2017年度第1回DCCフォーラム
世界に向けた教育内容の公開
-edXコースにおける日本語発音講座のデータ解析-
石井雄隆(早稲田大学・大学総合研究センター)
2017年4月28日(金) 於:大隈記念講堂小講堂
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MOOC (Massive Open Online Courses:
大規模公開オンライン講座)
• MOOCとは,大学・機関が提供するオンライン
の講義を受講し,課題をこなすことで最終的
には修了の認定を受けることができるという
取り組み
• 2012年にアメリカを中心に,CourseraやedXと
いったグローバルMOOCの取り組みが広がる
• 2013年10月には,日本版MOOCとなるJMOOC
(日本オープンオンライン教育推進協議会)が
設立された
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MOOCプラットフォームの概要
Coursera edX JMOOC(gacco他)
登録者数 約1390万人 約725万人 約20万人
登録者国籍数 190か国以上 196か国以上 (非公表)
パートナー機関数 143 95 95(会員法人数)
コース数 1905 966 110
組織の形態 営利 非営利 営利/非営利
※藤本 (2015)を基に作成,2016年5月20日時点
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Celebrating 10 Million edX Learners Worldwide!
http://blog.edx.org/celebrating-10-million-edx-learners-worldwide
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オープンエデュケーションが
高等教育に与える影響(重田, 2016)
• 教育現場でのMOOC活用
→反転授業,学習ログ解析に基づく新たな教育手
法の開発
• デジタルラーニングの普及
• 大学間教育連携の促進
→本学のように複数のキャンパスが存在する場合
には,学内の教育リソースの最適な配分
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マクロレベルの分析
• Reich他(2014)
– 学習者の受講意図と終了率の関係を検討
– 修了・聴講・見学などの意図によって,修了率が
大きく変化
• Hansen他(2015)
– アメリカ合衆国の学習者のIPアドレスから推定さ
れる居住地から年収などの社会経済的状況を抽
出
– 受講者が全米平均よりも富裕層に偏っていること
や,大卒の親を持つかどうかが修了率に影響
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ミクロレベルの分析
• Guo他(2014)
– 短い映像の方が集中した状態で視聴
– 人が話すスタイルよりもホワイトボードに書いて
いくスタイルが好まれる
– 授業収録映像は高精細であっても注意が続かな
い
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介入研究
• Kizilcec他(2016)
– 自己調整学習方略を658名の学習者に提示
– 学習者からの主観評価としては有用性が確認さ
れたが,成績の向上は見られなかった
• Ferschke他(2015)
– チャットシステムを加え,ログイン中の学習者を適
切にマッチング
– MOOCからの離脱をある程度防ぐことが可能であ
ることがわかった
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早稲田大学におけるMOOCの取り組み
• JMOOC第一弾講座
– 国際安全保障論
• JMOOC第二弾講座
– しあわせに生きるための心理学
〜アドラー心理学入門〜
• edX第一弾講座
– Tsunamis and Storm Surges:
Introduction to Coastal Disasters
• edX第二弾講座
– Japanese Pronunciation for
Communication
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教務部
• 戦略策定
• 提供講座検討ならびに選定
国際部
・海外連携
情報企画部
・システム運用
WasedaX(プロジェクト)
リーダー:山名早人(理工学術院教授)
サブリーダー:森田裕介(人間科学学術院准教授)
大学総合研究センター
・コンテンツ製作支援
・学習履歴データの分析,効果検証
(株)早稲田大学アカデミックソリューション
・編成ディレクター
・映像ディレクター
・システム運用担当者(英語ネイティブ)
・コンテンツ制作担当
・著作権許諾担当
・ネイティブチェック担当(英語ネイティブ)
・講座担当教員
- 授業補助者(TA/大学院生)
共同
制作
講座制作・運営
橋本常任理事(CIO),佐藤理事(教務),大野理事(情報化推進)
プロジェクト実施体制
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第二弾講座実施概要
• 講座名:Japanese Pronunciation for
Communication
• 担当講師:戸田貴子教授(日本語教育研究科)
• 開講期間:2016年11月7日-12月19日
• プラットフォーム:edX
• 受講者数:11165人(修了率:7.5%)
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受講者の分布
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受講者の最終学歴
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受講者の年齢(N=12179)
平均27.6歳
