イメージングデータ運用でつまずいた時の
DICOMの調べ方
~IODとSOPを簡単に~
Ver.1.0.1
2015/2/20
- 初歩の初歩 -
Tatsuaki Kobayashi
tatsuaki1210@gmail.com
Japan
It is not a commercial purpose
注意事項
● この資料は筆者の個人活動で作成された自己主張や広告・
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の資料です。
● この資料を参考にしたことで発生した事に関して著者はい
かなる責任も負いません。
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ので、一報いただけますと幸いです。
目次
1. DICOMについて(DICOMはなんのために?)
2. DICOMの内容
3. DICOMの要点
4. IODの見方(CT画像を例にして)
5. DIMSEを使ったコミュニケーション
参考資料
DICOMについて(DICOMはなんのために?)
Digital Imaging and Communications in Medicine
DICOM3.0になるまでの歴史
1985 ACR-NEMA規格ver1.0(1989 MIPS87, JIRA)
⇒DICOMタグの誕生
1988 ACR-NEMA規格ver2.0(1989 MIPS89, JIRA)
⇒DICOMデータ3階層(Study-Series-Image)が誕生
1993 DICOMスタンダードコミッティが非営利活動法人として設立
DICOM(3.0) (ACR-NEMA規格の名残で3.0がつく)
2006 DICOMがISO規格として認定「ISO 12052:2006」
ACR(American College of Radiology):米国放射線科医学会
NEMA(National Electrical Manufacturers Association):米国電機製造者協会
DICOMについて(DICOMはなんのために?)
Digital Imaging and Communications in Medicine
過去の課題
1. 製造会社によってデータやその通信の規格が定まっていなかった
2. ACR-NEMA規格では利害関係の弊害があった
DICOM委員会の効果
利害関係のない第三者である非営利活動法人として、標準規格の策定を行い、国際
標準規格を作った。
DICOM委員会は、DICOM標準に関する文書を公開することで、さまざまな現場の
非効率を効率化することに役立っています。
DICOM committee
ACRサポート NEMA(MITA)がメインでオーガナイズ
DICOMはなんのために?
Digital Imaging and Communications in Medicine
DICOMはきっと以下のような取り組みを行っていくために進化していく規格です。
1. 大前提、デジタルなメディカルイメージング技術に関する国際規格であること
2. 医用画像の高品質化
3. 画像取得パラメータや非DICOMデータのためのサポート
4. 医用画像データの完全なエンコーディング
5. デジタルイメージング機器やそれらの機能の明示
以下、もう少し具体的な内容を見ていきます。
DICOMの内容 2014/10/31時点
(DICOM標準文書およびワーキンググループによるサプリメント)
DICOM委員会が公開しているDICOM標準文書は20のパートから構成されています。
PS3.1: Introduction and Overview (this document) PS3.11: Media Storage Application Profiles
PS3.2: Conformance PS3.12: Formats and Physical Media
PS3.3: Information Object Definitions PS3.13: Retired
PS3.4: Service Class Specifications PS3.14: Grayscale Standard Display Function
PS3.5: Data Structures and Encoding PS3.15: Security and System Management Profiles
PS3.6: Data Dictionary PS3.16: Content Mapping Resource
PS3.7: Message Exchange PS3.17: Explanatory Information
PS3.8: Network Communication Support for Message Exchange PS3.18: Web Services
PS3.9: Retired PS3.19: Application Hosting
PS3.10: Media Storage and File Format for Media Interchange PS3.20: Transformation of DICOM to and from HL7 Standards
DICOMの内容 2015/2時点
(DICOM標準文書およびワーキンググループによるサプリメント)
30ワーキンググループがこれまでに提出したSupplementは186。文書の修正(Correction Affected)は1461。
DICOM標準文書の更新や修正のために、DICOM標準になりえる補遺文書(サプリメント)や訂正文書(コレクションアフェクテッ
ド)を30のワーキンググループがオープンな意見収集のもと作成/公開しています。
-01: Cardiac and Vascular Information WG -11: Display Function Standard WG -21: Computed Tomography WG
