＜NEURAL GP Networkとは＞ 島根県初・総合診療医育成プロジェクト 地域医療現場と大学を結ぶTeal型組織構造 診療医療の育成は現場においてのみ可能である。 しかし、現場だけでは日本全体の総合診療を成長させるには不十分。 だから、わたしたちは今、 島根県からITを駆使して総合医療のニューラルネットワーク構築を目指します。 NEURAL GP Network WEBサイト: https://shimanegp.com/

1. v
リンパ節腫脹
パート2：問診・診断
濱崎 雅文

2. 「リンパ節腫脹」の問診・診察の大前提
• 患者さんの主訴は「腫れているものがある」「しこりがある」で受診する。
「リンパ節が腫れています」とは言わない
• また、言われても、それがリンパ節ではない可能性もある
• 「腫れているもの」「しこり」が何かを推定・同定する
• そのためには、その部位の解剖学的な知識が必要になる。

3. リンパ節腫脹鑑別のフローチャート①
自己免疫性
感染性疑い
良性疑い
身体診察
問診
悪性疑い その他
Heidi L.Gaddey.Unexplained Lymphadenopathy:Evaluation and differential Diagnosis.Am Fam Physician.
2016;94(11):896-903から一部改変

4. 問診で聴取すべき内容
• 年齢：小児は大多数でリンパ節触知。高齢であれば悪性の可能性。
• 腫脹の期間：2週間以内の腫脹や、サイズの増大がないか。
• 接触歴：旅行・渡航歴、動物・昆虫、免疫抑制。
Heidi L.Gaddey.Unexplained Lymphadenopathy:Evaluation and differential Diagnosis.Am Fam
Physician.2016;94(11):896-903
年齢、腫脹の期間、接触歴、随伴症状、分布(局所or全身性)は必ず確認する

5. リンパ節腫脹の問診 red flag sign
• Review of systemsが診断の糸口になる
• 関節痛、筋痛、皮疹→自己免疫性疾患の可能性を示唆
• 発熱、悪寒、疲労、不調→感染性の可能性を示唆
• 発熱や盗汗、体重減少→リンパ腫や結核の可能性を示唆
Heidi L.Gaddey.Unexplained Lymphadenopathy:Evaluation and differential Diagnosis.Am Fam
Physician.2016;94(11):896-903

6. •腫れているものが「どこ」の「何か」を推定する
•リンパ節腫脹であった場合には、サイズ、熱感、圧痛、可動性、硬さを確認する
•圧痛：最近の急性の腫脹で生じる。炎症だけでなく、リンパ節内出血などでも認める。
•可動性：正常リンパ節は可動性良好。炎症や悪性腫瘍では周囲と癒着する。
•硬さ：線維化があれば硬くなる。悪性腫瘍や過去の炎症など。
診察すべき項目
Robert L Ferrer, Evaluation of peripheral lymphadenopathy in adults, In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate,
Waltham, MA. (Accessed on February 28, 2021.)

7. Heidi L.Gaddey.Unexplained Lymphadenopathy:Evaluation and differential Diagnosis.Am Fam Physician.
悪性を示唆する経過・所見
• 年齢：40歳以上
• 鎖骨上リンパ節腫脹
• 4-8週間以上の持続期間
• 全身性リンパ節腫脹（2領域以上）
• 男性
• 8-12週間経っても元のサイズに戻らない
• 全身症状：発熱、盗汗、体重減少、肝脾腫

8. リンパ節腫脹をきたす代表的な薬剤1)
アロプリノール＊ フェニトイン＊ アテノロール プリミドン カプトプリル
ピリメタミン カルバマゼピン＊ キニジン 金製剤 S/T合剤
ヒドララジン スリンダク ペニシリン系 ペニシリン系
＊：重篤な薬剤アレルギー反応である
DIHS(drug-induced hypersensitivity syndrome）を起こす頻度の高い薬剤 2)
DIHS：発熱や肝障害といった臓器障害を呈する重症の薬疹、リンパ節腫脹も認めうる
1)Heidi L.Gaddey.Unexplained Lymphadenopathy:Evaluation and differential Diagnosis.Am Fam
Physician.2016;94(11):896-903
2)Tetuso Shinohara.Drug-induced hypersensitivity syndrome(DiHS)/drug reaction with eosinophilia and systemic
symptoms(DRESS):An update in 2019.Allergology international .2019;68:301-308

9. リンパ節生検①
• リンパ節生検：病理組織像を確認することで診断に近づくことができる。
ただ、侵襲的な処置であり、出血・感染などの合併症がある
• Zscore：リンパ節腫脹を呈する患者さんが、リンパ節生検を必要とするかどうかを
推定するスコア
Theodoros P.Vassilakopoulos.Application of a Prediction Rule to Select which Patients Presenting with
Lymphadenopathy Should Undergo a Lymph Node Biopsy.Medicine.2000;79:338-47

10. リンパ節生検②
Zscore=
5a-5b+4c+4d+3e+2f-6
項目 点数
a:年齢
≦40歳 0
＞40歳 1
b:圧痛
あり 0
なし 1
c:サイズ
<1.0cm2 0
1.0-3.99cm2 1
4.0-8.99cm2 2
>9.0cm2 3
d：掻痒感
なし 0
あり 1
e:鎖骨上リンパ節腫脹
なし 0
あり 1
f:弾性
軟 0
硬 1
Y.Tokuda.Assessing the Validity of a Model to Identify Patients for Lymph Node Biopsy.Medicine.2003;82:414-418