More Related Content Similar to 0329薬学会シンポジウムs20赤川スライド (20) 0329薬学会シンポジウムs20赤川スライド23. 咳の原因となる主な疾患~乾性咳漱
感染 ( 上気道~肺 ) 塵肺 胸膜炎
咽頭炎 過敏性肺臓炎 自然気胸
マイコプラズマ肺炎 肺好酸球増多症候群 刺激性気体の吸入
閉塞性肺疾患 腫瘍 喫煙
肺気腫 肺がん 各種ガス
拘束性肺疾患など 良性腫瘍 薬物
肺線維症 胸膜中皮腫 ACE 阻害薬
間質性肺炎 胸膜疾患 精神神経性
不安神経症
27. 登録販売者との連携事
例
• 小児用バファリン CⅡ( 主成分:アセトアミノフェン )
を
3 箱購入しようとレジに持ってきた高齢男性
• 医薬品担当者への講義にて、バファリンシリーズの成
分の差、医療用アスピリンの用途について説明してい
たことから、状況に違和感を感じ質問
• 「自分が飲む、脳梗塞のあとにバファリン飲まされて
いたけど、病院に行くのが面倒だから」との回答で
あったため、すぐさま薬剤師へリレーション、成分が
異なる旨を説明し再発予防の必要性を説明し受診勧奨
28. 薬剤師に求められる能力
WHO [THE SEVEN-STARS PHARMACIST]
◆Care giver (ケア提供者)
薬剤師はケア(医療・介護)サービスの提供者である。薬剤師は、医療システムの下、他の医療者と共に、
薬剤師の実務を統合された持続的なものとしてとらえなければならない。サービスは最高の質でなければな
らない。
◆Life-long-learner (生涯学習者)
薬剤師を一生の職として続ける為に必要な知識と経験を、学生のうちに全て習得することは不可能である。
生涯学習のコンセプト、理念、義務は学生時代に始り、薬剤師としての生涯ずっと支援され続けなければな
らない。薬剤師は知識とスキルを最新の状態にする方法を学ぶべきである。
◆Teacher (教育者)
薬剤師は次世代を担う人材の育成や教育そして一般の人々に対する教育を支援する責任がある。教育者とな
ることにより、知識を他者に伝えるだけではなく、現場の薬剤師が新しい知識を獲得し、従来の技能を進展
させる機会ともなる。
◆Researcher (研究者)
薬剤師は、医療チームにおいて、医薬品の合理的使用を提案するために、エビデンス(科学的根拠、薬学臨
床的根拠、医療システム)に基づく情報を効果的に活用しなければならない。また、経験を共有し、記録す
ることにより、薬剤師は、患者ケアの最適化という目的と成果というエビデンスの基礎となるものに対して
貢献することができる。
研究者として、薬剤師は、一般の人々や他の医療者に対し、公平な健康及び医薬品に関連する情報へのアク
セスしやすさを増進することができる。
29. WHO [THE SEVEN-STARS PHARMACIST]
◆Decision-maker( 決断者 )
適切で、有効で、安全で、費用効果の高い、資源・財源(例:人材、薬物、化学製品、機材、手順、実務)の
活用は、薬剤師の業務の基盤とすべきである。
市区町村・都道府県・国家レベルにおいて、薬剤師は、医薬品の政策制定者としての役割がある。
この目的を達成するためには、テータや情報を統合して評価し、最も適切な方策を決定する能力が必要である
。
◆Communicator (コミュニケーター、伝達者)
薬剤師は、処方医と患者をつなぎ、また一般の人々に対し、健康や医薬品に関する情報を伝えるもっともふさ
わしい立場にいる。
薬剤師は、一般の人々や他の医療者と関わる際に、豊富な知識と自身を持っていなければならない。コミュニ
ケーションとは、言語、非言語、傾聴そして読み書き能力を含む。
◆Manager (管理者・経営者)
薬剤師は、資源(人材、物理的及び金銭的)や情報を効果的に活用しなければならない。また、薬剤師は雇用
者や医療チームのマネージャーやリーダーから活用されやすくなければならない。拡大する情報と発展し続け
る技術により、薬剤師は医薬品や関連製品の情報を共有すること及びその品質を保証することに対して、より
重大な責任を負うという挑戦を与えられています。
◆Leader (リーダー)
(チーム医療などの)複数の専門家による医療(ケア)において、または他の医療者が不足している地域や他
