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岐阜大学大学院医学系研究科
脳神経内科学分野
下畑 享良
難病の倫理的・法的・社会的課題
(ELSI)
本講義に関するCOIはございません
本講義の目的
• 神経難病のなかで,臨床倫理的問題を認める代表的
疾患,筋萎縮性側索硬化症(ALS)と多系統萎縮症
(MSA)について議論したい.
• さらに神経難病の医療において大きな問題となってい
る安楽死/医師介助自殺について考えたい.
ALSの倫理 MSAの倫理
安楽死と医師
介助自殺の
倫理
ALSの倫理 MSAの倫理
安楽死と医師
介助自殺の
倫理
1869年 シャルコー(Jean Martin Charcot)が報告
1925年 シャルコー生誕100年記念シンポジウム(パリ)
シャルコーの基準が ALS の概念として受け入れられる
ALS の疾患概念の成立
■概念 上位・下位運動ニューロンが障害される変性疾患
■症状 上肢の機能障害,歩行障害.
球麻痺(構音障害・嚥下障害),呼吸筋麻痺
■陰性4徴候
感覚障害,眼球運動障害,膀胱直腸障害,褥瘡
■予後 全経過 約3年
Charcot の記載したALS
■ 1980年代 ポータブル人工呼吸器の登場
→ 呼吸筋麻痺 ≠ 死
→ 罹病期間の延長(約10年)
■ ポータブル人工呼吸器の
もたらしたもの
① 患者主権主義
自分のことは自分で決める権利 = 自己決定
② 長期の在宅を含めた呼吸療養
③ 新しい ALS の臨床像
一番影響の大きな科学技術の導入
1.陰性4徴候の否定
感覚障害,眼球運動障害,膀胱直腸障害,褥瘡
2.認知症の合併
3.コミュニケーション困難ないし不能状態
(a) Minimal communication state
最小限のコミュニケーション状態
(b)全随意筋麻痺 Totally locked-in state (TLS)
感覚や思考は病前と同じにも関わらず,コミュニケーション
はおろか瞬きすらできない想像を絶する状態
新しいALSの臨床像
呼吸筋麻痺=死
約3年
約10年
人工呼吸器
装着
呼吸療養生活
発症
発症
従来のALS観
新しいALS観
Minimal
communication
state
全随意筋
麻痺=TLS
人工呼吸器装着がもたらしたもの
林秀明.「今までのALS観」から「新しいALS観」へ
https://alsjapan.org/how_to_cure-thesis/
を参考に作成
脳神経内科医が悩む臨床倫理的問題
① 告知のあり方
② 治療の自己決定の支え方
③ 人工呼吸器の装着
④ 人工呼吸器の離脱
呼吸筋麻痺
=死
約3年
約10年
告知の問題
人工呼吸器
発症
臨床倫理的問題①告知のあり方
① 病名告知
② 真実告知(胃ろう,人工呼吸器が必要)
告知の目的は?いつ行うか?
新潟大学脳研究所神経内科
椿 忠雄 初代教授
なぜ告知をする必要があるかというと、
理由はただひとつですよね.この方が
今後,より良い人生を送るため,充実
した人生,生きている間にこれもやり
たい,あれもやりたいと思うことをやる.
それが目的でございます.
しかし,そのときの条件,いつ患者さ
んに言うかということは,診断が確定
したときにいうのが常識的.その次の
条件としては,患者とこちらの信頼関
係ができている.もっと大事なことは,
この患者さんと自分とが一体になって
生きていこうという覚悟ができている
ことです.
告知のあり方
呼吸筋麻痺
=死
約3年
約10年
告知の問題
人工呼吸器
発症
臨床倫理的問題②自己決定の支え方
NPPV,胃ろうの
自己決定
① 自己決定をいかに支えるか?
② 自己決定能力が保たれているか?
「認知症」合併例の存在!
① 遂行機能障害
(銀行に行って手順よくお金をおろすなど)
② 行動異常
③ 言語障害
ALSに合併する前頭側頭型認知症
Neurology. 2005;64(4):734-6.
前頭葉に限局した低代謝(FDG-PET)
Prof. Bernard Lo
UCSF
「自己決定能力」の判断をどう行うか?
