Neurodegeneration and circulation
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第61回脳循環代謝学会「神経変性と脳循環障害」のスライドです．
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- 2. 日本脳循環代謝学会 利益相反開示 筆頭発表者名：下畑 享良 演題発表に関連し、 開示すべき利益相反関係にある企業などとして、 顧 問：ShimoJani LLC 講演料：なし 受託研究・共同研究費：第一三共株式会社，小野薬品工業 奨学寄附金： なし
- 5. 実際に脳虚血にてAD脳は変化するのか？ タウ（4R および 3R） ① リン酸化 ② 限定分解（Asp421） ③ 神経細胞核周囲への沈着 Fujii et al. J Cereb Blood Flow Metab. 2017;37:2441-57. ラット一過性脳虚血モデル 虚血中心/ペナンブラ
- 12. ALSや前頭側頭葉変性症の封入体の構成蛋白 TAR DNA結合蛋白43kDa （TDP43） ALS 前頭側頭葉変性症
- 13. 転 写 mRNA スプライシング Alice S et al. Nat Rev Neurol 2010 を改編して引用 TDP43の生理機能 1. 遺伝子発現調節 Cdk6の発現抑制 hNFLの発現抑制 2. スプライシング調節 CFTR exon9 抑制 SMN2 促進 3. mRNAの安定化 →核内における生理機能
- 14. 細胞質 への移行 限定分解 （断片化） Ub 化 不溶化 封入体 異常リン酸化 Alice S et al. Nat Rev Neurol 2010 を改編して引用 ALS患者組織にみられる TDP43 の変化 1. 細胞質への移行 核内発現低下 2. 限定分解 C末端断片生成 3. ユビキチン化 4. 不溶化・封入体 5. 異常リン酸化 pS403/404 pS409/410
- 15. 仮説① • TDP43は脳虚血により限定分解され，その 結果，核から細胞質に移行し，機能を失う． • ALSは脳虚血により増悪し，かつTDP43は 虚血性神経細胞障害にも関与するという 仮説を立てた．
- 16. TDP43にはCaspase 認識部位がある Alice S et al. Nat Rev Neurol 2010 を改編して引用 • 414アミノ酸，43 kDa • 核移行シグナル（NLS） Caspase 認識部位 C末端25 kDa断片
- 17. 中大脳動脈虚血・再灌流モデル 90分虚血，再灌流． 24時間後，試料を採取 Ⅰ. 虚血性ペナンブラ Ⅱ．虚血中心Ⅱ Ⅰ 永久閉塞90分再灌流 TTC染色 (Memezawa et al. 1992, Katsura et al. 2008)
- 18. TDP43 は限定分解される 43 kDa （全長型） 25 kDa （C末端） Blot; TDP-43 C末端を認識する抗体
- 19. 限定分解は Caspase 3 によりなされる 43 kDa （全長型） 25 kDa （C末端） Vehicle: 1%DMSO in PBS DQMD: Z-DQMD-FMK 1.5 mg 再潅流後，Caspase 3 阻害剤を脳室投与し，24時間後 Western blot
- 20. 25 kDa C末端断片は細胞質に移行する 43 kDa （全長型） 25 kDa （C末端） 細胞質 分画 核 分画 Blot; TDP-43 C末端を認識する抗体
- 22. Sham Core Penumbra TDP-43 MAP2 DAPI 封入体なし 顆粒状 80.3±6.0% 18.1±2.5% (P=0.004) 免疫染色でもTDP43の細胞質移行が確認された
- 26. 細胞質 への移動 限定分解（核移行 シグナル喪失） Ub 化 不溶化 異常リン酸化 Alice S et al. Nat Rev Neurol 2010 を改編して引用 結果のまとめと予測される変化 1. TDP-43の核内に おける減少 2. 核における生理機能 の喪失 （Loss of function） 3. 神経細胞の遺伝子 発現調節やmRNAの 安定化の障害 →TDP43も脳虚血による 神経細胞障害に関与す る可能性がある 核内減少 機能喪失 虚血・再灌流
- 27. 小括２ Kanazawa et al. J Neurochem. 2011;116:957-65. • TDP43は脳虚血により限定分解され，かつ 核内で減少し，機能の喪失をきたす． • ALSも脳虚血により増悪する可能性，虚血性 神経細胞障害にTDP43が関与する可能性が 示唆された．
- 28. 脳虚血はALSの危険因子であることが報告された J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2016;87:244-6.
