優良病・医院経営を目指して 事務部長による経営課題解決編 ~みんパチ実践編~ 特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志 以前、本稿でみんなの前でパチパチ拍手をしてもらう“みんパチ”を、お勧めさせていただきました。何か目標を達成した人たちを職員が集まる場で前に出てきてもらい、拍手をするだけです。それでもみんなの前で褒められた職員は嬉しいに決まってます。日本人の習慣として、人前で褒めたたえるというのは、あまり馴染みがないことなのか、このようなことを始めること自体が躊躇されがちです。筆者の病院で、形式ばった計画などせず、自然に導入することができたので、その事例をご紹介します。 当院では、毎月1回は院内研修の機会があります。全職員対象の研修で、業務終了後に1時間実施しています。内容は、医療安全や感染対策など、診療報酬等で定められている研修から、接遇や職業倫理などです。他にも、院外から講師を招聘し、講義をしていただいています。この「例会」の場で、筆者の思いつきで始まったのが、資格取得で頑張った人の表彰です。表彰といっても肩ひじ張ったものではなく、せっかく資格を得たのですからみんなに共有しよう、という感じで始めました。各部署から職員の資格取得の報告が届いたら、翌月の例会でサプライズでみんなの前に出てもらい、ちょっとしたプレゼントを渡して、みんなから拍手をもらうのです。たかが拍手ですが、やはりみんなの前に立って、褒められるのは悪い気はしないでしょう。前に呼ばれた人は少し照れながらも、取得した資格の説明を嬉しそうに発表されています。 「ちょっとしたプレゼント」も事前にどんなことが好きな人か、を情報収集して、できるだけそれに合った2~3千円のプレゼントを用意しています。ビール好きならビールグラス、肉好きなら高級和牛、といった感じです。意図していなかったのですが、このプレゼントも会場を笑いに包む効果があります。単なる商品券などを一律にあげるのではなく、表彰される人や内容によってプレゼントが違う、というのが面白いようです。おそらく、事前に意見を集約してみんパチを計画していたら、プレゼントは商品券になっていたと思います。その方が無難だし、ニーズも高いことは間違いありません。しかし、もしそうしていたら「今日のプレゼントは何かな」という会場の期待感はなかったことでしょう。 みんパチを始めたら「こんなこともあったけど来月の例会で表彰できないか」という情報が次々に届くようになりました。研究論文が学術誌に投稿された、地元のバレーボール大会で病院のチームが優勝した、などです。もちろん、拒む理由はないので、どんどんみんパチしています。ほぼ毎月何かしら表彰することが報告され、多い月には3件も対象者がいました。このような場で、表彰される人がいると、どういうこと・人に対して病院が支援したいのか、ということが伝わるようになります。また、所属長が「これは表彰してもらいたいな」ということを日々の業務で探す姿勢は、そのこと自体が“良いこと”を探す視点となっており、とても前向きなことです。当初はそこまで期待していたことではなかったのですが、思わぬ副産物でした。 写真:みんパチの様子