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多国籍の生徒・教師の相互の学びを促す
日本語教育プログラムの試み
―にほんご人フォーラム2019(ベトナム)の実践報告―
黒田朋斎(元・国際交流基金ベトナム日本文化交流センター)
中尾菜穂(元・国際交流基金ベトナム日本文化交流センター)
1
目次
1.実践の背景ー東南アジアの中等日本語教育の概要ー
2.実践の経緯ーにほんご人フォーラムの概要ー
3.実践の課題ーにほんご人フォーラム2019が目指したものー
4.何をして、どうなったか①ー生徒プログラムの報告ー
5.何をして、どうなったか②ー教師プログラムの報告ー
6.意見交換
7.参考資料
2
1.実践の背景
ー東南アジアの中等日本語教育の概要ー
・1962年~2009年の間に順次(インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム、フ
ィリピン)開始。主に第二外国語としての選択科目。
・学習者は開始が早い国ほど多い傾向。必修/選択、地域・学校方針にもよる
・教師資格は大学の教師養成課程、国の教師養成講座、教育能力試験等。かけも
ちもあり。
・国の教育方針には21世紀型スキル/人材育成重視の傾向がある。教科書も徐々
に改訂されつつある
・JFはカリキュラム・教科書作成、教師養成、教師研修等の支援で関わっている 3
2.実践の経緯
ー「にほんご人フォーラム」の概要ー
1)「にほんご人」とは
国際社会において日本語を使って何かを達成したいという意思を持ち、そのため
に日本語でコミュニケーションをする人々の総称(かめのり財団HPより)
4
2.実践の経緯
ー「にほんご人フォーラム」の概要ー
2)「にほんご人フォーラム(JSF)」とは
主催:独立行政法人国際交流基金・公益財団法人かめのり財団
事業期間:2012年~2021年(10年間)
事業目的:
1.若い世代に求められる能力の育成を目指した外国語教育のアプローチの共有
と実践
2.中等教育における「にほんご人」ネットワークの形成
3.若い世代の相互理解の促進とグローバル人材の育成
参加国:インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン、日本
主な活動:年に1回の集合フォーラム/各国での関連事業
5
2.実践の経緯
ー「にほんご人フォーラム」の概要ー
3)JSF2012~JSF2018の集合フォーラムの概要
第一フェーズ(2013~2015)
・21世紀型スキルを意識した学習アプローチへの参加教師の理解を促す
第二フェーズ(2016~2018)
・参加教師自身が新しいアプローチを考え、活動案を作成する
・21世紀型スキルの評価方法を考える
6
2.実践の経緯
ー「にほんご人フォーラム」の概要ー
4)JSF2012~JSF2018の成果
各国JF拠点が研修・キャンプ等の支援事業とのつながりを持たせることによって、
21世紀型スキルの概念の普及を中心とする中等教育支援の一端を担い、各国にお
ける中心的な日本語教師の育成、教師ネットワーク形成を実現しつつある
7
3.実践の課題
ー「にほんご人フォーラム2019」が目指したものー
1)JSF2018までの課題(主に教師プログラム)
・「21世紀型スキル」という概念は定着してきたが、本当に肚落ちしているか
・生徒プログラムと教師プログラムの関連性が薄い
2)JSF2018(インドネシア)からの学び
・「本物」が持つ影響力
8
3.実践の課題
ー「にほんご人フォーラム2019」が目指したものー
3)JFVNの中等教育担当日本語専門家としてJSF2019を企画するにあたって
・「自分が自分でいる自由があり、それを他者にも認める」という意味での多様
性が確保された場を作りたい。
・参加者の能力を見くびらない。
・体で学び、心が動くプログラムにしたい。
⇒ベトナムの中等支援方針にもとづく「JSF2019(ベトナム)」の実現
9
4.何をして、どうなったか①
ー生徒プログラムの報告ー
10
企画者(報告者)の生徒プログラムへの思い
ア.五感でベトナムと東南アジアを感じた上で自分を振り返り、「自分」とは何
かについての新たな視点を得てほしい
イ.心が動く、感動する瞬間をたくさん味わい、「世界は広い」「人生は面白
い」「生きる(大人になる)って楽しい」といった未来への希望を得てほしい
ウ.存分に力(日本語力や21世紀型スキルに限定しない、それぞれの力)を発揮
し、自分の持つ可能性を知り、さらに教師を驚かせてほしい
11
生徒プログラムの目的
ア.タスク達成により、「にほんご人」としての満足感と自
信を得る
イ.振り返りを通して、「にほんご人」としての自覚と将来
への希望を深める
12
生徒プログラムのテーマとタスク
テーマ「ふるさと」
・自分のふるさと=自分の家族、自分の地域、自分の国を語る
