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つくってドヤると楽しい
- 2. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
自己紹介
本業:金沢大の教員
専門:集積回路、イメージセンサ、インタラクション
好きなプロセスはCMOS 0.35um
本業2:Maker(メイカー)、ハンダテラピスト
好きな半田はPb:Sn=37:63
- 4. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
つくっているもの
https://youtu.be/YyQcEqvgz0M クレジットカードサイズのArduino
激安中華マイコンのボード
M5Stackの便利グッズ
授業で使うための拡張ボード
- 5. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
研究?趣味?
電子工作
(ホビー)
業界
半導体
業界
(学会・産業界)
「私の研究者・Makerとしての半生」
https://note.com/akita11/n/n6f6857f54d17
- 6. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Maker系イベント
世界中で開催(数え切れない・・・)
理工離れ?ものづくり離れ?どこの世界の話?
学会で寄ったオランダの田舎町でもやっていた
Maker Faire, Mini Maker Faireと規模もさまざま
NT金沢のような類似イベントも
※一時期、バブルの様相だったのは事実
(Fab施設の乱立(行政主導も)、Maker美容院、・・・)
https://fabcross.jp/topics/tks/20190117_made_in_china.html
MakerFaireTokyo2015 NT金沢
- 7. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
NT金沢:始まり
MiniMakerFaireをやりたいと画策(2013年)
NT京都をみて、NT金沢を始めていた人がいた
合流して、拡張してみた
「作ってみたは正義」(byメーヴェの八谷さん)
会場:金沢市芸術村(~2013年)
→金沢駅前地下広場(2014年~)
- 8. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
NT金沢:現状
「すごいもの」も「しょぼいもの」から
「すごい」かは、やってみないと判断できない(by高須さん)
「見にいってみた」<<「出展してみた」
約120ブース(抽選・セレクションなし、まだキャパはなんとか大丈夫)
NT=「なんかつくってみた」と再定義して裾野拡大へ
- 9. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
NT金沢:運営の実際
中の人=ほぼ二人
ルーチンワークが多い(会場予約、参加募集、当日)
「主催者」ではない(自称)
みんなが主役、それに場所を提供しているだけ
「主催者」がいると、みんながそれに頼ってしまう(ゴ
ミ捨てなど)
ブースの机運搬、片付けも、みんな(当事者)で
譲れないポリシー
「やりたいものは何か」を忘れない
NT金沢では「遊び場」
「やること」が目的にならないように
そのために必要なことが何かを考え、無理をしない
Webページ、チラシ:作りたい人がいたら頼む
幸い、安くてよい会場が予約できている(1万円/日:抽選)
- 12. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の進歩と独裁化
科学技術の進歩=社会水準の向上
科学技術の進歩=技術の高度化・複雑化
「製造者」と「利用者」の分離
製造者の「特権」:
原材料の入手(原油、電子部品、・・・)
工場・製造装置
販売チャンネル
利用者の「意識」
「ものは買う物」
大量生産・大量消費の時代が長く続いた
- 13. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の民主化へ
技術を、市民の手に「取り戻す」流れ
大量生産→ロングテールへ
「技術の民主化」を可能にする技術革新
実はルネッサンス時代への回帰でもある
- 15. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の「民主化」がもたらすもの
裾野が広がる=イノベータの多様化
「アツい思い」を具現化する
道具がある
多様性=イノベーションの土壌
小川進「ユーザーイノベーション:
消費者から始まるものづくりの未来」
(東洋経済新報社, 2013)
(L.Fleming, Harvard Business Review,
8(9), pp.22-24 (2004))
- 16. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術が「道具」になるとは
技術が「道具」になるステップ
開発/発明される
お店で買えるようになる
使い方が知られるようになる
みんなが使うようになる
それが「道具」となって、次のステップへ
プロのみ マニア(ハイレベルアマチュア)向け だれでも
プロ(詳しい人)しか使えない
アマ(詳しくない人)でも使える
- 17. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術が生まれて「道具」になるまで
エリンギの例
1993年に日本へ
2003年ごろから一般化
↑10年かかって「道具」に
料理番組、調理例・・・
農林水産省「平成20年度 農林水産物貿易円滑化推進事業
台湾・香港・シンガポール・タイにおける品目別市場実態調査
(生鮮きのこ)報告書」(林野庁経営課特用林産対策室 )より
- 18. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の民主化:半導体での例
ref: http://www.intel.com/jp/intel/museum/processor/index.htm
傾き:×約1.5/年
年を追って、複雑・高機能な集積回路がつくられるようになった
※G.Moore (インテルの創業者の一人)
G.Mooreが1965年に論文[1]で述べる→C.Meadが「法則」と命名→「予測」→「指針(目標)」へ
G.E.Moore, "Cramming more components onto integrated circuits," IEEE Solid-State Circuit Newsletter, Vol.11, No.5, pp.33-35, 1965.
