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TOEIC対策授業における
ポートフォリオ学習の試み
 学習記録用紙・オンライン出席カード・学期末レポート



       神谷 健一(大阪工業大学)




                             1
概要
 2009年度以降に担当したTOEIC対策クラスでの実践事
 例

 学習記録用紙・オンライン出席カードをほぼ毎週利用
 自律的な学習者の養成が目標。各自に適した学習方法
 の報告や苦手とする問題の解法をまとめさせる。

 TOEIC対策授業における「学期末レポート」の試み
 TOEIC対策授業におけるポートフォリオ学習のあり方



                                 2
実践授業の背景
 「キャリア・イングリッシュⅠa」「キャリア・イング
 リッシュⅠb」

 工学部12学科(2011年現在)2年次配当の共通科目
 クラスサイズ:30〜50名
 前期・後期それぞれ独立科目だがほぼ全員が通年履修
 2009年度は独自シラバス、2010年度以降は複数教員で
 の共通シラバス(授業設計は各教員に委ねる)

 情報演習室を利用

                                 3
実践授業の背景
 中間・期末試験なし
 成績評価:平常点4割、小テスト6割
 平常点として「学習記録用紙」や「オンライン出席
 カード」を観点別採点指標に基づいてルーブリック評
 価

 2010年度後期のみ「学期末レポート」を課し、ルーブ
 リック評価で点数化。(平常点40%、小テスト45%、学
 期末レポート15%)



                               4
学習記録用紙
 予習・復習ではなく一定量の問題練習を宿題とする
 学習前の意気込みや学習内容の事後報告
 様式
    出席カードの裏面に記載/独自形式の出席カード
    紙ベースのアンケート形式
    Googleドキュメントを利用したオンラインフォーム
    宿題プリントの余白欄 etc.

 様式・質問項目は毎週いろいろ


                                  5
学習記録用紙
 開講1回目の授業で実施
  この授業の進め方について理解できましたか。
   (はい いいえ)
  TOEICミニテストの復習をしてきますか?
   (はい いいえ)
  少なくとも90分以上かけて、宿題をやってきますか?
   (はい いいえ)
  この1年間、TOEICのスコアアップに向けて努力します
   か?
   (はい いいえ)

 当日回収し「はい」の個数をそのまま点数化
 (「いいえ」と回答しにくいことを敢えて意図)

                                 6
学習記録用紙
 1回目の授業終了時に配布した宿題の欄外に翌週記述
 1. 学習量について:この1週間で、TOEIC対策の勉強は
  ( )時間( )分程度行った。
 2. 学習方法について:主に(パソコン室・図書館・学内・
  自宅)で、(一人で・友人と)学習した。
 3. これから特に力を入れて学習したいことは?(自由記
  述)




                                 7
学習記録用紙
 自由度の高い課題 + 学習者自身による学習設計
  [教科書ページ範囲]のうち、優先的に覚えたい単語・表現
   を20個選び、和訳を添えて以下に記入しなさい。ただ
   し、「単語熟語集」の[ページ範囲]からの抜き書きでも構
   いません。
  単語熟語集の[ページ範囲]から、優先的に覚えたい単語を
   30個、例文を添えて抜き書きしなさい。記入すべき項目
   は、例文番号・語句・品詞と意味・例文である。(例文
   和訳は記入しなくてもよい。)

 記入枠を用意する場合と用意しない場合
 回収したプリントはルーブリック評価し、数週間分を
 まとめて返却(ポートフォリオ的な利用方法)

                                 8
オンライン出席カード
 Googleドキュメントのフォーム機能を利用
 学内サーバー環境等を利用せず、使い捨てのアンケートフォーム
 を簡単に作成可能
 タイムスタンプつきで一覧表形式で集計される
 個人情報を隠し、中間モニタを使って結果を提示
 Excel形式で出力できるので個人票の作成がしやすい
 自由記述は手書きで提出させるよりも記入する文字数が多い?
 (デメリット)携帯電話からのアクセスが制限されるため、
 普通教室では利用しにくい。
 質問カードとしての利用

