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ロマ数16 simizut
- 3. 自己紹介
• 清水超貴
• s.t.@simizut22
• ロマ数過去登壇:
#1 : operad
#4 : ホモトピー球面のなす群
#9 : Euler 標数と Magnitude
#16 : Random Topology
• 群馬県出身
• 現在: 吉田大学 D
© s.t.@simizut22 3
- 5. グラフと複体 グラフ
(単純無向)グラフ G とは, 頂点集合 V と辺集合 E で与えらえれるもの. これ
を G = (V, E) と書くこととする.
Figure: 頂点数 10 のグラフ
Remark
• 単純とは, 多重辺と自己ループを含まないということ
• 無向とは, 辺には特別な向きがないということ
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- 6. グラフと複体 高次元への拡張
G = (V, E) をグラフとする. G の頂点 x, y, z がどの 2 点も辺を張る時面を張る
として, 面全体の集合 F を定義する. これにより定まる K = (V, E, F) を G の旗
複体(の 2-骨格)という.
(a) グラフ G (b) 旗複体 K(G)
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- 7. 位相不変量
グラフ G の旗複体 K に対し,
• G の連結な極大の部分グラフ(の旗複体)をそれぞれ連結成分という.
• 連結成分の個数 β0 を 0 次 Betti 数とという.
• G の閉路を K のサイクルという.
• いくつかの面の境界の和で与えられるサイクルとバウンダリーという.
• K のバウンダリーでないサイクルで, 線形独立なものの個数 β1(K) を 1 次
Betti 数という.
Remark
β0(K), β1(K) は連続変形(ホモトピー)で不変な値であり, いわゆる位相不変量になって
いる. したがって,
旗複体 K1, K2 に対し, β0 または β1 が異なる =⇒ K1, K2 は位相的に異なる
という分類ができる.
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- 9. 位相不変量 β1
(a) β0 = 1, β1 = 0 (b) β0 = 1, β1 = 1
(c) β0 = 1, β1 = 3
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- 11. ランダム幾何学的複体 定義
Rd
の有限集合 X = {x1, x2, . . . , xn} 及び半径 r > 0 に対し, その幾何学的グラフ
G(X, r) が以下のように定義される.
• 頂点集合 V = X
• x, y ∈ X は, その距離 kx − yk が r 以下の時に辺をなすとする. i.e.
E = {{x, y} | x, y ∈ X, kx − yk ≤ r}
また, この旗複体を VR(X, r) と書くこととする.
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- 14. ランダム幾何学的複体 Betti 数の変化
Figure: [0, 1]4
内の 1000 点から計算した Betti 数の変化
観察
• β0 は単調減少. b1 は単調ではない.
• β0 − 1, β1 は r が大きくなると 0 になる.
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- 16. ランダム幾何学的複体 Betti 数の変化
Q
点の個数 n に応じて, 半径 r = rn も変わったとき, β0(VR(Xn, rn)), β1(VR(Xn, rn)) は n → ∞
でどのような変化をするのか?
?
A
lim
n→∞
nrd
n =
0, sub-critical regime,
α ∈ (0, ∞), critical regime
∞, super-critical regime
のどれになるかに応じて, 挙動が大きく異なる. 相転移現象
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- 18. 漸近挙動と相転移 設定
• x1, x2, . . . , xn, . . . は Rd
に値を持つ互いに独立な確率変数列で, 共通の確率密
度関数 f : Rd
→ R を持つものとする.
• rn を半径の列とする.
• ランダム幾何学的グラフ G(Xn, rn) を Gn , その旗複体 VR(Xn, rn) を VRn と
表す.
• k = 0, 1 として VRn の k 次数 Betti 数 βk (VRn) を βk,n で表す:
β0,n = β0(VRn) = β0(Gn), and β1,n = β1(VRn)
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- 19. 漸近挙動と相転移 β0
Theorem ([Penrose et al., 2003])
1. nrd
n → 0 の亞臨界域において,
E[β0,n] ≈ n (n → ∞)
2. nrd
n → λ ∈ (0, 1) の臨界域において,
• 大数の法則が成立: 0 < c < 1 が存在して,
β0,n ≈ cn (n → ∞)
• 中心極限定理が成立:
β0,n − E[β0,n]
√
n
d
−
→ N(0, ∃
σ2
)
3. nrd
n = 2d−1
dωd
(c + log n) の時,
P(β0,n = 1) → e−e−c
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- 20. 漸近挙動と相転移 亞臨界域
Theorem ([Kahle and Meckes, 2013])
limn→∞ nrd
n → 0 の亞臨界域において, 次の極限が存在:(大数の法則)
E[β1,n]
n4r3d
n
→ C1.
Theorem ([Kahle and Meckes, 2013] )
1. n4
r3d
n → 0 の時,
P(β1,n = 0) → 1
2. n4
r3d
n → α ∈ (0, ∞) の時,
β1,n
d
−
→ Poisson(C1α).
3. n4
r3d
n → ∞ の時, 次の中心極限定理が成立:
β1,n − E[β1,n]
Var(β1,n)
d
−
→ N(0, 1).
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- 22. 漸近挙動と相転移 超臨界域
Theorem ([Kahle and Meckes, 2013])
各 xi は内点を持つ凸体 K に値を持つ i.i.d. な一様確率変数とする. limn→∞ nrd
n = ∞ の超臨
界域(super-critical regime)において, K のみに依存した定数 c > 0 が存在して,
E[β1,n] ≤ MWne−cWn
となる. ただし Wn = nrd
n . 特に,
E[β1,n]
n → 0.
Theorem ([Kahle and Meckes, 2013] )
xi は先と同様とする. この時, nrd
n ≥ c log n の連結域(connected regime)の時,
P
Kn が単連結
→ 0 (n → ∞).
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- 24. 拡張
• 今回扱わなかったが, 古典的なランダムトポロジーの対象として,
Erdős-Rényi グラフ G(n, p) [Erdős and Rényi, 1959] がある.
• 今回は 2 次元複体までを考えたが, 一般の次元の複体の一般の次元の Betti
数に対しても同様の結果が得られている.
• 今回はグラフの旗複体に制限して話をしたが, 例えば Čech 複体がよく扱わ
れている.
• rn を rn(t) という関数として, 確率過程としての極限を考える拡張もなされ
ている.
• Persistent Betti 数への拡張もある.
• さらに, その多変数化への拡張は... あっあっあっ.
• 基本的に, critical は人間が扱うには早すぎる.
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