- 19. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
コンピュータの歴史の2つの側面
DEC VAX(1976)
1MIPS
Cray-1 (1978)
100MIPS
MIPS:Million Instruction Per Second (1秒間に実行できる命令数)
(世界最初のスーパーコンピュータ)
「世界トップの高速化」+「身近なものにも高速化の恩恵」の2つの側面がある
20000MIPS
10MIPS
100MIPS
20MIPS
20000MIPS
109MFLOPS
- 20. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
コンピュータが「頭脳」から「部品」に
出典:ARM
機器の頭脳
関節ごとに小さい脳(神経節)
コンピュータが、システムの「主役」から「構成要素(部品)」になった
※基本的には「コンピュータ」だが、小型で安価
CPU=Central Processing Unit
(中央演算装置)
- 21. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
マイコン使用
部品点数=1
コスト:100円
発振回路(555)
部品点数=4
コスト:150円
「Lチカ」のパラダイムシフト
コスト面:マイコン○(「もったいなくない」)
機能面:マイコン○(多機能・仕様変更も容易)
while(1){
a = 1;
sleep(1);
a = 0;
sleep(1);
}
※さすがにPCではちょっと・・・
Mooreの法則の結果、コンピュータが「部品」になった例
昔のLチカ
今どきのLチカ
※マイコン=Micro Controller(小さなコンピュータ)
※Lチカ=LEDチカチカ(LEDを点滅させる。英語ではBlink)
- 22. Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Maker天国としての深セン
2022/4月〜9月のサバティカル研修
https://github.com/akita11/SZdiary
サバティカル日記(まとめ記事・インタビュー記事あり)
- 23. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
M5Stack社でのインターン
2017年の創業
IoTマイコンボードの会社
以前から交流があった
教材として使われる例も多い
私もいくつか・・・共通教育・専門・金沢美大
製品開発を2つ:オープンイノベーションの経験
「系列」の概念がない、動的な協業(「方案公司」)
- 25. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
深セン速度に慣れてしまう
TaoBaoで部品を買う→翌日届く
SZLCSCのような中国ローカルの部品ショップも
聞いたことない面白いマイコンなどが無数にある
PCB・PCBA発注→2日後に届く
日本で(TELEC的に)使えないデバイスも使える
日本で面倒になったDroneも(まだ)
- 26. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ミドルレンジ半導体のエコシステム
STmicro(意法半导体)のARMマイコンSTM32F
ピン互換でローエンドからハイエンドまで
幅広いラインアップ
最近はご多分にもれず品薄&ニセモノ流通
- 27. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
STM32F互換マイコンの世界
ARMマイコンで事実上の「業界標準」っぽく
なっている
「互換」マイコンが多数ある
単なるコピーではなく、性能向上版もある
Ref: 「互換チップが次々と生
まれる中国、半導体業界の
新たな潮流」
https://eetimes.itmedia.co.jp
/ee/articles/2001/28/news03
2_2.html
- 28. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「STM32F互換」といっても「正統」も
Keilコンパイラで選べる
機能は同等or上位
GigaDevice, Geehy, FMDなどなど
だいたい”○○32Fxxx”で、
xxxのところが共通=機能を表す
- 29. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
LCSC/SZLCSCにはいろいろある
型番のつけ方からして、「置き換え」を狙って
いる
堂々と「置き換えガイド」があるメーカもある
- 31. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
STM32F互換チップたち
STM32F030(2.4x2.3mm)
HK32F030(2.2x2.1mm)
CKS32F030(1.9x2.1mm)
AT32F421(1.7x1.7mm)
ST-LinkV2で書き込み時、
「純正じゃない」というエラー
→ただ、動作はOKそう
ST-LinkV2で書き込み時、
「純正じゃない」というエラー
→動作は?(PWMが出ない)
STM32F421互換?
