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〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町3-7-15-456
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1
メディアのろうコミュニティ描写に対する問題提起
特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスター
2023/07/24発行
特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスターは、日本において、「当事者による表象
(*)」が適切に行われず、結果として、メディアにおいて、ろう当事者やコミュニティの誤った描写が
行われている現状を問題視している。こういった現状に一石を投じたいとの想いから、全米ろう協
会発行の「Guidelines for Media Portrayal of the Deaf Community」の日本語訳を有志一
同で行うことにした。
本書は、全米ろう協会発行の「Guidelines for Media Portrayal of the Deaf Community」
の日本語訳であり、日本版ガイドライン(日本のメディア向け要望書)ではないことに留意された
い。特に、日米で、ろう・難聴に対する定義や、アイデンティティに関する考え方が大きく異なることも
あり、必ずしも本書が日本で適用可能であるとは限らないことに留意されたい。
例えば、アイデンティティに関わる訳語は、現在の日本で一般的に解釈される用語と同一ではな
い。最も頻出する「deaf and hard of hearing(ろう・難聴)」については、原文でも注釈がつけ
られている通り、「ろう者、難聴者、盲ろう者、中途失聴者、その他の何かしらの聴力損失を抱えてい
る者、他の障害を持つ者も含めて、コミュニティ全体を包括的に」指す言葉であるなど、解釈が日
米で大きく異なっている。
今後は、然るべき団体が、「メディアのろうコミュニティ描写をめぐるガイドライン」の日本語版を
作成する必要性があると考えている。
(*1) 特定の出来事や状況に関与している人々が、自分たちの経験や感情、意見を伝えること。当
事者自身が自己の立場や経験を表現し、メディアが正確に描写することで、より正確に理解される
機会を得ることができ、社会的な変化や政策決定のプロセスにおいて重要な要素となる。
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2
メディアのろうコミュニティ描写をめぐるガイドライン(和訳)
メディア[1]における表象(訳注1)は、ろう・難聴[2]コミュニティを含む、あらゆるコミュニティに関
する社会の認識を形成するうえで多大な影響力を持っている。メディアによる表象では、ろう・難聴コミ
ュニティについて、信憑性に欠け、歪められた見方で表現されていることが多すぎる。そして、この誤った
表象は、一般市民が、豊かな文化と言語を有するコミュニティについて、正しく理解する機会を奪うこと
になる。全米ろう協会(National Association of the Deaf: NAD)は、ろう・難聴者やコミュニティ
を取り上げるあらゆるメディアが、「私たちのことを、私たち抜きで決めないで」という言葉に従って、信
憑性があり、かつ当事者の体験したストーリーに基づいた丁寧な表象を行うことを強く求める。
歴史的に、メディアはろう者以外の人々と比較して、孤立し、機能不全であり、自立していない存在とし
て捉え、誤った伝え方をしてきた。しかし、現実のろう・難聴コミュニティは、言語的・文化的なマイノリティ
であり、そこには美しく豊かな伝統に満ちた人々の生活がある。また、ろうコミュニティの人々は、人種・
性別・指向・宗教・障害などを含めてあらゆる面で多様である。ろう・難聴コミュニティには非常に幅広
いコミュニケーション手段があるが、多くのろう者はアメリカ手話を第一言語としている。
メディアによるろう・難聴者やコミュニティの描写においては、医学的視点やろう・難聴が「矯正」もしく
は「治療」を要するかのような捉え方に焦点を当てるよりも、その文化的相違を認識するべきである。多
くのろう・難聴当事者自身は、テクノロジーや訓練による矯正が必要とは感じていない。メディア関係者
がろう・難聴者やコミュニティに関わるストーリーを取り上げる際には、医療・法律・社会・文化その他の
観点などに関わらず、ろう・難聴コミュニティの人々の体験したストーリーに基づいた視点に沿うように
留意するべきである。以下に列挙したルールがあらゆる問題点を網羅していると意図するわけではない
が、全米ろう協会はあらゆるメディア関係機関に対し、信憑性を高め、ろう・難聴者やコミュニティの当事
者の体験したストーリーに基づいた報道や取材のためのルールを推奨する。
1. メディアは、アクセシブルでなければならず、これはあらゆる状況において優先されるべきであ
