優良病・医院経営を目指して 事務部長による経営課題解決編 ~診療報酬改定への対応方法~ 特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志 今年は診療報酬改定の年です。4月の改定に向けて、中医協が騒がしくなってき、医事課を中心とした病院内の雰囲気もざわついてきた頃ではないでしょうか。筆者が最初の診療報酬改定を経験したのは学生の最終年で、当時は改定セミナーが外国語を聞いているように感じていたことを思い出します。そこから数え今年の改定が6回目であり、なんとか改定がどんなものなのか、どんな内容がどのように議論され制度になっていくのか、分かってきたように思えます。 これまで、セミナー講師として、経営アドバイザーとして、医療機関向けに診療報酬改定の対応を話したり、実行したりしてきました。今年は組織の一員として、初めての改定となるので、満を持して院内体制を整えて対応しています。それぞれの医療機関で改定の対応方法はあろうかと思いますが、参考までに、どのように体制を作っているのかお伝えできたらと思います。 まず、インプット=情報収集についてです。改定前の年は“次期改定の予測”的な講演会が各種開かれます。これらの勉強会には医事課の希望者に、積極的に参加してもらいました。院内全体としては、外部から実績のある講師を招聘し、昨年夏ごろに当院視点でアドバイスをもらいました。個別項目が出る1月下旬から、答申や告示、通知、事務連絡の時期には、全体像を把握している講師を中心に医事課と管理者で複数のセミナーに参加し、戻ったら知識を共有する場を作っていきます。その際、単に参加するだけでは目的が曖昧なので、事前に確認する視点を共有します。3月上旬には再度、院外から講師を呼び改定セミナーを開催します。改定終了後にもフィードバックを受ける機会を作ろうかと思っています。 続いて、情報の活用です。個別項目が発表された数日後には、院内で所属長級を集めて、今回の改定内容について詳細に伝えます。この時点では点数や各種基準値は不明なところが多いですが、ほぼ方向性は分かります。この項目は新規の届け出ができそうだ、収益の増減に大きく影響しそうだ、ということを共有することで、先述の院外セミナーなどに参加する際に、確認する視点が身に付きます。答申で点数や基準値が分かったら、項目ごとに担当者(部署)を明記して、基準をクリアできそうか、どのくらい対象患者がいるのか、といったことを調べてもらいます。1~2週間で調べてフィードバックしてもらい、できる・できないを明確化し、必要であれば対策を打っていきます。ここからは通常のPDCAサイクルを回す段階に入ります。 PDCAが回りだす頃に、外部から新たな情報や考え方がインプットされます。それに応じて微修正をかけていき、4月以降に各種届出や算定を開始できるように準備します。点数が分かったらシミュレーションも実施しますが、精度の高さを重視するのではなく、それぞれの項目のおおよそのインパクトを知ることを目的とします。改定により数万円変動する項目と、数百万円、数千万円、場合によっては億単位変動する項目とでは、対応の仕方が変わってきます。それを判断するためのシミュレーションとします。 今回お伝えさせていただいた体制がベストではないと思いますが、参考にしていただけたら幸いです。ちなみに、改定がひと段落したら、改定対応のあり方についても反省会を開いて次回に生かしていく予定です。