・相手のふるさとを知り、違いを知る/他者への寛容=自分自身の尊重
他者を通して自分を知る⇔異文化を通して自国の文化を知る
タスク:
多国籍グループによる「ふるさと」をテーマとした日本語劇の制作・上演
13
生徒プログラムの各活動と目標
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
1)世代・国籍をこえたさまざまな視点
からの「ふるさと」を知ることを通して、
自分を含む人・物事の多面性に気付くこ
とができる
14
生徒プログラムの各活動と目標
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
2)多様な情報やグループメンバーの意
見を統合して、独創的な日本語劇を制作
し上演できる。
3)劇制作において各自ができることを
率先して行い、劇の完成に貢献できる。
15
生徒プログラムの各活動と目標
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
4)他者から伝えられたことを通して、
自分に見えていない自分を知ることがで
きる。
5)フォーラムで体験したことを通じて
感じたことを自分の言葉で文章に書くこ
とができる
16
各活動の様子:事前課題の共有
17
各活動の様子:毎日の振り返り
18
各活動の様子:フィールドワーク
19
各活動の様子:講演会
20
各活動の様子:「ふるさとノート」
21
各活動の様子:「ふるさとノート」
22
各活動の様子:劇の制作
23
各活動の様子:劇の制作
24
各活動の様子:劇の上演
25
各活動の様子:1分間スピーチ
26
「思い」を「形」にする上での工夫
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
生徒の本気を引き出す①
大人も劇
27
「思い」を「形」にする上での工夫
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
生徒の本気を引き出す②
大人が聞いても/話しても/やって
も面白い活動
28
「思い」を「形」にする上での工夫
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
生徒の本気を引き出す③
上演会にお客様を招待&懇親会
29
「思い」を「形」にする上での工夫
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
生徒に余地を残す①
活動グループと部屋割りは固定
30
「思い」を「形」にする上での工夫
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
生徒に余地を残す②
役割分担、段取りは生徒が決める
31
「思い」を「形」にする上での工夫
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
生徒にくりかえし機会を提供する①
多様なスタイルの発表
32
「思い」を「形」にする上での工夫
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
生徒にくりかえし機会を提供する①
多様なスタイルの発表
33
「思い」を「形」にする上での工夫
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
生徒にくりかえし機会を提供する①
多様なスタイルの発表
34
「思い」を「形」にする上での工夫
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
生徒にくりかえし機会を提供する①
多様なスタイルの発表
35
「思い」を「形」にする上での工夫
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
生徒にくりかえし機会を提供する①
多様なスタイルの発表
36
「思い」を「形」にする上での工夫
生徒にくりかえし機会を提供する②
プログラム外での発表:交流会
37
「思い」を「形」にする上での工夫
インプット1:事前課題
インプット2:フィールドワーク
インプット3:講演会
アウトプット1:劇の制作・上演
アウトプット2:1分間スピーチ
アウトプット3:事後課題
生徒にくりかえし機会を提供する②
プログラム外での発表:遊び紹介
38
生徒はどうなったか
・劇の様子
・振り返りの様子
・1分間スピーチでのフレーズ
・アンケート
・事後課題作文
39
生徒はどうなったか
・劇の様子
・振り返りの様子
・1分間スピーチでのフレーズ
・アンケート
・事後課題作文
40
生徒はどうなったか
・劇の様子
・振り返りの様子
・1分間スピーチでのフレーズ
・アンケート
41
生徒はどうなったか
・1分間スピーチ(配布資料参照)
