急性低酸素性呼吸不全における鼻
カニューレによる高流量酸素療法
• 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)は、慢性閉塞性
呼吸不全の急性増悪や重症心原性肺水腫の気
管挿管率を減少させ、死亡率を減少させる。ま
た、呼吸仕事量を軽減しガス交換率を改善する。
• 急性低酸素性呼吸不全の患者では、人工換気
は高い死亡率と関連があるが、NPPVが挿管率
を減少しアウトカムを改善するかどうかは議論が
ある。
• 過去の研究は、慢性呼吸不全や心原性肺水腫
の急性呼吸不全の混成であり、酸素療法と比較
したNPPVの効果が過大評価されている。
• 急性低酸素性呼吸不全にしぼった観察研究では
NPPVの治療は50%程度失敗していて、特に高い死亡
率とも相関していた。
• これらのデータからも、非高炭酸ガス血症性急性低酸
素性呼吸不全患者に対するNPPVの使用を完全に支
持するものではない。
• 高流量酸素療法(nasal high flow)は、加温加湿した高
流量酸素を鼻カニューラから投与する方法で、高流量
の酸素を流すので口を閉じて吸入すると軽度のPEEP
効果があり、また、高流量の酸素を流すことで鼻咽腔
などにたまった呼気を洗い流し解剖学的死腔を減らす
効果がある。
• 高流量酸素療法の挿管率や死亡率は、ICU
に入室している急性低酸素性呼吸不全患者
では評価されていない。
• 高流量酸素療法、NPPVは酸素療法単独と比
較して、急性低酸素性呼吸不全でICU入室し
た患者の、挿管率・死亡率を減少させるか、
多施設・前向き・ランダム化試験を行った。
METHODS
• フランス、ベルギーの23のICUで行った。
• 対象は、呼吸数が25回以上、10L酸素を15分以
上行ってもP/F<300、PaCO2<45、慢性呼吸不
全の臨床経過がない、18歳以上の患者。
• 除外基準は、PaCO2≧45、喘息や慢性呼吸不全
の増悪、心原性肺水腫、重度の好中球減少、循
環動態が不安定、昇圧剤の使用、GCS<12、非
侵襲的換気に禁忌がある、挿管拒否、協力が得
られない人。
METHODS
• 標準酸素療法群は、SpO2>92%を保つように、
FM10L投与を患者が回復するか挿管されるまで行っ
た。
• NHF群は、50L・FiO2 1.0で開始。SpO2>92%を保つよ
うに調節。高流量酸素を少なくとも2日投与し、その後
標準酸素療法を行った。
• NPPV群は、PSはtidal volumeを7-10ml/kgを保つように
調節し、PEEPは2-10cmH2Oで調節した。FiO2、PEEPは
SpO2 92%以上を維持するように調節し、一日8時間・
少なくとも2日間行った。NPPVは少なくとも1時間休止
し、呼吸数>25、SpO2<92%になると再開し、休止中
はNHFを行った。
STUDY OUTCOMES
• Primary outcomeは、28日以内に気管内挿管を
必要とした患者の割合。
• 挿管の遅れを減らすために、以下の基準を用い
た。循環動態が不安定、神経学的所見の悪化、
呼吸不全の持続or悪化(呼吸回数>40、呼吸筋
仕事量の改善がない、気管内分泌量が多い、
pH<7.35、5分以上SpO2<90%の少なくとも2つを
満たす)
• NHF群、標準酸素療法群は、患者の呼吸不全が
悪化し、その他の臓器不全がない場合に限り、
主治医の判断で挿管前にNPPVを行った。
• Secondary outcomeは、ICUでの死亡率、90日
以内の死亡率、28日までの人工呼吸器非装
着日数、ICU滞在時間。
• ICU入室中の合併症(敗血症性ショック、院内
肺炎、不整脈、心停止)
RESULTS
• 2011-2013年の23のICUに入院している急性低酸素性
呼吸不全患者2506例中310例を解析対象とした。
• もっとも多い原因は、市中肺炎で197例(64%)。
• 両側の肺浸潤影は244例(79%)に見られ、そのうち
238例(77%)はP/F<200.
• 気管挿管率は、NHF群38%(106例中40例)、標準酸
素療法群47%(94例中44例)、NPPV群50%(110例中
55例)(P=0.18)。
• 28日の人工呼吸器非装着日数はNHF群が有意に多
かった(NHF群24±8日、標準酸素療法群22±10日、
NPPV群19±12日;P=0.02)。
• 90日死亡については、標準酸素療法群のNHF群
に対するハザード比は2.01(95%CI 1.01-3.99)
(P=0.046)。NPPV群のNHF群に対するハザード
比は2.5(95%CI 1.31-4.78)(P=0.006)。
• ICU入室中の合併症については明らかな差は見
られなかった。
• 救命のためにNPPVが行われた40例中、標準酸
素療法群19例/26例、NHF群9例/14例は、その
後に挿管された。
DISCUSSION
• 多施設・ランダム化・オープンラベル試験では、NPPV・NHF
群ともに急性低酸素性呼吸不全患者の挿管率は減少しな
かった。
• NHFは標準酸素療法群・NPPV群と比較して、ICUでの死亡
率、90日死亡率が減少した。
• NHF群は、P/F<200の重度低酸素では、低い死亡率であ
り、NHFから挿管された患者も死亡率は少し低かった。
• NPPVの失敗は高い死亡率と関連していて、おそらく挿管
が遅れることが原因と考えられる。
• 重症肺障害患者に対するNPPVは、1回換気量が9ml/kgよ
り増加することにより、換気による肺障害を引き起こしてい
る可能性がある。
• NHFは装着時の不快感が少なく、また重度の呼吸不
全減少、呼吸回数の減少とも関連している。加温加湿
した高流量酸素により、粘ちょうな痰を防ぐことで無気
肺になることを防いでいる。また、高流量酸素によって
軽度のPEEP様の効果があり、上気道の解剖学的死腔
にたまった呼気を洗い流す効果もある。
• NHF群での、挿管率の減少はP/F<200のサブグルー
プ解析では得られた。
• 結論として、NHFは急性低酸素性呼吸不全患者の
primary outcomeに差は見られなかったが、生存率は
改善した。

2016.5.27 急性低酸素性呼吸不全における鼻カニューレによる高流量酸素療法