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pES clubレクチャー

EBMによる診断の考え方
welcome to diagnostic world !

東京北社会保険病院 総合診療科
南郷 栄秀
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
目標


なぜEBMによる診断が必要か理解する



EBMによる診断を理解するための基礎
知識を習得する


感度・特異度



陽性的中率・陰性的中率



尤度比

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
突然ですが...


23歳男性,実習の打ち上げの飲み会から帰
宅して風呂に入ったが,疲れていたので髪
の毛を乾かさずに寝てしまった.翌日より
くしゃみ,鼻水,鼻づまりが始まり,昨日
には喉が痛くなり,体温を測ってみたとこ
ろ37.3℃であった



診断は?



かぜ?



診断根拠は?

2008/02/17

カン?

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
“カン”とは何か?


医師個人の臨床経験に基づく,言語化され
ていないパターン認識

“カン”の利点



診断が早い:日常業務の大半はコレ
そこそこ当たる(パターンに当てはまる)

“カン”の欠点




バイアスが混入,修正困難
他人に伝えることができない:教育不能
論理的,文献的根拠に乏しい

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
“カン”はどれくらい正しいか?


簡単なクイズです


50歳のあなたの叔母が,健診でマ
ンモグラフィーを行った結果,陽性
と出た



心配になった叔母は,医療のことを
勉強しているあなたに電話で相談し
た



あなたの叔母が乳癌である割合は?

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
“カン”はどれくらい正しいか?


もう少し情報を...


50歳の女性が乳癌にかかる割合は0.1%



乳癌である人がマンモグラフィーで陽性と出る割合
は90%



本当は乳癌でなくても検査で陽性と出る割合は9%



50歳のあなたの叔母がマンモグラフィーで陽性の
結果が出た



叔母が乳癌である割合は?

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
“カン”はどれくらい正しいか?
50歳の女性で乳癌:0.1%
乳癌の人で検査陽性:90%
乳癌でなく検査陽性:9%

10000人

検査結果が陽性

乳癌

乳癌なし

10人
検査陽性

9人

2008/02/17

9990人

検査陰性

1人

検査陽性

899人

検査陰性

9091人

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
“カン”はどれくらい正しいか?
9人



乳癌で検査陽性



乳癌ではないが検査陽性 899人



検査陽性の叔母が乳癌である可能性は...




9/(9+899)=0.99%(約1%)

“カン”は当てにならない!

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
EBM診断の目的
個々の身体所見・検査の特性を十分に把握し


“カン”というあいまいな部分を明確にする



経験の異なる医師によるブレをなくす



バイアスをできるだけ排除する

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
診断のカテゴリーの疑問


この診断法を用いることで,目的とす
る診断を下すことができるか?
P:この患者が
I:この診断法を受けると
C:正しい診断法での診断と比べて
O:どれだけその疾患の有無を判定できるか

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
診断の疑問を解決する


必要な研究デザインは?



Cohort研究



症例対照研究



2008/02/17

RCT

横断研究

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
診断を扱う横断研究のポイント


“正しい診断”は神のみぞ知る



人間は,“正しい診断”を知るこ
とは不可能である



“正しい診断”に最も近い診断法
をgold standardとする



Gold standardと調べたい診断法を
比較する
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
診断のチェックシート


論文のPICO



Cはgold standardか?



IとCは全ての患者で独立に確認されている
か?



IとCは実施方法が明確か?



IとCは結果に再現性があるか?



結果の評価

The SPELL, http://spell.umin.jp「はじめてダイアゴンシート」参照
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
全ては2×2表(四分表)から始まる
真実を知る神は天上界にいる
↓
検
査
を
う行
人
間

疾患(+) 疾患(-)

計

検査(+)

↑

は
地
上
に界
い
る

a

b

a+b

検査(-)

c

d

c+d

計

a+c

b+d

a+b+c+d

どっちがどの向きになるのか紛らわしくないか?
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
検査の2×2表
疾患(+) 疾患(-)

計

検査(+)

a

b

a+b

検査(-)

c

d

c+d

計

a+c

b+d

a+b+c+d

感度(Sn:sensitivity)

疾患のある人のうち陽性:a/(a+c)

特異度(Sp:specificity)

疾患のない人のうち陰性:d/(b+d)

