本研究の目的は，論文の内容把握を支援するシステムの実現である.論文閲読者が論文の内容を的確に汲み取るためには，論文の意味的構造を理解し，その主張点を把握することが重要である.しかし，論文の記述方法は著者によって異なり，その構造を把握することは困難である.そこで，論文のアブストラクトを用いて本文の意味的構造を推定する手法を提案する.提案手法では，アブストラクトが定型的な要素列として表現されることに着目し，類似度に基づいてその各要素と対応づいた本文箇所を特定する.これにより，論文の意味的構造を推定し主張点の把握を容易にする.

1. アブストラクトの定型性に着目した
論文の構造推定に関する検討
関西大学大学院総合情報学研究科
玄道俊 松下光範

2. • 「関心のあるキーワードで検索して論文を探す」ことが一般的である
• 手軽に論文を検索，入手できるようになっている．
背景
一方で・・・
興味に合致した論文の収集や内容の効率的な把握は困難である
論文を探すとき・・・

3. • 論文の力点は必ずしもすべての論文で共通ではない
背景
論文を執筆するとき・・・
例えば・・・
論文A 論文B
新しい
手法の提案
力点
実験設計
力点

4. • 論文の力点は必ずしもすべての論文で共通ではない
背景
論文を執筆するとき・・・
例えば・・・
論文A 論文B
新しい
手法の提案
力点
実験設計
力点
力点は論文著者が主張する箇所だと考え
「主張点」と定義

5. • 同じ論文であっても読者によって価値を見出す箇所は異なる
背景
論文を読むとき・・・
例えば・・・
論文C 論文C
新しい
アルゴリズム
実験設計

6. • 同じ論文であっても読者によって価値を見出す箇所は異なる
背景
論文を読むとき・・・
例えば・・・
論文C 論文C
新しい
アルゴリズム
実験設計
論文を構造化し，
特定の箇所にアクセス可能にすることが必要

7. 目的
論文の内容を把握するための
支援システムの実現
論文の構造を推定し，
論文の主張点の把握を容易にする手法を検討
今回は・・・

8. 目的
論文の内容を把握するための
支援システムの実現
論文の構造を推定し，
論文の主張点の把握を容易にする手法を検討
今回は・・・
手段として，
アブストラクトに着目

9. •指示的側面
•報知的側面
アブストラクトの特長

10. •指示的側面
• 元の文章をより深く読むか選択する参照機能の側面
アブストラクト:指示的側面
提案手法
実験結果
参照
アブストラクト
本文

11. アブストラクト:報知的側面
アブストラクト
本文
•報知側面
• 元の文章をアブストラクトが代替えしているという側面
アブストラクト 代替え 本文

12. •指示的側面
• 元の文章をより深く読むか選択する参照機能の側面
•報知側面
• 元の文章をアブストラクトが代替えしているという側面
なぜアブストラクトを用いるか
アブストラクト単体で内容を把握できると同時に
本文への指示的な要約になっている
報知的な側面からアブストラクトには主張点が
まとめられているといえる

13. • アブストラクトは短文で構成されている
• 各文に役割が存在
なぜアブストラクトを用いるか
そのため，構造化が容易
アブストラクトの構造を指示的な側面で用いることで，
本文の構造化が可能

14. 1. 各役割の要素をアブストラクトに対し付与
2. アブストラクト各文と本文各文のベクトル値を求めること
3. アブストラクト各文と本文各文のベクトル値から類似度を算出すること
デザイン指針

15. 対象の論文
コミック工学分野の論文
• マルチフィールドな学問
• ex) 自然言語処理, 画像処理
• アブストラクトのみでは自身に必要な論文か判断が難し
い
「マンガ」，「漫画」，「コミック」，「アニメ」
ジャーナル論文6本と，コミック工学研究会14本
これらのキーワードが表題に含まれている