の医療者がいない地域において、薬剤師は患者及び地域社会の総合的な福利厚生でリーダーとしての立場を担
う義務がある。リーダーシップとは、決定を下す為の能力とビジョンやコミュニケーション能力そして効率的
な運営能力と同様に、共感と思いやりを持つことである。薬剤師のリーダーシップの役割は統率能力とビジョ
薬剤師に求められる能力
Editor's Notes マイナス300万、これが何の数字かすぐにお分かりになる方は少ないのではないでしょうか。
これは1か月に1200枚の処方箋を受付ける薬局(単価7000円後発40%⇒新基準56%でDOWN、基準2⇒1でDOWN、手帳持参率7割で計算)、ごく一般的な、薬剤師が2名体制で内科をメインに受け付けているような薬局において、報酬改定によって年間に減少する利益額です。
(患者数が減りも増えもせず、現状維持の場合)
今回の診療報酬改定では、薬局に求められる機能と、本来在るべき姿の方向性が明確に示されたといっても過言ではありません。
しかしながら、今後、我々薬局薬剤師がどのように行動するか、薬剤師になろうとする方々がどのような教育を受けるべきかを考える良いきっかけであると考えます。
それでは少しずつ本題に入って参りますが、
まずは第二次健康日本21、そして日本再興戦略の中にも明記された、健康情報拠点としての役割とその際に必要となる薬剤師の職能について。
厚労省は、予防・健康管理の推進と題して、【地域に密着した総合的な健康情報拠点】として、薬局薬剤師を活用することとしています。
ただ、私はこの推進に関して2つの課題があると考えています。
1つめは、現状では「医師を受診する時にしか訪れない、時には2ヶ月に1度しか訪れない薬局・薬剤師」が地域密着と言えるのでしょうか?
2つめは、1つめを含めて「こうあるべき、何をなすべきか=What to do?」という理想論は理解できるのですが、「どうやって効果的に実現するか=How to do?」という実践論としてのインパクトが弱いのではないか?ということです。
私は、地域密着=身近さとは次のようなことだと考えます。
1つめは「距離」・・・それは単に家から近いという物理的なことであり、また「この薬剤師は話しやすいな」というような精神的なことでもあり、またその薬局が社会にどのように貢献しているのか?という俯瞰的に感じる倫理的距離ではないか?ということ。
2つめは「自分のことをどれくらいのレベルで知っているか」ということ。実はこれがとても大事で、例えば「赤川さん=バイアスピリンを飲んでいる患者さん」とみることと、「赤川さん=5年前に脳梗塞になりバイアスピリンを服薬しているが、その後遺症で日常の生活にも不便が生じ、介護サービスを利用している。でもいつもヘルパーさんにお願いしてはドラッグストアでシュークリームなどを買ってきてもらって食べているため、血糖値も脂質も上昇しがち。買い物に来たヘルパーからは「赤川さん、スイーツを買ってこないと怒るし、いつものことだから・・・。でも最近よくむせるようになったかも?」という情報をもらっている・・・というのとでは大きく違います。
つまり、1つめの距離が近いというメリットを最大限に活用して、患者のみならず患者の生活者としての側面を知る人との接点を持ち、専門職として情報を整理し、判断すること、これこそが国・国民が求めていることではないでしょうか。
我々は、このように地域に密着したかかりつけネットワークを構築するための店舗網を整備し、薬歴を共有し、ドラッグストアと調剤の併設したスタイルを確立することで、患者の生活者としての側面までおもフォローする体制を整えております。
そしてこの体制を活かして2つのイベントを実施しています。
1つは店舗内のミニセミナー、もう1つは北九州市との共催によって実現した2000人クラスの大規模イベントですが、こちらについては各種学会にて紹介しておりますので今回は割愛させて頂きます。
店舗でのイベント、すなわちヘルスケアステーションとしての役割を果たすために、このように9つのエリアで毎月イベントを実施して、地域住民への啓発活動を行っています。
ここまでは、国が示した方針にそった状態で「What to do?」に対する行動は出来ているという状態です。
では、地域住民の健康寿命を延ばすためには、この機会をどのように活用すべきでしょうか?
