＜NEURAL GP Networkとは＞ 島根県初・総合診療医育成プロジェクト 地域医療現場と大学を結ぶTeal型組織構造 診療医療の育成は現場においてのみ可能である。 しかし、現場だけでは日本全体の総合診療を成長させるには不十分。 だから、わたしたちは今、 島根県からITを駆使して総合医療のニューラルネットワーク構築を目指します。 NEURAL GP Network WEBサイト: https://shimanegp.com/

1. v
リンパ節腫脹
パート１：鑑別診断へのアプローチ
濱崎 雅文

2. リンパ節腫脹Lymphadenopathy1)
• リンパ節腫脹：リンパ節のサイズ(10mm以上)や硬さの異常
 正常なリンパ節は通常直径10mm以下
 小児は健常時でもリンパ節腫脹を認める
 青年期には晩年に比べて大きくなる傾向がある
 鼠径部のリンパ節では、２cm以下を正常範囲とすることが多い2)
• 鎖骨上・膝窩・腸骨・滑車上のリンパ節触知はそれだけで異常
• 悪性腫瘍、感染など原因は多岐にわたる
1)Heidi L.Gaddey.Unexplained Lymphadenopathy:Evaluation and differential Diagnosis.Am Fam Physician.2016;94(11):896-903
2)Robert L Ferrer, Evaluation of peripheral lymphadenopathy in adults, In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA. (Accessed
on February 28, 2021.)

3. 超緊急疾患・緊急疾患の鑑別
•「リンパ節腫脹」だけが超緊急疾患を示唆することは多くない
•ただ、腹部大動脈瘤や扁桃周囲膿瘍、深頚部膿瘍など、
「皮下に触れるもの」が超緊急疾患を示唆する可能性はある
•このため、「触れるもの」が何かを推定する必要がある
例) 頚部であれば甲状腺や脂肪、顎下腺など

4. A：Anatomy 解剖学的アプローチ①
•腫脹するリンパ節が局所性であった場合、リンパの流れを考える3)
•例）前頚部リンパ節は喉頭、舌、中咽頭、前頚部からの流入があり、前頚
部リンパ節の腫脹はこれらのどこかに原因がある。
•リンパの流れを考えると、原因に近づける可能性がある
Andrew W.Bazemore.Lymphadenopathy and
Malignancy.Am Fam Physician.2002;66:2103-10

5. A：Anatomy 解剖学的アプローチ②
•全身性リンパ節腫脹：2領域以上にまたがる腫脹
•全身性疾患を示唆することが多い。
•良性疾患：伝染性単核球症などのウイルス感染症
•自己免疫性疾患：全身性エリテマトーデス
•悪性疾患：リンパ腫、白血病、癌の転移

6. •リンパ節腫脹の原因は多岐にわたる
•悪性腫瘍、感染症、自己免疫性疾患、医原性など
•鑑別疾患のすべてを暗記する、というのは現実的ではない
B：病態生理的アプローチ
腫脹するリンパ節の分布・性状・随伴症状などの情報から原因を類推していく

7. リンパ節腫脹 鑑別疾患の覚え方：MIAMI1)
MIAMI 分類 疾患名
Malignancies(悪性) カポジ肉腫,白血病,リンパ腫,癌転移
Infections(感染症)
細菌感染性
ブルセラ症,猫ひっかき病,軟性下疳,皮膚感染症(ブドウ球菌/連鎖球菌),
1期/2期梅毒,結核,野兎病,腸チフス
肉芽腫性 コクシジオイデス症,クリプトコッカス症,ヒストプラズマ症,珪肺
ウイルス性 アデノ,サイトメガロ,肝炎,帯状疱疹,HIV,伝染性単核球症,風疹
その他 真菌症,蠕虫,ライム病,リケッチア,ツツガムシ病,トキソプラズマ症
Autoimmune disorders
(自己免疫性疾患)
皮膚筋炎,関節リウマチ,シェーグレン症候群,スティル病,
全身性エリテマトーデス
Miscellaneous/
unusual conditions(その他)
キャッスルマン病,ヒストサイトーシス,川崎病,菊池病,
サルコイドーシス
Iatrogenic causes(医原性) 薬剤,血清病
Heidi L.Gaddey.Unexplained Lymphadenopathy:Evaluation and differential Diagnosis.Am
Fam Physician.2016;94(11):896-903から一部改変