1.選択する能力とそれを相手に伝える能力
2.医学情報を理解し,自分自身の問題として把握
する能力
3.患者さんの意思決定の内容が本人の価値観や
治療目標に一致
4.うつ,妄想,幻覚の影響なし
5.合理的な選択
「自己決定能力」の5つの構成要素
不可能と判断するまで
可能として扱う
代理意思推定
本人参加・支援
による自己決定
自己決定
問題なし 問題あり
ある程度可能 不可能
自己決定能力を欠く場合どうするか?
本人の考えを推定してもらう
自己決定能力
治療方針の決定はどうあるべきか?
① 患者は医師の指示に従えば良い
(パターナリズム:父権主義).
② 患者のことを最も知っているのは患者であり,
決めるのは情報を得た患者である
(コンシュマーリズム:消費者主義).
⇨ 多くの人はパターナリズムを否定する.
非常に難しい判断ですが
自分の親であったら,
こちらの治療を選ぶだろう
と思います.
これはパターナリズム?
詳細な情報を説明したあと,
答えを出せず困っている患者・家族に対し
いずれにも問題がある
① パターナリズム(父権主義)
• 難しい医学判断の際に患者さんの助けになること
もある.
② コンシュマーリズム(消費者主義)
• 難しい選択肢のみ与える丸投げにつながりうる.
Shared decision makingというアプローチ
• 父権主義と消費者主義の対立的な関係を解き
患者と医療者の協働と問題解決を目指す
新たな調和的アプローチ
Clinician
choice
Consumer
choice
Shared
decision
making
SDMに必要な医師の2つのスキル
① 最善のエビデンスを
分かりやすく伝えるスキル
② Patient-centered
communication skill
最良の意思決定・
合意形成を目指す
個々の患者の状態を理解し
考えを引き出すスキル
エビデンスの確立されて
いない状況で使用する
呼吸筋麻痺
=死
約3年
約10年
告知の問題
人工呼吸器装着の
問題
人工呼吸器
発症
臨床倫理的問題③人工呼吸器の装着
= 生きるか死ぬかの
選択の問題
(尊厳死・安楽死・尊厳生)
• 患者が自分の意思で延命措置をやめ,自然な形で
最期を迎えること.
• 薬物を投与するなど積極的関与によって死に至らし
める安楽死と異なる(日本独特の考え).
【支持する言葉】
• 人工呼吸器装着はいたずらな延命措置である
• 患者にも死ぬ権利はある
• 一生天井を見て暮らして幸せか
ALSと尊厳死
安楽死・医師介助自殺の2つの例
NHKクローズアップ現代(2017年9月26日)
Dignitas*による自殺幇助を受けた米国人ALS男性
*安楽死の権利を訴え,実際に医師と看護師により自殺
を手助けをするスイスの団体.
ALS患者が「安楽死」を求め,担当医ではない
医師2名がそれに応じた嘱託殺人事件(2020.8)
51歳女性の twitter 投稿
臨床倫理的問題④人工呼吸器の離脱
呼吸筋麻痺=死
約3年
約10年
人工呼吸器
装着
呼吸療養生活
発症
発症
従来のALS観
Minimal
communication
state
人工呼吸器は離脱可能か?
全随意筋
麻痺=TLS
49歳でALSを発症,その3年後に
人工呼吸器装着
意志の疎通ができなくなった時点
=精神的な死・自分の死
照川貞喜さん「治療方針についての要望書」
NHKスペシャル(2010年3月)
「命をめぐる対話 “暗闇の世界”で生きられますか」
「私の病状が重篤になったら人工呼吸器を外してください.
意思の疎通ができなくなるまでは当然のことながら
精いっぱい生きる.そのあと,人生を終わらせてもらえる
ことは『栄光ある撤退』と確信している」
「関係者を刑事訴追しないでください」
病院の院長は「呼吸器を外せば,
医者が逮捕される恐れがある」と
難色を示し,記者会見して「社会
的な議論が必要だ」と訴えた.
照川さんは,3年前より,TLSの
状態になった.
宙に浮いた要望書
中日新聞(2018年6月)
人工呼吸器離脱の是非
自律尊重
人工呼吸器離脱
無危害
正義
善行
• 臨床倫理4原則の衝突
• 「人工呼吸器を離脱できないなら,最初から装着しない
ほうが良い」という意見もある.しかしこれは間接的殺人
ではないか?と主治医は悩む.
小括1
1. ALSの呼吸障害に対しては,告知,治療の自己決定,
および人工呼吸器の装着・離脱の問題がある.
