FreeBSD 12.0-RELEASE

1. FreeBSD 12.0 RELEASE !
2018 年 12 月 21 日
( 株）創夢 内藤 祐一郎

2. FreeBSD 12.0 RELEASE
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2018 年 12 月 12 日（日本時間）にリリースされました。
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２年ぶりのメジャーアップデートです。
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新機能や性能向上など様々な変更が加えられています。
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多数の変更がある中で、個人的に興味のある部分をピックアッ
プして紹介したいと思います。

3. VIMAGE
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今まではコンパイルオプションの扱いでした。
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12.0 からデフォルトで使えるようになりました。
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カーネルが各 Jail に対して独立したネットワーク環境を用意
してくれるものです。
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例えば、ネットワークインターフェース、 IP アドレス、ポー
ト番号、ルーティングテーブル、ファイアウォール、などが全
て専用に作成されます。

4. VIMAGE の使い方
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jail.conf を使う場合は vnet; を入れます。
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iocage を使う場合は vnet=on のプロパティを入れます。
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上記の設定を行って jail を立ち上げると、
カーネルが専用のネットワーク環境を用意してくれます。
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初期状態では lo0 のみが作成されます。
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この lo0 はホストから独立しているため、ホストとの通信も
できません。
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外との通信には epair を使います。

5. epair の使い方
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初期状態
host
em0
lo0
jail0
lo0

6. epair の使い方
● ifconfig epair create
host
em0
lo0
jail0
lo0
epair0a epair0b

7. epair の使い方
● ifconfig epair0b vnet jail0
host
em0
lo0
jail0
lo0
epair0a epair0b

8. epair の使い方
● ifconfig bridge create
host
em0
lo0
jail0
lo0
epair0a epair0b
bridge0

9. epair の使い方
● ifconfig bridge0 addm em0
host
lo0
jail0
lo0
epair0a epair0b
bridge0
em0

10. epair の使い方
● ifconfig bridge0 addm epair0a
host
lo0
jail0
lo0
epair0b
em0
epair0a

11. epair の使い方
●
以上で epair0b が jail0 の中に見えるようになるので、 IP ア
ドレスを割り当てると外との通信ができます。
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dhcp を使うならば bpf を許可すること。
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面倒くさい場合は
iocage set vnet=on dhcp=on bpf=yes <jail 名 >
で、 epair の作成から bpf の設定までをやってくれます。
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ping を使うならば、以下を設定すること。
sysctl security.jail.allow_raw_sockets=1

12. Firewall & Routing
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ipfilter, ipfw, pf のルールはホストから独立しています。
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先ほどの epair に割り当てた IP アドレスに対して jail 内でルー
ルを追加します。
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ipfw を試したところ、ホストにファイアウォールルールが何か
設定されていると、 jail 起動時に全パケットをドロップする
ルールが自動的に追加されました。カーネルが入れているよう
に思いますが、詳細は分かりません。
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ルーティングについてはスタティックでもダイナミックでもお
好きなように。

13. ZFS
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new feature が２つ入りました。
1.Space map v2
 ディスクの空き領域の管理を拡張したもの。
 checkpoint などで管理が複雑になり既存の形式では効率
的な管理が難しくなったらしいです。
2.Large dnode
 ACL などの属性情報を保持する領域を拡張するもの。
 使うには zfs set dnodesize=auto <fs 名 > を。
 SELinux で問題になったらしいです。

14. ZFS
●
どちらも管理領域の拡張のため upgrade したプールを 12.0 よ
り前のカーネルで import することができません。
➔ import コマンドがエラーになります。
➔ read only ならインポート可能。
• upgrade したファイルシステムから古いプールに対して、
zfs send & recv することもできません。
• 小ネタとして vfs.zfs.arc_max がかなり真面目に守られるよう
になりました。

15. OpenSSL
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1.1.1 にアップデートされました。
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cryptodev は未サポートのためハードウェアアクセラレーショ
ンが効きません。（ Errata にも記述あり）
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API が変更されているため、古いアプリケーションの中にはコ
ンパイルが通らないものがあります。
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その場合は security/openssl を使いましょう。
こちらは 1.0.2 です。
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手元では rbenv で ruby-2.3 に必要でした。

16. OpenSSH
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7.5 → 7.8 にアップデートされました。
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この間の大きな変更点に以下があります。
– ssh v1 の完全削除
– arcfour, blowfish, CAST 暗号の削除
– hmac-ripemd160 MAC の削除
●
リリースノートに以下の文章が・・・意味不明
– "Additional capsicum(4) support has been added to sshd(8)."
– sshd に capsicum の追加サポートが入ったとは？

17. OpenSSH
●
リリースノートのソースはこちら
● https://svnweb.freebsd.org/doc/head/en_US.ISO8859-
1/htdocs/releases/12.0R/relnotes/relnotes.xml?
revision=52659&view=markup#l417
● <para revision="339216">Additional &man.capsicum.4;
support has been added to &man.sshd.8;.</para>
●
r339216 のコミットらしい。

