優良病・医院経営を目指して 事務部長による経営課題解決編 ~一研修、一改善制度~ 特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志 決裁書類として回ってくる中に「研修報告書」という、院外研修に参加した人が研修の内容をまとめた報告がありました。報告書の感想欄には「参考になる知識を得られてよかった」といった類の言葉が並びます。こうした院外研修後の報告を必須としているところは少なくないでしょう。確かに、こうした報告書を通して参加できなかった人にも内容が共有できる点は良いのかもしれません。しかし、この仕組みが、院外研修に積極的に参加してもらい、そこで得た知識を院内にフィードバックされているかといったら疑問に感じました。 院外研修に参加して非常にためになる情報を得て「これはうちの病院でもやってみよう」と思いを高めて研修会場を後にしても、次の日病院に戻るころにはその気持ちも薄れてしまい、目の前に積み重なる日常業務の嵐にかき消されていく。こうした気持ちを経験したことがある人は多いのではないでしょうか。研修に参加しても、院内でその知識を活かした「実行」がなければ何も変化は起こらないのです。 そこで早速、教育研修委員会を開き「一研修、一改善制度」を検討しました。研修に参加したら1つ以上の改善活動を実施すること。報告書にはその実行宣言を必須項目とし、単なる研修のまとめは任意項目としました。また、改善活動にも種類があり「お金がかかること」「他部署が実行すること」ばかりを提案されても困ります。お金がかからなく(かかっても数万円で済む)、自分もしくは所属部署や委員会で実行ができる改善活動を考えて報告してもらうことにしました。改善活動につながらない研修もあるのでは、という意見もあったのですが、やはりこうした目的意識をもって参加することで何かしらアイデアを考えることが必要です。そもそも、それを得られない研修であれば参加する価値はないでしょう。もちろん「いつまでに」のデッドラインつきで、その日に改めて報告を義務付けます。 研修報告内容の変更とともに「積極的に研修を受けてもらいたい」という方針を示すために、研修参加の制限は廃止しました。病院によっては1人何回まで、と院外研修(出張も含む)の参加回数が制限されているところも少なくないでしょう。それを撤廃し、新しい報告制度に則り改善活動を実施することで院内に還元される研修参加は何回でも参加することが出来ます。教育研修に関わる費用も、収益の0.5%しか使われていなかったので、目標を1%とし、今までの倍は研修費用に使いたいということも示しました。 それでは費用ばかりがかさんでしまうのでは、と思うかもしれませんが心配は無用でしょう。もし延100人が研修に参加したとしたら、100件のお金のかからない改善活動が期限付きで「実行」されるのです。全てが収支改善に関連しないにしても、その一部でも改善に繋がれば投下した研修費の回収は容易であると考えています。この制度が活用されて、院外にどんどん出ていく人が増えることを期待したいところです。