・アンケート(配布資料参照)
・事後課題作文(回覧資料参照)
42
生徒プログラムの実践の成果
・生徒一人一人にそれぞれの学びがあった
・生徒同士の絆が非常に強く結ばれた
・ベトナム人ファシリテーターの挑戦(※今回の報告では省略)
⇒JSF2019生徒プログラムの目的は概ね達成された
⇒生徒プログラム、及びJSF2019全体への企画者の思いも達成された
⇒ベトナム中等教育上でも、ファシリテーターが貴重な経験を得ることができた
43
実践を終えた上での新たな課題
●プログラム自体の課題⇒プログラム全体のゆとり
・ひとつひとつの活動にさらに時間が必要だった
・グループ内だけではなく、グループ間の振り返りがあるとなおよかった
・各振り返りにもさらに時間をかけ、丁寧に行えるとなおよかった
●プログラム運営上の課題⇒ファシリテーションの難しさ
・全体の進行を臨機応変に行うこと
・グループワークへの介入の仕方
・ファシリテーションをどう支援するか
44
企画者(報告者)の発見・考察
「力を発揮する」
⇒自分が成長したと感じられるような「学び」を得るには・・・
①やってみたい、という意欲、好奇心(不安、こわさは、むしろ良い兆候)
②やるのは自分自身であるという自覚(自分で決める、選ぶ)
③共に挑戦する仲間の存在(足りないところを補い合える信頼関係)
④適切な振り返りをサポートできる支援者の存在
⑤失敗や混乱を許容する場の保障(時間の余裕、チャンスの繰り返し)
45
5.何をして、どうなったか②
ー教師プログラムの報告ー
46
企画者(報告者)の教師プログラムへの思い
ア.同等の立場から「気持ち」を生徒に伝えてほしい。
イ.生徒の将来像を想像する。
ウ.21世紀型スキルの理解
エ.通常の日本語授業で21世紀型スキルを育成
47
めざしたもの:教師自らが考え、実践できる力をつけること
教師プログラムの目的:
1. どうして今後の社会を生き抜くために21世紀型スキルが
必要なのかを改めて考えて言語化し、生徒に伝える。
2. これまでJSFで実施してきた21世紀型スキルの育成を通常
授業に入れ込み、その授業を自ら改善する。
48
テーマ:私たちのはじまりの場所
タスク:
1. 生徒の観察→21世紀型スキル・努力と長所を発見
2. 劇を制作し生徒に対し上演
3. 生徒にメッセージ(かがやき)を伝達
4. 21世紀型スキル育成の要素を取り入れた授業案を作成
し実施
49
教師プログラムの全体像
8つのセッション
50
教師プログラムの全体像①
● 「見直す」セッション(事前課題)
● 「見る」セッション(生徒の観察)
● 「話し合う」セッション(ディスカッション)
● 「体験する」セッション(講演会・演劇教室)
51
教師プログラムの全体像②
● 「作る」セッション(授業案の作成と修正)
● 「表す」セッション
(劇・メッセージカード・にほんご人宣言の制作)
● 「伝える」セッション
(劇の上演、メッセージカードの贈呈、にほんご人宣言
の発表)
● 「する」セッション(事後課題) 52
教師プログラムの流れ
「話し合う」①
「表す」①~④
「見る」①~④ 「話し合う」②~⑦
「体験する」①②
「作る」①
「作る」② 「する」「伝える」①~③
※資料参照
2日目(8/3)
8日目(8/9)、9日目(8/10)
3日目(8/3)~6日目(8/7)
5日目(8/6)
6日目(8/7)~9日目
(8/10)
4日目(8/5)
「見直す」 事前課題
53
生徒
プログラム
教師
プログラム
講演会
演劇教室
生徒プログラムと教師プログラムの関連
※資料 5.6)参照
観察による
情報収集
生徒への
メッセージ
54
生徒プログラムと教師プログラムの関連
参加生徒
ファシリテーター
参加教師
参加各国JF日本語専門家
55
教師プログラムの内容
「話し合う」①
「表す」①~④
「見る」①~④ 「話し合う」②~⑦
「体験する」①②
「作る」①
「作る」② 「する」「伝える」①~③
「見直す」
56
「見直す」セッション(事前課題)
課題1:これからの社会と21世紀型スキルを
知る
課題2:授業活動紹介
課題3:2040年の生徒2人のストーリーを考
える
57
教師プログラムの内容
「話し合う」①
「表す」①~④
「見る」①~④ 「話し合う」②~⑦
「体験する」①②
「作る」①
「作る」② 「する」「伝える」①~③
21世紀型スキルを育成する意義を言
語化できる
58
「話し合う」セッション①
2040年の社会の予想 21世紀型スキルの内容
59
教師プログラムの内容
「話し合う」①
「表す」①~④
「見る」①~④ 「話し合う」②~⑦
「体験する」①②
「作る」①
「作る」② 「する」「伝える」①~③
21世紀型スキルを育成する意義を観察とディス
カッションから見直して言語化できる
生徒が活動のプロセスから学んでいることを見
つけ、言語化できる
60
「見る」セッション
何を見たのか?
