まつもとあつし(ペイドコンテンツ研究会2012/12/20)

ソーシャルゲームに学ぶ
電子書籍の売り方(近未来編)
まつもとです

 ジャーナリスト/コンテンツプロデューサー
  アスキー・ITmedia・ダ・ヴィンチなどの媒体に寄稿・連載を
  行っています。
  著書に『スマートデバイスが生む商機』(インプレスジャパ
   ン)、『生き残るメディア死ぬメディア』『ソーシャルゲー
   ムのすごい仕組み』(いずれもアスキー新書)、『コンテン
   ツビジネス・デジタルシフトー映像の新しい消費形態』(NTT
   出版)『LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついた
   のか?』(マイナビ新書・コグレマサト氏との共著)など
  東京大学情報学環博士課程在籍
  ITベンチャー・出版社・広告代理店を経験。ソーシャルゲーム
   やショートアニメなどのプロデュースを行ったことも。


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はじめに
          【オーダー】
「ソーシャルゲームの仕組み」から電子書籍の売り方
        を考察できないか?




     それ結構無茶ぶりです(汗)




         困った・・・
  ん?・・・でも結構面白いテーマかも?
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新書(4月発売)に何を書いたのか?




「元年とうたわれながらも、2010年まで
結局市場はそれほど広がらなかった電子書
籍に対して、ソーシャルゲームのそれはまさ
に元年と呼ぶにふさわしい伸びを見せた。」

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時まさにコンプガチャ規制前夜

 3500億円規模まで成長しているソーシャル
  ゲーム(パッケージゲームを抜く)
 CESA(一般社団法人コンピュータエンターテ
  インメント協会)が行った調査によると、モ
  バゲー、GREEとも無課金で遊び続けている
  ユーザーが約75%を占める。残りの15%前後
  のユーザーにいかにアイテムを買ってもらう
  かに、各ゲーム提供者は知恵を絞っている。
 ゲーム内で使える強力なレアアイテムを、
  ゲーム外の「ガチャ」で当てることができる。
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コンプガチャと射幸性

 アイドルマスターシンデレ
 ラガールズ
 コンプガチャシミュレー
 ター ver.0.93 http://www.ani-
 ban.info/aimas/comp_sim/
 5月に消費者庁はコンプガ
 チャを景表法の「絵合わ
 せ」と判断。業界は自主規
 制へ。
 現在は、絵合わせ要素を排
 したインデックスガチャな                  注:射幸性自体が「悪」ではない。
 どが登場。
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デジタルで儲けるって・・・

 音楽(例:Music Unlimited)、映像(例:
  Hulu)、そして書籍(例:BookPass)もが定
  額制に向かう。
 そんな中、売上を伸ばすソーシャルゲーム
  (ガチャ)。
 そこにはどんな違いが?

 そういえば、ゲームってもともと物語的だっ
 たが、ソーシャルゲームってエンディングす
 らない、ストーリーが捨象された世界・・・。

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「物語」はどこへ?
                          512KB(待受画像1枚
                          分)のROMに全ての
             ドラクエ(1986)   データを凝縮


                          ROMは2MBに。ル
射幸的面白さ         ドラクエⅢ
                          イーダの酒場での
                (1988)
                          ギャンブル的要素な
                          ど

         ゲーム機の高スペック化・消費の多様化



 ソーシャル                    テキストADV
  ゲーム                     ≒電子書籍
                 FPS
射幸的面白さ                    物語への没入
              3DCGスポーツ               8
ソシャゲに何を学べるか?

①いわゆる「ソーシャル」的なサービスであること




      Social Game

  ②ゲーミフィケーションを支える行動分析と運営


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ソーシャルメディアと書籍

 「ソーシャルリーディング」
 しかし「読書は1人でするもの」という反論
  も。
 読み進める段階では確かにそうかも。しか
  し、読後の感想がネットに投稿されたこと
  をきっかけにブレークする例も。
 TVアニメのTwitter実況(同期)、ニコニコ
  動画のコメント(疑似同期)のように、読
  書も、みなで楽しむ、あるいは学ぶもの
  (≒輪読)になる?