- 32. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ミドルレンジ半導体の世界
置き換え狙い=寄らば大樹
ただし、独自設計
オリジナルより高性能なものもある
背景にあるもの
高い設計力
コモディティ化した設計ツール・ノウハウ
安価でこなれた製造技術(ファブ)が使える
「先端」半導体でない半導体の世界はある
- 33. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
我々は中国とどう付き合うのがいいか?
確かに政治体制など、とっつきにくい面があるのは
事実
世論調査では、対中感情が悪いほうが圧倒的に多い
技術やビジネスの現場ではあまり感じたことがない
特に若い世代は、挑戦に貪欲
「日本が中国に勝つには」は、たぶん愚問
→「日本が中国とどうつきあうか
(どう利用するか)」が得策
「漢字が読める」というアドバンテージは
圧倒的(論文、技術資料など)
「この先生きのこれるか」を欧米人はすぐに読めない
ある日突然届いたSMS
ぱっと見で、だいたい意味はわかる
- 34. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
最近の日本の「ものづくり=Make」
エンジニア経歴がなくても「作りたいもの」を
作るがいる(世界的にみても日本が特異)
「技術で遊ぶ・親しむ」という文化
「作りたい」→「学ぶ」の順
かつての「ウオークマン」も机の下から
NT金沢の様子と展示作品の例
- 35. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
“How to Make”からの”Made in Japan”
「与えられた仕様をしっかりつくる」教育
“Made in Japan”が高品質の代名詞に
技術が大半の市場ニーズを満たすようになった
PCのカタログの表紙にCPUスペックは載っていない
成長の目標を見失った、と言われて久しい
「iPhone?そんなものは日本でもつくれる」
「仕様をくれれば」という仮定がないか?
本当にいまでも「高品質」なのか?
「Blu-ray vs HD-DVD」の争い←→「ネット配信」
- 36. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
“Make”はEasyじゃないけどFun
大人は「失敗をする機会」を奪っていないか?
「系列」のために「特定の仕事」しかできない
「失敗しないように」という大人の配慮が、
逆に興味を失わせていないか?
(プラモデル、理科実験、電子工作キット)
「興味を持ってもらう」という大人の事情はないか?
「楽=Fun」を求めている
「楽=Easy」だけではものたりない
“Fun”のためには危険も苦労も厭わない
(最近のMakerをみていれば自明)
- 37. 2023/3/24 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「最近の若いもんは・・・」
実に、うらやましい。
「総合的学習・アクティブラーニング」ネイティブ(柔軟な発想)
「アツい思い」というイノベーションの種
それを具現化できる「技術の民主化」
「技術の素養を持った○○」でいい
「エンジニア」という職種である必要はない
「理系文系」という区分けこそ無意味で弊害
「技術で遊ぶ」からで入ったっていい
「素人の工作」はあなどれない
こういう人たちが活躍できるよう、大人は伴走したい
実際、技術を極めるのは、とてつもなく難しいから