血液培養について

まとめておく
薬剤師 佐野
ご覧いただき

ありがとうございます!
• 血培を取るときに気になることをまとめています。
• このスライドは2017年11月に滋賀県病院薬剤師会に
講師依頼され、講演したスライドから抜粋したもの
です。症例を交えた実際の講演スライドは公開して
いません。
• 元が講演スライドのため、スライド内の説明が不足
しています。詳細については参考文献を御覧くださ
い。
血液培養をとる患者
① 菌血症が疑われる
② 敗血症の可能性がある(qSOFA≧2)
③ 悪寒戦慄がある
④ 高体温 38.3℃< 低体温 <36.0℃
qSOFA ≧ 2
意識変化 呼吸増加 血圧低下
22回以上 100mmHg以下普段と違う様子
Christopher WS, JAMA 2016; 315: 762
感染症による死亡率 3-14倍へ
*もともとはGCS≦13
悪寒戦慄
Tokuda Y, Am J Med 2005; 118: 1417
(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタ
Shaking Chills
厚手の毛布をかぶっても全身の震えが止まらない!
悪寒
(((((( ;゚ρ゚)))))ガクガクブルブル
Moderate Chills
厚手の毛布をかぶりたくなる寒気
Tokuda Y, Am J Med 2005; 118: 1417
寒気
(((( ; ´Д`)))ガクガク
Mild Chills
上着を羽織りたくなる寒さ
Tokuda Y, Am J Med 2005; 118: 1417
悪寒と菌血症
悪寒の程度 感度 特異度 LR(+)
(((((((( ;゚Д゚)))))))

ガクガクブルブルガタガタ
悪寒戦慄 45.0 90.3 4.65
(((((( ;゚ρ゚)))))

ガクガクブルブル
悪寒 75.0 72.2 2.70
(((( ; ´Д`)))

ガクガク
寒気 87.5 51.6 1.81
Tokuda Y, Am J Med 2005; 118: 1417
体温と菌血症
体温 LR(+) LR(-)
≥40 0.3 1.1
≥39 1.1 0.95
≥38.5 1.4 0.50
≥38.0 1.9 0.54
Coburn B, JAMA 2012; 308: 502
なぜ血培が必要か
• 感染源の特定 を補助
• 血流感染の 起因菌を特定
• 適切な抗菌薬療法を促進
European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases (ESCMID) guidelines, 2012
感染症毎の菌血症率
リスク 疾患 確率
大
敗血症性ショック 69%
細菌性髄膜炎 53%
重症敗血症 38%
中 腎盂腎炎 19-25%
小
入院が必要な発熱患者 13%
市中肺炎 7%
蜂窩織炎 2%
外来患者 2%
Coburn B, JAMA 2012; 308: 502
感染源別の血培陽性菌
IVカテ
泌尿器
腹腔内
骨/関節
S.aureus CNS
E.coli

K.pneumoniae その他
Candida
腸球菌
嫌気性菌
S.aureus
Pien BC, Am J Med 2010; 123: 819
50% 100%
E.coli

K.pneumoniae
いつ血培をとるのか
• 抗菌薬を投与する前に
• 悪寒戦慄/発熱の1時間以内に
• 血培採取24時間後も患者状態が変化ない時
“この時!” という臨床研究は ない
血培をとるタイミング
1950年代 すでに“悪寒/発熱時”と記載
Bennett IL, Yale J Biol Med 1954; 25: 241
Eliakim-Raz N, Clin Microbiol Infect 2015; 21: 295
実は…
どこから血培をとるのか
• 動脈 より 静脈
• 鼠径 は 避ける
• 挿入から48時間を経過したルート

➾ ガイドワイヤのルーメンは 避ける
Mallen MS, Am Heart J 1947; 33: 692
Levin PD, Chest 2013; 143: 640
血培は”量”が命
• 20mL ➾ 40mL +19%
• 40mL ➾ 60mL +10%
• 血培ボトルの8割以上を入れること
Li J, J Clin Microbiol 1994; 32: 2829
陽性率を上げるために 40mL 以上
血培の”セット”とは
好気ボトル
嫌気ボトル
10mL 血液
10mL 血液
なぜ2セット提出なのか
• 1セット ➾ 73.1%