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修了条件
• クイズ: 40%
• 発音チェック(相互評価課題):10%
• ファイナルテスト:50%
→60%以上の得点で修了
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Pre-Course Survey
(有効回答790名)
• コース受講理由
• コースから得たいこと
• コースを知った経緯
• 早稲田大学との関係
• 日本語発音の問題
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なぜこのコースを受講しようと思いましたか。
5段階(「1 まったくそう思わない」から「5 とてもそう思う」)から
選んでください。
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あなたはどのようにこのコースを知りましたか。
当てはまるものを全て選んでください。
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あなたはこのコースから何を得ることを望んでいますか。
5段階(「1 まったくそう思わない」から「5 とてもそう思う」)から
選んでください。
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早稲田大学について,当てはまるものを
すべて選んでください。
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日本語の発音に問題があると思いますか。
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Post-Course Survey
(有効回答213名)
• 平均学習時間
• コース評価
• コンテンツの有益性
• 字幕の利用状況
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1週間に平均して,どのくらいの時間を
このコースに費やしましたか。
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下記について5段階("1: 良くない"から"5: すばらしい")
で評価してください。
24
講座の内容について
5段階("1: 良くない"から"5: すばらしい") で
評価してください。
25
どのコースコンテンツが役立ちましたか。
5段階("1: まったく役立たない"から"5: とても役立つ")で
評価してください。
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このコースを受講して,以下の質問に対する答えを
5段階から選んでください。
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字幕と訳文の利用状況
について教えてください。
95%の学習者が,字幕は役立ったと回答。その中で
も日本語,英語,中国語がよく使用されていた。 28
学習者からのコメント
• コースの全体的満足度
– The course was very well put together, I really
enjoyed the videos and the various exercises
which helped me to understand the material.
• 講師の内容説明
– The pronunciation of the professor is very clear
and slow enough for beginners to follow! Thank
you!
– Instructors' explanation is clear and useful.
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学習者からのコメント
• もし,このコースに対してコメントがあれば,下記
に記してください。
– I feel very lucky and happy to have a chance to take
the course. It helps me so much to learn about
pronunciation, Japanese cultures and Waseda
University.
– A brilliant course, and I am extremely thankful to
Professor Toda and all of the JPC111x team for
running this course, and the help and feedback they
have provided. It has helped my studies greatly, and I
really enjoyed it.
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今後のMOOCの可能性(1/2)
• Waseda Vision 150推進
– 核心戦略3「教育と学修内容の公開」及び核心戦略4「対話
型,問題発見・解決型教育への移行」推進に大きな役割を
果たす(核心戦略8「世界のWASEDAとしての国際展開」にも
関連)
• 学習履歴の解析に基づく新たな教育手法の開発
– それらに基づく,オンキャンパスへの新たな教育手法の導
入
• 高大接続や入試改革との関係性
– 東海大学アドミッションズ・オフィス入学試験におけるMOOC
の活用
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今後のMOOCの可能性(2/2)
• 反転授業への活用
– 講義部分はオンライン動画で事前学習できるようにし,
対面授業においては,事前学習内容を踏まえたグ
ループワークやディスカッションなどを行う
• SPOC利用
– 作成したオンデマンドコンテンツを学内向けに提供し,
教育に活用
• マイクロマスター
– オンライン学位プログラムの開設や正規科目として