その切り口として、私が考えますのは今回のシンポジウムテーマでもある「即断出来る臨床能力とは何か?」です。
それは、先ほどお伝えしたような、「患者や地域住民ひとりひとりに対して、我々がどのレベルで知っているか?」という要素が重要で、それをどうやって活用するかが大事。
なぜなら患者は、地域の中においてはひとりの生活者であり、医療情報のみならず生活の上での嗜好を知った上で、身体から得られる客観的情報を得ることでより的確な判断と情報提供が可能となると考えるからです。そう、ヘルスアセスメントは薬剤師に求められる重要な臨床能力なのです。
そして、せっかく得た地域住民との接点も、単に疾患についてのお話しをする、訪れた方の認識・感情だけに依存した相談では目標は達成されません。
“ヘルスアセスメント”の実践あってこそ、行動変容を促せるのではないでしょうか?
我々は、2010年より広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 臨床薬物治療学研究室との共同研究として、患者や地域住民の自己穿刺による血液採取と検査値測定を通して様々な活動を行って参りました。
その1つが、2年間に162回にわたって実施した店舗内でのイベント内での生化学検査となります。
測定項目は主にメタボリックシンドローム関連の数値として、ドラッグストア店頭にて健康な人、健康だと思っている人、また既に何らかの治療を受けている人への測定を実施。
スクリーニングや治療継続の重要性を再認識するためのきっかけづくりを行って参りました。
また、イベントを実施している店舗では、管理栄養士も常駐しているため連携によって予防行動を促すこともしばしばです。
自己採血と、それによって得られるデータを基にOTC商品を紹介する、受診勧奨をおこなうことが医師法に定められる「医業」に該当しないことが確認されました。
これによって、全国的にこのような活動が広がっていくのではないかと予想しております。
ただ、「数値を得る」ことに終始してもヘルスアセスメントは実現されませんから、医療情報・生活情報と組み合わせて総合的にその方の状態をアセスメントすることによって適切なフィードバックを行う。それは、時にはより詳細な服薬管理であり、受診勧奨であり、また多職種との協働によって、現在健康な方へ予防の視点で介入することによって行動変容を起こすことが求められます。
ヘルスアセスメントは何も生活習慣病予防に限ったことだけではないのですが、我々が取り組んできた「データを得る」ということに加え、
「データで読み取れないもの」についても考える必要があります。
それはすなわち「訴え」です。
「この訴え」はあくまで主観的な情報ですが、それを我々薬剤師がどのように質問するか?そしてその返答に対して推測を巡らし、
「この方に対していま何をすべきか」という自信の行動を即断しなければなりません。
我々は、薬剤師が店頭で求められる能力としては以下の3つが挙げられるのではないかと考えています。
1つめは「顧客の状況を理解する能力」(・・・説明)
2つめは「状況に応じ適切な医薬品を選定する(またはアドバイスや受診勧奨を行う)能力」(・・・説明)
3つめは「薬の知識を分かりやすく伝える能力」(・・・説明)
です。
また、「薬剤師が対応できず受診しなければならない理由を説明し、納得してもらえる能力」というのも必要になるでしょう。
薬局薬剤師にも症候学的スキルが必要だとして過去6年にわたり、広島大学の森川教授によるセミナーを実施しました。
これにより、先ず主訴から疾患をイメージするトレーニング、そして実際に医師が処方決定するまでの思考プロセスを学ぶためです。
そしてこの知識を、薬局においてはOTC販売や相談応需に活かすためにどうするか?実践論として考えたときに新たに生まれたものがあります。
それは、薬剤師が学ぶべきセルフメディケーションの知識や医師の思考プロセスを、現場薬剤師が集積してきた商品知識と経験に融合させることです。
