進化するモノづくり:
ソーシャルファブの新しい展開
2015年4月24日
(公財)ハイパーネットワーク社会研究所
多摩大学情報社会学研究所
会 津 泉
iza@anr.org
ファブ社会の第一歩、
FabLab
 「(ほぼ)あらゆるもの (almost) anything」をつくることを目
標に、3Dプリンタやカッティングマシンなど、多様なデジタ
ル工作機械を備えたオープンな市民工房とその世界的
ネットワーク
 Fab= Fabrication(ものづくり)とFabulous(素敵・楽しい・愉
快)の2つの意味
 個人が自らの必要性や欲求に応じ、自分(たち)でほしい
ものを自由に作り出せる社会をビジョンに
 「市場原理=大量生産・規模の経済」を超え、いままでつく
り出されなかったものも作られる
「ファブラボ」とは
• Learn x Make x Share
まなぶ つくる わかつ
世界に広がるFabLab
世界約40ヶ国 、356カ所(2014年7月現在)
www.fabfoundation.org/fab-labs/
インド、ネパール、ケニア、ガーナ、南アなど途上国にも
「FabLab以外」の市民ラボも多数(ロシアだけで100)
ファボラボの形態は様々で、それぞれ独自の運営
大学などの教育研究機関、地域のコミュニティーセンター、
文化施設と一体化したもの、NPO/NGO、個人、企業によるラボ…
自立モデルはまだ難しい
国境を超える
ものづくりのコラボレーション
ネット経由でコラボ。デザインのシェア、進化が急速に進む
FabWikiなどで情報共有、ビデオ会議システムで24時間シンクロ。世界中の
どのファブラボにも「Hello World」と肉声で伝えあう
Makers と Fabと
2012年に出た3冊の本
Fab FabLife MAKERS
ニール・ガーシェンフェルド 田中浩也 クリス・アンダーソン
やっと本物が出た!(公文)
田中浩也(38) x 公文俊平(78)
2013.1.22
@慶應SFC
Facebookに動画でアップ
公文情報社会ビジョン
• 10年近く前から、ガーシェンフェルドに注目、
• 「いずれ家庭用工作機械(3Dプリンター)が
登場・普及し、それを作る新しい産業が台頭
するようになる」と主張
• その頃はSFだと思って、相手にしなかった
• (ごめんなさい)。
SocialFab 2013 5
「ファブ社会」=情報社会の発展段階
第3次産業化
第1次情報化
公文俊平:「第3次産業化(デジタル革命) と 第1次情報化
(ソーシャル革命)が同時進行」
デジタル革命3.0へ
 1.0 = 半導体・パソコン(単体)
 2.0 = 携帯・インターネット(つながった)
• → ここまでは、ヒトの「頭脳」同士をつなぐ革
命
 3.0 =ソーシャルファブ
 3Dプリンター、レーザーカッターなどを駆使した
– 新しいモノづくり
 自分が欲しいものが作れる、手に入る
 コミュニティ、人々の間で、ソーシャルにつくる
• → ヒトの「手」や「道具」同士をつなぐ革命
「ウェブ社会からファブ社会へ」
(田中浩也『情報処理』 2013.8月・巻頭・一部略)
•3D プリンタが製造業を復権すると「メイカームーブメン
ト」がマスメディアで喧伝されているが,実はいま起こって
いる革命は製造業の話ではなく,情報社会の進歩の話である
と捉えたほうがよい.
•3D プリンタ,レーザーカッター,CNC ミリングマシン,コ
ンピュータ刺しゅうミシン,3D スキャナといった「ディジ
タルファブリケーション」技術は,情報(データ)を物質
(もの)に,物質を情報に相互に変換するための機器群であ
る.
•それらはPCに繋がれているだけでなく,インターネットに
も繋がれている.これによって,日常的にものを試作したり,
データでものを遠隔に転送したり,また地球上の好きな場所
で(好きな機械で)データを物質化する,ということができ
田中浩也
『SFを実現する 3Dプリンタの想像力』
「情報処理」から「物質変換」へ
おどろきの未来はもう始まっている!
