「アーカイブ」と
「アーカイブ立国宣言」の
射程をめぐって
【ウェブ公開版】
第5回LRGフォーラム
「これからのアーカイブを考える-
アーカイブサミット2015を受けて」
(2015年4月5日 横浜市関内・さくらWORKS)
天理大学(人間学部総合教育研究センター) 古賀 崇
Email:
Web: http://researchmap.jp/T_Koga_Govinfo
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自己紹介
• 図書館、アーカイブズ、記録(文書)管理をまた
ぎつつ研究・執筆・翻訳・教育に従事
– 「政府情報アクセス」の研究の中で:「情報公開(公
文書の開示請求)」だけでは収まらない
• 国立情報学研究所(NII)、京都大学附属図書
館研究開発室を経て、2012年より現職
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天理図書館
(日本屈指の
アーカイブ?)
本日の報告の基礎となるもの(1)
• 古賀崇「アーカイブズのこれからを展望する:
電子記録、映像、記憶を中心に」九州大学ラ
イブラリーサイエンス専攻シンポジュウム発表、
2015年1月29日、九州大学箱崎キャンパス.
– http://www.slideshare.net/takashikoga5439/ss-
44063549
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本日の報告の基礎となるもの(2)
• 古賀崇「デジタル・アーカイブの可能性と課
題」岡本真・柳与志夫(責任編集)『デジタ
ル・アーカイブとは何か:理論編(仮)』勉誠
出版、2015年刊行予定.
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問題提起(1):
「アーカイブ」の射程として
どこまでが想定されているか?
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古賀としての整理の案(前述(2)で発表予定)
図書館・文書館・博物館をつなぐ「最大公約数」としての「アー
カイブ」と、それをデジタル化した「デジタル・アーカイブ(ただし
海外には他の用語もあり)」
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関連書より(1)
• 福井健策『誰が「知」を独占するのか:デジタル
アーカイブ戦争』(集英社新書、2014年9月)
– 日本の国立公文書館の取り組みに言及
• “公文書デジタルアーカイブのゆくえは、(中略)「情報を
秘匿することによる安全保障」から、「情報を開示するこ
とによる安全保障」への流れの変化、変化が言い過ぎで
あればそのベストバランスの結節点に位置しているよう
に思います”
– ただし中心は出版物(図書館資料)・博物館資料と、
そこでの「孤児作品」(≒著作権)問題
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関連書より(2)
• 福井健策・吉見俊哉監修『アーカイブ立国宣言:
日本の文化資源を活かすために必要なこと』
(ポット出版、2014年11月)
– 扱われた対象:マンガ、ゲーム、震災、脚本、映画、
放送、地域(雑誌・図書館)、アニメ、音楽レコード、
書籍(印刷物資料+電子書籍)
– 地域の資料・古文書・古地図については長野・小布
施町の取り組み(花井氏)の中で言及されているが、
公文書・文書館については本書中にほとんど記述
がない
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まとめると…
• 「アーカイブの対象の特性」への理解が、
どれほど行き届いているか
–「利活用モデル」(後述)を含め、すべてを一
括して捉えることはできない
–例:公文書・記録文書類、地域の映像(水
島氏のテーマとの関連)、など…
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問題提起(2):
「アーカイブ立国宣言」の内容は
十分か?
