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特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター
〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町 3-7-15-456
E-mail: staff@infogapbuster.org
URL︓ https://www.infogapbuster.org
2020 年 5 ⽉ 20 ⽇
総務委員会 御中
特定⾮営利活動法⼈ インフォメーションギャップバスター
理事⻑ 伊藤 芳浩
「聴覚障害者等による電話の利⽤の円滑化に関する法律案」についての要望
貴委員会におかれましては、特定⾮営利活動法⼈インフォメーションギャップバスター(以
下、IGB)のコミュニケーションバリアフリー化推進活動にご理解を頂き、厚くお礼申し上げま
す。
IGB は、主に聴覚障害などによりコミュニケーションに困難を覚える会社員や専⾨職で構
成されるコミュニケーションバリアフリーを推進する団体です。当団体には、業務や⽣活で電
話が使⽤できないために、職場での活躍の範囲が狭められ、また、⽣活上様々な困難と不
便を経験した本⼈及び家族などのメンバーで構成されています。
2013 年度に⽇本財団が「電話リレーサービスモデルプロジェクト」を開始した際は、当団
体メンバーを含む全国の聴覚障害者が積極的に活⽤し、リアルタイムでコミュニケーションで
きることの素晴らしさを実感するとともに、利⽤時間の制限や緊急電話(警察、消防、救
急など)ができないなどの多くの課題があることに気付きました。
そして、2014 年度より「電話リレーサービス啓発プロジェクト」を⽴ち上げ、電話リレーサー
ビスの早期公的サービス化・24 時間 365 ⽇対応を求める旨の署名を集めて、2017 年
7 ⽉ 12 ⽇に総務省に電話リレーサービスの【24 時間 365 ⽇対応/公的サービス化】の
要望の署名 8,096 筆を提出いたしました。
その後、講演・シンポジウム・展⽰会(対象はコールセンター企業など)出展により、聴覚
障害を持つ当事者、その関係者(通訳者、家族など)、電話応対を⾏う⺠間企業に対
して、普及啓発活動をしてまいりました。その対象は、延べ約 7,000 名(講演・シンポジウ
ム︓約 700 名、展⽰会︓約 6,300 名へ啓発パンフレットの配布)となっております。
つきましては、IGB として、審議中の「聴覚障害者等による電話の利⽤の円滑化に関す
る法律案」に関しては、聴覚障害者の⻑年にわたる強い要望である電話リレーサービスが公
的なサービスとして実現するものと期待しております。
しかし、電話リレーサービスが折⾓スタートしても、聴覚障害者が問い合わせや⼿続きなど
の⽣活上の重要⼿段として活⽤する上で、円滑に利⽤できるための体制が整っているとは
特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター
〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町 3-7-15-456
E-mail: staff@infogapbuster.org
URL︓ https://www.infogapbuster.org
現状では⾔えません。このままでは、聞こえる⼈と対等に社会的インフラである電話を使⽤す
ることができないことが想定されるため、本法案の審議にあたり下記の通り要望いたします。
記
・ 電話リレーサービスの架電先の事業者(企業や団体など)に対しても【電話の利⽤の
円滑化】が責務であることを明確にしてください
・ 国⺠の理解や認知向上のための教育・広報の具体的施策について、当事者を含め
て、議論の上、決定するプロセスを速やかにはじめてください
IGB では、本年 4 ⽉ 10 ⽇〜4 ⽉ 23 ⽇に、現⾏の「電話リレーサービス」(⽇本財団
の電話リレーサービスモデルプロジェクト)利⽤者に対する調査を⾏い、計 126 名の回答を
得ました。その結果、「電話リレーサービス」を利⽤して、企業⾦融機関などの電話窓⼝に
架電した場合、下記の通り、①本⼈確認を断られる②応対を拒否される③「電話リレーサ
ービス」の説明に⻑時間かかる、などの課題があることが判明しました。(付録参照)
• 44%の⽅が、本⼈確認を本⼈でないとダメと断られた経験があり、そのうち
1/3 以上が代替⼿段の提⽰も受けなかった。断られたケースの7割以上が、
⾦融系の窓⼝である。「電話リレーサービス」で本⼈確認可能とする内規がないケー
スが多い。(*)⾳声通話だと1分程度で済むものが、郵便でないとダメだと⾔われ
て、2週間かかってしまうケースもあった。
• 約4割の⽅が、「電話リレーサービス」を利⽤して架電した際、架電先への説明
などのために、本題に⼊るまでに 3〜10 分待たされ、最悪のケースでは、30 分以
上待たされたケースもあった。
• 約2割の⽅が、「電話リレーサービス」を利⽤して架電した際、通話応対を拒否
された経験があった。いたずら電話、迷惑電話などと誤解されることが多い。
(*) ⾦融庁が 2019 年に調査した結果では、全⾦融機関(1,304 機関)のうち、「聴
覚障がい者からの連絡について、『電話リレーサービス』を⽤いた連絡でも対応しているか。」
ではたったの 3.4%しか対応していないという問題が判明しています。
https://www.fsa.go.jp/news/30/ginkou/20190802-2/20190802-2.html
特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター
〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町 3-7-15-456
E-mail: staff@infogapbuster.org
URL︓ https://www.infogapbuster.org
障害者差別解消法は、全ての国⺠が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相
互に⼈格と個性を尊重し合いながら共⽣する社会の実現に向け、障害を理由とする差別
の解消を推進することを⽬的として制定されています。
前出の①本⼈確認を断られる②応対を拒否される③「電話リレーサービス」の説明に⻑
時間かかるといった課題については、いずれも共⽣する社会の実現につながらないケースとな
っており、本法律の施⾏にあたっては是正が必要です。
「聴覚障害者等による電話の利⽤の円滑化に関する法律案」では、国に対して【電話の
利⽤の円滑化】を⾏うことを責務とすることが求められていますが、事業者に対しては明⽰さ
れていないため、本法案では、電話応対窓⼝を持つ事業者側が、電話リレーサービスを利
⽤した架電に対して、本⼈確認を受け⼊れるなどの義務が明確になっておらず、聴覚障害
者の円滑な利⽤に⽀障が⽣ずる恐れがあると考えます。従いまして、事業者に対しても、
【電話の利⽤の円滑化】を⾏うことを責務として明確にしていただくよう、要望いたします。
特に、電話による本⼈確認においては、⾳声通話でもなりすましの危険性はあり、電話リ
レーサービスのオペレーター(通訳)を介した架電の場合、危険性が増すという合理的理
由は考えられません。電話リレーサービスを介した架電は、本⼈からの架電と同等に扱ってい
ただけるよう、要望いたします。
また、3条2項で国の責務として、「教育活動、広報活動等を通じて…国⺠の理解を
深めるとともに、その実施に関する国⺠の協⼒を求めるよう努めなければならない」とあります
が、2021 年度に電話リレーサービスが開始するまでに、国⺠の⼗分な理解が得られない
と、電話リレーサービスを利⽤した架電のたびに、架電先から電話リレーサービスについての
説明を求められる可能性が⾼いことが憂慮されます。従って、可能な限り早く、国⺠の理解
を得るための教育・広報の具体的施策について、当事者を含めて、議論の上、決定するプ
ロセスを開始することを強く要望いたします。
―以上―
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付録︓「電話リレーサービス」*
利⽤者に対する調査結果
はい
44%
いいえ
56%
電話リレーサービスを利⽤した時に、
本⼈でないとダメと断られたことはあり
ますか︖
0 10 20 30 40
家族など聞こえる⼈に代
わってくださいと⾔われた
代替⼿段の提案なし
メールや⼿紙など代替⼿
段を提案された
電話リレーサービスを利⽤した時に、本
⼈でないとダメと断られた場合、代替
⼿段の提案はありましたか︖
(複数選択可)
0 10 20 30 40 50
クレジットカード会社
銀⾏
保険会社
コールセンター
通販会社
不動産会社(アパートなど)
携帯電話
公的機関
電話リレーサービスを利⽤した時に、本
⼈でないとダメと断られた際に
断られた先は以下のいずれかですか︖
(複数選択可)
はい
39%
いいえ
61%
電話リレーサービスを使⽤した時に、
オペレーターと相⼿の間でやりとり
(電話リレーサービスの説明など)
が発⽣して、待たされたことはありま
すか︖
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* ⽇本財団電話リレーサービスモデルプロジェクトで提供している電話リレーサービス
はい
19%
いいえ
81%
電話リレーサービスを使⽤した時に、相
⼿に通話を切られたことはありますか︖

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  • 2. 特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター 〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町 3-7-15-456 E-mail: staff@infogapbuster.org URL︓ https://www.infogapbuster.org 現状では⾔えません。このままでは、聞こえる⼈と対等に社会的インフラである電話を使⽤す ることができないことが想定されるため、本法案の審議にあたり下記の通り要望いたします。 記 ・ 電話リレーサービスの架電先の事業者(企業や団体など)に対しても【電話の利⽤の 円滑化】が責務であることを明確にしてください ・ 国⺠の理解や認知向上のための教育・広報の具体的施策について、当事者を含め て、議論の上、決定するプロセスを速やかにはじめてください IGB では、本年 4 ⽉ 10 ⽇〜4 ⽉ 23 ⽇に、現⾏の「電話リレーサービス」(⽇本財団 の電話リレーサービスモデルプロジェクト)利⽤者に対する調査を⾏い、計 126 名の回答を 得ました。その結果、「電話リレーサービス」を利⽤して、企業⾦融機関などの電話窓⼝に 架電した場合、下記の通り、①本⼈確認を断られる②応対を拒否される③「電話リレーサ ービス」の説明に⻑時間かかる、などの課題があることが判明しました。(付録参照) • 44%の⽅が、本⼈確認を本⼈でないとダメと断られた経験があり、そのうち 1/3 以上が代替⼿段の提⽰も受けなかった。断られたケースの7割以上が、 ⾦融系の窓⼝である。