(ニュース)
2016年度の診療報酬の改定率は、本体が0.49%のプラス改定。これに薬価のマイナス1.22%、材料価格のマイナス0.11%を加味すると、ネットでは0.84%のマイナス改定。さらに、医薬品の市場拡大再算定(通常分)のマイナス0.19%を加味すると、ネットで1.03%のマイナス改定となる。
(解説)
□ 栄養食事指導料
診療報酬改定の内容が見えてきた。本稿では栄養士・管理栄養士に関する内容を見ていく。まずは栄養指導の評価である栄養食事指導料が見直されたことだ。栄養食事指導料は外来、入院、在宅の3つがある。指導の対象者は特別食を提供している人に限定されていたが、改定で「がん患者」「摂食機能若しくは嚥下機能が低下した患者」「低栄養状態にある患者」が追加された。また、もともと対象となる特別食に「てんかん食」が追加された。それぞれの詳細要件は図表1を参照。これにより対象者はかなり拡大され、現行では食事指導を実施していても算定できなかった患者が少なくなるだろう。
図表1:栄養食事指導料の追加対象者
てんかん食
難治性てんかん(外傷性のものを含む。)、グルコーストランスポーター1欠損症又はミトコンドリア脳筋症の患者に対する治療食であって、グルコースに代わりケトン体を熱量源として供給することを目的に炭水化物量の制限と脂質量の増加が厳格に行われたものに限る
摂食機能若しくは嚥下機能が低下した患者
医師が、硬さ、付着性、凝集性などに配
慮した嚥下調整食(日本摂食嚥下リハビリテーション学会の分類に基づく。)に相当す
る食事を要すると判断した患者
低栄養状態にある患者
次のいずれかを満たす患者
ア:血中アルブミンが3.0g/dL以下である患者
イ:医師が栄養管理により低栄養状態の改善を要すると判断した患者
さらに、食事指導料の点数そのものも見直されており、これまで入院・外来とも概ね15分以上の実施で130点であったが、「初回(概ね30分以上)260点」「2回目以降(概ね20分以上)200点」へと倍の点数がつき、非常に評価が高まったと言える。これまでの15分ではあいさつ程度で終わってしまい、実際は20分や30分はかかっているところが多いのではないか。現状に沿った形で時間が見直され、点数も増点となった。
また、在宅患者に対する訪問指導については、これまで「調理を介して実技を伴う指導」であったが「食事の用意や摂取等に関する具体的な指導」へと変更されており、調理の実技が必須ではなくなった。調理の実技となると受け手となる患者さんや家族にとっても準備も必要となり負担感があったが、改定で指導中心でも可能となった。
□ 栄養サポートチーム加算
次に、NSTを評価した栄養サポートチーム加算(週1回200点)である。NSTの活動に歯科医師が関与した場合に「歯科医師連携加算(50点)」が新設された。この歯科医師は院内に歯科があり所属する場合でも、院外から連携で歯科医師が来る場合でも評価される。歯科との連携については他の点数でも評価がついており、まだ連携が取れていないところは必要性を検討したいところである。
また、当該点数はへき地や離島など医療資源の少ない地域では、チームメンバーの1人を専従にすることなく院内に研修修了者がいれば半分の点数(100点)で算定ができる。ただし、対象地域にある医療機関であっても特定機能病院、200 床以上の病院、DPC対象病院、一般病棟7対1または10対1入院基本料を算定している病院は除外されていた。しかし、改定で10対1入院基本料に関しては対象へと追加された。つまり、医療資源の少ない地域にあって、特定機能病院でなく、200床未満のDPCではない10対1の病院については、緩い基準でNSTが算定できることになる。対象病院は届け出を検討したい。
□ 経腸栄養用製品の見直し
今回の改定で金額的に最も影響があるのは、流動食のみを経管栄養で食事提供している場合の食事療養費の減額であろう。一般の食事にかかる費用より、流動食の費用が低いことから収入も引き下げる、という措置である。施設基準に応じて算定している食事費用が図表2の通り引き下げられる。例えば、流動食のみの患者が10人いたとする。1日3食だとすると1月で▲65円×3食×10人×30日=▲58,500円、年間70万円もの減収となる。まずは、実際にかかっている費用と改定後の収入を比較し、費用が高い状況になっていないか確認が必要である。除外規定など逃げ道はないので、価格交渉で減少分を少なくするしかないだろう。ただし、全国の医療機関が価格交渉によって費用が下がると、次回改定でさらに市場価格に応じて点数が下がる可能性はある。だからと言って、自院だけが価格交渉をしなくても、他の病院がするわけで、しないところだけ損が拡大し、しているところも常にギリギリ、という状況が続く。薬価や償還材料、DPCの在院日数、透析材料などは既にそうした仕組みが組み込まれており、経腸栄養に関しても免れない。
現行
改定後
減少額
入院時食事療養費(Ⅰ)
640円
575円
▲65円
入院時食事療養費(Ⅱ)
506円
455円
▲51円
入院時生療養(Ⅰ)
(1)食事の提供たる療養
554円
500円
▲54円
※入院時生療養(Ⅱ)については既に給付水準が低いので減額対象外