                                  9
オンライン出席カード
 利用した質問項目の例(1)
  「(TOEICのリスニングとリーディングの)どちらを優先して学
   習したいですか?」「TOEICで苦手なパートを3つ選ぶとした
   ら?」「何から学習すれば最も効率が良いと思いますか?」
   「これから具体的にどういう学習を行いますか?なるべく詳し
   く書くこと」「1週間に授業以外でどの程度、英語を学習しま
   すか?」「この1年間、TOEICのスコアアップに向けて努力し
   ますか?」「指示された宿題はきちんとやってきますか?」
  「リスニングミニテスト正解数」「リーディングミニテスト正
   解数」「夏休みにどのような英語学習を行ったか、自由に記入
   して下さい。」「後期の英語学習に関する目標を、自由に記入
   して下さい。」「この授業に関する要望があれば、自由に記入
   して下さい。」
  「練習問題正解数(自己申告)」「配布した課題をどの程度学
   習しましたか?」「難易度はどうでしたか?」「その他、感想
   等を自由に記入して下さい。」


                                 10
オンライン出席カード
 利用した質問項目の例(2)
  「再生スピードを落として英語音声を聞く練習について
   の感想」「Part 3 の問題を解くために、今、どういう力
   が足りていないと考えているか」
  「Part 4 の問題を解くために、今、どういう力が足りて
   いないと考えているか。」「Part 3 / 4 対策として、自分
   にあった練習メニューを考えてください。」
  「今後、どのようにリスニング学習を行っていきます
  か?なるべく具体的な練習メニューを考えてくださ
  い。」「今後、どのようにリーディング学習を行ってい
  きますか?なるべく具体的な練習メニューを考えてくだ
  さい。」

                                  11
オンライン出席カード
 Googleドキュメントのフォーム機能を利用
 学内サーバー環境等を利用せず、使い捨てのアンケートフォーム
 を簡単に作成可能
 タイムスタンプつきで一覧表形式で集計される
 個人情報を隠し、中間モニタを使って結果を提示
 Excel形式で出力できるので個人票の作成がしやすい
 自由記述は手書きで提出させるよりも記入する文字数が多い?
 (デメリット)携帯電話からのアクセスが制限されるため、
 普通教室では利用しにくい。
 質問カードとしての利用

                                 12
学習記録用紙、ふたたび
 TOEICパート5~7の学習記録はオンラインのフォーム
 では困難(?)
 内省のほか、各自学習する単語や関連事項等を、下線
 や複数の色を使い分けるなど自由な形式でまとめさせ
 ることはオンラインでは困難。
 さまざまな使い方
  一定の範囲を宿題として学習させる
  問題解説の後で各自が深めて学習したい箇所を報告させ
   る
  次のステップへ進むための目標設定など
  採点/返却後のプリントを利用したグループ学習

                                13
学習記録用紙、ふたたび
 具体的な質問項目(1)
  前回配布のプリントから任意の3問を選び、その問題を二度と
   間違えないために必要と考える知識(単語・熟語・文法・和訳
   など)、あるいは一つの選択肢が確実に正解であるという合理
   的な根拠について、各自の方法でまとめなさい。(他人に説明
   するような書き方が望ましい。)
  [教科書ページ範囲] の中からいずれか2題(計8問)を選び、そ
   れぞれのページを全問正解するために覚えるべき表現や文法的
   な考え方を自由にまとめなさい。
  Part 6 を解くために不十分だと思うスキルについて自由に述べ
   なさい。
  本日提出した宿題で取り上げた2題(計8問)は自分がまとめた
   ものだけで完璧に理解でき、次に同じ問題をやった際にはもう
   間違うことはない。(はい ちょっと自信なし いいえ)


