよく見る「お世話になっております」に
ほとんど心が揺れないのはそのためです。

16. コピー力の文脈で、
無名コピーを振り返る

17. 2013年12月5日15：50／山田裕一／on Facebook
年下は格下ではない。
何の狙いもなく、Facebookでこのフレーズのみを発言したときのことです。
SNS上では、いつも関わり合いのないような人たちから
このコメントが評価されたことがありました。
「いいね！」こそ少なかったものの、オフラインで「あれは刺さった」など
思いもしない評価をいただいたのです。
なぜ、評価されたのだろうと自分なりに分析してみました。
ふだんは、他人がつくったものを勝手に分析するのですが、
意図的ではなかったので、他人も同然。フラットに見ることができました。

18. わかっていることから逆算して、なぜ「コピー力」が発生したかを分析します。
すると知ることができない「ターゲットの気分」がなんとなくわかってきました。
抱いた感情
・そうだよな、年下からもどんどん学んでいかないとな
コピー
・年下は格下ではない。
僕との関係
・毎日のように顔と発言を目にするFacebookの「友達」
ターゲット（結果、反応した人々）
・仕事に一生懸命な人
仕事に一生懸命な人の気分
・最近、自分より年下でもヤバい奴たくさん出てきてアセる
・でも、年下には負けたくない、認めたくない、どうしよう

19. 誤解を恐れずに言うなら、今まで「すごい人」はたいてい年上でした。
しかしSNSでは、
「年下でもすごい人」をたくさん目にする気がしませんか。
一人ひとりは、たいして充実していないのに、
SNS上で「情報の集合」となると、「リア充だらけのイメージ」となるように、
数少ない「年下でもすごい人」も、
SNS上で「情報の集合」となると、
「今の若い奴はすごいやつだらけというイメージ」で襲ってきます。
その恐怖が、
「仕事に一生懸命な人」の気分だったのではないでしょうか。

20. コピーライティング・カーニバルで
頭の体操をしよう

21. 今から、「あるシチュエーション」を設定します。
その中に登場する人物のセリフをそれぞれ考えてもらって、
「相手に抱かせたい感情」を一番大きくすることができた人がチャンピオンです。
それではいきます。

22. ICカードのチャージ不足で、
同行していた上司のウワヤクさんが駅の自動改札に引っかかってしまいました。
ウワヤクさんは、
きっぷの販売機でICカードにチャージして自動改札を通過。
やっと改札の内側に来れました。
そのときにあなたならどんな言葉をかけますか？
抱かせたい感情は「うれしい」です。

23. コピーを
使えるようになろう

24. おさらい「コピーライティングスキルの定義」
相手に抱いてほしい感情を、言葉によって相手の心の中につくりだす技術。
つまり、コピーライティングとは、
まず、相手に抱いてほしい感情を決めて、
相手の「気分」やこちらとの「関係」を考えながら
最適な言葉を選んでぶつける行為。
忘れないでほしいのは、
相手に抱いてほしい感情を決めていなければ、
コピーは「絶対に」書けないということ。
まぐれ当たりもありますが、それはまぐれであって、
コピーライティングスキルによるものではありません。
この講座では、
戦略的に相手に抱いてほしい感情を相手の心の中につくりだす技術を
習得してもらいたいので、「狙い」はやはり必要です。

25. カンタン・コピーの書き方
STEP１ 抱いてほしい感情を決める。
コツは、「ゴールとなる感情の１個手前の感情」を
「抱いてほしい感情」に設定すること。
買いたいが、ゴールであれば、その１個手前は、
「カッコいい」「カワイイ」「オトク」「早くしないとなくなっちゃう」
…いろいろあります。
これを決めるのは、比較的簡単です。

26. カンタン・コピーの書き方
STEP２ その感情をつくりだす言葉を選ぶ。
STEP1で決めた「抱いてほしい感情」をつくりだす言葉を選びます。
最終的には、この言葉がコピーになっていきますが、
これがカンタンにできれば、この講座の意味はありません。
この講座の本質は、
「抱いてほしい感情をつくりだすための言葉を選ぶ力」を
どのように身につけていくかを知ることにあります。
方法はカンタンですが、
「力」が身につくまでには時間がかかります。
今日はきっかけだけでも持ち帰ってください。

27. カンタン・コピーの書き方
STEP２-１ 言葉から受けた印象を記憶する。
目や耳は、毎日たくさんの言葉と出会います。
そのとき感じた「小さな心の動き」を無視せずに記憶してください。
「むかつく」「うれしい」「かっこいい」…
感情ごとにいくつかフォルダを用意して脳に言葉を覚えさせます。
これを繰り返していくと、
「言葉の能力」が、正確に把握できるようになります。

28. 言葉を浴びていると、たまに「大きな心の動き」を感じるときがあります。
それはあなたの心が大きな「コピー力」を感知したということです。
そんなときは、
「今の自分の状況」や「言葉を発した相手との関係」を記憶してください。
この記憶を積み重ねた分だけ、
「コピー力」をうまく生み出せるようになります。
つまり、「コピーが書けるようになる」ということです。
カンタン・コピーの書き方
STEP２-２ 状況や相手との関係を記憶する。

29. デキる人の日用品になっていく
コピーライティング

30. 広告コピーは死んだ。
だが、コピー自体は日常の中で生き続ける。
インターネットを使ってカンタンに、情報が手に入るようになった今、
広告コピーは、もはやかつてのような力を持っていません。
どんなに素敵なコピーで飾っても、
現実が追いついていなければ、途端にただのテキストに成り下がるからです。
しかし、私たちが日常で行うコミュニケーションは、
「自分の気持ち」を相手に伝える行為。
このときの「自分の気持ち」は
検索では決してたどり着くことのできない「心の中」にあります。
使い方を間違えなければ、
コピーは日常の中でまだまだ活躍ができるのではないでしょうか。