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パーキンソン病類縁疾患におけるレム睡眠行動障害
- 3. レム睡眠行動障害（RBD） • 睡眠時随伴症（パラソムニア）の一つ • 夢内容の行動化 （dream enacting behavior；DEB）
- 4. Iranzo et al. Lancet Neurol 2016;15,405-19 レム睡眠行動障害（iRBD症例）
- 5. RBDの分類 1. 特発性RBD（iRBD） 2. 症候性RBD • αシヌクレイノパチーに伴うRBDが多い パーキンソン病（PD） レビー小体型認知症（DLB） 多系統萎縮症（MSA）
- 6. RBDの分類 1. 特発性RBD（iRBD） 2. 症候性RBD • αシヌクレイノパチーに伴うRBDが多い • 他の神経変性疾患等にも合併する マシャド・ジョセフ病/脊髄小脳変性症３型 進行性核上性麻痺（PSP）
- 7. RBDの意義は？ αシヌクレイノパチーの 非運動症状，運動前症状としての 意義がある RBD ＰD, DLB, MSA Phenoconversion
- 8. PDの非運動症状・運動前症状としてのRBD Boeve et al. Ann NY Acad Sci 2010; 1184, 15-54
- 9. 小括１ 1. RBD症例は高頻度にαシヌクレイノパチーで あるが，100%ではない 2. RBDは， αシヌクレイノパチーにおける 非運動症状，運動前症状としての意義がある
- 10. RBD患者 診療のCQ RBD ➔ PD, DLB, MSA ❶ Phenoconversionの 時期・頻度？
- 11. iRBD 174例，神経疾患発症までの期間 7.5 y 0 5 10 14 年 神経疾患 未発症％ Iranzo et al. PlosOne 2014;9(2) e89741 33% 76% 91% 症例数最大の 後方視的研究
- 12. 発症からの phenoconversion rate Neurology 2009;72:1296-1300. Sleep Medicine 2013;14:744-748. Lancet Neurol 2013;12:443-453. PLoS One 2014;9:e89741.
- 14. RBDの診断時の説明 1. もし異常行動がPSGのビデオや家族のスマホ などで記録されていれば本人に供覧する ➔ 異常行動の危険性や治療の必要性を 本人が理解し，協力を得るために有用 2. 家族には異常行動は本人の人格のせいでは ないことを説明する
- 15. 異常行動への対処についての説明 1. ベッド周りの環境を安全に整え，ケガを防ぐ 2. ベッドパートナーは症状が安定するまで別室に 寝てもらう 3. ケガの危険がある場合や，治療の希望がある 場合には，薬物療法（クロナゼパム）を行う． 4. 定期通院時には家族にも来院していただき， 治療効果を確認する．
- 16. 神経疾患の発症リスクについての告知 1. 告知を行うべきか，行うとすればいつ，どのように 行うべきかについてコンセンサスはない 2. 患者が，発症頻度の高さに大きなショックを受け ることが容易に想像がつく一方，患者はRBDの 診断が意味することを「知る権利」を持つ 3. まったく伝えないことは選択肢になりにくい Vertrees et al. Continuum 2013;19, 199-203は重要論文
- 17. いかに伝えるべきか？ 1. 病前性格（告知に耐えられるか，うつの合併）を探る 2. 伝える時期は，RBD症状が治療により抑制され，かつ 相互の信頼（rapport）が形成させた後が望ましい 3. 全員が発症する訳ではなく，多くは長時間を要すること， 発症を遅らせる治療はまだ確立されていないが，PDに は種々の薬剤があることを伝える 4. 告知後も定期診察を行い，精神面でもフォローアップを 行うことを伝える
- 18. 小括２ 1. Phenoconversion rateは，最大，5年で35％， 10年で76%，最終的に91%と高率である 2. 病状説明は本人，およびご家族に行う 3. 将来の神経疾患発症のリスクについて患者 は「知る権利」があるが，その説明は慎重に 行い，適切にフォローアップする
- 20. ❶αシヌクレイノパチーに伴うRBD 1. 基本的にRBD以外の症候を認めない 2. しかし，軽度の歩行障害，嗅覚低下，色覚 認識障害も呈しうる 3. さらに軽度認知障害（MCI）を対照より多く 認め，50%に合併する McDade et al. Mov Disord 2013;28:1847-53 Postuma et al. Ann Neurol 2011;69:811-8. Gagnon et al. Ann Neurol 2009;66:39-47.