                                  14
学習記録用紙、ふたたび
 具体的な質問項目(2)
   [教科書ページ範囲]の中からいずれか2題(計8問)を選び、それぞ
   れのページを全問正解するために覚えるべき表現や文法的な考え
   方、またはなぜこの選択肢が正解になるかという視点からの合理
   的な理由を自由にまとめなさい。記入する分量は不問、問題ごと
   の枠も設けない。ページ数・問題番号を明記し、必要に応じて裏
   面にも記入すること。
  教科書のPart 7形式の問題で本日取り組んだ問題について、以下の
   いずれかの観点で自由にまとめなさい。/ 1. 分からなかった単語・
   熟語・例文等の意味(例文集からの書き写しでも構いませんが、
   可能な限り英文全体を書き写した上で必要な箇所に注釈をつける
   形とすること。)/ 2. 各自が「解答に迷った」「わからなかった」
   ために辞書や配布した和訳で調べたこと / 3. 各設問の4つの選択
   肢から1つの選択肢に絞り込むことが出来る合理的な理由 / 記入
   する分量は不問です。ページ数、問題番号を明記し、必要に応じ
   て裏面にも記入すること。「後でこの用紙を見ることで効率的な
   復習ができるという」内容・形式が理想的です。


                                   15
学習記録用紙、ふたたび
 具体的な質問項目(3)
  本日返却した2枚の学習記録用紙を隣近所の人と交換し、
  その中からクイズを出し合いましょう。書かれている範
  囲のことならどんなことを出題しても結構です。成果を
  相手に評価してもらい、以下のA~Cのいずれかに○をつ
  けて下さい。A このまま同じような勉強を続けたらス
  コアアップすると思うよ。多分。/ B もうちょっと勉強
  が必要じゃないか? / C ヤバい。ヤバすぎる。(否定
  的な意味の方。念のため。)




                            16
考察
 相変わらず一定割合いる4択問題の答えを丸暗記して小
 テストに臨む学生にどのように学習させるか?
 教室内学力格差/学習意欲格差への対応は?
 学習内容を学生に委ねることの利点は?
 アンケート項目は手を変え品を変えて行うことが重
 要?
 オンラインの方が書きやすい?
 数回分の記述をまとめて返却することで、各自が記入
 した内容をポートフォリオ(作品)としてまとめて観
 察できる機会にもなる?
                            17
学期末レポート
 指示内容
  TOEIC対策はこの授業の受講だけで全てが行えるものでは決してありませ
   ん。皆さん一人一人がこの授業の受講終了後も、自律的な学習を進めなが
   ら少しずつステップアップしていく必要があります。その土台作りとして
   学期末試験に代わるレポートを課題とします。
  教科書p.184~p.209のうち任意の10問(小問1つを1問と数えます。Part 6
   は大問1つで4問、Part 7は大問1つで4~5問と数え、Part 5~7のいずれか
   の形式で計10問)を選び、教科書のページ番号や問題番号をきちんと明記
   した上で、それぞれが正解・不正解になる理由を解説してください。ま
   た、意味が分からない単語を調べる作業や、必要箇所を和訳するなど、各
   自に必要な学習を行うこと。
  教科書をコピーしたものをレポート用紙に貼り付け、そこに書き込むなど
   の方法を採っても構いません。教科書内容のPDFファイルをこの授業用サ
   イト上で提供しますので、学内等のプリンタから出力することでコピー費
   用の負担をなくすことが出来ます
  分量はA4サイズで4ページを上限とします。様式は自由。市販のレポート
   用紙等を利用して手書きで作成すること(教科書本文データ以外の内容を
   ワープロで作成することは一切認めません。)



                                            18
学期末レポート
 評価基準
    「不十分」(8点基準)「普通」(10点基準)「良好」(12点基準)の3つに大まかに分ける
    「不十分」のうち、答えとなる部分に印をつけて少し書き加えた程度のものや、レ
     ポートの体裁が整っていないものは7点以下
    「不十分」のうち4つの選択肢の中から2つ程度を調べた形跡があるものを8点
    「不十分」のうち途中まではある程度調べているが後半に手を抜いているものを9点
    「普通」の判断基準は「あとでこの内容を学生本人が見てもあまり復習にならなさ
     そうな調べ方」「解けそうな問題のみ着手している」とし、やや劣っているものを9
     点
    「普通」のうち、4つの選択肢からある程度合理的に解答が絞り込めるがやや不十分
     なものを11点
    「良好」は選んだ10問については全ての選択肢について何らかの書き込み(品詞や
     意味を調べている)とし12点
    「良好」のうち、4つの選択肢の中から正解を一つに絞り込める合理的な判断基準が
     きちんと書かれているものを14点、一部の問題のみこれが書けているものを13点
    選んだすべての問題についての調べ方がTOEIC参考書さながらに書けている場合は
     15点(該当者なし)




                                               19
今後の展望
 (e)ポートフォリオを組み込んだ教授・学習の可能性?
 テストの代替手段としての評価手法の可能性?
 (教育システム情報学会での実況ツイートより)
  学習成果を設定し、それを測定・評価していかないと学習の質的
   転換につながらないのではないか?
  ePortfolioの活用のためには、定期試験のような現在の
   学習の測定方法を見直さないといけないのではないか?

