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医学教育研修センター論文抄読会
「医学教育研究とは?」
Ringsted, C., Hodges, B., & Scherpbier, A. (2011). “The research
compass”: An introduction to ...
まとめ
医学教育研究とは医学教育上の一般的な
知見を深める営みである。
疑問を一般化するために、まず「理論的
枠組み」を構築し、そこからトピックを
絞り込んでリサーチクエスチョンを策定
する。
研究には探索、仮説検証、観察、橋渡し
の4種...
内容
1. なぜ医学教育研究をするか?
2. どのように問題点を一般化するか?
3. リサーチクエスチョンからどのように
研究手法を選ぶか?
4. 研究の種類
1) 探索的研究
2) 実験的研究
3) 観察研究
4) 橋渡し研究
1.なぜ医学教育研究をするか?
研究によって学習と教育に対する理解を
深める。
学術的興味がある。
医学教育学分野での地位確保をめざす。
教育財源に根拠付けする。
教育改革の際に、ステイクホルダーへの
説得力を高める。
具体的な問題点を一般化する
のが研究の第一歩
リサーチとは事例毎の具体的な問題に回
答することではなく、医学教育上の一般
的な疑問に関連した(=研究に値する)
問題に解答すること
研究成果を一般化できるかどうかが大事
どの程度実践上の文脈...
教育に「標準治療」はない
包括的な理論は研究対象外
医学教育研究のできること
新たな知見の追加
様々な現象の考察
様々な実践がどう(なぜ)機能したか
参考:理論には3段階ある
※数学を例に取ると:
 大理論=実数、虚数等の概念
 中範囲理論=定理
 実践理論=問題解法
大理論
中範囲理論
実践理論
 抽象度が高く、包括的、普遍的な
理論
 個別の具体的実践のみを対象と
した理論
...
2.どのように問題点を
一般化するか?
実践における個別の問題を「一般的な、
研究可能な問題」に変換したい
個別の問題が学問的にどの立ち位置に
あるかを認識しなければならない
「理論的枠組みの導入」
「リサーチクエスチョンの明示化」
理論的枠組み
(theoretical/conceptual framework)
構成要素
理論的枠組みを導入することで:
 リサーチクエスチョンと研究手法を適切に
選べるようになり、研究の妥当性を
担保する
 研究結果を考察するとき...
理論的枠組みを
構築するための文献検索
1) 問題点を包括するテーマを認識する(Fig.1)
2) テーマの定義や概念と関連する学術的機序
についてまとめる
※参考:理論的枠組みの例①
「医師育成カリキュラムについて議論するために、
”RIMEモデル”を用いる」
(Pangaro, 1997)
※参考:理論的枠組みの例②
「救命手技を指導された看護師が実践できるか、
”自己効力感”理論に基づいて検討する」
(Bandura, 1977)
リサーチクエスチョン(RQ)
の言語化
一般的なRQ、つづいて具体的なRQを言語
化する
RQを明示することで、適切な研究手法を
選択できるようになる
Openな質問(探索的)なら質的
Closedな質問(仮説検証的)なら量的
3.リサーチクエスチョンから
どのように研究手法を選ぶか?
仮説検証
効果予測モデル化
実践導入
実験研究
探索研究
観察研究
橋渡し研究
4.研究の種類
1)探索的研究
対象の行動や現象を分析してモデル化する
How, why, what〜なリサーチクエスチョン
予備研究
本研究で何を研究すべきかなどを洗い出す
手法
①記述的研究
②質的研究
③心理統計
①記述的研究
新しい教育手法の報告など
通常は研究とみなされない
学会報告レベルではよくみられるが、論文化
するのは難しい
一般化の視点を欠くことが多い
理論的枠組みにもとづいてRQを立てることで、
一般化を試みることはできる
デザ...
※参考:デザイン研究とアクションリサーチ
34
Figure 1. Predictive versus design-based research
The ultimate goal of design-based research to bu...
②質的研究
 参加者の感じた意味や経験を強調することで、
社会の現象を自然な状態で捉える見方を確立す
る(Pope & Mays, 1995)
 パラダイムとして、構成主義を用いる
 現実は社会や個人の文脈に左右されて構成されてお
り、文...
質的研究の特徴(量的研究との比較)
質的研究 量的研究
リサーチ
クエスチョン
開放型質問 閉鎖型質問
扱う材料 ことば 数値
解析方法
コード化
意味の濃縮→テーマ分類→ナラティブの構築
→各種解析手法の適用→個別解析
統計処理
研究の質
転...