                             10
行動分析

 ゲーミフィケーション。読書体験は著者
が提供するもの(ベソス氏)
 しかし、行動分析は紙(アナログ)の時
代と異なり、デジタルであれば様々な指
標(KPI=重要業績評価指標)が取れるは
ず。
 ソーシャルゲームの徹底した行動分析と
それに即した運営には学ぶべき点が多い。

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変わる「作品」作り
                                           • パッケージゲームのノウハウでは
                                             上手く行かず、悔しい思いも。
                                           • 徹底的にソーシャルゲームの方法
                                             論を取り入れる。
                                           • PRもリリース前ではなく、リリー
                                             ス後を重視。
                                             「ソーシャルコンテンツではリ
                                             リース前後のPRよりも、新しいお
                                             客様を連れてきてもらえるような
                                             “ゲームデザイン”が重要です」
                                           • 少人数での機動的な開発と運営体
                                             制
                                           • 既存タイトルの知名度に頼ること
                                             のない独自IP(知的財産)の採用
                                           • ソーシャルコンテンツでは当時珍
ASCII.jp:『ドラゴンコレクション』が拓いたソー                  しかった(しかし本来は王道とも
シャルコンテンツの一里塚
http://ascii.jp/elem/000/000/693/693409/     言える)ファンタジー風の世界観
                                             構築。
                                                                12
ここまでをまとめると・・・

 低価格化が進むデジタルコンテンツの世
  界で、売上を伸ばすソーシャルゲーム。
 ゲームフィケーション(夢中にさせる仕
  組み)の本編と、ゲームの外で射幸心を
  刺激する「ガチャ」の存在。
 「夢中」を数字にする行動分析と、それ
  を企画や開発に反映させることができる
  運営体制がそこにある。
 「リリースしたらあとは天に任せる」と
  いうもの作りは、非常に贅沢なものに。
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「本」はどうでしょうか?

 紙の本というパッケージが、電子になっただ
  けでは、定額化・低価格化は避けられないの
  では?
 デジタルデータとなり、ネット空間に存在す
  るのであれば、ユーザーがどのように読書し、
  それを楽しんでいるかといった行動履歴もつ
  ぶさに把握出来るはず。
  (もちろん、プライバシー・セキュリティへ
  の配慮は必要)
 デジタル時代に即したバリューチェーンの構
  築が求められる。
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バリューチェーン(ポーター)




          この再構築なくしては、マージンは痩せゆく一方・・・

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すでにその萌芽も・・・




              16
企画・開発段階




本文だけでなく、ユーザー
コンテンツとの創発でコン
テンツが成立         17
資金調達段階




         資金だけでなく、見
         込み客と彼らによる
         告知が並行して行わ
         れている。




                 18
販促段階
       • 出したら終わり、という時代は終わ
         り。
       • ソーシャルメディアを活用した販促
         は必須。(エゴサーチ、アクティブ
         サポート・・・)
       • 販促の効果測定も必須。(言及数と
         ランキング、アクセスログ・・・)
       • ソーシャルゲームのPR同様、コスト
         のかけ方は転換が必要であるはず。
       • この状況を背景に生まれたコルク
         (エージェント)にも注目していま
         す。




       【連載】まつもとあつしの 電子書籍最前線part1(前編)
       ダイヤモンド社の電子書籍作り « 電子書籍のニュース、レ
       ビュー、アプリ紹介サイト ダ・ヴィンチ電子部
       http://blog.mediafactory.co.jp/dd/?p=11665   19
早すぎたGoogleブック検索




オプトアウト方式によって反発を招いてしまったが、書籍も検索可能とし、ど
のページがよく参照されるかといったAnalyticsを提供し、販売サイトへのリン
クも可能な仕組みは時代を先取りして(しすぎて)いた。
                                       20
現実路線のKindle

 KDP、ソーシャル
 リーディングなど
 次の一手も組み込
 み済み。
 国内勢はこれにど
 う向き合うか?
 「パブリッジ」や
 NIIの「e読書.jp」に
 は注目しています。
                 21
ソーシャルからパーソナルへ

 急成長するLINEのよ
  うに、クローズドな
  関係でのコミュニ
  ケーションに「読
  書」がどのように介
  在できるかも、気に
  なるところです。
 バーチャルグラフ<
  リアルグラフ・イン
  タレストグラフ
                22
まとめ

 デジタル化・ソーシャル化する書籍。
 作り方から売り方まで、バリューチェー
ンは変わらざるを得ない。
 変わらなければ、待つのは定額化・低価
  格化。
 展開を成功に導けるのは、結局は人。
 編集者は職人からプロデューサーになら
なければならない。

                       23
ご静聴ありがとうございました!




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20121220 matsumoto