 ルーブリック評価の判断基準の検証と精密化?
 具体的な質問項目やオンラインフォームを教員間で共有?
 普通教室での実践の可能性?
 携帯電話で教室内で回答させる実践事例?


                                20
参考文献
   神谷健一 (2009) 「情報演習室を利用したTOEIC対策授業の実践 –デジタル的手法とアナ
    ログ的手法の融合-」『大阪工業大学紀要 人文社会篇』第54巻第2号. pp.55-69.
    http://www.oit.ac.jp/japanese/toshokan/tosho/kiyou/jinshahen/54-2/04kamiya.pdf

   神谷健一 (2010a) 「Googleドキュメントによるアンケートフォームと短縮URL —簡易
    オンライン出席カード/質問カードの作成-」.e-Learning教育研究 第5巻 pp.31-34.e-
    Learning教育学会.

   神谷健一 (2010b) 「授業で紹介したTOEIC学習法(自律学習の実現に向けて)」(ブロ
    グ記事)
    http://d.hatena.ne.jp/kmyken1/20100323/p1

   土持ゲーリー法一 (2009) 『ラーニング・ポートフォリオ 学習改善の秘訣』. 東京:東信
    堂.

   西岡加名恵 (2003) 『教科と総合に活かす ポートフォリオ評価法 新たな評価基準の創出
    に向けて』. 東京:図書文化社.

   峯石緑 (2010) 「第7章 学習者の自己省察・自律を促すポートフォリオ」『英語教育学
    大系 第6巻 成長する英語学習者 学習者要因と自律学習』大学英語教育学会 監修. 東
    京:大修館書店.



                                                                               21
ご清聴ありがとうございまし
      た

    神谷 健一(大阪工業大学)

      kamiya@ip.oit.ac.jp




                            22

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TOEIC対策授業におけるポートフォリオ学習の試み 学習記録用紙・オンライン出席カード・学期末レポート