「3Dプリンタで何がつくれるのですか」という質問をよく受ける
のですが、そのたびに「ワープロで何が書けるのですか」や「
ピアノで何が弾けるのですか」という質問と同じような奇妙さを
感じてしまいます。
3Dプリンタをはじめとするデジタル工作機械は、既存の何か
を効率化したり、つくりだしたりするツールというよりも、…創
造や発想を刺激する「発明」ツールだと常々考えてきたからで
す。3Dプリンタは、私たちに「何をつくりたいのか」を問いかけ
ているのです。
まえがき モノとインターネット
第1章 SFとFAB 空想から現実へ
第2章 メディアとFAB 情報から物質へ
第3章 パソコンとFAB 「つかう」から「つくる」へ
第4章 地域・地球環境とFAB グローバルからグローカルへ
第5章 「ものづくり」とFAB 工場から工房へ
第6章 デジタルとFAB そして「フィジタル」へ
第7章 日本とFAB 過去と未来をつなぐ
リアル・バーチャリティ あとがきに代えて
2014年5月20日刊
講談社現代新書 840円
「第4世代モノづくり」
• 第1世代 機械(水力・蒸気機関)
• 第2世代 電力(モーター)
• 第3世代 コンピュータ(IT)
• 第4世代 ネットワーク経由、リアルとサイ
バーの融合
ドイツの戦略:「Industrie 4.0」
• Internet of Things (IoT)が起源
• データとサービスを加え、「Internet of Things,
Data and Services」が「第4次産業革命」を推
進し、製造業と生産方法の変革をもたらすと
いうコンセプト
• ドイツ政府、産業政策として推進
工業社会のものづくりプロセス
ソーシャルファブのモノづくり
 自分たちが欲しいものを作れれば、買う必要なくなる?
 マーケティング、流通、在庫、販売のフロー中抜きに?
 市場構造の大変化?
 製造プロセスにも、ファブが
ルノー、GM、パナソニック、リコー・・・
モノづくりの「オープン化」=
オープンイノベーション
• そもそもインターネットのOpennessが
• 「ウエブ社会」を可能にした
– Open Source
– Open Data
• オープン化、ソフトからハードへ
– Open Source Hardware
– Open Idea
– Open Design
– Open Brand
フランス、エロー首相ら5閣僚
パリFacLab訪問 (2013.2.28)
@ Univ. Cergy-Pontoise Gennevilliers
Digital District政策:各地域にファブラボを
「オランダに追いつけ!」
各国指導者も注目
オバマ大統領、積極推進
 2013 一般教書演説
 製造業の復活、イノベーションセンター 全米15カ所
 小学校1000校に3Dプリンター「図工2.0」
 インターネット推進と同じ担当者がホワイトハウスに
 STEM(Science, Technology, Engineering, Math)教育
 Makers Movement
ホワイトハウス、「メイカーフェア」
• 2014年6月開催、Makers運動をサポート
Fab9国際会議
横浜で2013年8月、1週間フル活動
•FabLab運営者、40カ国、200人以上参加
FAN1 (2014年5月)
• FAN1 第1回アジアファブラボ会議
• フィリィピン・ボホール アキノ大統領出席
ファブラボ大分も参加
FAB10 2014 バルセロナ
• 運営者+実際にモノをつくる人中心に1週間
• 一般向「シンポジウム」:1日だけ
• 週末は Fab Festival 市民とワークショッップ
日本のワークショップ
漆のブローチと赤べこ
私も通訳しながら
このブローチを作りました
日本のファブラボ (2015.4月)
ファブラボ鎌倉 2011年5月
ファブラボ筑波 2011年5月
ファブラボ渋谷 2012年11月
ファブラボ北加賀屋 2013年1月
ファブラボ仙台 FLAT 2013年4月
ファブラボ関内 2013年9月
ファブラボ大分 2014年1月
ファブラボとっとり 2014年5月
ファブラボ佐賀 2014年7月
ファブラボ浜松 2014年
ファブラボ大宰府 2014年
ファブラボ広島安芸高田 2014年
準備中:福岡、熊本、中津、久留米、藤沢、
多様な「ファブスペース」の展開
•FabCafe(東京都渋谷区)
Maker's Base(東京都目黒区)
Makers(兵庫県神戸市)
take-space(静岡県浜松市)
しぶや図工室(東京都渋谷区)
博多図工室(福岡県福岡市)
•&FAB(東京都渋谷区)
Happy Printers(東京都渋谷区)
coromoza(東京都渋谷区)
Office24Studio(東京都新宿区)
はんだづけカフェ(東京都千代田区)
Garage Sumida(東京都墨田区)
Hackers Bar(東京都港区六本木)
Mono(東京都江東区)
KOIL(千葉県柏の葉市)
FAB蔵(福島県会津若松)
Fabbit(北九州市)
Fab-core(岐阜県大垣市)
QUANTUM(東京都港区芝浦)
Maker Lab Nagoya(名古屋市)
Tokyo HackerSpace(東京都港区青山)
Geek Cafe Ise (三重県伊勢市)
FAB図工室と雑貨のお店(名古屋市)
おむすび&ものづくりカフェ 和RK(八王子市)
3Dプリンタ&駄菓子 Elan‘s Craft (美濃加茂市)
札幌ものづくりオフィス&カフェSHARE (札幌市)
FabShop (埼玉県狭山市)
心斎橋Dスタ(大阪市)
ナノラボ(東京都千代田区/秋葉原)
工作工房(青森県八戸市)
北九州イノベーションギャラリー(北九州市)
ギークハウスプロジェクト(ルームシェアネットワーク)
ガジェットカフェ
下北沢オープンソースカフェ(東京都世田谷区)
西千葉工作室(千葉県千葉市)
WooBo(東京都三鷹市)
国立せいさく所 (東京都国立市)
Chika-ba ちかば (東京都国立市)
パナソニック・ファブラボ(大阪)
多摩ファブスペース研究会グループ
(ファブラボ鎌倉・渡辺ゆうかさんの資料に一部追加)
準備から当日の会議まで、
芸短大インターンのみなさんに
盛り上げていただきました!!