る。メディア関係者がろう・難聴者に直接取材するにあたっては、いかなる場合でも、有資格の
手話通訳者の手配など、ろう・難聴者にとって最適なコミュニケーション手段が何であるか、ろ
う・難聴者本人に決定を委ねるために対話すべきである。手話通訳を利用するときは、メディア
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関係者とろう・難聴者の双方のために活用されるべきであり、手話通訳はろう・難聴者側のみ
が利用し頼る存在であると誤解されることのないように留意すべきである。アメリカ手話は固有
の文法、規則、構造を持つ言語であり、ただ英語を手話で表わしたものではない。手話通訳者
はアメリカ手話で表現されたものに最も近い英語表現を提供するため、メディア関係者は常に、
記事や映像を公開する前に、ろう・難聴者に直接、引用された発言や言い換えの表現について
確認を取らなければならない。
2. ろう・難聴者を言い表すあらゆる用語は、適切に最新の状態で表現されるべきである。「ろう者
(deaf)」「難聴者(hard of hearing)」「ろう・難聴者(deaf or hard of hearing / dea
f and hard of hearing)」といった用語を使用する。「つんぼ(deaf-mute)」「聴覚障害者
(hearing impaired)」「耳が不自由な人(hearing disabled)」は時代にそぐわない用語
で的確ではない。こうした侮辱的な用語は、現実の人物を正しく表現するより、その人の能力に
ついて先入観を作り出してしまうことになる。
3. ろう・難聴者の描き方は、聴者同様に、その人物の個性を正確に捉えることが基本でなければ
ならない。いかなるメディアも、「克服する」「感動する」「勇気ある」「励まされる」「高潔な」「特
別な」といった、憐れむような用語の使用は避けるべきである。また、メディアは、「悩まされてい
る」「犠牲者である」「苦しんでいる」といった、ろう・難聴者を劣ったものとする誤ったイメージを
助長するようなステレオタイプで、かつネガティブな用語は使用するべきではない。
4. メディアは、私たちに代わって発言しようとする善意の個人ではなく、ろう・難聴者からの直接の
反応、情報、意見に焦点を当てるべきである。これまで長く、通訳者、アドボケーター、教育者、そ
の他の支援者といった善意の関係者が、ろう・難聴コミュニティを代弁する形で公に発信してき
た。しかし、その他のあらゆるコミュニティもそうであるように、ろう・難聴者も自ら表現し、彼ら自
身の経験を語るべきである。あらゆる表象は、ろう・難聴者にとって有利な視点を反映し、尊重
されなければならない。つまり、仮にメディアがろう・難聴コミュニティの出来事や事象について、
誰かに取材を行う場合、それが直接的であろうと間接的であろうと、対象者はろう・難聴当事者
であるべきだ。
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5. ろう・難聴者は、他の人々と同様、ろう・難聴であることも含めて、多様なアイデンティティを持つ。
例えば、文化、民族、宗教、出身国、性別、性自認などが挙げられる。全米ろう協会はあらゆるメ
ディアに対し、あるストーリーを取り上げる際には、コミュニティ内でも直接その問題の影響を受
ける集団に属するろう・難聴者の視点を取り入れることを求める。例えば、アフリカ系アメリカ人
であるろう・難聴者のストーリーについては、アフリカ系アメリカ人であるろう・難聴者からの情
報提供や視点を取り入れるべきである。一人のろう・難聴者の経験そのものが、他のろう・難聴
者の経験と必ずしも同じであるとは限らない。
6. あらゆるオンライン・放送メディアは、ろう・難聴者が利用でき、アクセスしやすいものであるべき
だ。オンライン・放送動画には字幕が付与され、ラジオ番組は文字起こしが提供され、メディアの
イベントには字幕とともに通訳も用意されていなければならない。あらゆる映像は、とりわけろ
う・難聴コミュニティそのものを扱う場合には、常に字幕が付与されるべきである。米国には48
00万人(訳注2)のろう・難聴者が暮らしており、メディア媒体をアクセシブルにすることは法律
で義務付けられているだけでなく、視聴率を大幅に向上させる可能性がある。
全米ろう協会は、あらゆるメディア関係者に対して、ろう・難聴コミュニティとろう・難聴者について、そ
の他の文化に関してもそうであるように、信憑性があり、かつ当事者の体験に基づいた丁寧な表象を求
める。言語のバリアをなくすことで、メディア関係者は、社会に対してろうの人々をリアルに映すことが可
能になるだろう。ろう・難聴コミュニティは、他のコミュニティと同じように、固有の文化、視点、慣習を持
った、美しく複合的なコミュニティなのである。
[1] この意見表明において、「メディア」は、新聞、雑誌、電子ニュースレター、ニュース番組(地方・全
国)、雑誌、テレビなどのジャーナリズムに関わる機関(や関係者)を含む。「メディア」はまた、ソーシャ
