2021/10/13 救急科 ⽯⽥貴則
救急⼿技の合併症と予防について
~中⼼静脈カテーテル,胸腔ドレーン編~
中⼼静脈カテーテル(CVC)留置
CVC挿⼊⼿技⼿順
① プレスキャン
② 消毒,ドレーピング
③ 局所⿇酔
④ 穿刺
⑤ ガイドワイヤ挿⼊
⑥ ダイレーター挿⼊
⑦ CVC挿⼊
⑧ 固定
⑨ 位置確認
CVC留置の合併症
• 早期(機械的合併症)
① 出⾎
② 動脈穿刺
③ 不整脈
④ 空気塞栓
⑤ 胸管損傷
⑥ ⾎管外,分枝への迷⼊
⑦ ⾎胸,気胸
• 晩期
① CRBSI
② 静脈⾎栓
③ カテーテル機能不全
④ カテーテル遺残
⑤ ⼼筋穿孔
⑥ 神経障害
UpToDateより改定
合併症をおこさない⼼構え
• 事前にリスク評価
• プレスキャン
• ハイリスクな患者背景
• 肥満,低体重,浮腫,凝固障害,⼿術創,呼吸機能障害
★ハイリスクなら,熟練者に変わる,PICC留置に切り替える,⾮留置を検討.
★ 「やらない」という選択肢もある.
機械的合併症(動脈誤穿刺,⾎気胸)
★ 針の先端(シャフトではなく!)の描出に徹する.
• プローベは垂直,針は45度で進める.
• ベベルは上向き
• juggling
• エコー設定
• デプス,ゲイン,フォーカスの最適化
• 空間コンパウンドをo
ff
  ※ メーカーによって呼称が異なる.
  ※ GE healthcare では「CrossXBeam」
ガイドワイヤ遺残
• CVCのお尻からガイドワイヤが出たことを確認してからカテーテルを挿⼊する.
• ガイドワイヤを抜去する際に,先端が離断してしまった報告もある.
 - 親⽔性ポリマーコーティングカテーテルではロッキング現象で離断する可能性がある
ので⾦属針は使⽤しない(ロッキング現象のため.使⽤するなら抜去時は⾦属針と同時に抜
去する)
• 遺残が起きたときは, ⾎管内治療(スネアやバスケット)で回収できる可能性があるのでま
ずは⼼臓⾎管内科コンサルト.
伊藤⼀貴ら「中⼼静脈カテーテル留置時におけるガイドワイヤー断裂の検討およびバルーンアンジオグラフィックバーマンカテーテルと
グースネックスネアカテーテルを⽤いた遺残物回収の検討」
⾎管迷⼊- 右内胸静脈
正⾯像 側⾯像
⾎管迷⼊- 奇静脈
分岐静脈への迷⼊
★ 体の前後⽅向に迷⼊した場合(奇静脈,内胸静脈),正⾯像では分かりづらい.
★ 「挿⼊⻑の割にカテーテルが短く⾒える」「逆⾎がいまいちなとき」は側⾯像も追加する
胸腔内迷⼊
★ 逆⾎が引けないカテーテルは使⽤しない!
※ 先端だけ貫通していれば側孔のルーメンだけ逆⾎が引けることもありえる
★ 常にワーストストーリーを想定する!
カテーテル先端の位置について
• zone B → ⾎栓ができやすい,左アプローチでは
⾎管損傷のリスク(>40°)
• zone A → ⼼タンポナーデのリスク
• zone C → 安全性については不明
 短期の使⽤に留める
• ⽇本医療調査機構の提⾔によると,『上⼤静脈の
⾎管壁とほぼ平⾏に⾛⾏し、先端が鎖⾻下縁よ
り尾側で第 3 肋間や胸椎 4/5 間、気管分岐部も
しくは右主気管⽀ の基部よりも頭側』→zone B
を推奨
• 海外のガイドラインではzone A
• 呼吸や体勢で1,2cm変動しうることを考慮する
気胸
★visceral pleural lineは仰臥位では進⾏しないと⾒えてこない.
★ 腹側におけるlung slidingが有⽤ → ⽐較のためプレスキャンで確認しておく
deep sulcus sign
basilar hyperluency
胸部レントゲンのチェックポイント
□ カテーテル先端:鎖⾻と気管分岐部の間
□ 気胸:deep sulcus sign, basilar hyperlucency, visceral pleural sign, 健側の縦隔偏位
□ 縦隔気腫
□ ⾎胸
□ 浸潤影
□ ⼼タンポナーデ, 縦隔⾎腫:⼼陰影や縦隔陰影の拡⼤
CVC留置⼿順(まとめ)
① プレスキャン → ハイリスクなら熟練者に変わるorPICCにする.lung slidingが⾒えることを確認する.