- 21. RBDの臨床像の変化 歩行障害 嗅覚低下 色覚認識障害 Boeve et al. Ann NY Acad Sci 2010; 1184, 15-54 この時期の病理所見？
- 22. 剖検所見 Iranzo et al. Mov Disord 2014; 29; 410-5
- 23. 1. 日本人PDにおける頻度は，多施設における スクリーニング票（RBDSQ-J）による検討で 31%（146/469名） Nihei et al. J Neurol 2012;259, 1606-12 ❷ PD症例におけるRBD
- 24. 中央値 17.5年 最長 53年 53/136 = 39% Nihei et al. J Neurol 2012;259, 1606-12 運動前症状としてRBDが出現する頻度❶
- 25. RWAを認めたPD 27例 RBDが運動前症状として 出現した頻度 5/27（18.5%） ➔運動症状出現後が多い Nomura et al. Psychiatry Clin Neurosci 2011;65, 264-71 運動前症状としてRBDが出現する頻度❷
- 26. RBD合併群の特徴（非合併群との比較） 1. 罹病期間が長い 2. 病期が進行，重症 3. 抗パ剤内服量が多い 4. 運動合併症が多い 5. 無動固縮型が多い 6. 自律神経症状の合併が多い 7. 入眠困難，夜間の幻覚，悪夢が多い 8. 認知機能障害の合併が多い Howell et al. Neurotherapeutics 2012;9, 753-75 Nihei et al. J Neurol 2012;259, 1606-12 Schneck et al. Neurology 2011; 77; 1039-2 Gagnon et al. Ann Neurol 2009; 66; 39-47 Romenets et al. Mov Disord 2012; 27; 996-1003 Suzuki et al. BMC Neurol 2013; 13; 18 Postuma et al. Mov Disord 2012; 27; 72-8
- 27. RBD合併群は認知症を合併しやすい Postuma et al. Mov Disord 2012;27, 720-6 前方視的研究 PD-RBD 15名 PD＋RBD 27名
- 28. ❸ DLB症例におけるRBD 1. RBD合併群は • 男性が多い（82% vs 47%） • 認知症の期間が短い（8年 vs 10年） • 運動症状出現が早い（3年 vs 6年） 2. RBDはDLBとADの鑑別に有用である可能性 Boeve et al. Ann NY Acad Sci 2010; 1184, 15-54 Dugger et al. Mov Disord 2012;27, 72-8 Murray et al. Neurology 2013;81, 1681-9
- 29. ❹ MSA症例におけるRBD 1. MSAでは高頻度に合併する（73%） 2. RBD合併群の臨床像の報告は渉猟した限り ではない Palma et al. Clin Auton Res 2015;79:428-434 Nomura et al. Psychiatry Clin Neurosci 2011;65, 264-71
- 30. MSAでは運動前症状となる頻度が高い 7/11（64%）で運動前症状として出現，比較的早期に消失 Nomura et al. Psychiatry Clin Neurosci 2011;65, 264-71
- 34. PDに伴うRBDに対するクロナゼパム 1. 海外，および日本神経学会のガイドラインで， 0.25-1.0 mg眠前内服がエビデンスレベルは 高くはないものの第一選択 2. 有効性はiRBDと同等，治療抵抗例も存在 3. 高齢者における日中の過眠，歩行障害・転倒 や，SASの増悪が問題になる Schenck et al. Sleep 2002;25, 120-38
- 35. 1. 海外ではメラトニンも推奨（転倒が少ない）． メラトニン作動薬ラメルテオンの有効例の報告 2. リバスチグミンも，少数例ながらRBDの頻度を 減少（P = 0.012） 3. プラミペキソールの有効性も報告されている 4. 視床下核に対する深部刺激療法は無効 クロナゼパム以外の治療薬 Nomura et al. Intern Med 2013;52, 2123-6 Di Giacopo et al. Mov Disord 2012;27, 559-61 Sasai et al. Parkinsonism Relat Disord 2013; 19, 153-7 Cicolin et al. Sleep Med 2004;5, 207-10
- 38. Preclinical Prodromal Clinical 新しいPD診断基準（MDS 2015） Berg D, et al. Mov Disord. 2015 Oct;30(12):1600-11.
