スタートアップのためのリアルなブランド戦略先生：山口義宏・菅原敬

0Copyright 2010-2014 Insightforce, Inc. All rights reserved.
スタートアップのための
リアルなブランド戦略
インサイトフォース株式会社

1
授業の内容
全６０分
I. 【講義】ブランド戦略の基礎 20分
II. 【対談】ベンチャーにおけるブランド戦略のリアル 30分
III. 質疑応答 10分
Copyright 2010-2014 Insightforce, Inc. All rights reserved.

2
自己紹介
• ソニー子会社にて、戦略コンサルティング事業事業部長
• リンクアンドモチベーションにて、ブランド・コンサルティング・デリバリー統括
• デジタル系広告代理店にて、新規事業マネジャー
• 上記を経て2010年にインサイトフォース株式会社を設立。
これまで上場企業90社以上のコンサルティングを手がけ、自動車、電機、携帯通信、光学機器、
飲料・食品、住宅、化粧品、石油、金融、小売・サービス等、主に企業のブランド及び
マーケティング戦略策定、商品・デザイン・広告施策の支援に豊富な実績を持つ。
日経ビジネスオンラインにて、企業のブランド担当者との対談「ブランド・アナーキストを探せ！」
を連載中。
山口義宏
インサイトフォース株式会社代表取締役

3
Ⅰ．【講義】ブランド戦略の基礎

4
ブランドの“定義”と“法則”

9
ブランドの定義
ブランドとは頭の中で「記号」と「価値」が結びついた総体
Brand Identity
ブランドの「識別記号」
＊文字･音声･形･色・匂い
Brand Value
ブランドの「知覚価値」
＊カテゴリ、人格、便益、論拠など
• 炭酸飲料
• さわやか、刺激的
• ハッピーな気分転換
• 歴史、秘密のレシピ
ABC
Drink
ABC
Drink
生活者

10
ブランドが創られる法則
“魅力的で、一貫性のある顧客体験の蓄積”で創られる
広告キャンペーン
販売店
接客スタッフ
商品・サービス
自社ウェブサイト
消費者のクチコミ
知人の評判
ブランドXは
○○○な
感じだな・・・企業が
直接コントロール
できるもの
企業が
直接コントロール
できないもの
個々の体験が魅力的でも
一貫性が無ければ
ブランドとして記憶されない
＊業種により接点のブランド影響度は異なる
マスメディア

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ブランドを形成する一貫性の例
商品
• BMWの一貫した“駆け抜ける歓び”
を感じる乗り味
サービス
• スタバのパーソナライズされた
親しみを感じさせる接客
プロモーション • ソフトバンクの白い犬のお父さん
デザイン
• TSUBAKIの艶やかな真紅の
パッケージ

12
ブランドの成長ステップ
代名詞～動詞となるようなカテゴリNo.1が最終ゴール
「識別記号」から「知覚価値」を想起できる
ex. Google と言えば検索
「知覚価値」から「識別記号」を想起できる
ex. 検索と言えば Google
ブランドが、カテゴリの代名詞～動詞になる
ex. ググる、パナのウォークマン、ソニーのiPod
成立
確立
寡占
指
名
買
顧
客
獲
得
削
減

13
強いブランドのビジネスメリット
３つの効果で、利益の伴う事業成長の基盤になる
有利な取引条件（価格）
取引のリピート率向上
競合に埋もれずに選ばれる
強い
ブランド
の効用
• 対顧客だけでなく、従業員にも、株主にも同様の効果
利
益
出
事
業
成
長
基
盤

ブランドが重要となる背景
顧客は優れた事実で
商品・サービスを選ぶ
顧客は知覚認識で
商品・サービスを選ぶ
顧客目線の実態企業目線の誤解
似
非

15
ブランド戦略の構造と実践ポイント

16
ブランド戦略の推進ステップ
４つのステップで実施
ブランド
識別記号の
設計
＊ロゴ、配色、フォント
与件となる
強み～弱み、
想いを整理
Product
Promotion
広告・販促・PR
Place
販売店・接客
Price
価格政策
施
策
反
映
Step 1 2 4
ブランド
知覚価値の
規定
3
顧客体験の
設計
今日の話の範囲