  • 2. 概要  2009年度以降に担当したTOEIC対策クラスでの実践事 例  学習記録用紙・オンライン出席カードをほぼ毎週利用  自律的な学習者の養成が目標。各自に適した学習方法 の報告や苦手とする問題の解法をまとめさせる。  TOEIC対策授業における「学期末レポート」の試み  TOEIC対策授業におけるポートフォリオ学習のあり方 2
  • 3. 実践授業の背景  「キャリア・イングリッシュⅠa」「キャリア・イング リッシュⅠb」  工学部12学科(2011年現在)2年次配当の共通科目  クラスサイズ:30〜50名  前期・後期それぞれ独立科目だがほぼ全員が通年履修  2009年度は独自シラバス、2010年度以降は複数教員で の共通シラバス(授業設計は各教員に委ねる)  情報演習室を利用 3
  • 4. 実践授業の背景  中間・期末試験なし  成績評価:平常点4割、小テスト6割  平常点として「学習記録用紙」や「オンライン出席 カード」を観点別採点指標に基づいてルーブリック評 価  2010年度後期のみ「学期末レポート」を課し、ルーブ リック評価で点数化。(平常点40%、小テスト45%、学 期末レポート15%) 4
  • 5. 学習記録用紙  予習・復習ではなく一定量の問題練習を宿題とする  学習前の意気込みや学習内容の事後報告  様式  出席カードの裏面に記載/独自形式の出席カード  紙ベースのアンケート形式  Googleドキュメントを利用したオンラインフォーム  宿題プリントの余白欄 etc.  様式・質問項目は毎週いろいろ 5
  • 6. 学習記録用紙  開講1回目の授業で実施  この授業の進め方について理解できましたか。 (はい いいえ)  TOEICミニテストの復習をしてきますか? (はい いいえ)  少なくとも90分以上かけて、宿題をやってきますか? (はい いいえ)  この1年間、TOEICのスコアアップに向けて努力します か? (はい いいえ)  当日回収し「はい」の個数をそのまま点数化 (「いいえ」と回答しにくいことを敢えて意図) 6
  • 7. 学習記録用紙  1回目の授業終了時に配布した宿題の欄外に翌週記述 1. 学習量について:この1週間で、TOEIC対策の勉強は ( )時間( )分程度行った。 2. 学習方法について:主に(パソコン室・図書館・学内・ 自宅)で、(一人で・友人と)学習した。 3. これから特に力を入れて学習したいことは?(自由記 述) 7
  • 8. 学習記録用紙  自由度の高い課題 + 学習者自身による学習設計  [教科書ページ範囲]のうち、優先的に覚えたい単語・表現 を20個選び、和訳を添えて以下に記入しなさい。ただ し、「単語熟語集」の[ページ範囲]からの抜き書きでも構 いません。  単語熟語集の[ページ範囲]から、優先的に覚えたい単語を 30個、例文を添えて抜き書きしなさい。記入すべき項目 は、例文番号・語句・品詞と意味・例文である。(例文 和訳は記入しなくてもよい。)  記入枠を用意する場合と用意しない場合  回収したプリントはルーブリック評価し、数週間分を まとめて返却(ポートフォリオ的な利用方法) 8
  • 9. オンライン出席カード  Googleドキュメントのフォーム機能を利用  学内サーバー環境等を利用せず、使い捨てのアンケートフォーム を簡単に作成可能  タイムスタンプつきで一覧表形式で集計される  個人情報を隠し、中間モニタを使って結果を提示  Excel形式で出力できるので個人票の作成がしやすい  自由記述は手書きで提出させるよりも記入する文字数が多い?  (デメリット)携帯電話からのアクセスが制限されるため、 普通教室では利用しにくい。  質問カードとしての利用 9
  • 10. オンライン出席カード  利用した質問項目の例(1)  「(TOEICのリスニングとリーディングの)どちらを優先して学 習したいですか?」「TOEICで苦手なパートを3つ選ぶとした ら?」「何から学習すれば最も効率が良いと思いますか?」 「これから具体的にどういう学習を行いますか?なるべく詳し く書くこと」「1週間に授業以外でどの程度、英語を学習しま すか?」「この1年間、TOEICのスコアアップに向けて努力し ますか?」「指示された宿題はきちんとやってきますか?」  「リスニングミニテスト正解数」「リーディングミニテスト正 解数」「夏休みにどのような英語学習を行ったか、自由に記入 して下さい。」「後期の英語学習に関する目標を、自由に記入 して下さい。」「この授業に関する要望があれば、自由に記入 して下さい。」  「練習問題正解数(自己申告)」「配布した課題をどの程度学 習しましたか?」「難易度はどうでしたか?」「その他、感想 等を自由に記入して下さい。」 10
