記者会見資料

1. オリパラが生み出したレガシーを今後も継続して活用を！
NPO 法人インフォメーションギャップバスター理事長
伊藤 芳浩
私はオリンピック開会式を字幕付きで見ていたが、タイムラグがあるので、説明が出たタイミン
グでパフォーマンスが終わってしまっているので、リアルタイムで楽しむことができませんでし
た。
「場の共有」という言葉があります。何かのイベントに参加したり、見たりするときに、その場の
雰囲気を味わったり、共感したりする意味があります。
そういった意味では、私は聴覚による情報ではなく、視覚による情報を中心に生きているため、
残念ながら、今回、場の共有にはなりませんでした。多くの聴覚障害者も同様に感じた方は多
くいらっしゃいます。
「多様性と調和」を掲げているオリンピックなのに、なぜこういうことが起きるのか凄く疑問を
持っていました。
そこで、手話推進議連と一緒に各所に要望活動を実施しました。全日本ろうあ連盟をはじめ、
各団体などからも同じような要望が出ており、多くの人の声を反映した形で、オリンピック閉
会式から、E テレにろう通訳がつくといった形になりました。
国民的イベントにろう通訳がつくのははじめての試みということでしたが、ポジティブな意見
が多いものの、ネガティブな意見もあり、多様な反応が見られました。
日本には、日本語だけでなく手話という言語もあります。ろう通訳は、手話を第一言語として
いるろう者により手話を表現しているため、自然な感じで情報が伝わりました。
私自身、オリンピック閉会式、パラリンピック開会式・閉会式でろう通訳を見ましたが、普段自
分が使っている言語が出てくるので、すごく内容を理解できて、初めて、「一体感」を感じるこ
とができました。
音声、字幕、手話など情報を伝える手段がありますが、今回は、総合テレビは主に音声と字幕、
E テレはと音声と字幕とろう通訳となっていて、別々になっていますが、「多様性と調和」の考

2. え方からすると、違和感があります。
同じ場、すなわち、同じチャンネルの中で、情報を伝える手段を視聴者が選べるようにするこ
とが「場の共有」につながります。
分け隔てるのではなく、同じ場で、多様な手段を提供するのが「多様性と調和」につながります。
今回、新しい試みということで、多様な意見が出ました。今後は、これまでコロナ会見などで活
躍していた手話通訳者なども含めて、「多様な情報伝達手段」をどのように提供していくのか、
当事者と放送関係者の間で建設的な対話がなされていくことを願っています。
「多様な情報伝達手段」を検討する際は、「合理的配慮」という考え方に基づいて、多様なニー
ズに対応する側の事情に配慮しつつ、バランスのよい対応を進めていく必要があると考えて
います。
「寛容」と「選択」は「共生社会」に必要なキーワードだと考えています。
多様性に対して社会が寛容になり、また、音声、字幕、聴者による手話通訳やろう者による手
話通訳など多様な情報伝達手段などが選択可能になることで、共生社会へ一歩進むことにな
ると考えています。
「オリンピック・パラリンピックが生み出したレガシー」を今後も受け継いで、国民的イベントの
中継や災害時の緊急放送の際は、多様な情報伝達手段をしっかりと用意していただきたいと
願っています。