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競争優位の源泉の変化
ネット～IT進化により顧客体験全体で競争する方向が加速
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モノ単体の
価値
連携サービス
の価値
人との会話～
情報の価値
顧
客
体
験
価
値
モノ・技術のコモディティ化、
参入障壁の低下により、
モノだけでの差別化が難しくなっている
ネット～スマホ等の浸透により、
企業が安価・持続的に顧客とつながり、
顧客体験を支援する手段が増えた
ネット～SNSの浸透により、
身近な人～国境を超えた人を問わず
情報交流が増えて影響力が高まった

サポート
を受ける
顧客インサイト⾃自社施策
顧客⾏行行動
プロセス
試す・
買う
開封・
設定する
使⽤用する
（⾛走る）
共有する
• 数多くの選択肢から選び
たい
• フィッティングの助⾔言が
欲しい
• 開封の儀式を楽しみたい
• 連携ツールの設定を簡単
にしたい
• 運動成果を記録したい
• 無理理なく気持ちよく⾛走り、
運動の達成感を得たい
• 気軽に健康と肌のコン
ディションを管理理したい
• ⾛走った成果を⾃自慢したい
• ⾛走るのを仲間に応援して
欲しい
• ⼀一緒に⾛走る仲間を⾒見見つけ
たい
• 壊れたらいち早く
修理理したい
• ⾛走りのレベルを上げたい
• ⾝身体コンディション維持
のコツを知りたい
• シューズとウェアのデザインを
カスタマイズしてオーダーでき
る直営店とウェブサイト
• ⾼高品質で洗練されたパッケージ
• 直営店で購⼊入すれば設定済みの
連携ツールが⼿手元に届く
自社製アプリ～腕時計による・・
• ペース配分と運動記録分析に基づく
アドバイス機能
• 運動成果をネットで友人にシェアして
応援を受ける機能
自社製アプリ～腕時計による・・
• ランの記録を自動でシェアし、
応援が受けられる仕組み
• ランのパートナー～グループの
コーディネート支援
自社製Web＆アプリによる・・
• ラン＆ストレッチのアドバイス機能
協働パートナー施策
自社認定アドバイザーによる・・・
• シューズフィッティング支援サービスを
協力店で展開
認定協働パートナーにより自社アプリと連携
可能な・・
• 血圧測定機能つき腕時計
• 肌検視機能つきブレスレット
• 写真で食べ物カロリー推計アプリ
• ヘルシーメニュー店マップアプリ
認定協働パートナー店による・・
• ランニング仲間の形成を支援するリア
ルなイベント＆コミュニティ運営
認定協働パートナー店による・・
• 即日修理・交換体制の整備
• 契約トレーナーとの対面によるランニ
ング＆ストレッチのアドバイスサービス
3年後より外部開放を想定
顧客体験デザインの例例（ランニング⽀支援プロダクト）

Webサービス設計における格⾔言
Webサービスは機能を設計するんじゃない。
引き起こしたいユーザーの感情を設計し、
それを実現するための機能を考えて実装するんだ！
その積み重ねがブランドを創っていく。
（私の記憶に基づく意訳）
by ワンオブゼム代表取締役武石幸之助さんのコメント

20
ブランド知覚価値の構造
知覚価値は、生活者主語とブランド主語の２つが対になって構成
コア
バリュー
パーソナリティ
ベネフィット
エビデンス
象徴的な顧客像は・・・
インサイト
ブランド
ターゲット
刺刺激する⼼心の琴線（本⾳音）は・・・
ひとことに集約された核となる価値は・・・
⼈人格としての印象は・・・
物理理的／⼼心理理的な便便益（うれしさ）は・・・
裏裏付けとなる論論拠・事実・スペックは・・・
主
語
知
覚
価
値
⽣生
活
者
主
語
知
覚
価
値