ルメディアからデジタル記事まで、デジタルメディアも含む。
[2] 「ろう・難聴者」という用語は、ろう者、難聴者、盲ろう者、中途失聴者、その他の何かしらの聴力損
失を抱えている者、他の障害を持つ者も含めて、コミュニティ全体を包括的に指している。
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訳注1 リプレゼンテーション(representation)「表象」あるいは「再現」「上演」「代理」など。最も広
い意味においては、人間が経験を通じて生み出す観念や図像を含めたイメージ全般のこと。メディアに
関して使う場合は、社会を構成する人々の多様性を記事や番組などに反映することを意味する。
訳注2 基本的に身体障害者手帳の聴力損失の基準に従って判断する日本とは異なり、米国を含む多
くの国が世界保健機関(WHO)の聴力損失の基準に基づいているため、ろう・難聴者の統計数には大
きな差がある。
著作権は全米ろう協会に帰属します。
出典:Guidelines for Media Portrayal of the Deaf Community
https://www.nad.org/about-us/position-statements/guidelines-for-media-portra
yal-of-the-deaf-community/
—-------------------------------------------------—-----------------------
「メディアのろうコミュニティ描写をめぐるガイドライン」日本語翻訳チーム
発起人 :伊藤 芳浩
翻訳 :高山 亨太・杉山 安代
協力 :富田 望・牧野 麻奈絵・牧原 依里・湯山 洋子

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メディアのろうコミュニティ描写に対する問題提起

  • 1. 特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター 〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町3-7-15-456 E-mail: staff@infogapbuster.org URL: https://www.infogapbuster.org 1 メディアのろうコミュニティ描写に対する問題提起 特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスター 2023/07/24発行 特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスターは、日本において、「当事者による表象 (*)」が適切に行われず、結果として、メディアにおいて、ろう当事者やコミュニティの誤った描写が 行われている現状を問題視している。こういった現状に一石を投じたいとの想いから、全米ろう協 会発行の「Guidelines for Media Portrayal of the Deaf Community」の日本語訳を有志一 同で行うことにした。 本書は、全米ろう協会発行の「Guidelines for Media Portrayal of the Deaf Community」 の日本語訳であり、日本版ガイドライン(日本のメディア向け要望書)ではないことに留意された い。特に、日米で、ろう・難聴に対する定義や、アイデンティティに関する考え方が大きく異なることも あり、必ずしも本書が日本で適用可能であるとは限らないことに留意されたい。 例えば、アイデンティティに関わる訳語は、現在の日本で一般的に解釈される用語と同一ではな い。最も頻出する「deaf and hard of hearing(ろう・難聴)」については、原文でも注釈がつけ られている通り、「ろう者、難聴者、盲ろう者、中途失聴者、その他の何かしらの聴力損失を抱えてい る者、他の障害を持つ者も含めて、コミュニティ全体を包括的に」指す言葉であるなど、解釈が日 米で大きく異なっている。 今後は、然るべき団体が、「メディアのろうコミュニティ描写をめぐるガイドライン」の日本語版を 作成する必要性があると考えている。 (*1) 特定の出来事や状況に関与している人々が、自分たちの経験や感情、意見を伝えること。当 事者自身が自己の立場や経験を表現し、メディアが正確に描写することで、より正確に理解される 機会を得ることができ、社会的な変化や政策決定のプロセスにおいて重要な要素となる。