  • 11. オンライン出席カード  利用した質問項目の例(2)  「再生スピードを落として英語音声を聞く練習について の感想」「Part 3 の問題を解くために、今、どういう力 が足りていないと考えているか」  「Part 4 の問題を解くために、今、どういう力が足りて いないと考えているか。」「Part 3 / 4 対策として、自分 にあった練習メニューを考えてください。」  「今後、どのようにリスニング学習を行っていきます か?なるべく具体的な練習メニューを考えてくださ い。」「今後、どのようにリーディング学習を行ってい きますか?なるべく具体的な練習メニューを考えてくだ さい。」 11
  • 12. オンライン出席カード  Googleドキュメントのフォーム機能を利用  学内サーバー環境等を利用せず、使い捨てのアンケートフォーム を簡単に作成可能  タイムスタンプつきで一覧表形式で集計される  個人情報を隠し、中間モニタを使って結果を提示  Excel形式で出力できるので個人票の作成がしやすい  自由記述は手書きで提出させるよりも記入する文字数が多い?  (デメリット)携帯電話からのアクセスが制限されるため、 普通教室では利用しにくい。  質問カードとしての利用 12
  • 13. 学習記録用紙、ふたたび  TOEICパート5~7の学習記録はオンラインのフォーム では困難(?)  内省のほか、各自学習する単語や関連事項等を、下線 や複数の色を使い分けるなど自由な形式でまとめさせ ることはオンラインでは困難。  さまざまな使い方  一定の範囲を宿題として学習させる  問題解説の後で各自が深めて学習したい箇所を報告させ る  次のステップへ進むための目標設定など  採点/返却後のプリントを利用したグループ学習 13
  • 14. 学習記録用紙、ふたたび  具体的な質問項目(1)  前回配布のプリントから任意の3問を選び、その問題を二度と 間違えないために必要と考える知識(単語・熟語・文法・和訳 など)、あるいは一つの選択肢が確実に正解であるという合理 的な根拠について、各自の方法でまとめなさい。(他人に説明 するような書き方が望ましい。)  [教科書ページ範囲] の中からいずれか2題(計8問)を選び、そ れぞれのページを全問正解するために覚えるべき表現や文法的 な考え方を自由にまとめなさい。  Part 6 を解くために不十分だと思うスキルについて自由に述べ なさい。  本日提出した宿題で取り上げた2題(計8問)は自分がまとめた ものだけで完璧に理解でき、次に同じ問題をやった際にはもう 間違うことはない。(はい ちょっと自信なし いいえ) 14
  • 15. 学習記録用紙、ふたたび  具体的な質問項目(2)  [教科書ページ範囲]の中からいずれか2題(計8問)を選び、それぞ れのページを全問正解するために覚えるべき表現や文法的な考え 方、またはなぜこの選択肢が正解になるかという視点からの合理 的な理由を自由にまとめなさい。記入する分量は不問、問題ごと の枠も設けない。ページ数・問題番号を明記し、必要に応じて裏 面にも記入すること。  教科書のPart 7形式の問題で本日取り組んだ問題について、以下の いずれかの観点で自由にまとめなさい。/ 1. 分からなかった単語・ 熟語・例文等の意味(例文集からの書き写しでも構いませんが、 可能な限り英文全体を書き写した上で必要な箇所に注釈をつける 形とすること。)/ 2. 各自が「解答に迷った」「わからなかった」 ために辞書や配布した和訳で調べたこと / 3. 各設問の4つの選択 肢から1つの選択肢に絞り込むことが出来る合理的な理由 / 記入 する分量は不問です。ページ数、問題番号を明記し、必要に応じ て裏面にも記入すること。「後でこの用紙を見ることで効率的な 復習ができるという」内容・形式が理想的です。 15
  • 16. 学習記録用紙、ふたたび  具体的な質問項目(3)  本日返却した2枚の学習記録用紙を隣近所の人と交換し、 その中からクイズを出し合いましょう。書かれている範 囲のことならどんなことを出題しても結構です。成果を 相手に評価してもらい、以下のA~Cのいずれかに○をつ けて下さい。A このまま同じような勉強を続けたらス コアアップすると思うよ。多分。/ B もうちょっと勉強 が必要じゃないか? / C ヤバい。ヤバすぎる。(否定 的な意味の方。念のため。) 16
  • 17. 考察  相変わらず一定割合いる4択問題の答えを丸暗記して小 テストに臨む学生にどのように学習させるか?  教室内学力格差/学習意欲格差への対応は?  学習内容を学生に委ねることの利点は?  アンケート項目は手を変え品を変えて行うことが重 要?  オンラインの方が書きやすい?  数回分の記述をまとめて返却することで、各自が記入 した内容をポートフォリオ(作品)としてまとめて観 察できる機会にもなる? 17
