図書館基礎講座 2018 in 香川
現代図書館の動向
瀬戸内市民図書館 もみわ広場
館長 嶋田 学
自己紹介
1963年 大阪生まれ
1987年 大阪府豊中市立図書館
1998年 滋賀県永源寺町図書館準備室
2000年 永源寺町立図書館 開館
2005年 東近江市立永源寺図書館
八日市図書館~能登川図書館を経て
2009年 東近江市立永源寺図書館
2011年 岡山県瀬戸内市新図書館館長候補者
2016年 瀬戸内市民図書館もみわ広場 館長
瀬戸内市について
2004年11月に邑久町、長船町、牛窓町が
合併して誕生した人口約38,000人の市。
邑久の竹久夢二、
長船の備前刀
牛窓の多島美
面積 125k㎡
人口密度 304人/k㎡
0.はじめに
~本日のねらい~
◎現代の日本の図書館動向について
・統計でみる現代の図書館状況
・ここ数年の図書館のトピック
◎図書館に何が求められているかについて
◎みなさんが「現場」で感じていることについて
※講話と参加者のみなさんによる意見交換の2時間
1.統計でみる現代の図書館状況
◎公立図書館数の推移
◎公立図書館設置率の推移
◎公立図書館の貸出冊数の推移
◎公立図書館の図書館費、資料費の推移
◎司書数の推移
◎指定管理者制度導入状況
出典 第104回 全国図書館大会プログラム p10
出典 第104回 全国図書館大会プログラム p10
出典 第104回 全国図書館大会プログラム p10
出典 第104回 全国図書館大会プログラム p11
出典 第104回 全国図書館大会プログラム p11
出典 第104回 全国図書館大会プログラム p11
2.ここ数年の図書館のトピック
・全国初 県市合築図書館「オーテピア高知図書館」開館
→ 「高知県図書館振興計画」策定
・地方交付税算定のトップランナー方式 図書館は除外
(民間委託や指定管理者制度などの導入で削減した経費を基準財政需要額の水準とし
て地方交付税の算定にむすびつける方法=トップランナー方式)
・2011年~出版界からの貸出猶予要請
・2013年 TSUTAYA図書館の登場
・「まちライブラリー」などのマイクロライブラリーの登場
2.ここ数年の図書館のトピック
・2014年 「学校図書館法」改正 学校司書が法制化
・2017年 「超高齢社会と図書館研究会」発足
・「場としての図書館」~サードプレイス論の登場~
・SNSによる図書館広報
~Twitter Facebook Instagram~
・新たな図書館整備のあり方
PPPによる公民連携整備~オガールプラザ紫波町立図書館
2.ここ数年の図書館のトピック
・オープンデータへの注目
京都府立総合資料館が「東寺百合文書」のオープン化で、
LoY2014大賞を受賞
・ラーニングコモンズへの注目 ~アクティブラーニング~
・図書館の首長部局への移管
中央教育審議会は、図書館などの「公立社会教育施設」の所
管について、自治体の判断で教育委員会から首長部局に移す
ことができる特例を認めるべきと勧告。
・2020年 「会計年度任用職員」制度が施行
本題に入る前に・・・・・
文部科学省の大きな組織再編について
カレントアウェアネス
「文部科学省、組織再編を実施」 2018年10月18日
http://current.ndl.go.jp/node/36853
- 図書館振興係
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/11/21/1410115_002.pdf
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎地方交付税算定のトップランナー方式 図書館は除外
・各団体の普通交付税額 =
(基準財政需要額 - 基準財政収入額) = 財源不足額
・基準財政需要額 =
単位費用(法定)×測定単位(国調人口等)×補正係数(寒冷補正等)
・基準財政収入額 =
標準的税収入見込額 × 基準税率(75%)
池内淳准教授のサイト http://www.ic.daito.ac.jp/~ikeuchi/publib/unitcost_12.html
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎2011年~出版界からの貸出猶予要請
2011年2月25日に刊行された樋口毅宏の『雑司ヶ谷R.I.P』
「公立図書館のみなさまへ この本は、著作者の希望により2011年
8月25日まで、貸し出しを猶予していただくようお願い申し上げます」
文藝春秋社の松井社長による「文庫本貸出中止要請」
2017年の全国図書館大会で松井社長は、文芸系出版社にとって文
庫本は経営の屋台骨であり、その売り上げが減少することで、「出
すべき本を出せなくなるかもしれない」と発言。
Q.図書館は、出版界との関係をどう創っていくか?
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎2013年 TSUTAYA図書館の登場
キーワード
カフェ(スターバックス)
蔦屋書店
ライフスタイル分類
オシャレな空間(内装・家具)
高い書架
ダミー本
ずさんな選書
図書館の敷居を下げた~図書館が全国ニュースに
指定管理者制度導入に拍車?