1. 21世紀のにほんご人の特徴=生徒の21世紀型スキル
2. 生徒のかがやき=生徒の長所・努力
3. 授業のヒント
61
「見る」セッション
62
「見る」セッション
観察した生徒プログラムのセッション
1. 生徒の事前課題2(ふるさとについてのインタビュー)の共有
2. ホイアンでのフィールドワーク
3. フィールドワーク後の「印象に残ったホイアン」の共有
4. 劇の台本作り
5. 劇制作の振り返りの中での生徒同士のフィードバック
63
「見る」セッション→「話し合う」セッション
64
「話し合う」セッション
65
「話し合う」セッション
66
「話し合う」セッション
生徒のかがやきシート・21世紀のにほんご人シート
67
「話し合う」セッション
劇制作の振り返り
68
「話し合う」セッション
69
「話し合う」セッション
1. 観察から発見した生徒の21世紀型スキルおよび長所と
努力の共有と検討
2. 「見る」セッションから得られた授業へのヒント
3. 生徒の観察結果をふまえた「21世紀のにほんご人」像
4. 劇制作の振り返り
70
教師プログラムの内容
「話し合う」①
「表す」①~④
「見る」①~④ 「話し合う」②~⑦
「体験する」①②
「作る」①
「作る」② 「する」「伝える」①~③
71
「体験する」セッション
72
教師プログラムの内容
「話し合う」①
「表す」①~④
「見る」①~④ 「話し合う」②~⑦
「体験する」①②
「作る」①
「作る」② 「する」「伝える」①~③
生徒プログラムの意図、効
果を分析し、それをヒント
にして、教案に反映できる
73
「作る」セッション
事前課題2の実演
改善案について意見交換
(日本語学習面・21世紀型スキル)
事前課題2の改善
改善案共有
【同国グループ+JF日本語専門家】
「作る」セッション①
74
「作る」セッション
教科書の内容に基づいた
授業活動の作成
【同国グループ+JF日本語専門家】
ポスター発表と意見交換
(日本語学習面・21世紀型スキル)
授業活動の改善
【同国グループ+JF日本語専門家】
改善案共有
「作る」セッション②
75
「作る」セッション
76
教師プログラムの内容
「話し合う」①
「表す」①~④
「見る」①~④ 「話し合う」②~⑦
「体験する」①②
「作る」①
「作る」② 「する」「伝える」①~③
観察して得られた生徒の行動を、
生徒の学習意欲を高めるために意
味づけて、適切な表現で伝えるこ
とができる
77
「表す」セッション・「伝える」セッション
生徒のかがやきカード
78
「表す」セッション・「伝える」セッション
生徒のかがやきカード
79
「表す」セッション・「伝える」セッション
生徒のかがやきカード
80
「表す」セッション・「伝える」セッション
劇の制作と上演
81
「表す」セッション・「伝える」セッション
劇の制作と上演
82
「表す」セッション・「伝える」セッション
にほんご人宣言
83
「する」セッション
84
生徒と同じタスク=劇の制作と上演
「思い」を「形」にするための工夫
生徒のかがやきカード 「わたし」メッセージ
ア.同等の立場から「気持ち」を生徒に伝えてほしい。
同国のJF日本語専門家からの「かがやきカード」
85
「思い」を「形」にするための工夫
イ.生徒の将来像を想像する。
20年後の社会とそこに生きる生徒を具体的に想像
想像を劇でさらに具体化
86
「思い」を「形」にするための工夫
ウ.21世紀型スキルの理解
生徒から学ぶ
自分自身から学ぶ
87
「思い」を「形」にするための工夫
ウ.21世紀型スキルの理解
生徒から学ぶ
自分自身から学ぶ
88
経験から学ぶ
「思い」を「形」にするための工夫
ウ.21世紀型スキルの理解
● 「21世紀のにほんご人シート」「生徒のかがやきシ
ート」による観察結果の可視化と再構成
