4. 紹介記事
(実際には字幕付き動画として提示)
• Steve Hendrix, Is technology bringing history to life or
distorting it?, Washington Post (Web edition), May 10,
2018.
• https://www.washingtonpost.com/news/retropolis/wp/2018/
05/10/is-technology-bringing-history-to-life-or-distorting-it/
• 当該音声は、以下3社の共同プロジェクトの成果
• Rothco:アイルランドの広告代理店
• The Times:英国ロンドンの新聞社
• CereProc:アイルランドのデジタル音声開発会社
• 現存する831点のJ. F. ケネディ(JFK)の演説・イン
タビュー音声をもとに、JFKが暗殺されずにダラス
の祝典会場に到着していたら行ったであろう演説
を想定して、音声を作成
4Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
6. 当該音声が意味するもの
• データ処理とAIの性能向上 → JFKの「偽の演説音
声」が、ほぼスムーズな形で作成できてしまう!
• 画像・動画なども、同様の処理が可能
• 広告といった用途を含め、「(デジタル)アーカ
イブ」を管理・活用する上でも、「踏み越えては
いけない一線」をいかに考えるか?
• 「アート」に係る側面も考慮しつつ
↓
• その手がかりとしての「ロンドン憲章」
6Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
8. 正式名称
• 改訂(現行)版(Ver. 2.1, 2009):「ロンド
ン憲章:文化遺産のコンピュータ・ビジュ
アリゼーションのために(London Charter
for the Computer-Based Visualisation of
Cultural Heritage)」
• 初版(Ver. 1.1, 2006):「ロンドン憲章:文化遺
産の研究とコミュニケーションにおける3次元ビ
ジュアライゼーションの利用のために(London
Chanter for the Use of 3-Dimensional Visualisation in
the Research and Communication of Cultural
Heritage)」
8Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
9. 概要
• 目的:文化遺産のデジタル化とその利用
について、知的透明性を確保するための
手順と倫理を提案
• もとは遺跡等の3D表現を念頭に置く
• ロンドン=キングス・カレッジ・ロンドン
(中心的策定者の所属機関)
• 履歴
• Version (Draft) 1.1:2006年6月
• Version (Draft) 2.1:2009年2月
• 本発表はVer. 2.1に基本的に準拠
9Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
10. 普及状況 (1/2)
• Ver. 1.1、Ver. 2.1とも、原文および訳文(日本
語訳含め)は公式サイトにて公開
• http://www.londoncharter.org
• 日本語訳は両版とも、門林理恵子、杉本豪の両氏が
担当
• Ver. 1.1は英語+3言語、Ver. 2.1は英語+10言語で全
文公開
• 憲章に関するワークショップなどの情報も、公
式サイトにて公開
10Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
11. 普及状況 (2/2)
• Google Scholarでの被引用状況を調べると…
• A new introduction to the London Charter(2009. Ver. 2.1
への解説)については74件、2018年以降では21件
• 「文化遺産のデジタル化」や「エデュテイメント」
「シリアスゲーム」の成果を提示する論文で、ロンド
ン憲章に言及される
• 日本語の文献として、本憲章を取り上げたもの
はごくわずか
• 門林(2006)、後藤(2008)がそれぞれ、文化遺産
のデジタル化をめぐる論考を上梓した際に、本憲章の
初版(Ver. 1.1)を検討対象のひとつに取り上げたのみ
• 本憲章Ver. 2.1について取り上げたものは皆無??
11Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
12. 「ロンドン憲章」Ver. 2.1
(2009)の内容
• 「ドキュメンテーションの原則」を含め
• 日本語訳は門林・杉本のものに依拠
• 憲章本文にかかる強調は引用者による
12Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
13. 6つの原則
• 原則1 実装
• 原則2 目的と方法
• 原則3 研究資源
• 原則4 ドキュメンテーション
• 原則5 持続可能性
• 原則6 アクセス
• 補足
• Ver. 1.1(2006)では8つの原則を示し、名称にも違いが
ある(例:情報源←→研究資源)
• しかしドキュメンテーション原則はVer. 1.1から設定
13Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
23. Paradata and Transparency in
Virtual Heritage (2012)
• Anna Bentkowska-Kafel, et al.