-02: Projection Radiography and Angiography WG -12: Ultrasound WG -22: Dentistry WG
-03: Nuclear Medicine WG -13: Visible Light WG -23: Application Hosting WG
-04: Compression WG -14: Security WG -24: Surgery WG
-05: Exchange Media WG -15: Digital Mammography and CAD WG -25: Veterinary Medicine WG
-06: Base Standard WG -16: Magnetic Resonance WG -26: Pathology WG
-07: Radiotherapy WG -17: 3D WG -27: Web Technology for DICOM WG
-08: Structured Reporting WG -18: Clinical Trials and Education WG -28:Physics WG
-09: Ophthalmology WG -19: Dermatologic Standards WG -29: Education, Communication and Outreach WG
-10: Strategic Advisory WG -20: Integration of Imaging and Information Systems WG -30: Small Animal Imaging WG
これらのWGによって DICOM規格が作られています。
以上です。
・・・、とはいきませんので、本資料では特に
DICOMの要点となろう部分を解説していきます。
DICOMの要点
DICOMの主要な要点は3つあります。
それは、「DICOM情報モデル」「IOD」「SOP」です。
❏ DICOM情報モデルはイメージングデータを作成するための人や機器などのさまざ
まな関係を示したものです。
❏ 情報オブジェクト定義(IOD)は、DICOMが定義したデータ表現です。
❏ サービスオブジェクトペア(SOP)は、IODとして定義されたデータをどのように通信
させるか取り決めたものです。
● 巷では、DICOM標準文書の数千ページを読みましたという人もいますが、一種の才能がなければ、そんな偉業
は成し遂げられません。
● ここでは、そんな偉業を成し遂げられない人でも、必要に応じて DICOMを調べる方法を述べたいと思います。私
の周りのDICOMマスター(私が勝手に思っている)の方々は、最終的に(きっと) DICOM標準文書をすべて読んで
いますが、そのプロセスは、幾度も必要に応じて必要な情報を調べているうちに、その結果としてすべてに目を通
すことになったという方々の方が多い印象です。
DICOM情報モデルを構成するエンティティ-リレーションシップモデル
● DICOM情報モデルは、現実に行われている医用画像を扱うための作業(リアルワールドモデル)を忠実にデジタ
ルで取扱えるように考えられたモデルです。
● このモデルは、DICOMデータがどのように作成され、使われるのかを想定して作られており、その関係は、
DICOMデータを取扱うための通信方法、セキュリティおよび医用画像を表示するための高精細なモニターのルッ
クアップテーブルなどの詳細まで及びます。
● 後述する情報オブジェクト定義( IOD)やサービスオブジェクトペア (SOP)にも密接に関わります。
● これを踏まえて、まずは IODから考えていきます。
臨床試験の被験者の画像データに関するDICOMモデルの例
「患者」など、何かの概念をあらわします。
概念間の関係をあらわします。
1やnは、いくつ関係をもつかを意味します。
nであれば、いくつでもという意味です。
情報オブジェクト定義 Information Object Definition(IOD)
● 人間が考えるものごとをコンピュータで処理できるようにデータとして定義したものが DICOMデータとして表現され
ます。
● 例えば、メディカルスタッフは、病院で辛そうにしている人を見たら「患者さん」とわかります。
● コンピュータの場合はどうでしょうか。コンピュータが医用画像を表示するシステムの場合、読み込まれた情報が
まず医用画像の形式かを判断し、次にどの患者さんのもので、いつ検査されて、どのような条件で取得されて、画
像をなすピクセルデータはこれですというふうに、人間が考えることをすべて、手取り足取り、情報として定義して
コンピュータに教えてあげる必要があります。情報はなんなのかを定義してあげなければ、コンピュータは何の
データなのかさっぱりわからないのです。コンピュータプログラムを作成したことのある人には当たり前のことなの
ですが、このような情報の定義を行ってコンピュータ処理を行う考え方を「オブジェクト思考」といったりします。
● DICOMのIODも同様に、コンピュータに情報を識別させるために必要な情報の定義です。
現実の物事 コンピュータの世界に定義
DICOMはパート3の文書でメディカルイメージングに関する様々な概念をIODとして
定義しています。
DICOMの情報オブジェクト定義の種類
● Raw Data IOD
● CR Image IOD
● CT Image IOD
● MR Image IOD
● NM Image IOD
● US Image IOD
● XA Image IOD
● RT Image IOD
● PET Image IOD
● etc(アノテーションやオーバーレイのIODもあります。)
● ここまではDICOMを知っている人にとって見れば当たり前な
ことですが、ここから一歩踏み込んで、「これらのIODをどう
やってみればいいのか?」ということについて、躓いてしまう
人も多いのではないでしょうか。
● ここからは、このIODの見方について書いていきます。
情報オブジェクト定義(IOD)とエンティティ-リレーションシップモデル