③心理統計(尺度式質問)
 妥当性と信頼性が求められる
 妥当性 (validity)
表面的妥当性:測るべきものを
測っている印象を受けるか
内容妥当性:カリキュラム等との比較
基準関連妥当性:別の評価との関連
構成概念妥当性:尺...
尺度開発の手順
① 論文検索
 背景理論
 何が既に探索されているか
 既存の尺度が妥当かつ信頼できるか
② トピックの決定
③ 質問項目の決定
④ 尺度策定
⑤ 予備研究
⑥ 本研究
尺度の種類
名義尺度(nominal scale)
単にものの区別や分類のために用いられる。
順位尺度(ordinal scale)
順番を表わす。その間隔が等しいという保証は
ない。
間隔尺度(interval scale)
等しい間隔...
4.研究の種類
2)実験研究
 介入効果を比較する
 closedなリサーチクエスチョン
 ランダム化試験は難しい
 Quasi-experimental study(疑似実験)
 Placeboとの比較よりは「手法A vs 手法B」...
4.研究の種類
3)観察研究
因子間の関連性を予測する
因果関係は指摘できない
サンプルを意図的に選別しない
望まない教育方法を受けさせられなくてよい
厳密に設定した実験的環境での結果よりも、
real worldでの妥当性に直結しう...
観察研究の種類
コホート研究 事例対照研究
関連研究
(横断研究を例に) 参考:実験研究
4.研究の種類
4)橋渡し研究
医科学研究では:
基礎研究を臨床研究へ
臨床の経験的知識を臨床研究やガイドラインへ
臨床研究上の新知見を実臨床へ
医学教育研究では:
座学やシミュレーションで得た知識・技能が実
臨床でどう発揮されるか...
橋渡し研究の種類
1) 知識創造型研究
 システマティックレビュー
2) 知識導入型研究
 ガイドライン策定
3) 効率性研究
 教育理論、アウトカムの確立(development)
 プロセスの実行可能性(feasibility)
...
まとめ
医学教育研究とは医学教育上の一般的な
知見を深める営みである。
疑問を一般化するために、まず「理論的
枠組み」を構築し、そこからトピックを
絞り込んでリサーチクエスチョンを策定
する。
研究には探索、仮説検証、観察、橋渡し
の4種...
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医学教育研究とは?(AMEE guide No.56まとめ)

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Ringsted, C., Hodges, B., & Scherpbier, A. (2011). “The research compass”: An introduction to research in medical education: AMEE Guide No. 56. Medical Teacher, 33(56), 695–709. より

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医学教育研究とは?(AMEE guide No.56まとめ)

  1. 1. 医学教育研修センター論文抄読会 「医学教育研究とは?」 Ringsted, C., Hodges, B., & Scherpbier, A. (2011). “The research compass”: An introduction to research in medical education: AMEE Guide No. 56. Medical Teacher, 33(56), 695–709. より ※AMEE guide 欧州医学教育学会の公式誌”Medical Teacher”に定期的に載せられる 総説シリーズで、2016年末現在でNo.109まで掲載。
  2. 2. まとめ 医学教育研究とは医学教育上の一般的な 知見を深める営みである。 疑問を一般化するために、まず「理論的 枠組み」を構築し、そこからトピックを 絞り込んでリサーチクエスチョンを策定 する。 研究には探索、仮説検証、観察、橋渡し の4種類があり、リサーチクエスチョン に合わせて選択する。
  3. 3. 内容 1. なぜ医学教育研究をするか? 2. どのように問題点を一般化するか? 3. リサーチクエスチョンからどのように 研究手法を選ぶか? 4. 研究の種類 1) 探索的研究 2) 実験的研究 3) 観察研究 4) 橋渡し研究
  4. 4. 1.なぜ医学教育研究をするか? 研究によって学習と教育に対する理解を 深める。 学術的興味がある。 医学教育学分野での地位確保をめざす。 教育財源に根拠付けする。 教育改革の際に、ステイクホルダーへの 説得力を高める。
  5. 5. 具体的な問題点を一般化する のが研究の第一歩 リサーチとは事例毎の具体的な問題に回 答することではなく、医学教育上の一般 的な疑問に関連した(=研究に値する) 問題に解答すること 研究成果を一般化できるかどうかが大事 どの程度実践上の文脈に依存しているか
  6. 6. 教育に「標準治療」はない 包括的な理論は研究対象外 医学教育研究のできること 新たな知見の追加 様々な現象の考察 様々な実践がどう(なぜ)機能したか