  • 2. 特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター 〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町3-7-15-456 E-mail: staff@infogapbuster.org URL: https://www.infogapbuster.org 2 メディアのろうコミュニティ描写をめぐるガイドライン(和訳) メディア[1]における表象(訳注1)は、ろう・難聴[2]コミュニティを含む、あらゆるコミュニティに関 する社会の認識を形成するうえで多大な影響力を持っている。メディアによる表象では、ろう・難聴コミ ュニティについて、信憑性に欠け、歪められた見方で表現されていることが多すぎる。そして、この誤った 表象は、一般市民が、豊かな文化と言語を有するコミュニティについて、正しく理解する機会を奪うこと になる。全米ろう協会(National Association of the Deaf: NAD)は、ろう・難聴者やコミュニティ を取り上げるあらゆるメディアが、「私たちのことを、私たち抜きで決めないで」という言葉に従って、信 憑性があり、かつ当事者の体験したストーリーに基づいた丁寧な表象を行うことを強く求める。 歴史的に、メディアはろう者以外の人々と比較して、孤立し、機能不全であり、自立していない存在とし て捉え、誤った伝え方をしてきた。しかし、現実のろう・難聴コミュニティは、言語的・文化的なマイノリティ であり、そこには美しく豊かな伝統に満ちた人々の生活がある。また、ろうコミュニティの人々は、人種・ 性別・指向・宗教・障害などを含めてあらゆる面で多様である。ろう・難聴コミュニティには非常に幅広 いコミュニケーション手段があるが、多くのろう者はアメリカ手話を第一言語としている。 メディアによるろう・難聴者やコミュニティの描写においては、医学的視点やろう・難聴が「矯正」もしく は「治療」を要するかのような捉え方に焦点を当てるよりも、その文化的相違を認識するべきである。多 くのろう・難聴当事者自身は、テクノロジーや訓練による矯正が必要とは感じていない。メディア関係者 がろう・難聴者やコミュニティに関わるストーリーを取り上げる際には、医療・法律・社会・文化その他の 観点などに関わらず、ろう・難聴コミュニティの人々の体験したストーリーに基づいた視点に沿うように 留意するべきである。以下に列挙したルールがあらゆる問題点を網羅していると意図するわけではない が、全米ろう協会はあらゆるメディア関係機関に対し、信憑性を高め、ろう・難聴者やコミュニティの当事 者の体験したストーリーに基づいた報道や取材のためのルールを推奨する。 1. メディアは、アクセシブルでなければならず、これはあらゆる状況において優先されるべきであ る。メディア関係者がろう・難聴者に直接取材するにあたっては、いかなる場合でも、有資格の 手話通訳者の手配など、ろう・難聴者にとって最適なコミュニケーション手段が何であるか、ろ う・難聴者本人に決定を委ねるために対話すべきである。手話通訳を利用するときは、メディア
  • 3. 特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター 〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町3-7-15-456 E-mail: staff@infogapbuster.org URL: https://www.infogapbuster.org 3 関係者とろう・難聴者の双方のために活用されるべきであり、手話通訳はろう・難聴者側のみ が利用し頼る存在であると誤解されることのないように留意すべきである。アメリカ手話は固有 の文法、規則、構造を持つ言語であり、ただ英語を手話で表わしたものではない。手話通訳者 はアメリカ手話で表現されたものに最も近い英語表現を提供するため、メディア関係者は常に、 記事や映像を公開する前に、ろう・難聴者に直接、引用された発言や言い換えの表現について 確認を取らなければならない。 2. ろう・難聴者を言い表すあらゆる用語は、適切に最新の状態で表現されるべきである。「ろう者 (deaf)」「難聴者(hard of hearing)」「ろう・難聴者(deaf or hard of hearing / dea f and hard of hearing)」といった用語を使用する。「つんぼ(deaf-mute)」「聴覚障害者 (hearing impaired)」「耳が不自由な人(hearing disabled)」は時代にそぐわない用語 で的確ではない。こうした侮辱的な用語は、現実の人物を正しく表現するより、その人の能力に ついて先入観を作り出してしまうことになる。 3. ろう・難聴者の描き方は、聴者同様に、その人物の個性を正確に捉えることが基本でなければ ならない。いかなるメディアも、「克服する」「感動する」「勇気ある」「励まされる」「高潔な」「特 別な」といった、憐れむような用語の使用は避けるべきである。また、メディアは、「悩まされてい る」「犠牲者である」「苦しんでいる」といった、ろう・難聴者を劣ったものとする誤ったイメージを 助長するようなステレオタイプで、かつネガティブな用語は使用するべきではない。 4. メディアは、私たちに代わって発言しようとする善意の個人ではなく、ろう・難聴者からの直接の 反応、情報、意見に焦点を当てるべきである。これまで長く、通訳者、アドボケーター、教育者、そ の他の支援者といった善意の関係者が、ろう・難聴コミュニティを代弁する形で公に発信してき た。しかし、その他のあらゆるコミュニティもそうであるように、ろう・難聴者も自ら表現し、彼ら自 身の経験を語るべきである。あらゆる表象は、ろう・難聴者にとって有利な視点を反映し、尊重 されなければならない。つまり、仮にメディアがろう・難聴コミュニティの出来事や事象について、 誰かに取材を行う場合、それが直接的であろうと間接的であろうと、対象者はろう・難聴当事者 であるべきだ。