21
ブランド知覚価値の例
「スクー」ブランド知覚価値（勝手な推測ですが）
コア
バリュー
パーソナリティ
ベネフィット
エビデンス
インサイト
ブランド
ターゲット
主
語
知
覚
価
値
⽣生
活
者
主
語
知
覚
価
値
⽣生涯学習意欲の⾼高い⼈人
・⽇日常⽣生活の中で気軽に学び続けたい
・学習意欲のある⼈人々とつながりたい
楽しい⽣生涯学習が続くオンライン・スクール・コミュニティ
楽しい、好奇⼼心、親しみ
• 情緒：学習仲間や講師との交流流を楽しめる
• 機能：現場の活きた知恵、⾒見見逃しても録画でリカバー
• 業界の⼀一線で活躍する講師陣による⽣生放送授業
• マルチデバイス〜～録画授業

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ブランド知覚価値におけるエビデンスの例
企業資産系
• 経営者自身が信頼の証Apple、ジャパネットたかた
• １８３７年から馬具皮革で磨いた技術のエルメス
研究開発～
原料・工場・
技術系
• 天然水がいいから美味しいプレミアムモルツ
• 亀山工場産だから画質が良いアクオス
• ナノテク研究によって肌に浸透するアスタリフト
サービス要素
系
• 人生設計を共にするライフプランナーのソニー生命
• 安心価格保証で低価格を保証するヤマダ電機
他社資産
要素系
• 東レの繊維技術を用いたヒートテック
• ダスキンのクリーニングで中古車を洗浄するガリバー
顧客層～コミュ
ニティの質系
• 伝統富裕層が選び続けるメルセデス・ベンツ
• 好きな友人達とタバコ部屋交流できるFacebook

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ブランド戦略を定め、顧客接点に反映させる
ブランド戦略
• 識別記号
• 知覚価値
• マーケティング
施策要件
一
貫
性
印
象
ウェブサイト
メルマガ
ブログ
SNS
メールマガジン
＊＊＊
社員の言動

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スタートアップに向けたメッセージ
小さな組織こそブランドづくりは徹底しやすい。
ブランド戦略を組織と事業拡大の礎に！
• 小組織のほうが戦略と想いを共有しやすく、
施策の一貫性も保ちやすい
• 最初は創業メンバーの暗黙知でも良いが、
形式知にすることで権限移譲が可能になり、
組織拡大の礎となる

25
Ⅱ．【対談】ベンチャーにおける
ブランド戦略のリアル

26
ゲスト紹介
株式会社アイスタイルの創業（1999年）より携わり、 2004年から常勤取締役に
就任、2011年に取締役兼CFO（最高財務責任者）に就任（現任）。以来、
CIOシステム企画部部長、2社の子会社における代表取締役社長を歴任。
それ以前は、アンダーセンコンサルティング（現・アクセンチュア）、アーサー・D・リトル
（ジャパン）株式会社にて、主にハイテク企業・通信企業・政府機関に対して経
営戦略及びIT戦略に関するコンサルティング業務に携わる。
英国国立ブリストル大学（経営修士（MBA）終了）。
菅原敬
株式会社アイスタイル取締役兼CFO

27
アイスタイル菅原さんにお伺いしたいこと
ベンチャーの各ステージにおいて・・・
ベンチャーで起こりがちな課題～エピソード
アイスタイルで起きたこと、
それをどうやって乗り越えたか？

創業期
スタート
アップ
グロース～
レイター
上場後
企業
ブランディン
グ
• 会社名どうする
• 知名度アップ
→Blog/SNS発信
→社長露出
• 信頼度アップ
→ イベント参加
→有名人顧問、論文協力
•社員多様化
⇒ビジョンすり合せ合宿…
⇒チームワーク強化系施策…
⇒ベンチャー回帰施策…
サービス/
プロダクト
ブランディン
グ
• サービス名・
ドメイン名どうす
る
• サービス設計
⇒UX≒ブランド
• イメージ
キャラクター
• 知名度アップ
→対ユーザー
→対業界
（Web・化粧品）
• データ外部提供
⇒API、記事…
• プロダクト・ポートフォリオ
→サービス間の関係性・動線
• マス媒体の活用
⇒TVCM、スポンサー…
• 社名 vs
プロダクト名
• PR担当≒社長
• 広報部門立上げ
→社長⇒専任
⇒集約or分散
•子会社設立等で組織複雑化
⇒親・子会社名、グループ構造…
⇒広報・ブランディング組織整理

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【著者】川上慎市郎・山口義宏
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