16. アブストラクトの要素ラベル付与
「現状」 「問題」 「提案」 「結果」
ラベル 文末表現 手掛かり語
現状 [進行]いる．，している． 近年，現在，普及，需要
問題 [否定]ない． しかし，難しい，必要
提案 [未来]する．
手法，開発，目的， 提案，
ために，そこで， 本研究，
本論文，本稿，議論
結果 [過去]する．
結果，傾向，知見， 得，[数
値]+倍，[数値]+%

17. アブストラクトの要素ラベル付与
「現状」 「問題」 「提案」 「結果」
継承語
[前文の固有名詞]+から これは
さらに 具体的に

18. ベクトル値の算出
Word2Vecを用い単語分散表現を行う
[0] 近年，マンガを読む・・・
[1] しかし，・・・・・・・・
[2] そこで，・・・・・・・・
[0] 近年，マンガを読む・・・
[1] しかし，・・・・・・・・
[2] そこで，・・・・・・・・
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
近年 マンガ 読む
単語
ベクトル
単語
ベクトル
単語
ベクトル
単語
ベクトル
平均を求める
文ベクトル
ベクトル値
ベクトル値
ベクトル値
ベクトル値
ベクトル値
ベクトル値
ベクトル値
ベクトル値
ベクトル値
ベクトル値
ベクトル値
総当りで
cos類似度を算出
アブストラクト 本文

19. •要素ラベルにおける，アブストラクトの構造の種類
•各要素の本文箇所の特定
結果

20. •要素ラベルにおける，アブストラクトの構造の種類
•各要素の本文箇所の特定
結果

21. • 連続して同じラベルが付与されている場合，統合してカテゴライズ
結果 -アブストラクトの構造の種類-
「現状」 「現状」 「提案」 「問題」
+ + +

22. • 連続して同じラベルが付与されている場合，統合してカテゴライズ
結果 -アブストラクトの構造の種類-
「現状」 「提案」 「問題」
+ +

23. 20本中15種類のラベル
「現状+提案」 4
「現状+問題+提案+結果」 2
「提案+問題+提案」 2
結果 -アブストラクトの構造の種類-

24. •要素ラベルにおける，アブストラクトの構造の種類
•各要素の本文箇所の特定
結果

25. 結果 -各要素の本文箇所の特定-
•論文を10等分し，1 10の領域に分ける
→各要素が本文のどの領域に出現しているか確認

26. 結果 -各要素の本文箇所の特定-
現状 問題
提案 結果
(領域)
(領域)
(領域)
(領域)
(本)
(本) (本)
(本)

27. 考察
•アブストラクトの構成が異なる場合の分布を確認
「現状+提案」 4
「現状+問題+提案+結果」 2
「提案+問題+提案」 2

28. 考察
「提案+問題+提案」 「現状+提案」
「現状+問題+提案+結果」
• 「現状+問題+提案+結果」で構成されている論文の
「問題」と「提案」が同じ段落内で記述されていた
1つの段落では同じトピックを扱っているため
「問題」と「提案」が密接に結びついている
「問題に対しての着想」が主張点と考えられる
(領域)
(本)
(領域)
(本)
(領域)
(本)

29. 今後の展望
論文整理のためのフレームワーク作成
近年，マンガを読む・・・
しかし，・・・・・・・・
そこで，・・・・・生成する．
アブストラクト 本文
近年，マンガを読む・・・
しかし，・・・・・・・・
そこで，・・・・・・・・
そこで，・・・・・・・・
・・GANを用い生成する．
作成
参照
問題タスク 「生成」
方法 「GAN」
論文A
フレームワーク
問題タスク 「生成」
方法 「word2vec」
論文B
フレームワーク
比較

30. 今後の展望
全体の俯瞰
→関連研究の執筆
方法3を
用いてみよう
フレームワーク
各方法で
整理
方法1
方法2
方法3

31. まとめ
目的
論文の構造を推定し，主張点の把握を容易にする手法を検討
提案
各役割の要素をアブストラクトに対し付与
アブストラクト各文と本文各文のベクトル値を求め類似度を算出
結果
「現状+問題+提案+結果」でアブストラクトが構成される論文は
「問題に対しての着想」が主張点であると考えられる
展望
保有している論文を整理するためのフレームワークの作成