  7. 7. 参考:理論には3段階ある ※数学を例に取ると:  大理論=実数、虚数等の概念  中範囲理論=定理  実践理論=問題解法 大理論 中範囲理論 実践理論  抽象度が高く、包括的、普遍的な 理論  個別の具体的実践のみを対象と した理論  ある条件を満たした状況に共通 して当てはまる理論
  8. 8. 2.どのように問題点を 一般化するか? 実践における個別の問題を「一般的な、 研究可能な問題」に変換したい 個別の問題が学問的にどの立ち位置に あるかを認識しなければならない 「理論的枠組みの導入」 「リサーチクエスチョンの明示化」
  9. 9. 理論的枠組み (theoretical/conceptual framework) 構成要素 理論的枠組みを導入することで:  リサーチクエスチョンと研究手法を適切に 選べるようになり、研究の妥当性を 担保する  研究結果を考察するときに一般性を主張しや すくなる 1) 実践上の個別の問題に当てはまる教育理論 2) 先行研究で既知の事項と未知の事項の整理 3) 研究上の考え、仮説
  10. 10. 理論的枠組みを 構築するための文献検索 1) 問題点を包括するテーマを認識する(Fig.1) 2) テーマの定義や概念と関連する学術的機序 についてまとめる
  11. 11. ※参考:理論的枠組みの例① 「医師育成カリキュラムについて議論するために、 ”RIMEモデル”を用いる」 (Pangaro, 1997)
  12. 12. ※参考:理論的枠組みの例② 「救命手技を指導された看護師が実践できるか、 ”自己効力感”理論に基づいて検討する」 (Bandura, 1977)
  13. 13. リサーチクエスチョン(RQ) の言語化 一般的なRQ、つづいて具体的なRQを言語 化する RQを明示することで、適切な研究手法を 選択できるようになる Openな質問(探索的)なら質的 Closedな質問(仮説検証的)なら量的
  14. 14. 3.リサーチクエスチョンから どのように研究手法を選ぶか? 仮説検証 効果予測モデル化 実践導入 実験研究 探索研究 観察研究 橋渡し研究
  15. 15. 4.研究の種類 1)探索的研究 対象の行動や現象を分析してモデル化する How, why, what〜なリサーチクエスチョン 予備研究 本研究で何を研究すべきかなどを洗い出す 手法 ①記述的研究 ②質的研究 ③心理統計
  16. 16. ①記述的研究 新しい教育手法の報告など 通常は研究とみなされない 学会報告レベルではよくみられるが、論文化 するのは難しい 一般化の視点を欠くことが多い 理論的枠組みにもとづいてRQを立てることで、 一般化を試みることはできる デザイン研究、アクションリサーチ、ケース スタディとすることもできる
  17. 17. ※参考:デザイン研究とアクションリサーチ 34 Figure 1. Predictive versus design-based research The ultimate goal of design-based research to build a stronger connection between educational research and real- world problems. An emphasis is placed on an iterative research process that does not just evaluate an innovative product or intervention, but systematically attempts to refine the innovation while also producing design principles Experiments designed to test hypotheses Theory refinement based on test results Application of theory by practitioners Hypotheses based upon observations and/or existing theories Analysis of practical problems by researchers and practitioners in collaboration Development of solutions informed by existing design principles and technological innovations Iterative cycles of testing and refinement of solutions in practice Reflection to produce “design principles” and enhance solution implementation Specification of new hypotheses Refinement of problems, solutions, methods, and design principles Predictive research Design-based researchデザイン研究:既存のデザイン原則に依拠し、その拡張を目指す アクションリサーチ:既存のデザイン原則に依拠せずに実践の確立を目指す 実践上の問題を 分析する 解決策を既存 のデザイン原 則に基づいて 立案する 実践を繰り返 す デザイン原則 に立ち戻り、 改善策を再検 討する 実践上の問題を分 析して、改善案を 立案する 実践を繰り返す データを収集して 結果を考察する