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「アーカイブ立国宣言」の
中心となる4提言
• 提言1:国立デジタルアーカイブ・センター
(NDAC)の設立
• 提言2:デジタルアーカイブを支える人材
の育成
• 提言3:文化資源デジタルアーカイブの
オープンデータ化
• 提言4:抜本的な孤児作品対策
– 著作権者ないしその遺族の存否や所在が判明し
ない著作物の扱い
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「立国宣言」や「アーカイブサミット」に
対する古賀の意見
• 「アーカイブをつくる」前提をめぐる段階の論
点に集中
– 上記のセンター設立構想や孤児作品対策など
• 「アーカイブを使う」という段階をどこまで想定
できているか、という疑問
– 「使う」ことを支えるメタデータを含め
• 言い換えれば、「アーカイブに関する具体的な
利活用モデル」を示すところまでには十分
至っていないのでは
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「利活用モデル」の参照例
• 京都府立総合資料館「東寺百合文書Web」
– 本文画像も含めオープンデータとして提供
• CC-BY:出典さえ示せばよい
– 総合資料館は2014年Library of The Year受賞
– http://hyakugo.kyoto.jp/
• どのような利活用が成され、想定されているか
– 歴史資料としての活用
– 文字画像の活用(例:名刺に使う)
– 活用のアイデアを募るコンテスト
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「東寺百合文書Web」の実践が
示唆すること
• 長年にわたる整理(メタデータ付与含め)の上
に、デジタルアーカイブとしての提供が成り立
つ
• デジタル化したからと言って、即、活用につな
がるわけではない
– 「どのような利用があるか」「今までどのように利
用されてきたか」を考えた上でのデジタル化が必
要(東工大・阿児雄之氏 談)
– 江上敏哲氏の『本棚の中のニッポン』(笠間書院、
2012)での訴えとも共通
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付論:
映像アーカイブについて
【注1】映像の領域では国際的にも
「アーカイブ」のことばで統一
【注2】以下の点は上述の九大での
スライドと重複
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古賀として思うことと疑問
• 日本の社会学の領域では「映像の社会学」「映
像のアーカイブ」への関心が高まっているが、
• ここでの研究者は、実際のアーカイブに携わる
者(映像のアーキビスト)や、アーカイブに必要
なスキルにどれだけ関心を寄せているの
か??
– 関連:『テレビCM研究』Vol.2, No.2「シンポジウム報
告書:テレビ文化は残せるか-著作権・アーカイブ
ス・コマーシャル-」京都精華大学表現研究機構,
2009年4月. http://www.kyoto-
seika.ac.jp/researchlab/?post_type=report&p=256
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例えば…
• 具体的な「映像アーカイブのためのスキルや、
諸外国での実践」は、どれほど伝わっている
か?
– 児玉優子「アーカイブズと動的映像アーカイブ--
近くて遠い隣人?」『アーカイブズ学研究』No. 11,
2009, p. 73-89.
– オーストラリア・アーキビスト協会『キーピング・
アーカイブズ Keeping Archives』翻訳の連載(第17
章・音声記録、第18章・動的映像)勉誠出版ウェ
ブサイト.
http://bensei.jp/?main_page=wordpress&cat=7
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言い換えれば…
• 「何かを残し、それを使う意義」について、社
会学での議論をアーカイブズ(学)の側に取り
入れていく余地がある
• 逆に、「残すための技法や人的スキル」につ
いて、アーカイブズ(学)から社会学などの領
域に発信していく必要がある
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結論
これからのアーカイブに求められること:
(1)アーカイブの対象の特性への理解
(公文書・文書記録類も含め)
(2) 「利活用モデル」も視野に入れた
政策提言と実践
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(付記)米国ワシントンDC(2015年2月訪問)で
印象的だった「アーカイブ」
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• 議会図書館(LC)内
“Hope for America:
Performers, Politics
and Pop Culture”
– 俳優・コメディアンの
Bob Hopeを記念し
つつ、映像・マンガ
も含め「アメリカ文化
の中の政治的批評」
のあり方を示す
ありがとうございました
• 本発表は下記による成果の一部です。
– 平成25~27年度科学研究費助成事業 若手研究
(B)「オープン・ガバメント時代の政府情報アクセス制
度・政策と図書館・文書館等の役割」(課題番号
25730191、研究代表者:古賀 崇)
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「国のアーカイブを体現する街」としてのワシントンDC
(2015年2月撮影)

「アーカイブ」と 「アーカイブ立国宣言」の 射程をめぐって(古賀崇)