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2018意思決定会計論⑦
- 2. • 意思決定（decision making） 広義：経営管理を行うこと 狭義：代替案の中からの選択（alternative choice） • 意思決定のプロセス ①問題の識別と明確化 ②問題解決のための諸代替案の探索と列挙 ③諸代替案の計量化ないし意思決定モデルの作成 ④諸代替案の評価 ⑤経営者による採決 意思決定会計の意義と区分 ☞③と④は管理会計担当者が適切な意思決定を行う ために重要
- 4. • 意思決定会計の区分 経営意思決定を区分する。 ①戦略的意思決定 経営の基本構造の変革に関する意思決定であり，長期間に 及ぶ。 例）設備投資意思決定，合併や買収 ②業務的意思決定 意思決定を下した後でもしばしば変更が可能な 選択的意思決定 例）受注，加工 or 販売，自製 or 購入 など 意思決定会計の意義と区分
- 5. • 増分分析 意思決定のために行われる変動値のみについての分析 • 増分分析の意義 原価のみ →増分原価だけを計算し，代替案のうちいずれが最も有利な 案であるかを分析する。 収益と原価 →増分収益から増分原価を引いて増分利益を計算する。 増分収益 − 増分原価 ＝ 増分利益 増分分析
- 6. • 配賦問題と意思決定 製造間接費や共通費の配賦や増分分析にとって妨害になる。 • 増分分析における減価償却費 資産を新たに取得する場合の増分減価償却費は無視しては ならない。 • 増分減価償却費 支出がなされたときの現金支出額としての増分原価と， 除却時に現金収入額として経済命数の尽きた時点での 見積処分価値との差 増分分析
- 7. • 意思決定に用いられる原価の種類 意思決定のための原価は未来原価という共通の特徴を持つ。 ① 機会原価（opportunity cost） 諸代替案のうちの1つの受け入れを断念した結果， 失われる利益のこと 。 →会計上の利益だけなく，便益（benefit）も含まれる。 意思決定のための原価 例題 変動費の増分 100万円が増分原価になる。 限界原価：直接原価計算における変動費と一致。 →生産個数が増大することにより，変動費も増加している。
- 8. • 意思決定に用いられる原価の種類 ② 増分原価（incremental cost） 意思決定の結果として増加する原価のこと。 代替案を計量的に評価し，増分利益で意思決定を行う。 差額原価（differential cost） 経営活動の変化の結果生じる原価の変動値。 変動値には増分だけでなく，減分原価が含まれる。 典型的な差額原価は変動費。 ③ 埋没原価（sunk cost） 意思決定にとって関係のない原価のこと。無関連原価とも言う。 過去において資産に投下された投資額の一部，あるいは全部が， ある意思決定の結果として回収できない場合，そうした原価を 埋没原価という。 意思決定のための原価
- 9. • 基本的な考え方 意思決定のためには，各代替案を採用したときの収益， 原価および利益を予測して，その差を取って 差額収益，差額原価，差額利益を求める必要がある。 業務意思決定の基礎 代替案 A案 B案 差額 収益 ××× ××× ××× 差額収益 −） 原価 ××× ××× ××× 差額原価 利益 ××× ××× ××× 差額利益
- 10. • 例題 A製品を生産することで得られる利益を計算する。 →差額収益，差額原価，差額利益を求め，意思決定を する。受注したときとしないときの比較損益計算書を 作成してみよう。 • 解答 差額収益，差額原価，差額利益は以下の通りである。 受注可否の意思決定 差額収益 1,000×2,000個 2,000,000 差額原価 売上原価 700×2,000個 1,400,000 変動販売費 20×2,000個 40,000 固定販売費 160,000 1,600,000 差額利益 400,000