2セット ➾ 89.7%

3セット ➾ 98.2%

4セット ➾ 99.8%
• 1セットでは菌血症を見逃す可能性がある
A Lee, J Clin Microbiol 2007; 45: 3546
感度
血液培養で“重要”なこと
• 発熱の前後で感度はあまり変わらない
• 発熱時のルーチンな血培提出は意味がない
• それよりも患者の状態変化が重要
Riedel S, J Clin Microbiol 2008; 46: 1381
① 十分量の血液の採取
② 適切な培養セットの提出
③ 厳格な無菌操作
血培はいつまで培養?
• 血液培養は 5日間 で十分
• ブドウ球菌と腸球菌のコンタミは10時間遅い
(24hr vs 35hr)
• 嫌気性菌(24-40hr)真菌(26-50hr)は起因菌でも
発育まで時間がかかる
仲田, 環境感染誌 2016; 31: 107
Ruiz-Giardin JM, Int J Infet Dis 2015; 41: 6
Cockerill FR, Clin Infect Dis 2004; 38: 1724
起因菌が陽性になるまでS.aureus
CNS
E.coli
Candidasp.
Bourbeau P, J Clin Microbiol 2005; 43: 2506
<24hr <48hr <72hr
起因菌が陽性になるまでS.aureus
CNS
E.coli
Candidasp.
Bourbeau P, J Clin Microbiol 2005; 43: 2506
<24hr <48hr <72hr
起因菌 ➾ 48時間 以内に 94% が陽性
Candida は陽性まで 遅い
汚染菌との比較
P Bourbeau, J Clin Microbiol 2005; 43: 2506
S.aureus
CNS
CNS
G(+)桿菌
汚染菌
<24hr <48hr <72hr
汚染菌の陽性にも注意
Bourbeau P, J Clin Microbiol 2005; 43: 2506
-24hr -48hr -72hr
起因菌

(n=2,609)
74.2% 93.8% 97.5%
汚染菌

(n=1,099)
40.8% 89.6% 98.2%
24-48時間以内なら 起因菌かも ね…
● ●
24時間以内の血培結果
起因菌
汚染菌
n=540
n=744
12.7hr
20.6hr
起因菌 は 12時間以内に 陽性
(感度 45.3% 特異度 95%)
*中央値
Ruiz-Giardin JM, Int J Infet Dis 2015; 41: 6
つまり…
• 血培は 最低でも 5日間 の培養
• 12時間以内の培養陽性 ➾ 起因菌
• ただし24時間以降でも可能性はある!
採取する時間の間隔
• 1時間以内に2-3セットを採取
• I.E.のような持続する菌血症の場合、

24時間以内に3セットを採取
• 抗菌薬開始後も効果確認のために

48-96時間後に採取 ➾ 2セット以上提出
O’Grady NP, Crit Care Med 2008; 36: 1330
どのようにして血培を取るのか
① 採血部位を 洗浄し消毒 する
② 手指消毒をし無菌操作で採血する
③ 40mL以上の血液を 2箇所以上 から採血する
④ 針を変えずに ①嫌気②好気ボトルに接種する
満田(監訳), 血液培養冊子(ビオメリュー)
複数部位で採血できないとき
• 1箇所から 40mL以上 の採血でもOK
• それを 2セット以上 に分注する
• I.E.の場合には時間を於いて血培を取る
• 易感染性や真菌血症のときは別部位から
Dargere S, Clin Microbiol Infect 2014; 20: O920
消毒薬 利点 欠点 推奨状況
ポビドンヨード 持続性
穿刺まで