- 43. MIBG心筋シンチ Miyamoto et al. Neurology 2006; 67, 2236-8 PDと同程度の低下
- 44. RBDでは早期PD（H&Y1,2）より低下する Kashihara et al. Parkinsonism Relat Disord 2010; 16, 252-5 ➔ 単純にPDの前駆状態と言えない可能性
- 45. 嗅覚検査（Sniffin’stick） Mahlknecht et al. Neurology 2015;84,654-8 iRBD 34名 罹病期間 10.7±7.5年 経過観察 5年間 発症 9名（6PD, 3DLB） 感度 78% 特異度 84% PD, DLB
- 46. Dopamine transporter (DAT) SPECT ３年間の経過中，phenoconversion しなかったiRBD症例 Iranzo et al. Lancet Neurol 2016;15,405-19
- 47. DAT SPECT＋経頭蓋エコー（前向き研究） Iranzo et al. Lancet Neurol 2010;9,1070-7 27 DAT-SPECT 黒質超音波 異常 正常 43 iRBD 15 2.5年経過観察 8 0phenoconversion パーキンソニズム
- 48. 期待されるリン酸化αシヌクレイン Tolosa et al. Brain 2015; 138, 2125-7 唾液腺 顎下腺 胃 大腸 皮膚 星状神経節 傍脊椎 交感神経節 迷走神経 心臓神経叢 腸間膜 交感神経節 腸管神経系 尿生殖器系 副腎 生検で採取可能剖検による評価
- 49. 皮膚生検（胸壁真皮） 腫大した神経突起 血管壁近傍の神経突起 PD患者 2/20名陽性（発症後3，10年） Miki et al. Neurosci Lett 2010;469:357-359. 抗リン酸化αシヌクレイン抗体
- 50. 小腸 胃（神経） 消化管生検（PD患者） Stokholm et al. Ann Neurol 2016;79:940-949. 抗リン酸化αシヌクレイン抗体
- 51. 消化管生検 リン酸化 α シヌクレイン 診断前に生検され， のちにPDと診断された症例 （中央値7年：4ヶ月～20年） 22/39名（56％） 対照 23/90名（26%） • 対照で陽性であった26%の意義は不明 （RBD発症のリスク; prodromal RBD） Stokholm et al. Ann Neurol 2016;79:940-949. P=0.0001
- 52. 16ゲージ針 顎下腺生検
- 54. 顎下腺生検 唾液腺実質 唾液腺実質 ＋腺外組織 PD 24名 8/12=75% (8+5)/24=54% iRBD 21名 8/9＝88% (8+3)/21＝52% 対照 26名 0/26=0% (0+0)/26=0% Vilas et al. Lancet Neurol 2016;15:708-718.
- 55. 生体組織のリン酸化αシヌクレイン 検出率 皮膚 低い 消化管 中等度 顎下腺 良好 顎下腺生検においては，PSPやMSAを含めた多数例での検討 が予定されている ➔ 病型の早期予測につながる可能性