経済学で読み解く
「働き方」と「イノベーション」
「ブラック均衡」から抜け出そう!
安田洋祐
大阪大学 大学院経済学研究科 准教授
Eメール: yasuda@econ.osaka-u.ac.jp
ウェブ: https://sites.google.com/site/yosukeyasuda/jp
2018年5月 1
本日の報告の流れ
1. 簡単な自己紹介
2. なぜ働き方とイノベーション?
3. マクロのスパイラルとミクロの罠
4. 将来への展望
2018年5月 2安田洋祐|大阪大学 経済学研究科
簡単な自己紹介
• 1980年 東京都生まれ
• 2002年 東京大学経済学部卒業
(大内兵衛賞、経済学部卒業生総代)
• 2007年 プリンストン大学Ph.D.
• 2007年 政策研究大学院大学助教授
• 2014年 大阪大学経済学部准教授
• 研究領域
– 経済理論、ゲーム理論、インセンティブ設計
• 学術研究の傍らマスメディアを通した一
般向けの情報発信や、政府等での委員
活動にも積極的に取り組んでいる。
2018年5月 3安田洋祐|大阪大学 経済学研究科
著作など
2018年5月 4安田洋祐|大阪大学 経済学研究科
監訳など
2018年5月 5
New!
安田洋祐|大阪大学 経済学研究科
TVメディア
• レギュラー・準レギュラー
– フジテレビ「とくダネ!」
– 関西テレビ「報道ランナー」
– 読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」
– テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」 ← New!
• 特別番組など
– NHK BS1「欲望の資本主義2017」 「欲望の資本主義2018」
– NHK Eテレ「ニッポンのジレンマ」
– NHK 総合「NHKスペシャル マネーワールド」
– NHK 総合「欲望の資本主義」
2018年5月 6安田洋祐|大阪大学 経済学研究科
なぜ働き方とイノベーション?
生産性低迷を診る2つの視点
2018年5月 7安田洋祐|大阪大学 経済学研究科
世界経済におけるGDPの動向
世界経済は全体として回復基調にあるが、回復のペースは緩慢。
出典:METI 通商白書2017
「主要国の一人あたり名目GDPのOECD加盟国中の順位」
出典:内閣府「国民経済計算」資料(図8)
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 8
日本経済低迷の要因その1
低い全要素生産性 (Total Factor Productivity)
経済成長(GDP成長)を生み出す要因のひとつ。資本や労働など量的な生産要素の増加
以外の質的な成長要因をTFPという。技術進歩や生産の効率化などがTFPに該当する。
出典: 日本生産性本部
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 9
日本経済低迷の要因その2
低い労働生産性
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 10
2015年の日本の労働生産性(就業1時間当たり)は、42.1 ドル。OECD加盟35か国の
中では、第20位。 1970年以来、主要先進7か国の中では最下位の状況が続いている。
米国の約6割
米国
日本
サービス産業の品質では「日本 > 米国」
調査対象の28分野の大半で、日本のサービス品質が米国よりもよく、約10~20%
上回っているという。日本のサービス産業の労働生産性は米国の約半分とされるが、
日本の高いサービス品質が価格や生産性に十分反映されていないとし、同本部では
「サービスを『見える化』して、価格に転嫁すべき」としている。
宅急便、タクシー、コンビニエンスストア ⇒ 15~20%上回っている
 米国人:設備の性能・見栄え重視
 日本人:迅速なサービスを重視
日本生産性本部、日本と米国のサービス産業の品質比較を発表(2017年7月12日)
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 11
マクロのスパイラルとミクロの罠
“改革” してもうまくいかない理由とは?
2018年5月 12安田洋祐|大阪大学 経済学研究科
日本経済がハマったマクロ・ミクロの罠
• マクロ(経済全体):負のスパイラル
– 投資が減ると労働者がどんどん買い叩かれる
– 働き方改革のカギは設備投資にアリ!