時間が必要
穿刺まで時間あり

➾習熟度不問
アルコール
即効性

コスト安い
すばやい

穿刺が必要
穿刺まで時間が

かけられない

➾ベテラン
グルコン酸

クロルヘキシジン

アルコール
即効性

+

持続性
コスト高い
さまざまな状況で

使用可能

➾習熟度不問
青木 眞 監修, 臨床に直結する感染症診療のエビデンス: 文光堂: 2008
使用する消毒薬
汚染菌とみなされる細菌
細菌名 コンタミ率 備考
CNS 62-82% S.lugdunensisは除く
Corynebacterium sp 68-96% C.jeikeiumは除く
Bacillus sp 68-92%
P.acne 84-100% 症例報告もある
Viridans Streptococci 32-49% S.mitis, S.anginosus I.E.リスク
C.perfringens 77% 皮膚所見がある場合は注意
Hall K, Clin Microbiol Rev 2006; 19: 788
血培でCNSが出たら
• S.lugdunensis は S.aureus と同様に扱う
• 2セット以上の血培が提出されている

➾ 2セット陽性 + 同一菌種 + 同一感受性

➾ IVルートあり

➾ 起因菌の可能性
Garcia P, J Med Microbiol 2004; 53: 67
Kim SD, Infect Control Hosp Epidemiol 2000; 21: 123
CRBSI
カテーテル関連血流感染
• CV刺入部の状態

➾ 紅斑, 痛み, 腫脹, 膿出 の有無

➾ 特異度は高い が 感度は低い
• CVは 抜く のか 残す のか

➾ 基本的には 抜く
Nasia S, Crit Care Med 2002; 30: 2632
CRBSI 感染の経路
皮膚の細菌による汚染
カテーテルハブの汚染
輸液の汚染
他感染巣からの血行伝播
Crnich CJ, Clin Infect Dis 2002; 34: 1232
CRBSI
• カテーテル経由で血中に細菌が入り感染
• 皮膚からの血培結果 = CVカテ先培養結果
• カテ内血培陽性 2hr < 皮膚からの血培

*時間差/定量培養は日本国内では行われていない場合がある
Mermel LA, Clin Infect Dis 2009; 49: 1
培養のとり方
• 末梢静脈 + CVカテ内血培 = 2セット
• 上記困難では異なるポートより2セット
• CVカテ先端は感染が疑われる時のみに提出
• 血培陽性の場合は陰性となるまで提出
Mermel LA, Clin Infect Dis 2009; 49: 1
すべきこと
• 不要な CV/Aライン の抜去
• 血液培養 + カテ内血培 + カテ先培養
• 尿路感染の除外
• 経験的 抗菌薬 ± 抗真菌薬 の投与
Mermel LA, Clin Infect Dis 2009; 49: 1
血流感染の起因菌
CNS
S.aureus
Enterococcus
Candida
E.coli
K.pneumoniae
P.aeruginosa
Enterobacter
Serratia
A.baumannii
1%2%
4%4%5%6%
9%9%
20%
31%
Wisplinghoff H, Clin Infect Dis 2004; 39: 309
n=20,978
起因菌別の死亡率
CNS
S.aureus
Enterococcus
Candida
E.coli
K.pneumoniae
P.aeruginosa
Enterobacter
Serratia
A.baumannii
34%
27%27%
39%
28%
22%
39%
34%
25%
21%
Wisplinghoff H, Clin Infect Dis 2004; 39: 309
n=20,978
特殊状況での起因菌
• 熱傷 ➾ P.aeruginosa
• 透析 ➾ 皮膚常在菌
• 悪性腫瘍 ➾ グラム陰性桿菌
• 中心静脈栄養 ➾ Candida
Mermel LA, Clin Infect Dis 2009; 49: 1
経験的治療
• グラム陽性菌 ➾ MRSAまでカバー