2. 告知と治療の自己決定には自己決定能力が,
人工呼吸器の装着・離脱には生き方・死に方の問題が
密接に関わっている.
ALSの倫理 MSAの倫理
安楽死と医師
介助自殺の
倫理
MSAの特徴
• 脊髄小脳変性症のひとつで,日本で最も多い病型,
患者数は12000人程度で,ALSより多い.
• 小脳性運動失調,パーキンソニズム,自律神経症状,
睡眠呼吸障害,突然死など重篤な症状を呈する.
• 発病機序は不明で,根本療法は未確立.
脳神経内科医が悩む臨床倫理的問題
基本的にALSと同じだが,以下の3点は異なる
① 真実告知として突然死のリスクを話す必要がある.
② 人工呼吸器装着は突然死リスクを軽減するものの,
認知症(大脳萎縮)をもたらす.
③ ALS患者より意思表示能力が低い.
睡眠中の突然死など
約5-7年
真実告知(突然死)
発症
いつ突然死のリスクを伝えるか?
病名告知
臨床倫理的問題①真実告知
?
睡眠中の突然死など
約5-7年
長期生存
装着の決断
人工呼吸器装着
発症
いつ自己決定を促すか?
Shimohata et al. Parkinsonism
Relat Disord. 2016;30:1-6.
Nishida et al. Parkinsonism
Relat Disord. Jan 14, 2022 (online)
臨床倫理的問題②人工呼吸器装着
突然死防止のための
人工呼吸器装着がもたらすもの
全経過20年,高度の認知症状態
下畑享良.神経治療35;464-7, 2018
臨床倫理的問題③低い意思表示能力
0%
20%
40%
60%
80%
100%
NPPV
0%
20%
40%
60%
80%
100%
気管切開術
0%
20%
40%
60%
80%
100%
胃瘻
□不自由なく可能 不自由だが可能 ほぼ不可能
NPPV 気管切開術 胃ろう
0%
20%
40%
60%
80%
100%
ALS
0%
20%
40%
60%
80%
100%
ALS
0%
20%
40%
60%
80%
100%
ALS
MSA MSA
MSA
ALS ALS
ALS
N=7 N=7 N=12
N=44 N=18 N=39
43%
75%
14%
42%
61% 74%
浅川ら.神経内科84; 600-605, 2016
• 認知機能が保たれていながら,運動機能障害
(小脳性運動失調,パーキンソニズム)のため,
意思表示能力が低くなり,患者・家族より倫理的
問題の発信がなされにくい可能性はないか?
意思表示能力=認知機能+運動機能
MSA ALS
患者数
(H30特定疾患受給者数)
11406 9805
論文数(PubMed) 101
論文数(医中誌) 101
2020.8.16調べ
検索式
("Ethics"[Mesh]) AND "Multiple System Atrophy"[Mesh]
("Ethics"[Mesh]) AND “Amyotrophic Lateral Sclerosis"[Mesh]
倫理 AND 多系統萎縮症,倫理 AND 筋萎縮性側索硬化症
(会議録を除く)
事実,MSAの臨床倫理的問題を
議論した論文は少ない
MSA ALS
患者数
(H30特定疾患受給者数)
11406 9805
論文数(PubMed) 1 101
論文数(医中誌) 12 101
2020.8.16調べ
検索式
("Ethics"[Mesh]) AND "Multiple System Atrophy"[Mesh]
("Ethics"[Mesh]) AND “Amyotrophic Lateral Sclerosis"[Mesh]
倫理 AND 多系統萎縮症,倫理 AND 筋萎縮性側索硬化症
(会議録を除く)
事実,MSAの臨床倫理的問題を
議論した論文は少ない
ALSで報告が多い理由
• ドラマティックな症状や経過,著名人の罹患,マスコミによる注目
など,より関心が集まる状況にあった.
• 認知症を合併しない症例が多い.
MSAで報告が少ない理由
• 胃ろう,NPPV,気管切開術の治療介入時における意思表示
能力の低下がより顕著である.
なぜMSAで多く,ALSで少ないか?
意思決定 15
尊厳死・安楽死 12
人工呼吸器装着 12
人工呼吸器取り外し 4
告知 4
事前指示 3
PEG 3
ALSで議論されている問題は
いずれもMSAで生じうる.
➔ 患者からの発信が困難
であれば,医療者が問題
を議論すべきではないか?
ALSで議論されている倫理的問題は
MSAでも必要?
NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」2019年6月2日
MSA患者に生じた重大な倫理的問題
スイスでの医師介助自殺とその報道
テーマ 将来,医療者になる者として患者さんの生死について考えてみよう
(8:30~10:30)
課題 YouTube動画「彼女は安楽死を選んだ(NHK;2019年6月放送)」を見て,
講義当日までに以下の課題を提出すること(Wordファイル).
https://www.youtube.com/watch?v=nvXH30vKvLU&t=262s
「彼女は安楽死を選んだ」で動画検索すると出てきます.
1)患者さんの選択した行動をどのように考えるか,理由とともに記載せよ.
2)自分がこの患者さんの主治医だったとしたら,どのように行動をするか,
理由とともに記載せよ.
上記1,2とも,まず結論を述べてから,その理由を記載するようにしてくださ
い.
講義では最初の30分で課題について発表していただきます.次の60分で講義をし
ます.最後の30分で総合討論(意見交換)をします.
岐阜大学4年生
「臨床倫理学」課題
• 疾患によっては,MSAのように,患者・家族からの
問題提起がなされにくく,臨床倫理的問題に思い至ら
ない可能性があったことを認識すべきである.
• 疾患によって臨床倫理的議論の成熟度に大きな差が
ある.個々の疾患で議論を進める必要である.
小括2
ALSの倫理 MSAの倫理
安楽死と医師
介助自殺の
倫理
1.用語の確認
安楽死の語源
• euthanasia(ラテン語)を訳したもの.
• もともとは,良き(eu)+ 死(thanatos)の
意味.
• 助かる見込みのない病人を,本人の希望
に従って,肉体的苦痛の少ない方法で,
死に至らせること(古典的安楽死).
用語の定義
(①+②=広義の安楽死)
① 狭義の安楽死
医師が患者に致死薬を注射して患者の生命を終結させること.
② 医師による自死介助
医師が患者に致死薬を処方し,患者が自らそれを服用して
生命を終結させること.
③ 生命維持治療の中止
臨床上の方針として,生命を維持するためのさまざまな治療を
中止すること,あるいは開始しないこと.
では「尊厳死」とは?
-日本だけ用法が異なるー
• 世界では,安楽死と尊厳死は明確に区別されていないが,
日本だけ,尊厳死は安楽死ではないと強調されている.
• これは日本尊厳死協会の方針が,安楽死の合法化を目標と
せず,延命治療を断るリビング・ウィルの普及と「尊厳死」の
法制化を目指しているため.
• 日本での尊厳死の議論は,前ページの③「生命維持治療の
中止,ないし不開始」の問題である(withdraw/withhold).
2.安楽死の現状
-オランダを中心に-
安楽死と医師介助自殺が行われる国々
① 「安楽死」が合法である国
オランダ(世界初:2002年),ベルギー,ルクセンブ
ルグ,カナダ,オーストラリア(ヴィクトリア州)
② 「医師介助自殺」のみ認められている国
米国オレゴン州など8つ州と首都,スイス
オランダにおける安楽死は急増し,
全死亡者の4.4%が安楽死(2017)
産経新聞2018.7.22
オランダ安楽死法の要件のうち
とくに重要な2点
1. 医師が患者の苦痛が永続的で耐え難いもので
あると確信していること.
2. 医師および患者が,患者の病状の合理的な
解決策が他にないことを確信していること.
オランダにおける安楽死の特徴
1. 安楽死は患者の「権利」ではない.死を医師の
管理下に置く「死の医療化」が行われている.
2. 「闇の安楽死」=「すべり坂」の防止のために,
徹底的な透明性確保が行われている.
• 安楽死が公共政策化すると,
障害などを抱えた弱い立場に
ある人が,本人の意志に反して
家族や社会の負担とされ,被害
を受ける恐れがあること.
• オランダではこの問題は生じて
いないと言われている.
「すべり坂」=本人の意思に反した安楽死
大きな問題は
認知症患者の安楽死が増加していること!
※ 進行後は,医師に本人の死ぬ決意を示せなくなくなるため初期に行いたい
という本人の希望がある.
初期段階が166人
進行期は3人のみ
安楽死のタイミングは?
認知症の老女を家族に頼んで押さえつけ,
致死薬を注射した事例まである
毎日新聞2019年9月12日
かつて,安楽死を希望しても,
現在は自分が殺されることを
理解できない認知症患者を
安楽死できるものなのか?
