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Similar to 関節リウマチにおけるエタネルセプトのシリンジ製剤からペン製剤への変更に関するアンケート調査 (20) 関節リウマチにおけるエタネルセプトのシリンジ製剤からペン製剤への変更に関するアンケート調査2. 研究の背景と目的
■ エタネルセプト(ETN)は本邦では2番目に、米国では1番目に
関節リウマチに対して臨床承認された生物学的製剤である。
■ ETNは皮下注射製剤であり、自己注射が認可されており、自己注射
で投与を行っている症例も多数である。
■ 本邦では2005年にバイアル製剤が、2008年にシリンジ製剤が承認
されているが、2013年に新たにペン製剤が承認された。
■ ペン製剤はより患者さんにとっての利便性が改善することが期待
されるが、本邦における実臨床でのデータは少数であるので
本研究ではアンケート調査を中心にシリンジ製剤からペン製剤
への変更についての調査研究をおこなった。
Dept. of Rheumatology, Toyohashi Municipal Hospital
3. 症例・方法
■ 症例:豊橋市民病院リウマチ科においてエンブレル
シリンジ製剤を自己注射している症例の中で
ペン製剤を紹介し、変更の希望をうかがった44例。
■ 方法:①まずシリンジ製剤に関するアンケートを施行
②シリンジ製剤からペン製剤への変更の意思を聴取
ペン製剤使用例をP群、シリンジ製剤使用例をS群
③ペン製剤への変更例(P群)については数か月後に
ペン製剤に関するアンケート調査を施行。
Dept. of Rheumatology, Toyohashi Municipal Hospital
4. 調査項目
Dept. of Rheumatology, Toyohashi Municipal Hospital
■ 患者背景
■ S群とP群の割合の推移
■ P群とS群の患者背景比較、アンケートスコア比較
■ P群のペン製剤使用後アンケートの解析、変更前との比較
■ P群の変更前後における疾患活動性比較、注射部位比較
■ いったんペン製剤に変更するも、その後シリンジ製剤へ
もどった症例の供覧
6. 本研究で使用したアンケートの質問項目
1.使いやすさ
2.使い方の習得
3.廃棄方法
4.注射をすること(簡便性)
5.持ちやすさ
6.注射時の液漏れ
7.注射時間の長さ
8.旅行、レジャーへの負担
9.日常活動(家事、育児)への負担
10.仕事への負担(勤労者)
11.注射に対する緊張感、不安
12.針に対する緊張感、不安
13.自己注射に対する嫌悪感、不安
14.針刺し事故(指など)
15.外観(見た目)
16.針を刺した時の痛み
17.薬液を注入したときの痛み
18.注入後の痛み
■ 以上の項目について5段階で評価していただいた。
■ 一番良好であるという評価を0点、最悪であるという評価を4点とし
各項目ごとの評価とともに、平均スコアも評価対象とした。
■ エンブレルペン紹介前にシリンジ製剤に関して1回施行し、エンブレル
ペンに変更した方は変更後数か月後に、ペン製剤に関して再度施行した。
Dept. of Rheumatology, Toyohashi Municipal Hospital
8. 患者背景(n=44)
平均or 実数SD or % 最小最大
年齢58.5 14.5 25 80
性別
女性37 0.841
男性7 0.159
RA罹病期間(年) 12.2 7.8 2.0 29.0
Stage
I 10 0.227
II 7 0.159
III 15 0.341
IV 12 0.273
Class
1 4 0.091
2 19 0.432
3 21 0.477
4 0 0.000
ETN投与量
50mg/w 38 0.864
50mg/2w 6 0.136
DAS28-CRP 2.24 2.41 0.99 17.00
SDAI 4.1 4.3 0.5 25.3
CRP(mg/dl) 0.39 0.70 0.01 3.84
MMP-3(ng/ml) 62.2 48.7 11.4 193.1
患者VAS(mm) 15.2 18.2 0.0 95.0
医師VAS(mm) 11.0 7.3 5.0 40.0
mHAQ 0.347 0.554 0.000 2.750
Dept. of Rheumatology, Toyohashi Municipal Hospital
9. 100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
シリンジ製剤とペン製剤の使用割合の推移
S群P群
31例
(70.5%)
研究開始前ペン製剤変更後最終評価時
Dept. of Rheumatology, Toyohashi Municipal Hospital
44例
(100.0%)
13例
(29.5%)
29例
(66.0%)
15例
(34.1%)
10. 最終観察時S群とP群の患者背景比較
最終評価時S群(n=15) 最終評価時P群(n=29)
P値
平均or 実数SD or % 平均or 実数SD or %
年齢56.0 17.8 59.9 12.6 0.4955
女性12 0.800 25 0.862
性別
0.5936
男性3 0.200 4 0.138
RA罹病期間(年) 11.5 6.9 12.6 8.4 0.7376
I II 6 0.400 11 0.379
Stage
0.8937
III IV 9 0.600 18 0.621
Class
1 2 8 0.533 15 0.517
0.9193
3 4 7 0.467 14 0.483
ETN使用期間(日) 1672.4 798.9 1466.8 899.2 0.4651
DAS28-CRP 1.95 0.46 2.38 2.95 0.4138
SDAI 3.9 1.8 4.2 5.2 0.1580
CRP (mg/dl) 0.50 0.63 0.34 0.74 0.1540
MMP-3 (ng/ml) 77.7 54.2 54.1 44.5 0.0996
患者VAS (mm) 15.7 12.1 14.9 20.8 0.3275