「電話リレーサービス」で本⼈確認可能とする内規がないケー スが多い。(*)⾳声通話だと1分程度で済むものが、郵便でないとダメだと⾔われ て、2週間かかってしまうケースもあった。 • 約4割の⽅が、「電話リレーサービス」を利⽤して架電した際、架電先への説明 などのために、本題に⼊るまでに 3〜10 分待たされ、最悪のケースでは、30 分以 上待たされたケースもあった。 • 約2割の⽅が、「電話リレーサービス」を利⽤して架電した際、通話応対を拒否 された経験があった。いたずら電話、迷惑電話などと誤解されることが多い。 (*) ⾦融庁が 2019 年に調査した結果では、全⾦融機関(1,304 機関)のうち、「聴 覚障がい者からの連絡について、『電話リレーサービス』を⽤いた連絡でも対応しているか。」 ではたったの 3.4%しか対応していないという問題が判明しています。 https://www.fsa.go.jp/news/30/ginkou/20190802-2/20190802-2.html
  • 3. 特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター 〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町 3-7-15-456 E-mail: staff@infogapbuster.org URL︓ https://www.infogapbuster.org 障害者差別解消法は、全ての国⺠が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相 互に⼈格と個性を尊重し合いながら共⽣する社会の実現に向け、障害を理由とする差別 の解消を推進することを⽬的として制定されています。 前出の①本⼈確認を断られる②応対を拒否される③「電話リレーサービス」の説明に⻑ 時間かかるといった課題については、いずれも共⽣する社会の実現につながらないケースとな っており、本法律の施⾏にあたっては是正が必要です。 「聴覚障害者等による電話の利⽤の円滑化に関する法律案」では、国に対して【電話の 利⽤の円滑化】を⾏うことを責務とすることが求められていますが、事業者に対しては明⽰さ れていないため、本法案では、電話応対窓⼝を持つ事業者側が、電話リレーサービスを利 ⽤した架電に対して、本⼈確認を受け⼊れるなどの義務が明確になっておらず、聴覚障害 者の円滑な利⽤に⽀障が⽣ずる恐れがあると考えます。従いまして、事業者に対しても、 【電話の利⽤の円滑化】を⾏うことを責務として明確にしていただくよう、要望いたします。 特に、電話による本⼈確認においては、⾳声通話でもなりすましの危険性はあり、電話リ レーサービスのオペレーター(通訳)を介した架電の場合、危険性が増すという合理的理 由は考えられません。電話リレーサービスを介した架電は、本⼈からの架電と同等に扱ってい ただけるよう、要望いたします。 また、3条2項で国の責務として、「教育活動、広報活動等を通じて…国⺠の理解を 深めるとともに、その実施に関する国⺠の協⼒を求めるよう努めなければならない」とあります が、2021 年度に電話リレーサービスが開始するまでに、国⺠の⼗分な理解が得られない と、電話リレーサービスを利⽤した架電のたびに、架電先から電話リレーサービスについての 説明を求められる可能性が⾼いことが憂慮されます。従って、可能な限り早く、国⺠の理解 を得るための教育・広報の具体的施策について、当事者を含めて、議論の上、決定するプ ロセスを開始することを強く要望いたします。 ―以上―
  • 4. 特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター 〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町 3-7-15-456 E-mail: staff@infogapbuster.org URL︓ https://www.infogapbuster.org 付録︓「電話リレーサービス」* 利⽤者に対する調査結果 はい 44% いいえ 56% 電話リレーサービスを利⽤した時に、 本⼈でないとダメと断られたことはあり ますか︖ 0 10 20 30 40 家族など聞こえる⼈に代 わってくださいと⾔われた 代替⼿段の提案なし メールや⼿紙など代替⼿ 段を提案された 電話リレーサービスを利⽤した時に、本 ⼈でないとダメと断られた場合、代替 ⼿段の提案はありましたか︖ (複数選択可) 0 10 20 30 40 50 クレジットカード会社 銀⾏ 保険会社 コールセンター 通販会社 不動産会社(アパートなど) 携帯電話 公的機関 電話リレーサービスを利⽤した時に、本 ⼈でないとダメと断られた際に 断られた先は以下のいずれかですか︖ (複数選択可) はい 39% いいえ 61% 電話リレーサービスを使⽤した時に、 オペレーターと相⼿の間でやりとり (電話リレーサービスの説明など) が発⽣して、待たされたことはありま すか︖
  • 5. 特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター 〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町 3-7-15-456 E-mail: staff@infogapbuster.org URL︓ https://www.infogapbuster.org * ⽇本財団電話リレーサービスモデルプロジェクトで提供している電話リレーサービス はい 19% いいえ 81% 電話リレーサービスを使⽤した時に、相 ⼿に通話を切られたことはありますか︖