● 自らの劇制作・上演体験とその分析
89
「思い」を「形」にするための工夫
エ.通常の日本語授業で21世紀型スキルを育成
プログラムで学んだことを自分事にする
参加教師による「にほんご人宣言」と署名
90
教師はどうなったか
3つの意識
1. 自らの21世紀型スキル向上への意欲
2. 生徒の人間性・人間的成長に注目
3. 生徒の視点・立場を尊重
(配布資料参照)
91
(ア)参加教師の能動的な参加と相互尊重によって学び
が引き出された。
(イ)生徒と同様の体験によって21世紀型スキルおよび
生徒に対する理解が深まった。
成果
92
(ア)JSFの事業目的で目指している「若い世代に求められ
る能力」をATC21sが提唱した「21世紀型スキル」と同
一視して良いのか。
新たな課題
● 「21世紀型スキル」を前提とすることでそれを理解すること、
その枠の中に思考を制限してしまっている?
(イ)参加教師および参加教師をサポートする側の「21世
紀型スキル」・「若い世代に求められる能力」向上
93
● 学ぶべきものは、すべての参加者の中に既にある。
参加教師は、すべての参加者から学びを得ていた。
参加生徒=参加教師=各国のJF担当専門家=企画・実施者
企画・実施者(報告者)の発見・考察
94
すべてが学びの対象となるには?
① 他者への信頼(参加者同士も)
② 同等の関係の構築(参加者同士も)
③ 結論を決めない
④不親切さ/干渉を少なく
「参加者が混乱しないように」から「混乱歓迎」へ
何が相互の学びを引き起こしたか?
企画・実施者による…
95
6.意見交換
-報告側から聞いてみたいことー
1)「目標」について
・目標は必要か。あるいは、実施側の目標を明示する必要はどのくらいあるのか。
・参加者自身の目標と実施側の目標を区別したうえで実施側の目標をどのくらい達成しなければならな
いのか。
2)「学び」について
・学びがあることを保障するためにはどうすればいいか
・それぞれの学習者がそれぞれでありつつ学びが得られる場をどうやって実現するか
・さらに、どうすれば相乗効果を引き出せるのか
・研修参加者が研修で学んだことを実践に移すにはどんなフォローが必要か
3)「振り返り」について
・いい振り返りとはどんなものか、どうすすめればよいか(生徒・教師・実施側)
・実施側の目標に対する振り返りが自律学習につながるのか。 96
7.参考資料
<JSFに関して>
木谷 直之、簗島 史恵、二瓶 知子(2018)「ASEAN5か国の日本語教師たちによる21世紀型能力の評価-
『コラボレーション(Collaboration)』のルーブリックを作成する試み-」国際交流基金日本語教育
紀要14号
中尾 有岐(2016)「21世紀型スキル育成を目指した学習者体験型教師研修-タイ人中等教育教師の気づ
きと学び-」国際交流基金日本語教育紀要12号
中尾 有岐(2019)「共通言語が初級の多国籍集団の間に共創型対話は生まれたのか-東南アジア5か国と日
本人高校生によるプロジェクトワークの実践から-」国際交流基金日本語教育紀要15号
<ベトナムでの中等教育支援に関して>
久保田育美、中尾菜穂、黒田朋斎(2019)「ベトナム中学生日本語キャンプ2017の実践報告-日本語劇
の制作を通した「新しい自分」の発見を目指して-」国際交流基金日本語教育紀要15号
黒田朋斎、中尾菜穂(2019)「『学習者中心』の普及と教師の自立をめざした研修デザイン-ベトナム
中等日本語教育支援の再構築-」国際交流基金日本語教育紀要15号
97
謝辞
・かめのり財団
・これまでの各フォーラム実施機関、及び各国関係者
・ベトナムの共同実施専門家、事務方スタッフ
98

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