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎「まちライブラリー」などのマイクロライブラリーの登場
小布施町立図書館発の「まちじゅう図書館」
海士町の「島まるごと図書館」
鳥取県日野町立図書館の「まちじゅう図書館」
論点
・公共図書館の「全域サービス」と市民活動としての取り組みは別
・市民の自由で自主的なライブラリーによる読書振興としての意義
・読書環境という「公共性」を、官と民が協働、連携して担い合う
・「知る権利」「学習する権利」を保障する公立図書館は、官が責任
を持って設置し、管理運営をすべき。
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎2014年 「学校図書館法」改正 学校司書が法制化
(施行は2015年4月)
論点
・努力義務にとどまる配置
・学校司書の職務と司書教諭との関係、専門性が不明確
・財政的根拠の不足と非正規化の拡大・委託化への懸念
・養成・研修の展望
学校図書館法の一部を改正する法律案に対する附帯決議 (衆議院)
政府及び地方公共団体は、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一 政府及び地方公共団体は、本法の施行に当たっては、学校司書の重要性に鑑み、必
要な学校司書の配置を進めることとし、その際、現在の配置水準が下がることのない
よう留意すること。
二 政府は、学校司書の配置の促進のために現在講じられている措置の充実に努めると
ともに、地方公共団体に対し、その趣旨を周知するよう努めること。
三 政府及び地方公共団体は、学校司書の職務の重要性を踏まえ、学校司書が継続的・
安定的に職務に従事できる環境の整備に努めること。
四 政府は、学校司書の職の在り方や、配置の促進や資質の向上のために必要な措置
等について、地方公共団体が自主的に推進している取組に十分配慮しつつ、検討を
行うこと。
五 政府及び地方公共団体は、司書教諭の職務の重要性を踏まえ、十一学級以下の学
校における司書教諭の配置の促進を図ること。
六 平成九年の学校図書館法の一部改正時の衆参両院における附帯決議等を踏まえ、
司書教諭及び学校司書の職務の在り方について、その実態を踏まえ引き続き検討を
行うこと。
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎2017年 「超高齢社会と図書館研究会」発足
超高齢社会と図書館研究会(Association for Age‐Friendly Libraries, 略称AFL,通
称あふら)は、超高齢社会における図書館について考える研究会です。
図書館による高齢者を対象としたサービスにとどまらず,図書館という「場」を活
用した世代間交流,高齢者の生きがい支援,高齢者の知恵や経験を生かした図
書館サービス,認知症の人やその家族の居場所としての図書館,認知症への理
解を深めるための普及・啓発など,超高齢社会における図書館のあり方をともに
考え,話しあい,実践します。
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎「場としての図書館」~サードプレイス論の登場~
「滞在型図書館」という概念
→ 「居場所」、「交流」、「にぎわい」、「まちづくりの拠点」
・「第三の場」(サードプレイス)の効用
→ 社会関係資本(ソーシャルキャピタル)の醸成
→ 社会的包摂施策との親和性
※居場所と出番づくり(コミュニティ形成)
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎「場としての図書館」~サードプレイス論の登場~
「滞在型図書館」という概念
→ 「居場所」、「交流」、「にぎわい」、「まちづくりの拠点」
・「交流」と「賑わい創出」 両者の論点
「交流」は、共通するテーマ設定による学習会により
「政策共同体」的コミュニティの醸成が可能
→ ソーシャルキャピタルの蓄積
「賑わい」は、単発的で一過性になる危険性
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎SNSによる図書館広報
~Twitter Facebook Instagram~
・インタラクティブであることの意義
広報とは、「広聴広報」のこと。
→ これまでは、一方的な発信に留まっていた
→ 情報の受け手が、送り手に発信できるSNS
・関係性をつくる広報(パブリックリレーションズ[Public Relations])
参考:田原市図書館のTwitter 佐藤翔の論考(LRG連載)
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
・オープンデータへの注目
京都府立総合資料館が「東寺百合文書」のオープン化で、
LoY2014大賞を受賞
パブリックドメインとは…
著作権により保護されていた著作物が、著作権の保護期間を経過して
社会の公共財産になり、だれでも自由に利用できるようになったもの
(日本大百科全書)
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは…
クリエイティブ・コモンズは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
(CCライセンス)を提供している国際的非営利組織とそのプロジェ
クトの総称です。
CCライセンスとはインターネット時代のための新しい著作権ルー
ルで、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自
由に使って構いません」という意思表示をするためのツールです。
https://creativecommons.jp/licenses/ より抜粋。
なぜ、オープンデータという考え方が重要か?
→ オープンガバメントとしてのオープンデータ
岡本真氏 総務省地域情報化アドバイザー派遣第1回目資料より 許可を得て転載
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎図書館の首長部局への移管のねらい
→ 図書館をまちづくりの中核的施設として活かしたい
・観光や産業振興との連携による活性化
→ 「にぎわい創出」、「交流の促進」
懸念されていること…
・政治的中立性の確保
・継続性・安定性の確保
・教育・文化施設としての機能弱体
・民営化への移行が加速化する
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎図書館の首長部局への移管イメージ
教育委員会 首 長
公
立
学
校
博
物
館
図
書
館
公
民
館
博
物
館
な
ど
観
光 産
業
振
興
市
民
活
動
推
進
移
管
3.図書館に何が求められているかについて
~ここ数年のトピックから考える~
◎みなさんで考えてみましょう
Q.なぜ、このような施策が提起されたのか?
Q.特例の趣旨は、今の教育委員会の体系では実現
出来ないのか?
4.みなさんが「現場」で感じていることについて
◎グループメンバーで自由にディスカッション
ご清聴ありがとうございました。
ご質問等、ございましたら
ご遠慮なくメールでどうぞ
shima0705@yahoo.co.jp

Library seminar in kagawa