毎日新聞2019年9月8日
安楽死件数における
認知症患者の頻度?
2.4%
• 従来は肉体的苦痛に対して安楽死が行われたが,現代医
療では,ほとんどの肉体的苦痛はコントロール可能である.
• むしろ精神的苦痛や,生きる意味の喪失,自立・自律・尊厳
の喪失,まわりに迷惑と負担をかけたくないなどが理由に
なっている.
• そして安楽死肯定論は「自己決定権」を根拠としている.
安楽死を望む理由は
肉体的苦痛から精神的苦痛に大きく変化した!
自己決定権が拡大した背景と影響
• 背景
キリスト教信仰による自殺の抑制効果が薄まり,「自己
決定したい」という思いが強まる.
• 影響
「自己決定」という名のもと,「合理的な解決策 = 対症
療法,緩和ケア,QOL向上」が軽視されるようになった.
その他の国の安楽死の特徴
1. ベルギー
終末期の子供(筋ジスなど)も安楽死を選ぶ権利をもつ.
2. ルクセンブルグ
安楽死法と緩和ケア法が「車の両輪」となっている.
3. カナダ
医師のみならず,nurse practitioner(診療看護師)も,
患者に致死薬を投与できる.
3.医師介助自殺の現状
physician-assisted suicide (PAS)
赤の地域で PAS が認められている
オレゴン州
オレゴン州:
神経疾患に対するPASはがんについで多い
1. オレゴン州では1998年~2017年に993人が介助
自殺し,がんが78%,神経疾患が10.5%であった.
2. 自殺を望んだ理由は,自律の喪失>人生を楽し
む活動への参加不能>尊厳の喪失>身体機能
のコントロール喪失>家族・友人・介護者への
負担の順に多かった.
スイス:
民間団体による PAS は外国人にも行われる
1. スイスでは特別な法律が制定されていない.
2. 外国人に対しても行われ,自殺ツーリズムと
呼ばれている.
3. 民間団体が活動を行っている(1980年代~).
EXIT, Dignitas, Life circle協会, Eternal spirit財団 など
が,独自にルールを決めて PAS を行う.
スイスにおける介助自殺者は急増し,
がんが42%,ついで神経変性疾患が14%
4.神経難病患者の自殺の
是非を考える
「死」とは何か
シェリー・ケーガン教授(66歳)
イエール大学哲学教授
道徳・哲学・倫理の専門家.
「死」をテーマにした授業は,
17年連続で「最高の講義」に
選ばれている.
• 自殺はその後のあらゆる可能性を奪ってしまうが,自らの状況
について明晰に考えた上で,生きる価値のない人生を送る可能
性が圧倒的に大きい場合(図のC-D),合理的な判断となりうる.
• 明晰な考えができない=自殺願望に取り憑かれている可能性.
ケーガン教授:
自殺という選択肢は正当になることもある
死んだほうがましと
言える状態
Y軸は人生の全体
的な価値を示す
(生きていることが
良いか悪いか)
治療法のない神経難病の場合,
いつ自殺の問題を持ち出せるか?
悪化開始点
死んだほうがましと
言える状態
• A点は人生の価値が悪化し始めるポイント.
• C点以降,自殺の問題を持ち出せるが,その条件は,十分な
治療やQOLを高める処置が行なわれることである.
ただし,自殺可能な時期を考慮する必要がある
自殺可能点1
死んだほうがましと
言える状態
• B点は自力で自殺できる最後のタイミングである.
• もしB点で自殺すると,生きる価値のある期間(B-C)を捨て
ることになる.
• しかしB点で自殺しないと,D点まで生きることになる.
→ いずれが良いのか?という判断になる.
自殺可能点2
疾患によって生きる価値のある期間と
死んだほうがましの期間が異なる
自殺可能点1
死んだほうがましと
言える状態
自殺可能点2
• もし自殺可能な最後のタイミングが,B点よりかなり遡って
Q点である場合も,自殺すべきであるか?
• 生きている価値がある長い期間(Q-C)を捨てることになる.
ケーガン教授の考えに則った
本例における議論のポイント
① 自殺願望に取り憑かれ,明晰な
考えができなかった可能性は
なかったか?
② 治療やQOLを高める処置は十分
に行われたか?(医療者は口を
閉ざしており不明)
③ 本例の自殺可能点のポイントは
早すぎたのではないか?