の取り扱いなどの世界的潮流への対応
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おわりに
• edXは,Waseda Vision 150における核心戦略3
「教育と学修内容の公開」及び核心戦略4「対話
型,問題発見・解決型教育への移行」推進に大
きな役割を果たす(核心戦略8「世界のWASEDA
としての国際展開」にも関連)
• 反転授業,オンライン相互評価や学習履歴の解
析に基づくオンキャンパスへの新たな教育手法
の導入
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Japanese Pronuciation for
Communication再開講
• Self-pacedコースとして開講
• 自分の好きな時に好きなペースで学習可能
• https://www.edx.org/course/japanese-
pronunciation-communication-wasedax-
jpc111x-0
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edX第3・4弾講座のお知らせ
• 講座名:Nuclear Planetary Science: The
Formation and Evolution of Planets(ASTRO111x)
• 担当講師:長谷部信行教授
• 開講予定:2017年10月開講予定
• 講座名:Discover the Mysteries of the Universe
through Cosmic-rays(ASTRO112x)
• 担当講師:鳥居祥二教授
• 開講予定:2018年3月開講予定
Source: SpaceFacts
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公募スタート
• 早稲田大学から国内/海外向けに配信する大
規模公開オンライン講座(MOOC)の講座制
作を希望する教員または団体・組織を本日よ
り公募開始
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edxコース運営報告(石井助手)

Editor's Notes

  • #3 OER(Open educational resources)の話
  • #4 イギリスのFutureLearnなどもある(慶応大学が加盟)。
  • #6 教育現場でのMOOC活用 アリゾナ州立大学ではedXの講義を使って初年次教育を実施予定。 デジタルラーニングの普及 いつでもどこでも学べる環境の実現 近年ではそうした学習履歴データを用いたラーニングアナリティクスも盛んに行われている 大学間教育連携の促進 MOOCに対してSmall Private Online Courses (SPOC)など。 デルフト工科大学など欧米の6大学で単位互換システムを計画 北海道大学の事例(教養教育で連携) 生涯教育
  • #10 アドラー心理学は昨年再開講もした。
  • #11 教務部の中にありceoなどがかかわっており,大学全体がコミットしている。全体的な方針を決めながら,大総研が実働として動いている。
  • #12 受講者数:成績確定日時点における受講者の人数 修了率:実受講者内修了率(実受講者とは講義動画を1回以上再生した受講者の割合)
  • #18 コースの受講理由は,日本語の発音に焦点を当てたコースであるからと日本や日本文化に関心があるからが高かった。本コースは日本文化を学べるコンテンツなども充実していた。
  • #19 今回は日本語教育研究科を含む学内外への広報活動を非常に熱心に行った。
  • #21 講座の成果指標の一つとして毎回聞いている質問。前回も約6割が早稲田大学を知らないと答えており,edXを通じて早稲田大学を知った学習者が多数存在。
  • #22 コースを受講する前に,学習者の多くは日本語の発話に問題があると認識していた。
  • #23 回答者内修了率82%。事実上の修了者アンケート。
  • #24 多くの学習者が1-3時間程度このコースを学習するのに使っていた。これはコースのrequirementに大体合致している。
  • #25 ビデオコンテンツの質,講師の内容説明,コースの全体的満足度は非常に高かった。 コースの全体的難しさは,逆転項目
  • #26 ユニットごとの評価も非常に高かった,とくにアクセントとイントネーションのコンテンツは評価が高かった。
  • #27 コースコンテンツごとの評価は,会話で学ぶ日本語発音&カルチャーが非常に高かった。これはコース受講理由として文化に関心をもっている学習者が多かったことと関係していると思われる。 またシャドーイング教材や発音チェックなど学習者のコースエンゲージメント率を高める様々な仕組みを行ったが,それらの評価も高かった。この辺りは多くの受講者を獲得した理由の一つではないかと考えられる。
  • #28 コースを受講する前に,学習者の多くは日本語の発話に問題があると認識していたが,コース終了後のアンケートではこれからも発音の練習を続けたいという回答が一番多く,発音学習に対してポジティブな印象を持つことにつながった結果となった。
  • #29 今回多言語対応するため,字幕と訳文を充実させた。その結果として,95%の学習者が,字幕は役立ったと回答。その中でも日本語,英語,中国語がよく使用されていたことが分かった。
  • #30 学習者のコメントをいくつか紹介させて頂く。
  • #34 2032年の創立150周年を本学は迎えます。 その時までに達成すべき13の核心戦略があり,核心戦略3「教育と学修内容の公開」及び核心戦略4「対話型,問題発見・解決型教育への移行」が関係します。 留学生の獲得や国際共同研究の加速などの可能性もあるため,核心戦略8「世界のWASEDAとしての国際展開」 MOOCを基にした反転授業などに基づくオンキャンパスへの教育手法の導入 最後にedXに加盟しているのは本学,東京大学,東京工業大学,大阪大学,京都大学のみなので,知見やノウハウの共有はもちろんですが,共通の指標を用いたコース評価などを推進する必要があるのでは。