- 30. • 発現；全身（骨髄，免疫細胞，上皮細胞，脳） • 作用；細胞増殖，発生，炎症抑制，創傷治癒 • 神経系；炎症抑制＋神経突起伸長・軸索分岐 • 遺伝子異常； – 前頭側頭型認知症（ヘテロ接合体） – セロイドリポフスチン症（ホモ接合体） 成長因子プログラニュリン（PGRN）
- 32. 仮説 ② • TDP43の caspase 3による限定分解を抑制すると 報告されているPGRNが，脳虚血でも神経細胞 保護的に作用する．
- 33. PGRNは神経細胞保護薬になるのではないか？ TDP43 虚血性 神経細胞 障害Caspase 3 限定分解 核の機能喪失 PGRN Zhang YJ et al. J Neurosci 2007 In vitro の系 機序不明 虚血・再灌流
- 38. 虚血中心内の辺縁 再灌流後 24 ｈ sham 虚血中心内の辺縁 再灌流後 72 ｈ PGRN陽性ミクログリアが増加する
- 39. 仮説 ②の修正 • 脳虚血後に3系統の細胞で発現が増加する蛋白は 珍しい． → PGRN は３系統の細胞で保護的な効果（神経細胞 保護，血管保護，抗炎症）を持つという仮説を立てた
- 42. 0 5 10 15 20 25 30 35 40 WT KO WT KO sham 24h虚血24h TDP43の細胞質への移行を示した神経細胞の頻度 N=21 *** % PGRN KOマウスの虚血ではTDP43は核外移行する
- 45. PGRNは脳浮腫を抑制するPGRN KOマウスでは VEGF 発現が亢進
- 46. PGRN投与は VEGF 発現を抑制する P < 0.05 ラット血栓塞栓モデル 虚血後4ｈでtPA投与 24h後，大脳皮質を採取
- 47. ★PGRNは血管保護作用を持つ
- 48. 初代培養ミクログリア 低酸素・低グルコース（OGD） サイトカイン TNFa，TGFb，IL-10 mRNA PGRN KO マウス PGRNのミクログリアへの影響
- 49. 抗炎症性サイトカイン IL-10 IL-10 β-actin ― + ― + W T PGRN KO OGD Relativeintensities 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 OGD － + － + WT PGRN KO * ** PGRN KOマウスでは IL-10 発現が低下
- 51. 血管保護＋脳梗塞サイズ縮小に成功 tPA投与血栓塞栓モデルにおけるPGRNの効果 梗塞サイズ縮小脳浮腫サイズ縮小 脳出血著明減少 Kanazawa et al. Brain 2015;138:1932-48.
- 52. • 産学連携による共同研究により，臨床応用を 目指している． • 低酸素・低糖刺激が初代培養ミクログリアから PGRN分泌を促進することを見出した．新たな 細胞療法の確立を目指している PGRNの脳梗塞治療への応用 Kanazawa et al. Sci Rep 2017
- 53. 考 察 • 今後，脳虚血が種々の神経変性疾患の増悪因子・ 危険因子となっているかの検討が必要（小血管病の ような軽度の脳虚血の影響は今後の課題）． • Loss of functionにより神経変性疾患を引き起こす 原因物質は脳卒中の治療薬になる可能性がある． • 脳虚血領域での治療薬開発の失敗の経験を，変性 疾患を含む他の神経疾患に活かす必要がある．
- 54. 1. 神経変性と脳虚血にはクロストークが存在する， 2. 神経変性疾患の原因分子は虚血性神経細胞死に 関連しうる．また脳保護薬候補にもなりうる． 3. 神経変性，脳循環障害，両者を学ぶことは，新しい ブレークスルーにつながる可能性がある． 総 括