  • 4. 特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター 〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町3-7-15-456 E-mail: staff@infogapbuster.org URL: https://www.infogapbuster.org 4 5. ろう・難聴者は、他の人々と同様、ろう・難聴であることも含めて、多様なアイデンティティを持つ。 例えば、文化、民族、宗教、出身国、性別、性自認などが挙げられる。全米ろう協会はあらゆるメ ディアに対し、あるストーリーを取り上げる際には、コミュニティ内でも直接その問題の影響を受 ける集団に属するろう・難聴者の視点を取り入れることを求める。例えば、アフリカ系アメリカ人 であるろう・難聴者のストーリーについては、アフリカ系アメリカ人であるろう・難聴者からの情 報提供や視点を取り入れるべきである。一人のろう・難聴者の経験そのものが、他のろう・難聴 者の経験と必ずしも同じであるとは限らない。 6. あらゆるオンライン・放送メディアは、ろう・難聴者が利用でき、アクセスしやすいものであるべき だ。オンライン・放送動画には字幕が付与され、ラジオ番組は文字起こしが提供され、メディアの イベントには字幕とともに通訳も用意されていなければならない。あらゆる映像は、とりわけろ う・難聴コミュニティそのものを扱う場合には、常に字幕が付与されるべきである。米国には48 00万人(訳注2)のろう・難聴者が暮らしており、メディア媒体をアクセシブルにすることは法律 で義務付けられているだけでなく、視聴率を大幅に向上させる可能性がある。 全米ろう協会は、あらゆるメディア関係者に対して、ろう・難聴コミュニティとろう・難聴者について、そ の他の文化に関してもそうであるように、信憑性があり、かつ当事者の体験に基づいた丁寧な表象を求 める。言語のバリアをなくすことで、メディア関係者は、社会に対してろうの人々をリアルに映すことが可 能になるだろう。ろう・難聴コミュニティは、他のコミュニティと同じように、固有の文化、視点、慣習を持 った、美しく複合的なコミュニティなのである。 [1] この意見表明において、「メディア」は、新聞、雑誌、電子ニュースレター、ニュース番組(地方・全 国)、雑誌、テレビなどのジャーナリズムに関わる機関(や関係者)を含む。「メディア」はまた、ソーシャ ルメディアからデジタル記事まで、デジタルメディアも含む。 [2] 「ろう・難聴者」という用語は、ろう者、難聴者、盲ろう者、中途失聴者、その他の何かしらの聴力損 失を抱えている者、他の障害を持つ者も含めて、コミュニティ全体を包括的に指している。
  • 5. 特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター 〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町3-7-15-456 E-mail: staff@infogapbuster.org URL: https://www.infogapbuster.org 5 訳注1 リプレゼンテーション(representation)「表象」あるいは「再現」「上演」「代理」など。最も広 い意味においては、人間が経験を通じて生み出す観念や図像を含めたイメージ全般のこと。メディアに 関して使う場合は、社会を構成する人々の多様性を記事や番組などに反映することを意味する。 訳注2 基本的に身体障害者手帳の聴力損失の基準に従って判断する日本とは異なり、米国を含む多 くの国が世界保健機関(WHO)の聴力損失の基準に基づいているため、ろう・難聴者の統計数には大 きな差がある。 著作権は全米ろう協会に帰属します。 出典:Guidelines for Media Portrayal of the Deaf Community https://www.nad.org/about-us/position-statements/guidelines-for-media-portra yal-of-the-deaf-community/ —-------------------------------------------------—----------------------- 「メディアのろうコミュニティ描写をめぐるガイドライン」日本語翻訳チーム 発起人 :伊藤 芳浩 翻訳 :高山 亨太・杉山 安代 協力 :富田 望・牧野 麻奈絵・牧原 依里・湯山 洋子