● IODは先に述べたエンティティ -リレーションシップモデルを構成要素として表現されます。
● 例えば、CT画像であれば、取得されるまでに、検査を受ける患者、依頼をする医師、検査をする技師、検査その
ものの存在、検査をする機器、画像をなすピクセルデータなど、さまざまな概念とのかかわりが発生します。これ
らの関わりをデジタルで表現できるようにデータを定義したものが IODです。(IODにはComposite IODと
Normalized IODの2種類がありますが、それはサービスオブジェクトペアで解説します。)
関わる人の存在
(患者、依頼医師、実施技師 etc)
検査の存在
(検査日時、シリーズ)
検査機器の存在
画像の存在
情報オブジェクト定義(IOD)の分解
● IODはエンティティ-リレーションシップモデルであらわされた Information Entity(IE)、IEの構成要素となるModule
およびModuleを構成してIODの最小単位となるAttribute(DICOMタグ)から構成されます。
● AttributeがIODの最小単位となり、その詳細は DICOMデータ辞書で定められています。
IE
体を成す
パーツ
Module
パーツを構成する
部品
Attribute
部品を組み立てる
素材
DICOM
データ辞書
DICOM
IOD
検査機器の存在
関わる人の存在
(患者 etc)
画像の存在
検査の存在
(検査日時、シリーズ)
実世界DICOM
CT画像のIOD
利用方法(USAGE)に、IODに対してそ
のモジュールが必要かどうかが明記され
ています。
利用者によって、IODを柔軟に決めれるよ
うに配慮されているためです。
M:Mandatory(必須)
U:User-defined(ユーザー定義)
C:Conditional(場合によって必須)
● 例えば、CT画像1枚のIODは、IEに患
者、検査、検査のシリーズ(シリーズは
検査で取得される複数のデータ)、解剖
学的情報などを記録するフレーム、機
器、画像からなり、それぞれのIEはさら
にモジュールから構成され、このモ
ジュールはリファレンスとして別表となっ
ているAttributeのリストから構成されま
す。
● 例えば、患者のIEのうちの臨床試験の
モジュールを見ていきます。
Clinical Trial Subject Moduleの例
このモジュールが持つタグも利用者が柔
軟に利用できるようにそのタイプが決めら
れています。
1:必須。DICOMアプリケーションやサービ
スでサポートされる必要あり。
1C:必須。指定された条件を満たすこと。
DICOMアプリケーションやサービスでサ
ポートされる必要あり。
2:必須。ただし、不明な場合はnullとする。
DICOMアプリケーションやサービスでサ
ポートされる必要あり。
2C:必須。指定された条件を満たすこと。
ただし、不明な場合はnullとする。DICOM
アプリケーションやサービスでサポートさ
れる必要あり。
3:付けてもよい。付ける場合は、明示的な
値あるいはnullでよい。DICOMアプリケー
ションやサービスでのサポートは必須では
ない。
● CT画像のIODのうち、患者のIE
の臨床試験モジュールをみてい
きます。
● モジュールの内容はリファレン
スになっている別表 C.7-2bをみ
るとわかります。
● Attributeは「DICOMタグ」と同
じ意味です。
● このDICOMタグにはDICOM文
法という記載方法が決められ
ており、タグの種類に応じてそ
のタグがもつデータが決められ
ています。
IODの最小構成単位ーDICOMタグー
● DICOMタグはDICOM文法でその書き方が決められています。
● DICOMタグの具体的な内容は、パート 6のDICOMデータ辞書で決められています。
● 以下にDICOMデータ辞書の構成について説明します。
IOD中のデータ
のアドレスを決
めるElementタ
グ
DICOMタグの
名称
キーワードなど
の内容説明
Value
Representation
(VR)の種類
値の個数
(Value Multiplicity)
(1-n)
リタイアの有無
(空欄もしくはRET、
RETがリタイアを意味
する)
(0010,0010) Patient name Patient name PN 1例)
● このElementタグは、前の4ケタがGroup、後の4ケタがElementとよばれ、8ケタ全体でElementタグや
DICOMデータエレメントなどと呼ばれます。
● このGroup番号が奇数のElementタグは、製造者が独自に定義できるプライベートタグとなります。
● このElementタグ~値の個数まで記録された一連のデータが DICOMタグと呼ばれます。
● DICOM文法は、Value Representation(VR)というDICOMタグのデータタイプを決めており、基本は27のVRがあります。
DICOMタグの基本となる27のVR
● このVRは英語の大文字2文字で表現され、以下のようなものがあります。
(テキスト)
CS, Code String
SH, Short String
LO, Long String
ST, Short Text
LT, Long Text
UT, Unlimited Text (デバイス名、人、識別子)
AE, Application Entity
PN, Person Name
UI, Unique Identifier
(時間)
DA, Date
TM, Time
DT, Date Time
AS, Age String
(テキストの数字)
IS, Integer String
DS, Decimal String
(バイナリの数字)
SS, Signed Short
US, Unsigned Short
SL, Signed Long
UL, Unsigned Long
AT, Attribute Tag
FL, Floating Point Single
FD, Floating Point Double
OB, Other Byte String
