第8回山口県英語教育フォーラム 松井孝志発表投影資料

1.
第８回 山口県英語教育フォーラム
「英語教育を語る視点を揺すぶる」
2015年11月14日
「英語力の可視化」
かくかくしかじか
松井孝志(まついたかし)
（山口県鴻城高等学校）
0

2. 0. コロンブスと卵
1

3. こんな会話をよく耳にします
よね？
A: お前の英語力はそんなものか？
B: オラの本気を見せてやるぜ！
A: 何っ、
英語力５万３０００だと！！
2

4. この対照表から分かることは？
http://4skills.eiken.or.jp/qualification/comparison_cefr.html
3

5.
言った者勝ち？
https://www.britishcouncil.jp/sites/default/files/
jiao_cai_nonan_yi_du_tocefrying_yu_li_jian_ding_shi_yan__0.pdf
4

6. この「注」の意味は？
5

7. 英語力とは？
その発達段階とは？
• 構造モデル（構成概念模式図）
• マトリクス
• 比喩
の効用と限界
6

8. この「共有部分」を構成するものは何か？
http://d.hatena.ne.jp/TerasawaT/20110228/1298923995
7

9. 先人の知恵と研究と考察
「チョムスキー vs. ハイムズ」で何（か）が分かるか？
バトラー後藤裕子(2015)
8

10. 比喩：
「コミュニケーション能力養成
と文法知識の習得は車の両輪」
「両輪」って？
• セグウェイ？（h#p://www.segway-japan.net/technology/
segway/index.html）
それとも
• 自転車？
9

11. これは「両輪」？「双輪」？
http://blog-imgs-58.fc2.com/n/e/o/neon1/kosegu.jpg
10

12.
二輪車の進化の歴史
（詳しくは「自転車博物館」へ
http://www.bikemuse.jp/about/）
11

13. 両輪の直径に差が…。
12

14. そして「チェーン駆動」に
13

15. テストでは何が可視化する？
Bachman & Palmer (1996)
14

16. Describing language ability:
language use in language tests
15

17. 習熟・成長をどう可視化する？
http://www.shogi.or.jp/shogi/hon/03.html
16

18. 果たして機能は上がったのか？
17

19. 見たいものが見えているか？
キース・モロウ編(2013)
18

20. 「高3英語力フィージビリティ調査」
（2014年度実施分）とは何だったか？
19

21.
文科省での資料公表とメディアでの扱い
(2015年3月17日報道発表時)
20

22.
僅か二ヶ月で「設計変更」？
(2015年5月26日報告書公表時)
21

23.
メディアの喧騒？
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG17H0H_X10C15A3CC0000/
22

24. 数字は出ているけど…。
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20150317002097.html
23

25. SNSでは？
http://hereandnow704.blogspot.jp/2015/03/0074-050317.html
24

26. これが「高3英語力」の実態？
25

27. 「書くこと」に大きな課題？
26

28.
そもそもどういうテストだったのか？
27

29. どのような「出題」だったか？
28

30. bottom lineは?
29

31.
「聞き取り要約」＝Ｌ＋Ｗ？
この問題を、
実際に受けた人は？
実際に試験監督された方は？
実際に評価に当たった方は？
実際に試験を作成した方は？
30

32. 聴いてみましょうか？
31

33. bottomless or helpless?
32

34. 音声スクリプト
Have you ever heard about a unique kind of boat race? It takes
place in a town in Australia. It’s amazing because it’s held in a river
with no water! The “boats” travel on sand, not water. This is
because the town is located in the desert. So the river is dry almost
all of the year. But that doesn’t stop the town from holding a boat
race every year.
If there isn’t any water, people can’t usually row boats. So how
can the boats in this race move along a dry river? The answer is
that people carry boats while running. They can do this because
the boats have no bottoms. They need to hold their boat tightly
and run fast in the race. It looks funny to see people running while
carrying their bottomless boats! Anybody can be a boat racer! You
don’t even need to know how to row a boat.
(154 words)
33

35. 聞き取り素材文がB1レベル
English Vocabulary Profileに基づくText Inspectorでのレベル分け
34

36. Text Inspectorはオンラインで利用可能
35

37. リスニングでは何が求められているか？
36

38. この調査のＬセクションは？
37

39. Ｌはただひたすら聴くだけ？
38

40. 視覚情報による補助あり
39

41. 問題文の中に
聞き取るべき情報のヒント
• 16. Where will you meet
the American student to
give her the train pass?
40

42. 聞き取る分量は？
• Can you meet me somewhere and
bring me the train pass? How about
halfway between school and our
apartment building? The big bridge,
the one not too far from the train
station, would be a good place to
meet? (39 words)
41

43. もっと長い分量の聞き取りは？
• そもそも、150語程度のまとまったモノ
ローグとしての英文を聞き取らせているの
だろうか？
• 聞き取る際には、視覚的情報や内容理解
の手がかりとなる問いの英文や選択肢は
与えずに聞かせているのだろうか？
42