別府湾会議2013 @ 県立芸術文化短大とコラボ
アンカンファレンス
参加者全員で議論・発表
ファブラボ大分
2014年1月オープン 九州初
平成26年度県政推進指針 (2)活力を創造する商工業等の振興
②3D造形技術の導入などものづくり産業の振興
・次世代のものづくり技術である3Dデジタル造形システムを活用した、ものづく
り産業の技術革新の支援と、ファブラボなどを通じた普及啓発の推進
• 「元気創出基金」による事業
• 県内企業の生産性向上や新分野進出を促進するとともに学生や女性の関
心を高めるため、3Dプリンター等を活用した三次元造形システムの普及啓
発を行う。
• ファブラボ(ものづくり拠点)の設置
• 県民向け地域・基礎講座の開催
• 週末:一般開放
• 希望者への機材貸出も
FabLab大分
子供からシニアまで、多様な利用者
• <モノづくりを楽しむ>ことが基本
• できるだけ利用者主導で
3Dスキャナーで自分のフィギュア
材木とのこぎりで
ベンチを作りました
NHK九州 生中継です
子供たちも大勢来ます
大分県立盲学校とコラボ
さわって学べる、唄える
<未来の産業・モビリティ・メイキング>
アンカンファレンス #1 ハイパー研・ファブラボ大分主催
2015年3月5-6日
パリ FabLab@国立産業科学博物館
Future of Industry, Mobility & Making
unReport #1
April 2015
unConference #1 Paris
5th & 6th of March 2015
at Carrefour Numérique²
FabLab La Villette
at Cité des Sciences et
de l’Industrie, Paris
1月から2ヵ月の準備
「<最小限>の時間とコストで実現しよう」
未来の産業、モビリティ、モノづくりを
デザインしよう!
Let’s design the Future of
Industry, Mobility and Making
産業はどう変わるか?
Industry:人々に製品やサービスを作って届ける社
会システム
products and services to citizens
「unIndustry」とは?
人々が自分たちで自分たち自身の製品やサービ
スを作り、分かち合う社会システム?
全員でテーマ・内容を議論・決定
Open Source Vehicleと ルノーが「材料提供」
ルノー
• 車が使われているのは
時間で2%、1.2人
• オープンイノベーション
への進化は必然
• 社内でファブラボ推進
• OSV 車の「常識」に挑戦
• プラットフォームを提供し、参
加型車づくり推進
Open Source Vehicle のプレゼン
クルマづくりのオープン・モジュール化
だれでも作れる シャシーのデータを無料公開
自由にカスタマイズ可能
「プラットフォーム」の提供
グローバルに展開 引き合い続々
街の整備工場、GSでクルマが作れるようになる?
キット6,000ドルで販売
13
産業社会から、脱産業社会へ?
Industrial Society to unIndustrial Society?
人々はどこまで自分たちで企画、設計、生産、
利用するようになるだろうか?
so on, will rely on other independent actors that may b
of those independent actors as linked to a local marke
may create sustainable local jobs.
Our experience shows us that user’s interested by mak
single person, or a community. So far OSVehicle proje
90 countries, there were 10 000 downloads of the veh
"10
THE WAY VALU
We ask ourself the question of OSVehicle relation to its environment, so OSVehicle is conceived as
a connected car, and also made for the city, regarding current regulation in Europe. As the Smart
City is one idea the city of tomorrow may look like, OSVehicle could be connected to it.
In terms of business model,OSVehicle aims at creating a new value chain, that generates activity
for new independent actors. Instead of trying to integrate all the value like car manufactur ers
traditionally do, the OSVehicle project envisions this value chain as distributed and local.
The kit is distributed by OSVehicle, then all additional changes, other parts crafting, assembly and
so on, will rely on other independent actors that may become potential business . OSVehicle thinks
of those independent actors as linked to a local market and existing pr oduction facilities, which
may create sustainable local jobs.
Our experience shows us that user’s interested by making an OSVehicle our project can be either a
single person, or a community. So far OSVehicle project has received requests to start project from
90 countries, there were 10 000 downloads of the vehicle 3D CAD files, 200 request for new
OSV 参加型
車作り推進
モビリティとは?
