Clinical Question:
機能性運動障害の診断と治療とは?
診断のポイント
1.除外診断をされるべきではない
2.神経症候により診断するべきである
1.除外診断をされるべきではない
・全ての器質的疾患を除外するには膨大な検査が必要となる。
(e.g.頭部MRI,脊椎MRI,髄液検査,種々の神経生理検査など…)
・症状の難治化を助長しかねない。
→①罹病期間が長くなる。
②訴訟や法的,経済的問題が生じる。
(e.g.長期療養による失職,誤診による難病指定)
2.神経症候により診断するべきである
・歴史的に,Babinskiも器質性と機能性の麻痺を神経症候から
鑑別できないかと主張していた。
・DSM-ⅣからDSM-5への改訂で、その裏付けが与えられた。
DSM-5における診断基準(転換性障害)
A.1つまたはそれ以上の随意運動,または感覚機能の変化の症状
B.その症状と,認められる神経疾患または医学的疾患とが適合しない
ことを裏付ける臨床的所見がある
C.その症状または欠損は,他の医学的疾患や精神疾患ではうまく説明
されない
D.その症状または欠損は,臨床的に意味のある苦痛,または社会的,
職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こして
いる,または医学的な評価が必要である
DSM-5における診断基準(転換性障害)
A.1つまたはそれ以上の随意運動,または感覚機能の変化の症状
B.その症状と,認められる神経疾患または医学的疾患とが適合しない
ことを裏付ける臨床的所見がある
<改訂のポイント> Bの項目の意義
①神経学的に説明できない症候(陽性徴候)の存在が必須となった。
②心理的なストレス要因の存在が診断基準から外された。
→診断は精神科医でなく神経内科医が行うべきである。
診断に有用な陽性徴候(感度,特異度,陽性的中率)
Drift without pronation
器質性麻痺
機能性麻痺
回内なし
Leg-dragging gait
麻痺している方の足を引きずるような歩行
Give-way weakness
・MMTにおいて途中に突然力が抜ける。
・ゆっくり、軽微な力から少しずつ力を加えるようにして行うと
分かりやすい。
・重症筋無力症,自己免疫性脳炎などでも陽性になり得る。
・疼痛(特に関節痛)がある場合もみられ得る。
Co-contraction
・主動筋収縮時に拮抗筋も同時に収縮すること。
・通常、例えば上腕二頭筋のMMT時には上腕三頭筋は弛緩している。
・Co-contractionがみられる患者では、上腕二頭筋のMMT時に
上腕三頭筋の収縮も触知することができる。
・Give-way weaknessを直接筋を触れて確かめていると考えられる。
Hoover’s sign
・健側下肢を伸展挙上したときに、麻痺側の下肢を床面に押し付ける
力を踵の下に置いた検者の手で評価する。
⇒器質性では弱く、機能性では正常。
・麻痺側下肢を伸展挙上したときに、健側の下肢を床面に押し付ける
力を踵の下に置いた検者の手で評価する。
⇒器質性では正常、機能性では弱い。
まず踵の下に手を置いて
もう片方の足を伸展挙上
させて、この時の踵の下に
かかっている力を評価する
Sonoo’s Hip abductor sign
器質性麻痺
機能性麻痺
健肢外転 患肢外転
Hoover’s sign同様,
協働運動を利用し
た方法で一側の
下肢を外転した時
の両側の中殿筋に
生じる協働運動、
つまり反対側の
下肢も外転する
方向に力が加わる
ことを利用した方法
診療のスタートが治療のスタート
①患者の訴えを拒否的でなく受け止め、洩らすことなく拾い上げる。
②「精神科的問題に関する質問」は少なくとも初診時には避ける。
③神経診察の結果と解釈を伝えることが治療になり得る。
④最終的に診断を告げる際には、注意が必要である。
診断を告げる際のポイント
①「機能性障害」などの明確な診断名をまず伝える。
②診断の根拠(陽性徴候)について説明をする。
③「脳からの命令が身体に届いていない」「ハードウェアではなく
ソフトウェアの問題」等メカニズムの説明は有用である。
④症状は本物であり、患者が嘘をついている,演じているなどと考えて
いないこと、患者に落ち度はないということを伝える。
⑤世の中に多い疾患であることを伝える。
診断を告げる際のポイント
⑥神経系に器質的障害はなく、回復が望めることを強調する。
⑦原因に立ち入る必要はない。
⑧次回の診察を予定する。
⇒「回復の望める機能性疾患」という新しい認知を与える。
これにより生活・行動様式が変われば、それが「認知行動療法」。
<参考文献>
• J.STONE et al. Functional limb weakness and paralysis. Handbook of Clinical
neurologic Disorders 18,2016
• Sonoo M. Abductor sign: a reliable new sign to detect unilateral non-organic
paresis of the lower limb. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2004 ;75:121-5.
• Mehndiratta MM, et al. Hoover's sign: Clinical relevance in Neurology. J
Postgrad Med. 2014;60:297-9.
• 園生雅弘. ヒステリー患者の神経症状と診察.神経内科,87:307-11, 2017
• 園生雅弘. ヒステリー(転換性障害)の神経学.BRAIN NERVE,66:863-71, 2014

機能性運動障害の診断と治療