- 11. 受注可否の意思決定 • 結論 営業利益が400,000円増加するので，この注文は引き受ける べきである。 • 受注したときと受注しないときの損益計算書 受注したとき 受注しないとき 差額 売上高 17,000,000 15,000,000 2,000,000 売上原価 13,400,000 12,000,000 1,400,000 売上総利益 3,600,000 3,000,000 600,000 変動販売費 1,040,000 1,000,000 40,000 固定販売費 660,000 500,000 160,000 固定一般管理費 500,000 500,000 0 営業利益 1,400,000 1,000,000 400,000
- 12. • 補足レジュメの【応用問題①】を解いてみましょう。 • 解答 新たに受注したことによって生じる差額収益，差額原価， 差額利益を計算する。 なお，ここで遊休生産能力を活用して追加生産に応じるので あれば，追加の固定費はかからない（埋没原価）ので， 変動製造費用のみを差額原価として考えればよい。 • 現在の営業利益は 90,000千円 − 72,000千円 ＝ 18,000千円 受注可否の意思決定
- 13. • 解答つづき 単位当たり変動製造原価 40,500千円 ÷ 90,000単位 ＝ 450 円 受注可否の意思決定 差額分析 差額収益（追加生産分）： 600円×20,000単位 ＝ 12,000千 円 差額原価 ： 450円×20,000単位 ＝ 9,000千 円 以上から，差額利益は 3,000千円となる。 問題文から，現在の営業利益は18,000千円と求められるので ，受注した場合は21,000千円になる。 また，500円で20,000単位引き受けた場合は， 差額収益が10,000千円，差額原価が9,000千円となるので， 差額利益は1,000千円になる。 このときの営業利益率は19%になる。
- 16. 加工か，販売かの意思決定 • 解答 A：完成品にして販売する。 B：半製品のまま販売する。 売上高 A B 差額 160,000 100,000 60,000 加工費 110,000 70,000 40,000 利益 50,000 30,000 20,000 • 別解 Aプランによる増分売上高と追加加工費を差し引き， 増分利益を計算しても同じ結果になる。
- 17. 加工か，販売かの意思決定 • 補足レジュメp.2 応用問題②を解いてみましょう。 • 追加加工を行うか否かの意思決定に関連のない原価を 含むか，含まないかがポイント • 収益と費用の双方に影響をおよぼすので，貢献利益の 差（差額利益）を比較する。
- 18. • ここではB製品とB’製品の販売価格の差（差額収益）と B製品を加工してB’製品にするにあたり発生する加工費 800,000円（差額費用）を求め，差額利益を計算する。 加工か，販売かの意思決定 差額収益 B’製品 @¥1,000×2,500kg ＝ 2,500,000円 B製品 @¥500×3,000kg＝ 1,500,000円 差引 1,000,000円 差額費用 追加加工費 800,000円 差額利益 200,000円 営業利益が200,000円増加するので，追加加工をして B’製品として販売すべきである。
- 19. • 会社の組立製品の部品を 自製するか，外部から購入するかのどちらが有利か？ • 出題のパターン ①現有設備での意思決定 ②設備投資を伴う意思決定 • 解くアプローチ ①予算に基づいて全部原価で比較する方法 ②増分原価による方法 →②の方が実践的。 自製か，購入かの意思決定
- 21. 自製か，購入かの意思決定 • 補足レジュメp.3 応用問題③を解いてみましょう。 • 遊休生産能力 2,000時間を利用して自製すべきかを 意思決定する問題。 • 増分原価を比較する方法で解く。
- 22. • 自製（B案）を選択した場合の総費用を計算する。 自製か，購入かの意思決定 直接材料費 @¥150×1,000個＝ 150,000円 直接労務費 @¥200×1,000個＝ 200,000円 変動製造間接費 （@¥100×2MH）×1,000個 ＝ 200,000円 総費用 550,000円 A案を選択した場合は600,000円のコスト増となり， B案（自製）と比べて50,000円多くかかるので， B案を選択する方が有利である。 固定製造間接費@¥100（2,000,000÷20,000MH）は， 自製しなくても必要な費用なので埋没費用となる。