優良病・医院経営を目指して 事務部長による経営課題解決編 ~熊本地震後1ヶ月の状況~ 特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志 地震発生から1月が経過しました。2日続けて震度7以上の地震があってから数日間は、また大きな揺れが来るのではと誰もが不安に思っていました。今はさすがに1月も経ち、もう大丈夫だろう、という空気が流れています。前回は地震発生から3日程度までの出来事をレポートしましたが、今回はこの1月の変遷をお伝えします。(5月15日現在) 筆者の所属する谷田病院(上益城郡甲佐町)は幸いにもライフラインの断絶がなく、地震発生後5日目には薬剤や診療材料、外注検査、食材などの物流が、若干の遅れはあっても正常な状態に戻ることが確認できました。そこで大きく2つの方針を示しました。1つが、被災した職員向けに出来る支援はしよう。もう1つは、期限を明確にしてオーバーベッドで被災病院や急性病院からの患者を受け入れよう、ということです。 断水している地域が多かったので、震災翌日から職員と家族向けに時間制で院内にある幾つかのお風呂貸し出しました(写真1)。職員に限っては通所リハや家族控室など院内の空きスペースを使って宿泊することも可能としました。支援物資や水については、病院が何とかなることが分かったので、職員に自由に持ち帰れるようにしました。現在は全職員への見舞金の支給や初期対応者への特別休暇の付与などを検討しています。 写真1:病院の風呂場を時間で各家庭に開放 患者さんのオーバーベッドでの受け入れについては、地震発生当初は想定しておらず通常稼働に戻すことを目指していました。しかし、病棟が閉鎖した病院が同じ医療圏に複数あり、あまりにも転院相談の問い合わせが多かったこと、熊本市内の急性期の基幹病院の1つが病棟閉鎖となり、残された急性期病院がパンパンな状態にあること、が分かってきました。そこで、当院の病床は99床なのですが、病棟に追加ベッドを運び込むこと、会議室を臨時病棟にすることを検討しました。さまざまな問題がありましたが、最大の問題はオーバーベッドで運ばれてくる患者さんを診る職員も被災しており、ひどい人は家も全壊している被災者であるという事実です。オーバーヘッドで患者さんを診る“余裕がない”と言うのが正直な意見であることをヒシヒシと感じました。そこで、インターネットを利用して全国からボランティアの医療者を募りました。もし集まらなかったら開始しない、という条件付きで動いたのです。結果として全国から医師、看護師、コメディカル、事務職員の支援があり5月13日までの会議室病棟が実現しました(写真2)。現状でも病棟のオーバーベッドは解消していませんが、会議室のベッドは解消しました。 写真2:会議室にベッドを運びこみ臨時病棟に さすがに震災当初のような急激な変化はありませんが、まだ時間の経過によって状況が変わっていくことに変わりありません。今後も連携機関、地域、職員などから情報を集めて適切な行動をしていきたいと思います。