陽性的中率

検査陽性のうち疾患あり:a/(a+b)

陰性的中率

検査陰性のうち疾患なし:d/(c+d)

有病割合

患者/総計:(a+c)/(a+b+c+d)

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
感度・特異度
疾患(+) 疾患(-)

計

検査(+)

b

a+b

検査(-)

c

d

c+d

計


a
a+c

b+d

a+b+c+d

感度・特異度は,疾患の側から見て,検査
そのものの性能を評価している
→病気の頻度には影響されず,検査法固有の特性
を純粋に示す

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
①有病割合50%の10000人の集団に
感度80%,特異度90%の検査を
疾患あり

疾患なし

計

検査陽性
検査陰性
計

10000

この表を埋めて,陽性的中率,陰性
的中率を計算しましょう
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
①有病割合50%の10000人の集団に
感度80%,特異度90%の検査を
疾患あり

疾患なし

計

検査陽性

4000

500

4500

検査陰性

1000

4500

5500

計

5000

5000

10000

陽性的中率は?

4000/4500 = 0.89

陰性的中率は?

4500/5500 = 0.82

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
検査の特性について考えてみましょう






5つの表を埋めて,陽性的中率,陰性
的中率を求める
5つの表の計算から,検査特性と有病
割合について言えることは?
グループ毎に話し合ってみましょう

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
②有病割合50%の10000人の集団に
感度50%,特異度90%の検査を
疾患あり

疾患なし

計

検査陽性

2500

500

3000

検査陰性

2500

4500

7000

計

5000

5000

10000

陽性的中率は?

2500/3000 = 0.83

陰性的中率は?

4500/7000 = 0.64

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
③有病割合50%の10000人の集団に
感度80%,特異度40%の検査を
疾患あり

疾患なし

計

検査陽性

4000

3000

7000

検査陰性

1000

2000

3000

計

5000

5000

10000

陽性的中率は?

4000/7000 = 0.57

陰性的中率は?

2000/3000 = 0.67

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
④有病割合10%の10000人の集団に
感度80%,特異度90%の検査を
疾患あり

疾患なし

計

検査陽性

800

900

1700

検査陰性

200

8100

8300

計

1000

9000

10000

陽性的中率は?

800/1700 = 0.47

陰性的中率は?

8100/8300 = 0.98

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
⑤有病割合1%の10000人の集団に
感度80%,特異度90%の検査を
疾患あり

疾患なし

計

検査陽性

80

990

1070

検査陰性

20

8910

8930

計

100

9900

10000

陽性的中率は?

80/1070 = 0.075

陰性的中率は?

8910/8930 = 0.998

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
検査の特性について
考えてみましょう






5つの表を埋めて,陽性的中率,陰性
的中率を求めた
5つの表の計算から,検査特性と有病
割合について言えることは?
隣同士,話し合ってみましょう

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
結果から何が言えるか


有病割合50%の10000人の集団に






Sn 80%,Sp 90%
Sn 50%,Sp 90%
Sn 80%,Sp 40%

→
→
→

PPV 89%,NPV 82%
PPV 83%,NPV 64%
PPV 57%,NPV 67%

感度80%,特異度90%の検査を




有病割合50%の集団に → PPV 89%,NPV 82%
有病割合10%の集団に → PPV 47%,NPV 98%
有病割合1%の集団に
→ PPV 7.5%,NPV 99.8%

→何が言えるか?
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
結果から何が言えるか


有病割合50%の10000人の集団に










Sn 80%,Sp 90%
Sn 50%,Sp 90%
Sn 80%,Sp 40%

→
→
→

PPV 89%,NPV 82%
PPV 83%,NPV 64%
PPV 57%,NPV 67%

感度Snが高い検査で陰性Negativeが出た場合
は,疾患が除外rule outできる(SnNOut)
特異度Spが高い検査で陽性Positiveが出た場
合は,疾患が確定rule inできる(SpPIn)
検査を行う際には,その検査は感度が高いの
か,特異度が高いのかを考えることが重要
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
結果から何が言えるか


感度80%,特異度90%の検査を






有病割合50%の集団に → PPV 89%,NPV 82%
有病割合10%の集団に → PPV 47%,NPV 98%
有病割合1%の集団に
→ PPV 7.5%,NPV 99.8%

同じ特性を持つ検査でも,有病割合の異なる集
団に用いると,結果の意味合いが違う

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
「検査陽性=疾患あり」ではない!




