2017年11月18日に行われた現代美術の勉強会「土曜会」にて、「じょいとも」が発表した資料です。 美術史における恋愛関係は、スキャンダルばかりが注目され、徒弟関係のように史的な影響関係として捉えられることがあまりありません。 本発表ではその点に着目し、芸術家同士の関係をいくつかの類型に分類することで、研究可能性を模索しました。

1. 2017/11/18 土曜会 じょいとも
美術史と恋愛

2. 東京美術学校長辞職騒動(1898)
九鬼隆一
帝国博物館(現国立博物館)総長
岡倉天心
東京美術学校(現東京芸大)学長
V.S.

3. 九鬼の天心批判を後押ししたのは、
九鬼の妻・波津子と天心の不倫関係であった
九鬼隆一
帝国博物館(現国立博物館)総長
岡倉天心
東京美術学校(現東京芸大)学長
V.S.

4. 辞職騒動
•岡倉天心
•橋本雅邦
•横山大観
•下村観山
•菱田春草
•川崎千虎
(東山魁夷の義曽祖父)
•小堀鞆音
(安田靫彦の師)
ほか
•福地復一
•黒田清輝
•高村光雲
•川端玉章
ほか
辞職 残留

5. 恋愛関係は、
美術史に不可逆の変化を起こしている

6. 恋愛関係は、
美術史に不可逆の変化を起こしている
※しかしスキャンダルばかりが注目され、
美術史の中の役割には目が向けられない。

7. ※画家を主人公とした恋愛映画はけっこうある

8. 仮説:
作家同士の恋愛を俯瞰し、
師弟のように整理することで、
美術史の中の影響関係を
より鮮明に理解することが
できるのではないか？

9. 2017/11/18 土曜会 じょいとも
美術史と恋愛

10. • パートナー型
• ミューズ型
• ハーレム型
• その他のパターン
整理: いくつかの類型

11. • パートナー型
• ミューズ型
• ハーレム型
• その他のパターン
整理: いくつかの類型

12. 池大雅
池玉瀾
パートナー型
• 両者が同ジャンルの作家であり、
公私ともに共に活動するパターン。
• 作風にもっとも影響関係が
見えやすい。
• 合作する場合もある。
• 関係は長続きする傾向(?)
※ディエゴとフリーダなど反例あり

13. 篠原有司男&乃り子
クリスト&ジャンヌ・クロード丸木位里&俊
金山明&田中敦子

14. • パートナー型
• ミューズ型
• ハーレム型
• その他のパターン
整理: いくつかの類型

15. モンパルナスのキキ
ミューズ型
• 女性が作品のモデルとなり、
男性にインスピレーションを与える。
• 女性は俳優やダンサーであることが多い。
オルガ・コクラヴァ

16. モンパルナスのキキ
ミューズ型
• 女性が作品のモデルとなり、
男性にインスピレーションを与える。
• 女性は俳優やダンサーであることが多い。
• 典型的ではあるものの、
謎の多いパターン。
彼女たちのダンスや演技は
映像としてはあまり残っていない。
※ミューズ側が重要なこともあるかも？
オルガ・コクラヴァ

17. • パートナー型
• ミューズ型
• ハーレム型
• その他のパターン
整理: いくつかの類型

18. ハーレム型
• 集団の中で、その主宰者とメンバーの間に
恋愛関係が発生するパターン。

19. ディアギレフ
バレエ・リュス
ニジンスキー
恋人
コフノ
マシーン リファール
恋人 恋人
恋人

20. 補足: バレエ・リュス内のその他の恋愛
ダンサー:コクラヴァ
音楽:ストラヴィンスキー衣装:シャネル
舞台美術:ピカソ
結婚
不倫

21. ハーレム型
• 折口信夫とその門弟の関係にも近いかも・・・？
• 古代ギリシャなどで類例けっこうありそう。

22. その他のパターン
• サポート型
生活や制作をサポートする。
主に女性がサポートするが、
アブラモヴィッチの彼氏など
男性がサポートする場合もある。
ロダンの妻ローズ
• パトロン型
金銭的に支援し、
機会を提供する。
エルンスト&ペギー・グッゲンハイム
狩野芳崖の妻

23. その他のパターン
• スキャンダル型
不倫で立場を失ってしまう。
岡倉天心

24. 発展: 恋愛による影響関係の抽出
• ミューズ型の可能性:ダンカンの場合
• まとめ

25. 発展: 恋愛による影響関係の抽出
• ミューズ型の可能性:ダンカンの場合
• まとめ

26. ミューズ型の可能性:ダンカンの場合
イサドラ・ダンカン
ゴードン・クレイグ
『俳優と超人形』(1907)
ハロルド・バウアー
ピアニストアンドレ・カプレ
ピアニスト
セルゲイ・エセーニン
20世紀ロシアで重要な詩人
スタニスラフスキー
『俳優の仕事』(1938)
歴代の恋人たち

27. ミューズ型の可能性:ダンカンの場合
イサドラ・ダンカン
ゴードン・クレイグ
『俳優と超人形』(1907)
ハロルド・バウアー
ピアニストアンドレ・カプレ
ピアニスト
スタニスラフスキー
『俳優の仕事』(1938)
歴代の恋人たち
セルゲイ・エセーニン
20世紀ロシアで重要な詩人
抽出

28. ミューズ型の可能性:ダンカンの場合
イサドラ・ダンカン
ゴードン・クレイグ
『俳優と超人形』(1907)
スタニスラフスキー
『俳優の仕事』(1938)
クレイグとスタニスラフスキーは
20世紀の演技論における二大巨頭。
2人が共同作業をした1911年の
『ハムレット』は、20世紀の演劇史に
おいて最も重要な上演の一つ。
2人を引き合わせたのはダンカンである。

29. ミューズ型の可能性:ダンカンの場合
イサドラ・ダンカン
影響？
※スタニスラフスキーとダンカンの関係は
友達以上恋人未満な感じです。
影響？
影響？

30. 発展: 恋愛による影響関係の抽出
• ミューズ型の可能性:ダンカンの場合
• まとめ

31. まとめ
• 恋愛関係が美術史を決定的に変化させることもある。
しかしそれはゴシップとして軽視されがちである。
• また作家の影響関係は、徒弟やグループのみの話題として
扱われがちである。
• ミューズ型の恋愛関係である場合、
親子関係や師弟関係などと同様にマッピングすることで、
時間軸に沿った影響を考察することができる。
• ハーレム型の調査可能性は未知。
先行研究を探してみます。

32. じょいとも
現代美術のキュレーターです。
作家もやってます。
<主な展示企画>
2017「阿佐ヶ谷アンデパンダン」阿佐ヶ谷アニ
メストリート/東京
2016 「バラックアウト」旧松田邸/東京
2015 「個展大蟹伝説」中野ZERO/東京
2014「いつも以上にHappyLife」中野ZERO展示/
東京