(ニュース)
自民党は9月24日、党本部で両院議員総会を開き、安倍晋三首相の総裁再選を正式に決めた。首相はこれを受けて党本部で記者会見し「アベノミクスは第2ステージに移る」と経済最優先の政権運営を進める考えを表明した。
(解説)
□第1ステージの検証
アベノミクス第2ステージの“3本の矢”として、①希望を生み出す強い経済、④夢を紡ぐ子育て支援、③安心につながる社会保障、の3項目を掲げた。具体的な数値目標として、14年度に490兆円だったGDP(国内総生産)を600兆円とすること、現在1.4程度の出生率を1.8まで回復させること、家族らの介護を理由に退職せざるを得ない介護離職をゼロにすること、とした。最優先課題として、医療・介護分野に影響する課題が取り上げられたことになる。
そもそもアベノミクスとは、2012年に第2次安倍内閣が発足した際に掲げられた一連の経済政策を総称して呼ばれている。当初の3本の矢は①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略、である。この3本の矢が放たれ、賛否両論はあるがある程度成果が出たとされ、次のステージの目標が掲げられた。第1ステージの成果として、GDPが成長した、株価が倍増した、高水準の有効求人倍率、過去最高の外国人訪日、などが挙げられている。医療・介護分野については、一部具体的な内容で方針が示されたが、それほど大きな成果が挙がったとは言いにくい。
例えば、3本の矢の一つである成長戦略として「日本版 NIH の創設や先進医療の対象拡大、一般用医薬品のインターネット販売の解禁、医療・介護・予防の ICT 化の徹底」などが掲げられていた。日本版 NIHはモデルとされている米国のNIHとは比にならないような小粒な議論となっている。先進医療の拡大も当初示されていた大きな話ではなく、一部の医療機関での導入で、実質は既存の先進医療制度の延長上でしかない。薬のネット販売は規制緩和されたが、一部対象外の品目が残されている。ICT化についてはマイナンバーと絡めて、まだ実現には至っていない。他にも、規制緩和で敷地内門前薬局や訪問診療専門クリニックなどで影響は出ているが、“大改革”につながるような話ではない。しかし、成長戦略に盛り込まれることで、これまでなかなか動かなかった混合診療や各種規制について見直しが実施されることは事実である。第2ステージでは医療・介護に関する目標が前面に出たことで、より強力に推進されることが考えられる。
□第2ステージは期待できるのか
最初の3本の矢で経済的な課題解決を実施し、続く新3本の矢では社会保障の充実など生活の質に視点が向けられた。企業の経営改革でもよく使われるような順番で、まずは止血術をして赤字を止め、次に質的な側面を高めていき抜本的に改革する、という順序である。新3本の矢で何か新しいことが始まるのか、というとそうではなさそうだ。実は最初の3本の矢の時点でいろいろな施策が示されており、今回の第2ステージでは社会保障などに関連する項目の優先順位を上げる、といった感じである。
例えば、「介護離職ゼロ」に関する施策としては、介護職員の確保や、要介護者の受け皿になる介護施設の増加策が挙げられている。具体的には「地域医療介護総合確保基金」の活用という