44. 問題の詳細は非公表なのに…
43

45. 「要約活動の工夫」
• ポイントとなる英文が理解できなければ、的
確に要約をすることは難しい。そのため、ま
ずは平易な英文を読んで内容を要約する練習
を行い、徐々 に英文の量を増やしたり内容
を難しくしたりして、ある程度の長さや難し
さの英文を読んで要約できるようにすること
が大切である。このように、段階を追って
指導することは、4技能の統合的な活動にお
いては常に留意すべき点である。
44

46. 代替案（私案）
• 1. 100語の英文の読み取りに基づく
30語程度の要約課題
2. 50語の英文の聞き取りに基づく15
語程度の要約課題
3. 4コマ漫画に基づくナラティブの描
写課題
4. お題を与えての意見陳述課題
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150528
45

47. 問題指示の改善案（私案）
• 「これから、二つの段落で構成された合
計約150語の英文を読み上げます。途中で
メモを取っても構いません。英文は２回
読まれます。2回読み終わってから、約4
分時間を与えますから、150語で話され
た内容を、約5分の1の、30語程度に要約
しなさい。」
h#p://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150528
46

48.
率直な個人的感想
• でも、問題を出す順番、1問目
（聞き取り要約）と2問目（お題
に基づく意見文）が入れ替わるだ
けでも、正答率はかなり違ったん
じゃないかと思うんですよ。
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150620
47

49.
2015年度新課程一期生対象調査は？
48

50. この調査の目的地は？
(圓入 2015 より)
49

51. なぜCEFRを参照するのか？
50

52. 巻末資料編も含めると180頁超
51

53. 本家は何と言っているか？
(pp.1-2)
52

54. CEFRマニュアルは「お墨付き」
を与えるものではない
It does not provide a label,
statement of validity or accreditation
that any examination is linked to the
CEFR. Any such claims and
statements are the responsibility of
the institution making them.
53

55. 美味しい所だけ摘み食いは出来ません
(p.8)
54

56. 皮の剥き方も色々
55

57. Validationの独立性
6.11. Conclusion (pp. 86-87)
• The most important question, however, is
whether the results of the standard
setting---allocating students to a CEFR
level on the basis of their test score---is
trustworthy, and the basic answer to this
question comes from independent evidence
which corroborates the results of a
particular standard setting procedure.
56

58. あくまでも自己責任で
7.6. Conclusion (p. 117)
• The discussion on external validation in
this chapter may look disappointing in a
number of respects, as it does not make a
clear distinction between good and bad,
and it does not give clear prescriptions on
what to do in every conceivable situation.
57

59. でも透明性はお願いしますよ
Thus, it is to be hoped that many standard
setting endeavours, under way or planned in
the future, drawing on the information
provided in this Manual, the Reference
Supplement and other relevant sources, are
conducted and reported in a transparent
manner. (p. 117)
58

60. 「書くこと」のinteraction？
59

61. 相手がいればそれなりに？
A1レベルで出来ることは？
60

62. 「書くこと」のproduction？
61

63. 産出技能としての「書くこと」
A1レベルで出来ることは？
62

64. 技能統合の扱いは？
63

65. 流石は本家? (pp. 167-168)
64

66. この32-39は要注目
65

67. 基礎研究の土台の彼我
66

68. 「言語運用（の観察）」に基づく枠組
67

69. Threshold Level時代からの蓄積
68

70. CLCからCEPCへ
Harrison & Barker (2015)より
69

71. 実際の発話を分析・評価
70

72. 同じ「レベル分け」でも…。
71

73. Back in 1976
72

74. どこかで聞いた言葉が…。
73

75. 「英語力評価及び入学者選抜における英語の資
格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会」
「英語4技能 資格・検定試験 懇談会」とは？
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/106/shiryo/
attach/1356123.htm
・グローバル・コミュニケーション&テスティング
・ケンブリッジ大学英語検定機構
・国際教育交換協議会（CIEE）日本代表部
・一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
（IIBC）
・公益財団法人 日本英語検定協会
・株式会社 ベネッセコーポレーション
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76. 「有識者」に訊いてみては？
平田オリザ(1989)
75

77. 「正四面体モデル」（若林、1972, 1989）
76

78. 参照：「料理の四面体」
玉村豊男 (1980)
77

79. 「言語活動の基本形態１５」
(若林1989)
78

80. 「言語活動の基本形態15」(続き)
79

81. 単一技能
1. 聞くこと ただひたすら聞く。ラジオ放送、
教師による講義
2. 話すこと ただひたすら話す。一方的な
スピーチ（菅語法？）
3. 読むこと ただひたすら読む。音読は含め
ない。（噛んで含めない？）
4. 書くこと ただひたすら書く。手紙、レポート
など。辞書を引く・参照するものは含めない。
80

82. 二技能統合
• 5. 聞くこと＋話すこと 会話・対話。
説明しながら質問を受ける。その逆。
6. 聞くこと＋読むこと レジュメを
見ながら発表を聞く（「今でしょ？」）
7. 聞くこと＋書くこと ひたすら講
義を聞き、ひたすらノートを取る大
学生。国会の速記者。
81