同じ検査(同じ感度・特異度)でも,有病
割合の違う集団に行うと,陽性/陰性的中
率は異なる
検査陽性→疾患あり
検査陰性→正常

ではない

→従って,検査を行う際には
検査の特性
有病割合
の両方を知っておく必要がある
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
シナリオ


67歳の男性,今朝突然胸が痛くなった



考えられる疾患は?

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
鑑別診断が分からない?


鑑別診断が思い浮かばなかったら,VINDICATE-P
と解剖で考える











V:Vascular 血管性
I:Inflammatory 炎症性
N:Neoplasm 腫瘍
D:Degenerative and Deficiency 変性と欠損
I:Intoxication and Idiopathic 中毒と特発性
C:Congenital 先天性
A:Autoimmune and Allergic 自己免疫とアレルギー
T:Trauma 外傷
E:Endocrine 内分泌
P:Psychogenic and Psychiatry 心因性と精神性

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
シナリオ


67歳の男性,今朝突然胸が痛くなった



考えられる疾患は?



それぞれの可能性は何%?

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
シナリオ続き




低酸素血症(PaO2<80mmHg)
がある
考えられる疾患の可能性は?

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
“低酸素血症がある”という情報
が加わって,何が変わったか?


ある鑑別診断は可能性が上がり,ある
鑑別診断は可能性が下がった



このとき,以下の“ベイズの定理”が
成り立つ
事前オッズ × □ = 事後オッズ
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
オッズとは?
「率」と「オッズ」の違い

「率」「ratio」
a:b→a/(a+b)
全体の中でそれが占める割合

「オッズ」 「odds」
a:b→a/b
そうであるものとそうでないものの比
(欧米のギャンブルでよく使われるものの変形)
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
情報が入ることで...
検査前割合
(事前割合)

検査前オッズ
(事前オッズ)

2008/02/17

情報

×□
(ベイズの定理)

検査後割合
(事後割合)

検査後オッズ
(事後オッズ)

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
オッズを計算しよう



中年男性に突然発症した胸痛にお
ける,肺梗塞の事前オッズは?

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
疾患(+) 疾患(-)
計
a
b
a+b
検査(+)
c
d
c+d
検査(-)
a+c
b+d
a+b+c+d
計

□=事後オッズ



事前オッズ×



事前オッズ=(a+c)/(b+d)



事後オッズ=a/b (検査陽性の場合)
=c/d (検査陰性の場合)

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
疾患(+) 疾患(-)
計
a
b
a+b
検査(+)
c
d
c+d
検査(-)
a+c
b+d
a+b+c+d
計

(検査陽性の場合)

□=事後オッズ
(a+c)/(b+d)×□=a/b
□=a/b×(b+d)/(a+c)
事前オッズ×

=a/(a+c)/b/(b+d)
=Sn/(1-Sp) これを陽性尤度比(LR+)と呼ぶ
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
疾患(+) 疾患(-)
計
a
b
a+b
検査(+)
c
d
c+d
検査(-)
a+c
b+d
a+b+c+d
計

(検査陰性の場合)

□=事後オッズ
(a+c)/(b+d)×□=c/d
□=c/d×(b+d)/(a+c)
事前オッズ×

=c/(a+c)/d/(b+d)
=(1-Sn)/Sp これを陰性尤度比(LR-)と呼ぶ
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
尤度比(ゆうどひ)


検査の結果が,事前オッズを事後オッズへ
何倍に変えるか――この「何倍」を「尤度
比」(LR:likelihood ratio)という
事前オッズ × LR = 事後オッズ



LRは有病割合に影響されない,検査に固有
の数値である

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
尤度比(ゆうどひ)の目安






LRが>10 or<0.1
LRが5-10 or 0.1-0.2
LRが2-5 or 0.2-0.5
LRが<2 or>0.5
LRが1

2008/02/17

効果大
効果中
効果小
効果僅か
効果なし

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
感度が高い検査は?
疾患(+) 疾患(-)
検査(+)
検査(-)
計

a
c
0
a+c
a

b
d
b+d

計
a+b
d
c+d
a+b+c+d



Sn=a/(a+c)



