記者会見資料

1. オリパラ開閉会式テレビ中継の情報保障、⼿話通訳（ろう通訳）
・字幕、⾳声解説等
NPO 法⼈インフォメーションギャップバスター理事
聞こえないきょうだいをもつ SODA ソーダの会代表 弁護⼠藤⽊和⼦
私は、聞こえない弟と育った⽴場、⼿話通訳者、弁護⼠として、今回のオリパラ開閉会式
の情報保障、⼿話通訳（ろう通訳）
・字幕、⾳声解説等についていろいろと考えさせられま
した。
個⼈的な素朴な願いとしては、
聞こえない・聞こえるという違いからテレビをきょうだい
で楽しめなかった苦い経験が多くあるため、今回は、⽇本で開催されたオリの閉会式、パラ
開閉会式という⼤舞台が、
聞こえない・聞こえるにかかわらず家族で楽しめるものになった
ことは「象徴的な出来事」として感慨深かったです。しかし、他⽅で、オリ開会式に⼿話通
訳が付かなかったことも「象徴的な出来事」であり、今後につなげていくためにも、納得が
いくまで検証することが必要だと考えます。
なお、
「
（教育背景から読み書きが苦⼿で）
字幕ではわからない⼈がいるから⼿話が必要」
というような捉え⽅（障害に対する合理的配慮、バリアフリーという福祉的観点）だけでな
く、
（たとえ、情報取得においては字幕で⾜りる場合であっても）
「少数⾔語としての⼿話と
いう⾔語、ろう者の尊重」という視点も⼤切にしていただきたいと思います。バンクーバー
オリンピックでは少数⾔語を含む２２⾔語で中継がなされました。
オリバラのテーマである「多様性と調和は⾮常に難しい！！」それが正直な感想です。今
回、
テレビ中継は NHK の総合と E テレの２つに分かれて⾏われました。
パラ開会式の視聴
率は、総合は 20％程、E テレは２％程と伺っています。E テレでは、ろう通訳（ろう者と聴
者の⼿話通訳者の協働）
が⼩さなワイプではなく⾒やすい⼤きさで映りました。
オリパラの
ハレの⽇に、
ろう者の⾔語である⼿話が最⼤限尊重されたことは⼤変嬉しく思いました。
そ
して、その半⾯、総合から「分離・隔離・排除」された疎外感も残りました。
この点は、単に「分離・隔離・排除」の課題だけでなく、情報過多が負担になる障害種の
⽅や聞こえない⼈の中でも字幕メインの場合は⼿話通訳があると字幕が⾒にくくなる等の
ニーズもあり、
「合理的配慮・対・合理的配慮」の⾯もある難問です。また、特にパラ開会
式では、実況アナウンスの量が多く、スピードも速いため、ろう通訳、字幕、視覚障碍者向
け⾳声解説（ただし、ラジオ中継もあり）等にも影響がありました。
私は、障害種を問わない、全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会（全国きょうだいの
会）に関わる⽴場でもあるので、聴覚障害や視覚障害等の⾝体障害だけでなく、知的障

2. 害、精神障害等についても取り残されることが無いように広い視野を持って取り組んでい
きたいと考えています。
「多様性と調和」という難問に、NHK の現場の⽅々が課題に真摯に向き合って出された
ひとつの模範解答であることについては⼤きな敬意を持っています。後の国⺠的⾏事にお
ける⼿話通訳のテレビ中継について、今後もご検討を続けていただきたいと⼤いに期待し
ております
（⻑崎の原爆記念式典については会場には⼿話通訳者がいましたが、
オリ開会式
同様、テレビ中継には⼿話通訳がありませんでした）
。
個⼈的には、今回、⾮常に評価されたろう通訳が、総合のテレビ画⾯でいつか「試⾏」さ
れることを「象徴的な出来事」として願っています。
「⼿話通訳者」が、
「⼿話の⼈」ではな
く、
「⼿話通訳者」という専⾨職として社会的に認知されるきっかけにもなるのではないで
しょうか。また、個⼈的には、⼿話通訳者としても経験を積んで技術を磨き、ろう通訳のフ
ィーダーにもいつか挑戦してみたいと思います。
オリパラのハレの⽇が終わっても、障害のある⼈たちや家族の⽣活は急に変わることな
く続きます。聴覚関連の話で⾔えば、今年、７⽉１⽇から、総務省による、電話リレーサ
ービスが始まり、聞こえない⼈も⽂字通訳や⼿話通訳オペレータを介して電話ができるよ
うになりました。それは、聞こえない・聞こえにくい⼈だけでなく、家族の⽴場にとって
も朗報です。
また、現在、厚労省・⽂科省の協働プロジェクトでも「ヤングケアラー」についての取
り組みが始まっていますが、幼いきょうだいがケアを担ったり、⼦どもが障害ある親を助
けたりすることが当たり前のことや美談とされることなく、障害の有無に関わらず、きょ
うだいや家族が互いに対等・平等な関係でいられる社会になっていくことを願います。オ
リパラのハレの⽇の経験を今後の⽇常や活動につなげていきたいと思います。
「多様性と調和」は難問ですが、このオリパラを契機に、今後もさまざまな⽴場からニー
ズや意⾒が発信され、より良いものになっていくことを願います。