  • 18. 学期末レポート  指示内容  TOEIC対策はこの授業の受講だけで全てが行えるものでは決してありませ ん。皆さん一人一人がこの授業の受講終了後も、自律的な学習を進めなが ら少しずつステップアップしていく必要があります。その土台作りとして 学期末試験に代わるレポートを課題とします。  教科書p.184~p.209のうち任意の10問(小問1つを1問と数えます。Part 6 は大問1つで4問、Part 7は大問1つで4~5問と数え、Part 5~7のいずれか の形式で計10問)を選び、教科書のページ番号や問題番号をきちんと明記 した上で、それぞれが正解・不正解になる理由を解説してください。ま た、意味が分からない単語を調べる作業や、必要箇所を和訳するなど、各 自に必要な学習を行うこと。  教科書をコピーしたものをレポート用紙に貼り付け、そこに書き込むなど の方法を採っても構いません。教科書内容のPDFファイルをこの授業用サ イト上で提供しますので、学内等のプリンタから出力することでコピー費 用の負担をなくすことが出来ます  分量はA4サイズで4ページを上限とします。様式は自由。市販のレポート 用紙等を利用して手書きで作成すること(教科書本文データ以外の内容を ワープロで作成することは一切認めません。) 18
  • 19. 学期末レポート  評価基準  「不十分」(8点基準)「普通」(10点基準)「良好」(12点基準)の3つに大まかに分ける  「不十分」のうち、答えとなる部分に印をつけて少し書き加えた程度のものや、レ ポートの体裁が整っていないものは7点以下  「不十分」のうち4つの選択肢の中から2つ程度を調べた形跡があるものを8点  「不十分」のうち途中まではある程度調べているが後半に手を抜いているものを9点  「普通」の判断基準は「あとでこの内容を学生本人が見てもあまり復習にならなさ そうな調べ方」「解けそうな問題のみ着手している」とし、やや劣っているものを9 点  「普通」のうち、4つの選択肢からある程度合理的に解答が絞り込めるがやや不十分 なものを11点  「良好」は選んだ10問については全ての選択肢について何らかの書き込み(品詞や 意味を調べている)とし12点  「良好」のうち、4つの選択肢の中から正解を一つに絞り込める合理的な判断基準が きちんと書かれているものを14点、一部の問題のみこれが書けているものを13点  選んだすべての問題についての調べ方がTOEIC参考書さながらに書けている場合は 15点(該当者なし) 19
  • 20. 今後の展望  (e)ポートフォリオを組み込んだ教授・学習の可能性?  テストの代替手段としての評価手法の可能性? (教育システム情報学会での実況ツイートより)  学習成果を設定し、それを測定・評価していかないと学習の質的 転換につながらないのではないか?  ePortfolioの活用のためには、定期試験のような現在の 学習の測定方法を見直さないといけないのではないか?  ルーブリック評価の判断基準の検証と精密化?  具体的な質問項目やオンラインフォームを教員間で共有?  普通教室での実践の可能性?  携帯電話で教室内で回答させる実践事例? 20
  • 21. 参考文献  神谷健一 (2009) 「情報演習室を利用したTOEIC対策授業の実践 –デジタル的手法とアナ ログ的手法の融合-」『大阪工業大学紀要 人文社会篇』第54巻第2号. pp.55-69. http://www.oit.ac.jp/japanese/toshokan/tosho/kiyou/jinshahen/54-2/04kamiya.pdf  神谷健一 (2010a) 「Googleドキュメントによるアンケートフォームと短縮URL —簡易 オンライン出席カード/質問カードの作成-」.e-Learning教育研究 第5巻 pp.31-34.e- Learning教育学会.  神谷健一 (2010b) 「授業で紹介したTOEIC学習法(自律学習の実現に向けて)」(ブロ グ記事) http://d.hatena.ne.jp/kmyken1/20100323/p1  土持ゲーリー法一 (2009) 『ラーニング・ポートフォリオ 学習改善の秘訣』. 東京:東信 堂.  西岡加名恵 (2003) 『教科と総合に活かす ポートフォリオ評価法 新たな評価基準の創出 に向けて』. 東京:図書文化社.  峯石緑 (2010) 「第7章 学習者の自己省察・自律を促すポートフォリオ」『英語教育学 大系 第6巻 成長する英語学習者 学習者要因と自律学習』大学英語教育学会 監修. 東 京:大修館書店. 21
  • 22. ご清聴ありがとうございまし た 神谷 健一(大阪工業大学) kamiya@ip.oit.ac.jp 22