感度100%(Sn=1)とは,c=0



Snが大きいほど,検査が陰性(Negative)だった
ときに疾患がrule Outできる(SnNOut)

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
特異度が高い検査は?
疾患(+) 疾患(-)
検査(+)
検査(-)
計

a
c
a+c

b
0
d
b+d
d

計
a
a+b
c+d
a+b+c+d



Sp=d/(b+d)



特異度100%(Sp=1)とは,b=0



Spが大きいほど,検査が陽性(Positive)だったと
き疾患がrule Inできる(SpPIn)

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
再び,感度と特異度とは?


LR+= Sn/(1-Sp)



LR-= (1-Sn)/Sp



Snが大きいほど,LR-が0に近づく




つまり,SnNOut

Spが大きいほど,LR+が∞に近づく


つまり,SpPin

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
実際の臨床では?


LR+= Sn/(1-Sp)



LR-= (1-Sn)/Sp



肺梗塞に対する感度・特異度


低酸素血症の存在

:

→LR+= 1.1 LR-= 0.8


D-dimmer>0.5mg/ml

→LR+= 1.7 LR-= 0.1
2008/02/17

Sn 73%,Sp 33%
事後割合は?
:

Sn 95%,Sp 45%

事後割合は?

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
実際の臨床では?

計算が
事前割合
事後割合
×
めんどくさい!!
直接は計算できない
ベイズの定理
事前オッズ 問診・身体所見・検査事後オッズ
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
Fagan nomogram


オッズを計算せずに
事後割合を求めるこ
とができるツール



低酸素血症




LR+ 1.1,LR- 0.8

D-dimer>0.5mg/ml


LR+ 1.7,LR- 0.1

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
身体所見もいろいろ


心窩部圧痛

: LR+ 0.9,LR- 1.2



McBurney圧痛

: LR+ 3.4,LR- 0.4



CVA knock pain

: LR+ 27.7,LR- 0.9



肺野のcrackles

: LR+ 2.0,LR- 0.8



下肢伸展挙上試験 : LR+ 1.8,LR- 0.2

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
身体所見よりも検査が優れる?


尿管結石に対する所見



CVA knock pain




事前割合50%なら,事後割合は97%,47%

顕微鏡的血尿


: LR+ 27.7,LR- 0.9
: LR+ 1.25,LR- 0.4

事前割合50%なら,事後割合は56%,29%

→尿管結石というならCVAの方が役に立つ
2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
検査の特性


感度が高い検査,特異度が高い検査を
挙げてみよう
特異度が高い 特異度が低い
感度が高い
感度が低い

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
検査の特性
特異度が高い
CT
感度が高い
上部下部内視鏡
インフルエンザキット
感度が低い

2008/02/17

結核菌培養

特異度が低い
CRP
アミラーゼ
バリウム検査
腫瘍マーカー

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
陥りがちな誤り


検査が陽性なら疾患あり



低血圧患者で経皮的酸素飽和度が低下





老人健診で見つかった顕微鏡的血尿
肺炎患者において喀痰培養でMRSAが検出

検査が陰性なら正常


下血の患者の便潜血検査が陰性



体重減少の患者の腫瘍マーカーが基準範囲内



喘息発作患者で胸部聴診所見が正常

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
診断を考えるにあたって


診療においては,有病割合が大切である



問診から得られた情報や身体所見も検査
と同じくらいの威力を持つことがある





迷っているときだからこそ,検査をする
意味がある(自分の予想はアテになる)
問診,身体所見,検査は個々の特性を理
解して過少でも過剰でもなく選び,患者
が納得できる診断を行なう

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
診断に有用な書籍


身体診察の感度・特異度,尤度比が載っ
ている書籍



マクギーの身体診察(10,403円)

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
診断に有用な書籍


検査の感度・特異度,尤度比が載っている書籍



Diagnostic Strategies for Common Medical
Problems(5,607円)



Evidence Based Acute Medicine

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital
診断に有用な書籍


有病割合が載っている書籍



The Patient History: Evidence-Based
Approach



聞く技術―答えは患者の中にある(2,940円×2)

2008/02/17

E. Nango, Dep. of GM, Tokyo-kita Social Insuarance Hospital

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