➾ VCM or DAP or TEIC (LZDは用いない)
• グラム陰性菌 ➾ 緑膿菌までカバー

➾ ESBL産生が疑わしい場合はカルバペネム
• カンジダ ➾ キャンディン系

リスク ➾ TPN, 悪性腫瘍, 移植, 定着, 鼠径部CV
Mermel LA, Clin Infect Dis 2009; 49: 1
投与期間
カテ抜去!血液培養陰性確認!
S.aureus
Candida
グラム陰性桿菌 腸球菌
CNS
14日間
7-14日間
5-7日間
非複雑性の場合
Mermel LA, Clin Infect Dis 2009; 49: 1
VCM と TAZ/PIPC 併用
VCM + TAZ/PIPC
VCM + CFPM
トラフに関係なく早期からAKIのリスク
Navalkele B, Clin Infect Dis 2017; 64: 116
ブ菌 腸球菌が血培で
陽性だったら…
S.aureus 陽性!
• 死亡率 : 17-24%
• 深部感染の合併率 : -37%
• I.E. の合併率 : 5-11% ➾ 死亡率 : -39%⇑
• I.E. の精査が重要!
S.aureus 菌血症は 危険!
Le Moing V, PLoS One 2015; 10: e0127385
Bai AD, Clin Infect DIs 2015; 60: 1451
ブ菌血流感染はバンドルで!
1. 血液培養の陰性化の確認 ➾ 48-96hr以内に再検
2. 早期の感染巣コントロール ➾ カテ抜去/ドレナージ
3. 心臓超音波検査の実施 ➾ リスクのある患者にTEE
4. MSSAには早期にMCIPCの投与 ➾ 国内では CEZ
5. VCM投与量はトラフ値で決定 ➾ 目標15-20μg/mL
6. 治療期間は感染症の合併で決定 ➾ 14-28日間
Lopez-Cortes LE, Clin Infect DIs 2013; 57: 1225
クロキサシリン
経食道心エコー(TEE)
• 心筋/弁/心室等を
“経胸壁”よりも詳細
に観察できる
https://www.nhlbi.nih.gov/health/health-topics/topics/tee/during
必ずTEEすべきか
① 院内発生の菌血症
② 4日以内の血培再検が陰性
③ 心臓内にデバイスがない
④ 血液透析患者でない
⑤ I.E.の臨床症状がない
⑥ 二次的感染巣がない
TTE のみでも良いかもしれない
Holland TL, JAMA 2014; 312: 1330
ずべてを満たす場合 陰性的中率:93-100%
VIRSTA score
点数 所見等
5
脳 or 末梢の塞栓
髄膜炎
4
心臓内デバイス or I.E.の既往
経静脈的薬物の常用
3
弁膜症の存在
菌血症の持続 ≦ 2pt
I.E.に対する 感度:95.8% 陰性的中率:98.8%
点数 所見等
2
化膿性脊椎炎
市中 or 医療関連感染
1
重症敗血症 or ショック
CRP > 19mg/dL
Sarah T, J Infect 2016; 72: 544
• S.aureus菌血症ではバンドルを利用する
• 経胸壁心エコー(TTE)は全例
• 経食道心エコー(TEE)は高リスク患者に
• 感受性判明までは VCM or DAP を!
S.aureus菌血症は緊急事態!
Enterococcusが血培陽性だったら
• Enterococcus菌血症の I.E. の合併は約5%
• E.faecalis 86% >> E.faecium 11%
• E.faecalis菌血症 でのI.E.合併は 13%
• リスク評価に NOVAスコア が有効
Emilio B, Clin Infect Dis 2015; 60: 528
N0VA score
点数 所見等
5 血培 2セット 陽性
4 菌血症の感染源が不明
2 弁疾患の既往
1 心雑音の聴取
< 4pt
感度:97% 陰性的中率:95%
Anders D, Clin Infect Dis 2016; 63: 771
Candidaが血培陽性だったら…
• Candida による CRBSI は死亡率が高い
• Candida 性眼内炎を合併することがある
• 血培陽性後、速やかな抗真菌剤開始でも

眼内炎:1-2% 脈絡網膜炎:2-9%
深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014
• 速やかに 抗真菌剤 (キャンディン系)投与
• β-Dグルカンも測定を
• 必ず血液培養の陰性化を確認する
• 陽性の場合には眼科医へ連絡する
Candidaが血培陽性だったら…
深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014
必ず眼科に相談
• 血培確定後、速やかに眼底検査を!
• 2週間後まで、1週に1度の眼底検査を!
• 上記 3回が最低限
• できれば 退院前に再検が推奨される
深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014

血液培養についてまとめておく