② 消毒,ドレーピング
③ 局所⿇酔
④ 穿刺→先端の描出に徹する
⑤ ガイドワイヤ挿⼊ → 超⾳波で静脈内にあることを確実に確認する(不安があればガス分析,レントゲ
ン検討)
⑥ ダイレーター挿⼊ → 5cm程度で⼗分.キンクしていないことを確認.⼒を⼊れすぎない.⼼電図をみな
がら,20cm以上挿⼊しない.
⑦ CVC挿⼊ → 逆⾎が引けないときは「細い静脈への迷⼊」,「⾎管外(胸腔,縦隔)の迷⼊」というワーストス
トーリーを想定する
⑧ 固定
⑨ 位置確認 → カテ位置,合併症の有無.→場合によっては側⾯像考慮.
胸腔ドレーン留置
胸腔ドレーン留置⼿技⼿順
① 画像評価 (胸部レントゲン,超⾳波±CT)
② モニタ管理
③ 消毒,ドレーピング
④ 局所⿇酔
⑤ ⽪切
⑥ 鈍的剥離し⽪下トンネルの形成
⑦ ドレーン留置,回路接続
⑧ 固定
⑨ 胸部レントゲンで確認
胸腔ドレーン留置における合併症
早期
• 肋間動脈,神経損傷
• ⾎気胸
• 臓器損傷(肺,⼼臓,⼤⾎管,横隔膜,腹腔内臓器)
• ⽪下気腫
• 再膨張性肺⽔腫
晩期
• 膿胸
• 蜂窩織炎
• 壊死性筋膜炎
胸腔ドレーン留置における合併症
• 「医療事故の再発防⽌に向けた提⾔」
• 7/10例が⼼臓,⼤動脈,肋間動脈損傷.
• ⼼不全による⼼拡⼤が 3 例、⼼臓⼿術後が 3 例、 胸膜の
癒着が疑われた事例が 2 例、肺切除後の縦隔偏位が 1 例確
認
→ 解剖学的なリスクには要注意
★ ⼼拡⼤/⼼肥⼤
★ ⼤動脈の動脈硬化/瘤形成/蛇⾏
★ 縦隔偏位
★ 横隔膜挙上
★ 胸膜癒着
★ ⻲背,側弯
肺損傷
⼼⾎管系損傷をおこしたとき
•臓器損傷を起こした場合,抜去することで⼤量出⾎, 緊張性気胸を起こすこと
があるので,抜去せずにコンサルト!
•出⾎性ショック,⼼タンポナーデによる閉塞性ショックで短時間で死に⾄る可
能性
•⼼嚢液ドレナージは姑息的介⼊に過ぎない. ⼼臓⾎管外科コンサルト.
•循環に気を配り,補助循環デバイスの導⼊を検討.
臓器損傷をおこさないために
• 事前にリスク要因を把握しておく.→ときにはやらないという選択も.
• できる限りCTを撮って穿刺計画をたてる.
• 穿刺部位:肋間を数える.(safe triangleよりも尾側の穿刺は避ける.最⼤呼気で第4肋
間まで横隔膜が上昇しうる)
• 穿刺⽅向, 深さ(解剖学的相違を意識して他臓器までの距離を勘案)
• 穿刺直前に超⾳波でも確認.(呼吸や体位による変動に注意する)
• ペアンやカテーテルを進めるときはストッパーになるよう把持する.
• 計画した深さになっても廃液,脱気がないときはそれ以上進めず⼀旦撤退.
• 予期せぬ⾎清廃液が出てきたら⼀旦クランプ.ワーストストーリーを想定する.
トロッカー(内筒針)は使⽤すべきか否か
• いわゆるトロッカー式挿⼊法は,臓器損傷の報告が相次ぎ推奨されない.
• ⼀⽅で,鈍的剥離した後であればトロッカー使⽤は禁⽌されていない.
胸腔穿刺に係る死亡事例の分析, 外傷初期診療ガイドラインJATEC 改訂第6版
JSEPTIC 簡単アンケート第 56 弾 胸腔ドレーン (2016 年 9 ⽉実施)
トロッカー(内筒針)は使⽤すべきか否か
• とはいえ臓器損傷の可能性はペアンを⽤いた挿⼊よりも上がる.
• ⽅向づけがしやすいというメリットも有る.
• 内筒を少し抜いても針先端が露出する可能性もある.
• 私⾒:使⽤するときは,「各臓器までの距離が⼗分ある(CT写真が前提?)とき」で,内筒
が胸腔に⼊ったらそれ以上胸腔側には挿⼊しないでガイドワイヤ的な使⽤にとどめる
べき?
•
結語
• いかなる⼿技においても,「事前のリスク評価」やを⽋かさない.
• リスクが⾼ければ,「本当に必要か」「代替⼿段はないか」を吟味しやらないという選択
もする.
• ⼿技に関する注意事項では合併症やピットフォールを回避するためなど「必ず理由が
ある」はずであり⽇頃から疑問を抱く癖をつける.

CV留置と胸腔ドレーン挿入に伴う合併症について