Physical Mobility
ヒ ト
製 品
サービス
Digital Mobility
 情 報
 カ ネ
 サービス
 コンテンツ
相互に関連
相互にネットワーク
モノづくりとは?
Physical Making
ヒ ト
機 械
プロセス
Digital Making
 情 報
 コンテンツ
 デザイン
 アイディア
相互に関連
相互にネットワーク
もしも
UNIQLOやギャップがクルマを作って売ったら?
いまのマーケットにあるクルマって、本当に必要?
もっとシンプルなデザイン、交換可能なパーツ、長く
乗れるクルマでいいのでは?
自動車業界全体が特定プラットフォームに依存
外部の主体が、まったく別の視点から挑戦?
Google, Tesla, OSV, and YOU
“Connected Car”
by Open Automotive Alliance
アバルト アキュラ アルファロメオ アウ
ディ ベントレー シボレー クライスラー
ダッジ フィアット フォード ホンダ ヒュ
ンダイ インフィニティ ジープ KIA マセ
ラッティ マツダ 三菱 日産 オペル
RAM ルノー SEAT スコダ スバル スズ
キ フォルクスワーゲン ボルボ
(トップテンで入っていないのは、トヨタの
み)
パリ AutoLib 本格展開
「数年で黒字に」 クルマ「所有にチャレンジ
月額基本料:
12ユーロ
30分
5ユーロから
事故
3回まで
想定
観光客用地図に場所表示
英ファイナンシャルタイムス(FT)、
「未来のクルマサミット」5月に開催
未来の「モビリティ」とは
• 常時「つながっている」
• ネットワークが「考え」「支援」
• クルマ同士が相互に接続
– 他のクルマ、運転者、社会の主体と
– 飛行機も同じに、、?
– ドローンはどうする?
イベントが続々
バルセロナ「WMC」に
車が多数展示
フォード、スマホ付き
電動アシスト自転車出品
Automotive Linux Summit
6月、東京開催
unConference#1の結論=仮説
Open Factory Model
モノづくりのバリューチェーンの進化の方向
FIMM unConference の進化
• オープンエンデッドで開始
• どこに行くかはやってみて 自由に続けよう
#1 2015 3/5-6 パリ V
#2 2015.4/15 ロッテルダム V
#3 6/6 横浜
#4 7/4 深圳?
#5 7/30 NYC ?
#6 BBC2015???
アムステルダム市CTO関心あり トリノでも?
ファブラボ・アムステルダム訪問
Waag Societyが運営 (2015.4/14)
この
建物内です
ロッテルダムでFIMM#2開催
2015.4.15 @RDMロッテルダム
FIMM #2 議論
• パリに参加のPeter Troxler と共同
– (別府湾会議2013 Social Fab で招待)
– RDMの教授、学生中心
• 社会におけるモビリティが議論の中心に
OSVトリノ訪問 2015. 4/20
• ジュネーブからレンタカー 3時間
• 香港・深圳出身 イタリア生まれの兄妹
• シリコンバレーで開眼
• 自動車産業の拠点FIAT、ジウジアーロ、ピニンファリーナ
• CEO Tin Hang Liu 6月来日 ICTサミット参加決定
ソーシャルファブの可能性
 次世代の日本を背負う人材が育つ
 製造業のイノベーションと、それを超えた社会全体
のイノベーションが同時進行
 日本の伝統的な強み(モノづくり)をICTで継承・飛躍
的な発展が可能に
 地域に根付き、世界に広がる
新しい情報社会=「ファブ社会」をつくる
参考文献
 田中浩也 『SFを実現する 3Dプリンタの想像力』(講談社現代新書)
 公文俊平「情報社会とソーシャルファブ」 www.hyper.or.jp/bbc2013
 田中浩也『FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかた
の未来」』
 ニール・ガーシェンフェルド著、田中浩也、 糸川 洋訳『Fab ―パーソナル
コンピュータからパーソナルファブリケーションへ』
 Fabの本制作委員会 『実践 Fabプロジェクトノート』
 田中浩也、門田和雄ほか著 『Fabに何が可能か』
 バス・ヴァン・アベルほか、田中浩也監訳 『オープンデザイン』
 水野操『自宅ではじめるモノづくり超入門』
 水野操、平本知樹、神田沙織、野村毅『はじめての3Dプリンタ ~3Dデータ
作成/出力まるごと体験ガイド』
 門田和雄『3Dプリンタではじめるデジタルモノづくり』
 倉本義介「ソーシャルファブとの出会い」
ご清聴ありがとうございました
会津 泉
iza@anr.org
ハイパーネットワーク社会研究所
多摩大学情報社会学研究所
あとは
Making is Believing
百聞一作

ソーシャルファブAizu0423 D