  18. 18. ②質的研究  参加者の感じた意味や経験を強調することで、 社会の現象を自然な状態で捉える見方を確立す る(Pope & Mays, 1995)  パラダイムとして、構成主義を用いる  現実は社会や個人の文脈に左右されて構成されてお り、文脈次第で多様な現実が存在しうるという立場  量的研究の対義語ではない  「ことば」を扱うか「数」を扱うか  量的研究と併用して使うこともできる 例) 量的研究「コンプライアンスの悪い糖尿病患者と疾患の進行の関係は?」 質的研究「なぜ患者はコンプライアンスが悪いのか?」 「コンプライアンスの悪い患者は疾患の進行についてどう捉えているのか?」
  19. 19. 質的研究の特徴(量的研究との比較) 質的研究 量的研究 リサーチ クエスチョン 開放型質問 閉鎖型質問 扱う材料 ことば 数値 解析方法 コード化 意味の濃縮→テーマ分類→ナラティブの構築 →各種解析手法の適用→個別解析 統計処理 研究の質 転移可能性 (transferability) 一般化可能性 (generalizability) データの質 信憑性(trustworthiness) 真正性(authenticity) 信頼性(reliability) 妥当性(validity) データ収集・ 分析の注意点 対象者の視点や経験を 幅広く捉える •「厚い」データ •理論的飽和 •輻輳化(triangulation) •再帰性(reflexivity) •研究ノートの導入 •複数メンバーでの検討 バイアスを排除する
  20. 20. ③心理統計(尺度式質問)  妥当性と信頼性が求められる  妥当性 (validity) 表面的妥当性:測るべきものを 測っている印象を受けるか 内容妥当性:カリキュラム等との比較 基準関連妥当性:別の評価との関連 構成概念妥当性:尺度の元になっている理論との 関連(他の妥当性の上位概念)  信頼性 (reliability) 再現性(回答者内、回答者間) 内的整合性(各問の回答傾向)
  21. 21. 尺度開発の手順 ① 論文検索  背景理論  何が既に探索されているか  既存の尺度が妥当かつ信頼できるか ② トピックの決定 ③ 質問項目の決定 ④ 尺度策定 ⑤ 予備研究 ⑥ 本研究
  22. 22. 尺度の種類 名義尺度(nominal scale) 単にものの区別や分類のために用いられる。 順位尺度(ordinal scale) 順番を表わす。その間隔が等しいという保証は ない。 間隔尺度(interval scale) 等しい間隔は等しい意味をもつ 比率尺度(ratio scale) 加減乗除が自由にできる(体重など)
  23. 23. 4.研究の種類 2)実験研究  介入効果を比較する  closedなリサーチクエスチョン  ランダム化試験は難しい  Quasi-experimental study(疑似実験)  Placeboとの比較よりは「手法A vs 手法B」  “SPICOT”を明確に定める(Haynes, 2006) Setting (状況) Population (参加者) Intervention (介入内容) Control (比較対照) Outcome Measuremen (結果) Time of Measurement (評価時期) 医学のEBMでいう”PICO” 文脈への言及
  24. 24. 4.研究の種類 3)観察研究 因子間の関連性を予測する 因果関係は指摘できない サンプルを意図的に選別しない 望まない教育方法を受けさせられなくてよい 厳密に設定した実験的環境での結果よりも、 real worldでの妥当性に直結しうる RQが長期的な視野に基づいていたり意図しな い効果を探索するものである場合は、より実行 しやすい 交絡因子を研究者が調整できない
  25. 25. 観察研究の種類 コホート研究 事例対照研究 関連研究 (横断研究を例に) 参考:実験研究
  26. 26. 4.研究の種類 4)橋渡し研究 医科学研究では: 基礎研究を臨床研究へ 臨床の経験的知識を臨床研究やガイドラインへ 臨床研究上の新知見を実臨床へ 医学教育研究では: 座学やシミュレーションで得た知識・技能が実 臨床でどう発揮されるか 教育理論が教育現場でどう適用されるか 単なる教育実践の評価ではなく、理論的枠 組みとRQに基づくこと
  27. 27. 橋渡し研究の種類 1) 知識創造型研究  システマティックレビュー 2) 知識導入型研究  ガイドライン策定 3) 効率性研究  教育理論、アウトカムの確立(development)  プロセスの実行可能性(feasibility)  実践導入後のフォローアップ(implementation)  教育効果の評価 (evaluation) 例) カークパトリックの 4段階評価モデル
  28. 28. まとめ 医学教育研究とは医学教育上の一般的な 知見を深める営みである。 疑問を一般化するために、まず「理論的 枠組み」を構築し、そこからトピックを 絞り込んでリサーチクエスチョンを策定 する。 研究には探索、仮説検証、観察、橋渡し の4種類があり、リサーチクエスチョン に合わせて選択する。

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