OW, Other Byte String
OF, Other Float String
(その他)
SQ, Sequence of Item
UN, Unknown
IODのまとめ
● IODについて、CT画像を例に見ていきました。
● エンティティ-リレーションシップモデルから、IODのみかたを
IE>Module>Attribute(DICOMタグ)まで解説しました。
● IODがどのように構成され、その構成要素の最小単位であるDICOMタグの構
造も解説しました。
● これで、CT画像だけでなく、その他のIODも見れるはずです。
● 実運用ではより細かな設定や禁止されている設定なども加味しなければなら
ず、経験が必要となってきますが、IODが読めないという最低限のスタートライン
は通過できるのでは。
次は、このIODを具体的に取り扱っていくためのメソッドについて簡単に説明していき
ます。
DIMSEを使ったコミュニケーション
● DICOMの要点で、サービスオブジェクトペア「SOP」という用
語を紹介しました。
● このSOPはIODをどのようにコミュニケ―ションするかを決
めるもので、具体的には、DIMSE(DICOM Message
Service Element)というDICOMで決められたデータのやり
取りのメソッドを使ってこのSOPを成立させます。(この
DIMSEもIODがあります。)
● 以下、このSOPから解説していきます。
SOP(サービスオブジェクトペア)
SOPは、データに対してなにかアクションをするサービスクラスユーザ(SCU)と、そのアク
ションを受け取るサービスクラスプロバイダ(SCP)で成り立ちます。
取得する側はService Class User(SCU)
要求される側はService Class Provider(SCP)
● このSOPをコンピュータがわかるように成立させるため
にはコンピュータネットワーク上でアプリケーションの識
別を行う必要があり、このコンピューターネットワークに
は一般的に利用されている TCP/IPのアプリケーション
層を利用します。
● 通常、DICOMアプリケーションは、この通信を成立さ
せるためのIPアドレス・ポートNoとアプリケーションエン
ティティ(AE:通信時のアプリケーションの名前)設定が
できるようになっています。
● そして、IPアドレス・ポートNoとAEによる通信を確立し
たうえで、通信をどのように行うのかを規定したものが
DIMSEです。
DIMSE(DICOM Message Service Element)
DIMSEサービスの種類
● DIMSE-C:Composite IODをコミュニケーションするときに使うメソッドです。
● DIMSE-N:Normalized IODをコミュニケーションするときのメソッドです。
❏ Composite IODとは、「患者」のように、実世界に単一で存在するデータに対するIODです。
❏ Normalized IODは、CT画像のようにいくつかのエンティティによって複合的に作成されるIODです。
DIMSEは通常、RequestとResponseのメッセージサービスで AE間のコミュニケーションを行います。
AE:CT AE:サーバー
Response(いいよ)
Request(送るよ)
DIMSE(DICOM Message Service Element)の種類
● C-Echo: SCUはAE間の通信が確立できるかどうか試し、SCPはその返事を返します。
● C-Store: SCUはデータをSCPであるサーバーにアーカイブします。
● C-Find: SCUはサーバーなどのSCPに対象のデータがあるか調べます。
● C-Get: SCUはSCPから画像を取得します。
● C-Move: SCUはサーバーなどのSCPから自身以外のワークステーションなどのSCPにデータを移動
します。
● C-Cancel:SCUが行っている操作上記の操作をキャンセルします。
● Modality Worklist:SCUはスケジューリングデータなどのSCPから検査依頼状況を調べます。
※これらは、状況に応じてDICOM Ping, Push, Pullなどとも呼ばれることがあります。
DIMSEのまとめ
● DIMSEの種類とそのメソッドについて説明しました。
● 実際にこれらのコマンドはアプリケーション層で実現するので、開発にかかわらない
エンドユーザには見えにくいインターフェースで動作しています。
● DIMSEを実行する環境は、ネットワーク環境やネットワークを構築しているAEによっ
て様々ですが、原理としてはこれらの単純なコマンドで日常のIODで定義された形の
DICOMデータが動いていることがわかります。
● (IOD・SOPを基本として、WADO、セキュリティ、高精細モニターやプリンターとの接
続およびメッセージ標準規格であるHL7との相互運用性の改善などもDICOMが貢献
しています。)
Thanks.
DICOM master will soon be master of Medical Imaging Informatics. maybe...
参考資料
● DICOM Web page
● DICOMの歴史_第1回「DICOMが生まれてきた背景」(2010年1月JIRA会報_No_188)
● DICOMの歴史_第2回「DICOMの発展」(2010年6月JIRA会報_No_189)
● DICOMの歴史_第3回「DICOMの現状と未来」(2010年10月JIRA会報_No_190)
● DICOM規格 原文と和訳, JIRA.DICOMの世界.http://www.jira-net.or.jp/dicom/dicom_data_02_01.html
● Digital Imaging and Communications in Medicine(DICOM) A Practical Introduction and Survival Guide Second Edition

イメージングデータ運用でつまずいた時のDICOMの調べ方