18. OpenSSH
r339216 | emaste | 2018-10-07 06:32:55 +0900 (2018/10/07 (sun)) | 15 lines
sshd: address capsicum issues
* Add a wrapper to proxy login_getpwclass(3) as it is not allowed in
capability mode.
* Cache timezone data via caph_cache_tzdata() as we cannot access the
timezone file.
* Reverse resolve hostname before entering capability mode.
PR: 231172
Submitted by: naito.yuichiro@gmail.com
Reviewed by: cem, des
Approved by: re (rgrimes)
MFC after: 3 weeks
Differential Revision: https://reviews.freebsd.org/D17128

19. OpenSSH
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自分の書いたパッチでした。
●
内容は「 sysctl kern.trap_enotcap=1 しても sshd が落ちな
くなる。」というものです。
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Capsicum を使うアプリケーションのデバッグをリモートホ
ストでやりやすくなります。

20. bhyve
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Jail の中で bhyve を使えるようになりました。
– kldload vmm をしてから
– syctl security.jail.vmm_allowed=1 を設定します。
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nvme デバイスのエミュレーションが可能になりました。

21. TCP Fast Open
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クライアント側の実装が入りました。
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対応アプリケーションは調べきれていません。
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クライアント側の実装はデフォルトで有効です。
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サーバ側の実装は 11.1R で入っています。
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サーバ側の実装を有効にするには
sysctl net.inet.tcp.fastopen.server_enable=1
が必要なのは変わりません。

22. boot loader
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/boot/loader と /boot/zfsloader がマージされました。
– 同一バイナリになっています。
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UEFI ブートの場合、 GOP(Graphic Output Protocol) をちゃ
んと読むようになりました。
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今まではディスプレイがサポートする最大解像度で vt(4) が起
動しましたが、 GOP よって解像度が変わることがあります。
●
手元では FullHD(1920x1080) が 800x600 に変わりました。

23. ntpd
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今まで root 権限で動いていたのが ntpd ユーザ権限で動くよ
うになりました。
●
ntpd : 123 ユーザと ntpd : 123 グループが必要です。
●
アップグレード時に適切に作成してください。

24. ls color
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ls コマンドが --color=[never | auto | always] をサポートし
ました。
●
デフォルトは auto です。
●
環境変数 COLORTERM が設定されているとカラー出力しま
す。
●
色の指定は環境変数 LSCOLORS で変えられます。

25. nvdimm サポート
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nvdimm の初期サポートが入りました。
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UEFI や ACPI と協調して起動時に nvdimm の領域をクリ
アしないようになったそうです。
●
アプリケーションからは今のところ mmap(2) のみのサポート
です。
●
/dev/nvdimm_spaN (N は 0 以上の数 ) というデバイスファイ
ルができるそうです。
●
（実物を持っていないので未検証）

26. bectl
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Boot Environment を制御するコマンドが base に入りまし
た。
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今までの sysutils/beadm と同じことができます。
– bectl create <target 名 >
– bectl activate <target 名 >
– beclt destroy <target 名 >
– ・・・など

27. uname の値
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uname -a の値に時刻などのビルド環境毎に変わるものが削除
されました。
● FreeBSD air 11.2-RELEASE-p5 FreeBSD 11.2-RELEASE-
p5 #0: Tue Nov 27 09:33:52 UTC 2018 root@amd64-
builder.daemonology.net:/usr/obj/usr/src/sys/GENERIC
amd64
● FreeBSD air 12.0-RELEASE FreeBSD 12.0-RELEASE
r341666 GENERIC amd64
●
Reproducible Build だそうです。

28. service コマンド
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新しく enable disable delete のサブコマンドが追加されまし
た。
●
/etc/rc.conf または /etc/rc.conf.d/< サービス名 > のファイルを編
集します。
– enable : < サービス名 >_enable=”YES” を入れる
– disable: < サービス名 >_enable=”NO” を入れる
– delete: < サービス名 >_enable=”YES|NO” を消す
●
また、 reload サブコマンドが追加されました。対応しているサー
ビスならば、設定ファイルの読み直しができます。

29. ps コマンド
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以下の状態を表す文字が加わりました。
– J : Jail 内で動作しているプロセス
– C : capability mode で動作しているプロセス

30. bwm(4) ドライバ
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Broadcom BCM43224 をサポートしました。
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Macbook シリーズの内蔵 Wifi が使えます。
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以下の手順で使用します。
1. ”カーネルコンフィグに options BWN_GPL_PHY” を入れて
カーネルビルド＆インストール
2.ports/net/bwn-firmware-kmod をビルド＆インストール
3.bwn_v4_n_ucode & if_bwn のカーネルモジュールをロード

31. 最後に
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この他にもたくさんの変更があります。
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リリースノートや Errata を参照してください。
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スケジュール通りにリリースされたことはとても素晴らしいと
思います。
●
FreeBSD プロジェクトの皆様ありがとうございました！