医師VAS (mm) 11.3 5.5 10.9 8.1 0.3812
mHAQ 0.558 0.739 0.237 0.403 0.0877
シリンジのアンケートスコア(合計) 24.4 8.9 24.0 9.9 0.9901
シリンジのアンケートスコア(平均) 1.4 0.5 1.4 0.6 0.9506
有意差検定にはMann-Whitney U-test あるいはChi-square testを使用した。
Dept. of Rheumatology, Toyohashi Municipal Hospital
13. P群の変更前後における疾患活動性比較、注射部位比較
変更前最終評価時
P値
平均or 実数SD or % 平均or 実数SD or %
DAS28-CRP 2.38 2.95 1.98 1.00 0.4123
SDAI 4.2 5.2 5.1 5.9 0.0184
CRP (mg/dl) 0.34 0.74 0.38 0.68 1.0000
MMP-3 (ng/ml) 54.1 44.5 56.8 46.7 0.4456
患者VAS (mm) 14.9 20.8 17.5 20.5 0.0974
医師VAS (mm) 10.9 8.1 12.7 10.6 0.2093
mHAQ 0.237 0.403 0.223 0.421 0.5896
Dept. of Rheumatology, Toyohashi Municipal Hospital
注射部位
腹部26 0.963 23 0.852
0.1590
大腿1 0.037 4 0.148
有意差検定にはWilcoxon signed-rank test あるいはChi-square testを使用した。
14. ペン製剤からシリンジ製剤へ逆戻りした2症例
■ 症例11(OY):変更時66歳女性。2000年にRA発症。2009/11よりインフリ
キシマブ、2010/1よりエタネルセプト開始。2014/3/19よりペン製剤に変更。
自己注射可能であったが、2014/7にご本人よりシリンジ製剤に戻したいとの
申し出があり、ペン製剤は中止となった。理由はペンのボタンを押すのに力
が必要であるが本人は握力が少ないため困難であるとのことであった。
握力は右=11.1kg、左=9.6kg。
■ 症例14(NK):変更時63歳女性。1990年にRA発症。2006/9よりインフリ
キシマブ、2009/5よりエタネルセプト開始。2014/3/28よりペン製剤に
変更。自己注射可能であったが、2014/5にご本人よりシリンジ製剤に戻し
たいとの申し出があり、ペン製剤は中止となった。理由は腹部に注射しずら
い、疼痛が強い、ボタンを押し続けるのが困難、などであった。
Dept. of Rheumatology, Toyohashi Municipal Hospital
16. シリンジ製剤からペン製剤への変更に関する他の研究より
(日本)
■ シリンジ製剤からペン製剤へ変更したRA10例に対し27項目のアンケート
調査を行ったところ、ペン型製剤は簡単性、便利性、信頼性、安全性、
フィーリング性、デバイス特性、疼痛性、使用意向で優れていた。
小井戸ら第58回日本リウマチ学会
■ シリンジ製剤からペン型製剤へ切り替えたRA10例に対してアンケート調査
を施行。持ちやすさは40%はペン型が持ちやすいとしたが30%はシリンジ
型のほうが持ちやすいと回答。注入速度では50%がペン型のほうがいいと
回答し、40%がシリンジ型がよいと回答した。疼痛については50%はペン
型が痛みが少ないとし、30%がシリンジ型が痛みが少ないと回答した。
大島ら第58回日本リウマチ学会
我々の研究も加えて考えると、それぞれの患者さんのおかれた条件によって、
シリンジ製剤とペン型製剤を使い分ける必要がある可能性を示唆していると
考えられた。
19. 104例の患者を使用(RA58, PsA31, AS15)
First phase: ペン型製剤の使用法について
2時間のEducation sessionを行い、それに
ついてアンケート調査を行う。
Second phase: 8回のエンブレルペン型
製剤を投与
【質問】
1.あなたは今回のセッションを開催するという考えに興味を持ちましたか?
2.ペン型製剤を用いた治療についての情報を理解できましたか?
3.シリンジ製剤からペン型製剤への変更に興味がありますか?
4.ペン型製剤の使用法を理解しましたか?
5.提供された情報を基にして、エンブレルのペン型製剤の自己注射が実現可能
Borras-Blasco et al. Expert Opin Biol Ther. 2013
であると思いますか?
6.このようなセッションの組織化に興味がありますか?
7.今回のミーティングの満足度はどの程度ですか?
スコアリング
1:全くそうではない。2:いくらかそうではない。3:いくらかそうである。
4:いくらかそうである。5:かなりそうである。
20. Borras-Blasco et al. Expert Opin Biol Ther. 2013
セッションの内容
リウマチ医と専門薬剤師による情報提供。注射の手順が図示された資料の配布。
空のデバイスを用いた自己注射の練習。
薬剤師やリウマチ医との質問や討論の機会
22. まとめとして
~我々の研究から考えるペン型製剤の使用上の注意~
1.シリンジ製剤からペン製剤への変更は希望者に関してはおおむね良好
であり、促してもよいと考えられる。
2.ペン型製剤注射手技の習得には、不安を感じる方もおられるので、
丁寧な指導が必要。
3.注射後の疼痛がやや強いと言われる方もおられた。これは一定速度での
注入が影響したか?自分の注射注入ペースを重要視する方には、シリンジ
製剤がベターか?
4.ペン型製剤への変更時に、注射部位の変更(腹部から大腿)も取り入れる
ことを考慮の中に入れるべきである。腹部での注射ではボタンを押しにくい
と言われた方もおられた。
5.持ちやすさ、液漏れの少なさ、注射時間の短さ、仕事への負担の少なさ、
針や注射への不安感の少なさ、針刺し時や注入時の疼痛の少なさ、器具
のデザインにおいてペン型製剤は優れていると考えられた。
Dept. of Rheumatology, Toyohashi Municipal Hospital