• ミクロ(組織内部):ブラック均衡
– 従業員は制度ではなく期待・空気に反応する
– 制度の導入は改革のゴールではなくスタート
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 13
失われた20年の「負のスパイラル」
低賃金
(安い労働力)
資本投資減少
(機械より人)
労働の限界生産
性も減少
更なる賃下げ
(徐々に人不足)
【需要面】
投資需要低迷 => 金利低下
【供給面】
技術革新低迷 => TFP低下
(日本版の)
ルイスの転換点?
長時間労働
労働分配率低下
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 14
「正のスパイラル」へと逆転!?
高賃金
(高い労働力)
資本投資増加
(人より機械)
労働の限界生
産性も増加
更なる賃上げ
(徐々に人余り)
【需要面】
投資需要増大 => 金利上昇
【供給面】
技術革新促進 => TFP増加
働き方改革
深刻な人手不足
定型化された仕事がAI・ロボット
に徐々に置き換わっていく
雇用のミスマッチ解消が課題!
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 15
働き方改革の壁 – 均衡の罠
QWERTY型のキー配列は実はタイプに向いていない
↓
なぜ使われ続けているのだろうか?
(コーディネーションの失敗)
ゲーム理論で考えよう!
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 16
残業問題の原因:「ブラック均衡」
• 自分だけ定時に帰ることができるか?
– どちらの社員にとっても、みんな定時退社するのがベスト
– 自分だけ「定時退社」すると人事などで不利益を被る
– みんながサービス「残業」すると働き方改革は進まない…
社員2
社員1
定時退社 残業
定時退社 2
2
0
-10
残業 -10
0
0
0
ホワイト
均衡
ブラック
均衡
どちらも
安定的な状況
(ナッシュ均衡)
まわりがちゃんと定
時退社するという
「期待」が重要
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 17
インセンティブ報酬とモラルハザード
2018年5月 18
『ミクロ経済学の力』(神取道宏)より引用
安田洋祐|大阪大学 経済学研究科
様々なモラルハザード問題
2018年5月 19
依頼人は代理人の行動を観察することができない
=> モラルハザード(隠された行動)の問題
安田洋祐|大阪大学 経済学研究科
マルチタスクの落とし穴
2018年5月 20安田洋祐|大阪大学 経済学研究科
将来への展望
イノベーションによって変わる働き方
2018年5月 21安田洋祐|大阪大学 経済学研究科
日本でイノベーションを生み出すには
• 労働市場の低い流動性
– シリコンバレー・モデルは無理…
– 労働者が組織に留まる利点を生かせ!
• 組織内での新結合(byシュンペーター)
– 優秀な人材 → 多様な個性
– 減点主義 → 失敗は成功のもと!
– ロールプレイ(肩書きを無くす)のすすめ
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 22
AI・IoTの進展:国内での影響
AIの進展により、ロボットが人間の代わりをするようになる時代がくる!
人口減少、少子高齢化を他国に先駆けて迎える日本にとってチャンス!
 労働代替型のニーズが高い(日本は人手不足)
例: 農業従事者、建設・物流、介護、廃炉、熟練工の後継者、etc
 ロボット工学が強い (研究者が多い)
 ロボットに対する潜在意識が米国とは異なり、世代を超えた理解がある。
 日本: 人とテクノロジーが共存する。(アトム、ドラエモンなど)
 米国: 人とロボットが闘う (ターミネーターなど) 。
人工知能による「ものづくり」の復権へ
言語データから
行動データ
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 23
利便性から
安全性
ヴァーチャル
からリアル
経済システムや資本主義は変わるのか
グローバル社会の人間として、テクノロジーが進歩して、人間が働かなく
なっても良くなってしまう社会のことも、この先数十年間議論していくべき。
ロボットが働けば、雇用を奪うだけではなく、近い未来、人は働かなくても
良くなるかもしれない。
 そうなったら、これまでの経済、社会の形はどうなるだろうか。
 Basic Incomeを導入する代わりに、技術を活用して、モノやサービスを
タダで提供する。Basic サービスの時代がくるかもしれない。
2018年5月 安田洋祐|大阪大学 経済学研究科 24

経済学で読み解く「働き方」と「イノベーション」