(eds.), Ashgate.
• Digital Research of Arts and
Humanitiesシリーズ
(Ashgate → Routledge)の
ひとつ
• 既刊33巻
https://www.routledge.com/Paradata-and-
Transparency-in-Virtual-Heritage-1st-
Edition/Bentkowska-Kafel-
Denard/p/book/9780754675839
23Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
24. 主な内容
• パラデータの位置づけ
• モノ自体ではなく、モノをコンピュータ上で表現
(Computer Generated Images: CGI)する際の過程に関す
るデータ
• CGIの活用と、知的透明性
• 例:「デジタル考古学(digital archaeology)」とその成
果をめぐって
• 英国BBCによる「ウォーキングwithダイナソー:驚異の恐竜王
国」ほか、CGIドキュメンタリー(エデュテイメント)にも波及
• 既存のメタデータの枠組みで、知的透明性をどこま
で保障できるか
• CIDOC CRMへの言及も
• ロンドン憲章Ver. 2.1の紹介と全文転載
24Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
26. ロンドン憲章策定・改訂時(2006、
2009)と現状とのギャップ
• ビッグデータやAI を用いての、文化遺産や歴
史的事物等のデジタル表現
↓
• 実際の事象の再現? あるいは「フェイク」?
• 「パラデータ」の必要性はいっそう増すはず
• 「研究資源(元データ)」について、どのような考
え方(暗黙の知識)と手法に基づき、成果物の生成
につなげたか
• なぜそうしたか(目的・手法の明確な理由づけ)
26Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
27. 写真等をめぐって(1/2)
• 白黒形態でしか記録できなかった写真・映像に
つき、AI 技術も応用してカラー化する取り組み
• Hendrix (2018)でも事例を紹介
↓
• 人々の歴史的事象に対する新たな認識を促す効果へ
• 渡邉(2018)のいう、カラー化による「記憶の解凍」:
広島、沖縄などでの実践、2019年にはARアプリも
• Hendrixのいう、“technology bringing history to life”
• しかし、カラー化のプロセスについて、ドキュメン
テーションないしパラデータによって知的透明性の
確保と説明責任を果たす必要性はどうか?
• 例:ニューラルネットワークによるカラー化を正当化で
きる根拠は? (決して渡邉教授らの成果を「フェイ
ク」と誹謗する意図ではない!)
27Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
28. 写真等をめぐって(2/2)
• 顔写真(各パーツに分解)のビッグデータを加
工・処理し、「実際には存在しない人物」を提示
するのも可能に
• NVIDIA社による開発と成果:
https://arxiv.org/pdf/1812.04948.pdf
• プライバシーや肖像権への配慮? あるいは、ただの
フェイク?
• Kevin Kelly(WIRED誌創設者)のツイート:”The end
of photography as evidence.”
• https://twitter.com/kevin2kelly/status/1073462307932463105
【付記】上記の事例については下記よりご教示を得ました。橋本陽「デジタ
ル・マニュスクリプトの段階的整理:BitCuratorとArchivematicaによる対応
策」日本アーカイブス学会2019年度大会 自由論題研究発表会, 2019年4月21日,
学習院大学.
28Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
29. おわりに
29Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.
30. 今回の発表の射程と限界
• ロンドン憲章がもたらしうる可能性と課題につき、
問題提起を行うのみ
• 政府情報・公的情報の扱いをめぐる危惧も背景に:発
表者の大元の研究関心
• 「JFKの架空の演説音声」をどう説明するか? 「広告
が主目的」といった注記を付すべきか?
• 「このような成果物・展示・ビジュアリゼーショ
ンは、現実(に起きうる/起きたこと)との乖離
がある」と、利用者にきちんと説明できるか
• そのためのドキュメンテーションの役割は、どこ
まで有効か
• ロンドン憲章は、どの程度まで倫理・実践の指針たり
得るか
30Copyright (C) 2019- Takashi Koga (Licensed under CC BY 4.0). Images may be subject to additional copyright.