NHKの番組は製作者の主観が強い
ため,それだけ判断しないほうが良い
嘱託殺人で亡くなった女性
安楽死を望んでいたことばかりが注目されているが,ツイッターや
ブログでは趣味について語ったり,難病患者を励ましたりするなど
していた.
ハートネットTV
https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/446/
安楽死を望む気持ちは揺れていることを医療者は認識すべき.
5.安楽死についての個人的な疑問
安楽死に対する4つの疑問と
自分が納得したことば
1. 患者の自己決定権はどこまで許されるのか?
2. 医療者は死の問題にいかに関わるべきか?
3. そもそも安楽死は本当に安楽なのか?
4. 精神的苦痛は安楽死によってのみ解決されるの
か?
1.患者の自己決定権はどこまで許されるのか?
レネー・C・フォックス
米国における医療社会学者
の最初の一人である
現代は個人の自己決定権が絶対視され,社会的,文化的
文脈が軽視・無視され,患者の家族や医療者などと患者
の関係など,関係のなかの医療という視点がない
(個人の自律は関係性によって支えられることを認識すべき)
2.医療者は死の問題にいかに関わるべきか?
緒方洪庵は,ドイツ人医師 C. W.
フーフェラント(1762-1836)が
書いた医師の心得を『扶氏医戒
乃略』として日本語訳し,その
精神を我が物にしようとした.
• ただ治療するばかりでなく,不治の病の場合でも
生命を保持し苦痛を緩和することが医師の義務
であり,また大きな功徳でもある.
• たとえ救うことができなくても慰めることができる.
慈愛にあふれたこのような医師の態度は立派な
善行である(緒方洪庵による「仁」).
不治の病と医師の義務
その行為(注;人命を短縮すること)が幸福をもたらすか不幸を
招くか,価値があるかないか,そういった事は医師の関知する
ところではない.一度医師が僭越にもそういうことを考えた上で
仕事を始めるならば,そこから生じる悪い結果は計り知れない
ものがあり,医師は国家の最も危険な人物となるであろう.・・・
人の生命に関して,それが価値がないとか役に立たないといっ
た評価をするようになるからである.
医術の最高目的と医師の本分
~すべり坂の予言~
手塚治虫の曾祖父・手塚良仙は
適塾に学んだ蘭方医
ブラックジャック3巻
「ときには真珠のように」
人間が生きものの生き死にを自由にしようなんて
おこがましいとは思わんかね(本間丈太郎)
3.そもそも安楽死は本当に安楽なのか?
鳥取大学医学部
准教授・安藤泰至先生
その人を死なせることによって苦痛から解放するというの
は それは本当に問題を解決したのかというと,私は全然
違うと思うんですね.つまり死んでいく瞬間にその人が
本当に安楽かどうかっていうことは,分からないわけです.
死んでしまってから,それが死ぬという選択をして正しかっ
たのかと証明されることは絶対にないわけです.
https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/424/
逆にそこで思いとどまった時にあとから『あのときに思いと
どまって良かったな』と思う人は一般的な自殺でいくらでも
あること,そういう可能性を絶ってしまうこと,それを安易
に肯定するっていうのは,自分で選んだ死であっても,
やはり命をすごく軽んじていくようなことになってしまうん
じゃないかと思います.
https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/424/
4.精神的苦痛は安楽死によってのみ
解決されるのか?
• そのようなことはないと思う.多くの克服した人がいる.
• 患者さんの「死にたい」は,「もう限界なので,助けてほ
しい」というサインと考える.
• 医療者は十分な支援や緩和ケアのスキルをもつべき.
神経変性疾患や認知症に対する「神経疾患緩和ケア」
の確立や普及がより重要となる.
• また患者さんも,病気とともに生きるレジリエンスを高め
ることが求められる.
例:閉じ込め症候群にあっても,その生活に満足し,
QOLを維持し,生きる意欲を持つALS患者さんがいる
Neurology. 2019 Sep 3;93(10):e938-e945
1. 安楽死の目的は,肉体的苦痛の解放から,精神的
苦痛の解放に変化した.
2. 安楽死は「自己決定権」を根拠として行われている.
3. 安楽死の議論において,認知症や神経変性疾患へ
の対応が重要な問題になっている.
4. キーワードとして関係のなかの医療,神経疾患緩和
ケア,患者のレジリエンス向上を挙げたい.
小括3
推薦図書

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