83. 二技能統合（続き）
• 8. 話すこと＋読むこと ノートを読み上
げるだけの昔の大学の教師の講義。国会
での演説。音読。
9. 話すこと＋書くこと 教師が授業で説
明しながら板書する。
10. 読むこと＋書くこと 本を読みながら
ノートを取る、論文を読み、参考書を利
用しながらレポートをまとめる
82

84. 三技能統合
• 11. 聞くこと＋話すこと＋読むこと 会議など
で資料を読み、意見を聞き、自分の意見を言う。
メモは取らない
12. 聞くこと＋話すこと＋書くこと 会議など
で、討議しながらメモを取る。文字資料は用い
ない。
13. 聞くこと＋読むこと＋書くこと 学校の授
業などで講義を聞く学生が行うような言語活動
14. 話すこと＋読むこと＋書くこと （文字）
資料を用いながら講義し、板書する教師が行う
ような言語活動
83

85. 四技能統合
• 15. 聞くこと
＋話すこと
＋読むこと
＋書くこと
会議などで頻繁に起こる言語活動。
最も日常的。
84

86. 「外部試験で診ている」言語活動は？
TEAPの場合
85

87. TOEFL Jr Comprehensiveの場合
86

88. GTEC CBTの場合
87

89. CEFRを参照すると言うけれど…。
Jones (2014)
88

90.
「かくかくしかじか」
あるいは隔靴掻痒
• 普段の授業内で成立する言語活動は必ず
しも実際の言語運用と同一ではない。
• 授業内での評価活動の際に学習者が行う
「言語活動」は必ずしも実際の言語活動
と同一ではない。
• 各種試験や検定の際に受験者が行う「言
語活動」は必ずしも実際の言語活動と同
一ではない。
89

91. では、どうするか？
• 「テスト」そのものの透明性の確保
→ feasibility 調査の feasibility 検証
• 風通しの良い批評空間
→ 「利益団体」によるコンペにしない
• 地道なデータの積み上げと分析
90

92. 若手に期待しています
Harrison & Barker (2015)より
91

93. 参考資料
(印刷資料に載せていないもの）
• 圓入由美 (2015). 「小中高の英語教育の改革を成
功に導くために」、英授研全国大会シンポジウム資
料
• 玉村豊男 (1980). 『料理の四面体』 鎌倉書房
• バトラー後藤裕子 (2015). 『英語学習は早いほど良
いのか 』。 岩波新書
• 平田オリザ (1998). 『演劇入門』、講談社現代新書
• Text Inspector http://www.textinspector.com/workflow
92

94. 参考資料及び文献（ハンドアウトから）
93
A Manual: Relating Language Examinations
to the Common European Framework of
Reference for Languages:
Learning, Teaching, Assessment (CEFR)
• https://www.coe.int/t/dg4/linguistic/
Source/ManualRevision-proofread-
FINAL_en.pdf

95. 文部科学省などのweb上の資料
• 「平成26 年度 英語教育改善のための英語力調査
事業報告」
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/
1358258.htm
• 「『生徒の英語力向上推進プラン』について」
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/
1358906.htm
• 英語4 技能試験情報サイト
http://4skills.eiken.or.jp/index.html
94

96. こにしき（ことば、日本社会、教育）
「ジム・カミンズの言語能力理論と
日本の第二言語教育」
• http://d.hatena.ne.jp/TerasawaT/
20110228/1298923995
95

97. • Bachman, L. F. & Palmer, A.S. (1996). Language
Testing in Practice. Oxford, Oxford University
Press.
• Ćatibušić, B. & Little, D. (2014). Immigrant
Pupils Learn English: A CEFR-related empirical
study of L2 development.Cambridge,
Cambridge University Press.
96

98. • Harrison, J. & Barker, F. (2015). English Profile in
Practice. Cambridge, Cambridge University
Press.
• Hawkins, J. A. & Filipović, L. (2012). Criterial
Features in L2 English: Specifying the Reference
Levels of the Common European Framework.
Cambridge, Cambridge University Press.
97

99. • Jones, N. (2014). The Construction and Use of
Multilingual Proficiency Frameworks.
Cambridge, Cambridge University Press.
• North, B. (2014). The CEFR in Practice.
Cambridge, Cambridge University Press.
• van Ek, J. A. for The Council of Europe. (1976).
The Threshold Level for Modern Language in
Schools. London, Longman.
98

100. • キース・モロウ編 (2013).『ヨーロッパ言
語共通参照枠 (CEFR) から学ぶ英語教育』
研究社.
• 根岸雅史 (2014). 「GTEC CBT の問題構成と
指導への影響」『英語教育』(7 月号, pp.
44-45) 大修館
99

101. • 若林俊輔 (1972a). 「受動から能動へ」『英
語教育』(1 月号、p.16) 大修館書店.
• 若林俊輔 (1972b).「『言語活動』の基本形
態」『英語教育』(2 月号、pp. 5-9) 大修館
書店.
• 若林俊輔 (1989). 「4 技能の指導をどう関
連させるか」『英語教育』(12 月号、pp.
8-10) 大修館書
100