当社では、プライマリケアマニュアルの考え方を軸に、シンポジウムのオーガナイザーである大井教授の著書であるセルフメディケーション参考書籍および、内科診断学をベースとして社内資料を作成しました。
この中では、顧客の訴えに対して考えるべきことを系統だてて、受診勧奨すべき状態について共通認識をもつ。
また、商品知識とそのウンチクなども交えながら、現場での対応方法という実践まで落とし込んでおります。
残念ながら弊社でも全ての薬剤師がこのスキルを活用しているとは言い難い状況ですが、
このスキルを生かした事例も報告されております。1つは慢性咳嗽に対しての受診勧奨(・・・説明)→フォローは出来ていない
残念ながら弊社でも全ての薬剤師がこのスキルを活用しているとは言い難い状況ですが、
このスキルを生かした事例も報告されております。1つは慢性咳嗽に対しての受診勧奨(・・・説明)→フォローは出来ていない
2つ目の事例は、特にこの症候学的スキルが活かされる部分でもある皮膚疾患について、
小児の虫刺されを訴えて来局した母親への聞き取り、および症状の確認によってウイルス性の発疹を早期に受診勧奨できた事例です。
また、現在OTC販売に関わる職種は薬剤師だけではありませんから、
この症候学的スキルをOTC適正使用の観点より登録販売者に対しても、薬剤師から教育を行う取り組みを2013年度より始めております。
この講義の中では、販売可否はもちろんのこと、薬剤師にリレーションするタイミング、OTC適応となった場合に養生法であったり、
感染症であればマスクなど周辺商材の必要性をきちんと説明することで、感染拡大を防ぐことも登録販売者が意識できるようにしております。
この取り組みを開始した大きな目的は、やはり安全性の向上です。
高齢化に伴い医療用医薬品を併用している顧客が増える中、より正しい判断を行うためには登録販売者で完結すべきでないケースを適切に薬剤師へ相談することが求められるからです。
1つだけ連携事例を。
とても単純な例ですが、OTCの小児用バファリンの成分を低用量アスピリンと勘違いして大量に購入しようとした男性に対して、登録販売者が状況の異常に気付き薬剤師に対応を依頼したケースです。
このようなことが起きてしまうのが、OTCの現場なのです。
これから薬剤師は、第一類の販売にしか責任を持たなくて良いのですか?違うでしょう。
指定二類、二類・三類の山ほど存在するOTC医薬品を効果的に操るために、自らはより職能を高めながら、他職種を教育するという責務を負っているのだと、私は考えています。
WHOが策定した7つ星薬剤師の中にも、我々は学ぶだけでなく教育することが必要だと明記されています。
そして、決断し、伝達し、マネジメントするリーダーであることが望まれています。
ここで注意すべきは、
「マネジメント=何を言うか」と「リーダーシップ=誰が言うか」は異なる要素であり、双方ともに欠かせないということです。
そのような人材が多く社会に出てくることを望むとともに、我々のような現場薬剤師は彼らが活躍する場を準備しておかなければなりません。
結論として、その為に必要な教育は、
①顧客を複数の側面から観察し、総合的な情報を仕入れ、把握する能力②必ずしも完全でない主観的・客観的データをもとに、顧客の状態を推測し 「今すべきことは何か?」を即断出来る能力
だと考えます。
そして、これらを実践できる薬剤師を輩出するための薬学教育をここに居られる薬学教育関係者の皆さまにお願いしたい。
そして薬学生に限らず、すでに現場で相談を受け、判断に悩むことが少なくない私のような薬剤師に対しても、
症状の感度や特異度からどのような疾患が、どの程度の頻度で存在するのかを学ぶ場を提供頂けることを願っております。
それが薬局・薬剤師が本当に必要とされる存在となり、地域の医療介護と予防に効果を発揮する第1歩となるはずです。